‘10 02月号
 #55 正義と邪悪A 

 機関車から引き離され停まっているいる客車。
そこに相対するジャイロ&ジョニィ。
ついに最後のラッパの音が吹かれようとしている。

「フー――…」
 大きく息を吐くジャイロ。緊張のためか恐怖のためか、呼吸が浅く早くなっているジョニィに話しかける。
「『黄金長方形』だぜ……ジョニィ」「いいな…」
「馬から得られる回転が『どんなエネルギー』なのか…?誰もわからないし見た事さえない『回転』…」
「『そんなのが自分に出来るのか』…?お前が今そう考えているのなら…」
「それは『黄金長方形』しかないだろう」
 黄金比率 1:1.6を持つ長方形。
「馬をその形(フォーム)で走らせろ」
「もし馬から『回転のエネルギー』をオレたちに得られるなら……馬の『走行形(フォーム)』は『黄金長方形』しかないはずだ」
「馬自身が『良い』と思うように走らせろ…馬がこの草の上を自然体で走って喜ぶように……」
「馬自身が…この大地と空の下に生まれて来た事を感謝するように…」
「それが『黄金長方形』をつくる時だ」
「必ず『勝てる』」
「『ヤツの髪』が抜けている…オレたちには『結果』がある」

馬のパワー+回転これを便宜的に『鐙回術』と呼ぶ。ジャイロは鉄球に、ジョニィはタスクの弾爪に馬のパワーを乗せるつもりだ。
ファニィー・ヴァレンタイン大統領の居る客車に相対するジャイロ&ジョニィ。

「『馬に乗っている』……『2人』とも」「なぜだ?」
 客車のドアの窓からJ&Jを凝視している大統領。
「なぜ『2人』は逃げ出さない……?今ギリギリで命拾いをし……『遺体』はすでに決して自分たちには手に入らない事を理解し…」
「次の攻撃をされたら敗北する事は確実と身にしみて絶望したはず……」
「2人のとるべき行動は出来るだけ遠くへ『逃走』する事のみ」
「だが何だあれは?あの戦闘態勢は何なのか?」
 勝ち目のない闘いに何故参るのか理解できない大統領。しかし針の穴を通る程ではあるが勝ち目はあるのだ。
ゴドンッ
 ルーシーがソファから落ちている。
「い…息が…く…息ができ……ない」
 苦しげなルーシー。
「そうだよ、わたしの可愛いルーシー」「これからまもなく君は死ぬんだ……」
「これから聖なる『遺体』になるのだからな。だがルーシーは死ぬが…」
「この世に『女神』が生まれたのだ。君は『女神』になった」
「わたしの能力『D4C』と共にいるこの人間世界の『女神』だ」
「もはや崇拝しかない……この場所に『神殿』を建てよう」
 神殿でも何でも建てればいいが、とにかくルーシーを助ける気はないようである。
そして……

ガチャンッ
 客車から大統領が現れる。
「…………」
 ついに奏者がラッパを唇につけた。
「来たか」「行くぞジョニィ」
「撃つのは一発だけだ。馬の『走行形(フォーム)』が黄金長方形になった…」
「――その『時』――だけだ」

カン カン カン コツ コツ
 列車から大地に降り、歩みを進める大統領。
ドガアァッ  ドドドドドドドド
 J&Jが馬を駆けさせる!!
ビシャン
 D4Cが『スキ間』を発動し、そこに侵入する。そして厚さのなくなった大統領は線路の枕木の下に潜り込む。
「何だ…何が起こった!?大統領はどこだ?今、何をしたッ!?」
「線路の下へ潜ったぞッ!!さっきと同じ『裂け目』の中だッ!」
 うろたえるジョニィ。大統領の通った後の枕木が次々と跳ね上げていく。
「地面だ!!」「地面をなめてスベって来るぞ!!」
『だが何のために地面を…?』『まさか…馬の力を利用する『回転』の事を勘づかれているのか?』
「別れろ!!右へ行け!!ジョニィ、右から回り込んでやれッ!!」
バグオオオン!!
 大統領/D4Cが線路から外れてジョニィを追いかける。
『来る!こっちへ、僕の方からだ、まず僕を狙って来る』
ドバッ!  ドバッ!

 ジョニィが2発タスクを撃つ。効果はない。
「まだだッ!ジョニィ、撃つなッ!」
「まだ『走行形(フォーム)』が出来ていないッ!」
 ジャイロの言葉に反応する大統領。勘は悪くない大統領、後々に影響あるのか?
回転の達人であるジャイロがフォームをチェックし、才能あふれる騎手のジョニィが人馬一体の攻撃をする。
偶然とはいえ理想の攻撃形態となったJ&Jッ!!
『まだだ…ジョニィ、あわてるな…』
『馬の足の動きが『黄金長方形』の形に整うまで待て…』
『筋肉が『黄金長方形』のパワーを得るまで…』

ドバッ!
 ジャイロの放った弾爪が『スキ間』に吸い込まれる。
『スキ間』にとある場所が映し出される。そこはどこかの国で起きている暴動、ジョニィの爪弾がキッカケで一人の男が棍棒で殴り殺された。
その映像にまたもショックを受けるジョニィ。
「ジョニィッ!!まだ形が出来ていないッ!!」
 その時、ジョニィは気付く!あの現象が知らず知らず再び起こっていたことを!!
「くそ…また『木』が動いて近づいて来ていたッ!!木だ…」
「まずいッ!『木と木』の間が閉じるッ!このために!!」
「追いつめるために今、大統領は地面をはって来ているッ!!」
 前方に迫る木々、後方から迫る『スキ間』の大統領。
「だがこのまま『木』と『木』の間を行かなくては……!!」「追いつめられるッ!!」

 その時、ジャイロが気付くッ!!
「…………ジョニィ」「出来ている…
「出来てるぞ……長方形の中に……」
「『形』が出来てるぞ…やったぜ…今だ……」
「…『黄金長方形』の形の中に今…おまえの馬がいる!……」
 ついに準備が出来た!!
「今だッ!ジョニィッ!『形』が出来ているぞッ!!」
 馬のパワーが鐙を経てジョニィへ伝わる。『遺体』の聖霊―すでに『遺体』を失っているジョニィに何故か付き添っている―クルスも顕れる!
ガンッ
 迫ってきた木の、その枝がジョニィの頭部にぶつかってしまう!
その隙を見逃さず大統領が攻撃を仕掛ける。
ドバァ
 ジョニィの左手からタスクが発射される……がその腕をD4Cが手刀で叩き斬ってしまうッ!!
絶体絶命か!?


今月のめい言

「それが『黄金長方形』を
 つくる時だ」

○『スキ間』に潜み「あらゆるダメージを縁なき運の悪い者に押し付ける」能力を持つ大統領。『遺体』の力を利用して圧倒的有利に立った大統領にわずかな可能性に賭けて無謀にも闘いを挑むJ&J。しかし、黄金長方形の回転術に馬のパワーを合わせた未知の戦法(便宜的に「鐙回術」と呼ぶ)は『スキ間』に潜んだ大統領を打ち砕く可能性を持つ。ジョニィの体調がおもわしくないのが気にかかるのが、立ち向かうと腹を括ったのならばもはや針の穴ほどかもしれない勝利の道を目指すしかない。

○恐らく個別撃破を狙ったのであろう、J&Jの真ん中めがけて突進して2人を分断した後、先程の続きと言わんばかりにジョニィを追いかける大統領。「縮地」の効果で木々を引き寄せジョニィの走行の障害として追いつめる算段である。しかしこれは、しょうがないと言えばしょうがない判断ミス/選択ミスであるJ&Jにとっては勝利の可能性が増えたというところか。「回転」の専門家(エキスパート)であるジャイロが「黄金長方形」のフォームをチェックし、「乗馬」の専門家であるジョニィがその指示を受けて馬のパワーと放つというホット・ラインである。

○時が来て 機は熟す。大統領の攻撃をかわしつつ、ついにスロー・ダンサーの走行形(フォーム)が黄金長方形を形作った。そして運命の一発が放たれた…!

○しかし大統領の作戦が見事に効を奏してしまう…引き寄せられた木々の枝に頭部をぶつけ、その隙をつかれてタスクを放った左の前腕部を切断されてしまう。万事休すか!?

○それでも…確かに放たれた究極タスクがこの闘いにどのような影響をもたらすか非常に気にかかる。どちらが有利になったのか?

○J&Jにとって鐙回術を悟られる前に決着をつけたかった。準としても、悟られる前に大ダメージを与えておきたかったはずである。だが、待ちに待った一発を外してしまった。何らかのダメージを与えたとしても戦闘を決着させるものではないだろう。情報が漏れてしまうのは大変な痛手なのである。

○かといって大統領が有利なのかと言うとYESとは必ずしも言えない。何故なら、実はそんなに戦闘力が高くないD4Cが今や無敵なのはダメージを受けないからである。しかしジョニィの一発が大きな傷を与えなくても『スキ間』の中に居る自分に血を流させることが解ったら、大統領は今まで通りにズンズン近付くことはできないだろう。その結果、J&Jから距離をとり2人に時間を与えることになる。その猶予が、ジャイロとジョニィのさらなる反撃のキッカケとなるかもしれない。

○『遺体』にとりつかれて、『遺体』と化す現象に襲われているルーシー。呼吸もままなくなり、もはや彼女の命は風前の灯である。大統領を倒しても彼女の命が尽きては元も子もない。それにもまして、果たしてルーシーを『遺体』から切り離すことができるのか?ルーシーの元の肉体は吹き飛んでしまっているが…?ゾンビ馬で何とかできるレヴェルではないであろう。どのような方法があるのか…目が離せない展開である。

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