スタンド――『D4C』
本体――ファニー・ヴァレンタイン合衆国大統領
何か物にはさまれると違う次元の世界に行ける能力。
もうひとりの大統領と入れ替わって負傷などを治せて戻って来れる。
攻撃射程距離――2m
手足の打撃や蹴りで攻撃する。
スタンド――『D4C』は多次元でも1体のみ。『遺体』のある基本世界に
存在し、本体といっしょに帰って来る。 |
表紙でD4Cの説明。言いたいことは後ほど。そして本編。
『う、うく』『血圧が……これは誰の攻撃だ……』
首からの出血を手で押さえるジャイロ。
『まさか……『大統領』の…』
『さっき魚に指を噛まれたただの薄っぺらい傷が…傷が移動して腕を登って来た…』
機関車の脇に倒れこむジャイロ。機関車と並走しているヴァルキリーが目に入る。
客車の方を見ると……ジョニィと大統領の闘いが始まろうとしている。
シュゴオオオオオオオオオオオオ
空間の隙間を伝い、客車に並走するジョニィへと近づく大統領。
「大統領……!!」「列車から出て来た?…どういう事だ?(地面じゃあない)…どこを歩いている?」
隙間を移動しつつ、D4Cの右腕をそこから出す。
「移動してくるッ!攻撃する気だッ!」
ドバッ ドバッ ドバッ
弾爪を撃つも空間の隙間によって何処かへと飛ばされる!
「うわぁー――」「きゃあー」
エッフェル塔が見える、フランスははパリなのだろう。
工事現場に飛んだ弾爪が鋼材を縛り付けてあったワイヤーを切断、崩れさせてしまった。
そして、そこに巻き込まれた男性が一人…。
空間の隙間からその状況を見ていた大統領が呟く。
「また遠くの土地のどこかで…『不幸だけ』をおっかぶった人間がいる」
「わたしのいるこの場所じゃあない」
それを聞いたジョニィが色めき立つ。
そして、さらなる大統領の接近。
『あれは『透き間』だ』
『ヴァレンタインは今『空間の隙間』にいる…そこをこっちへ向かって進んでくるッ!!』
『そして『透き間』はこっち側の世界じゃあないッ!!』
『爪弾が吸い込まれるようにどこかへ飛んで行った!!』
大統領から距離をとるように操馬するジョニィ。しかしあることに気付く。
「まずいッ!背後からは森が近づいて迫って来ているッ!!このままだとはさまれるッ!」
縮地現象がまだ続いているのだ。
「ヴァレンタインのこの能力ッ!!」
「まさか『遺体』なのかッ!大統領は『遺体』の能力を手に入れ発現させているのかッ!!」
動きを森に阻まれたジョニィの背後に大統領が迫る。D4Cの右腕が『透き間』から迫り出し…その手刀がジョニィに振り落とされる
ドグシャアア
鈍い音が響く!しかしそれはジョニィの頭骨が砕ける音ではなく、D4Cの手刀に鉄球がブチ当たった音である。
ジャイロが復帰しヴァルキリーに乗って近づいて来ている。
ドバッ
ジャイロの方を見たために頭部が『透き間』から出てしまったD4Cに向けてジョニィが弾爪を一発放った。
しかし気付いたD4Cはすぐに『透き間』に帰り、弾爪はいずこかへと飛ばされる。
ドン
東洋人らしい男性が小銃を撃ち、子どもが倒れている。
壁に「サイゴン」というポスターが…ベトナムか?
『透き間』を通してその様子をジョニィも目撃する。
「わあああああ」
「スキ間の中で見えたか…?ジョニィ・ジョースター、地球の裏側なのかな…どこかでまた人が死んだぞ。子どもが殺された」
「どういう因果なのか…このスキ間から飛んで遠くの誰かがそれをひきうける」
「人類は皆平等じゃあないか、良い事と…害悪はプラスマイナスゼロだ」
「だが、この幸福な場所にいるわたしたちの所じゃあない」
すかさずD4Cが右腕のバックブローでジャイロに攻撃する。
かわしたッ!と思われたが左手にかすり傷がつく。
「なッ、何ッ!」
『『傷』がッ!…。またッ!』
『ま…まさか!!また登って来るッ!!手についた『かすり傷』が…オレの頭が心臓に向かって…!!』
『まずい!!まずいぞ…登ってくる、スピードが速いッ!!』
体勢を崩したジャイロを尻目にD4Cは再びジョニィを襲う!
両腕の攻撃がジョニィに迫るが、しかしジョニィが弾爪を4発放つッ!!どこに!?
機関車と客車を結ぶ連結器(カップラー)に放ったのだ。
見事に命中し切り離された衝撃でD4Cの攻撃が空振る!そのままスロー・ダンサーを駆けさせ距離をとるジョニィ。
客車は動きを止め、機関車はそのまま走っていく。
「き…傷が…う!!」「くそっ!」
「だ…だめだッ!!」「傷が止まらない!登ってくるッ!!」
「ガハアッ」
対ショック姿勢をとって落馬するジャイロ。口から血を吐いている!
「か…かすり傷程度でも…」「う…うぐ」
「し…心臓に傷がついたか……」
「ハァーッ ハァーッ ハァーッ……」
息を荒くするジョニィ。ネガティヴな思い出と気分がジョニィを支配してしまう。
「『克服』したと思っても再び頭をもたげて来る敗北!」
「も…もうだめだッ!限界だッ!ジャイロッ!」
「勝てないッ!!大統領がついにッ!完全に『遺体』を自分のものにしてしまったッ!」
「また来るぞ……」
「ヤツは今…列車に戻ったが『スキ間』を移動してまた来る…!あの『スキ間』に爪弾は撃ち込めないッ!」
「あいつの背後にあるのは『聖なる遺体』。害悪なるものは全てどこかへはじかれるとヤツは言っていた…君のその傷もあいつを中心にはじかれているから君の体を登ってきたんだ!」
「倒す方法は何もないッ!」
「あいつが『正義』で!」
「ぼくらの方が『邪悪』なものなんだッ!!」
身体を震わし絶叫するジョニィ。
膝まづいて草の中の何かを見ていたジャイロが言葉を発する。
「なぁ、ジョニィ」「憶えてるか?」
「あぶみから馬の力(パワー)を利用した鉄球の回転があると言った事を」
「だがオレの父上も誰も見た事のない回転で…回し方さえも知らない回転の事を…」
ヴァルキリーに手をつくジャイロ。
「………」「ああ…!もちろんだ……」
「さっきからずっとその事ばかり考えている……このぼくなんかにそんな回転が出来るのかと…」
「両脚から力を伝わらせる回転なんて…そんなものが…」
ジョニィの言葉を遮りジャイロが言葉を発する。
「今、その『回転』で試しに投げてみた……」
鉄球に視線を送るジョニィ。
「む…無理だ…」「だからそれがどうだというんだ?…ジャイロ」
「たとえどんな力の『回転』だろうと……ヤツが移動する『スキ間』には攻撃は全てとにかくはじかれる…それは現実だった」
「ぼくはその現実を今!この目で『スキ間の中』に見たんだ!」
「ああ」「オレもだ……絶望が心の中の全てを襲ったよ」
「だが今まではだ……」
草の上に落ちていた鉄球を拾い上げるジャイロ。鉄球には何かへばりついている。
「見ろよ…『髪の毛』だ…」「ヤツの『髪の毛』が今投げた鉄球にへばりついているぜ」
しばしの沈黙。
「何…」「髪が何…?ど…どういう事を意味している!?」
「なぜ鉄球に『髪の毛』がくっついている?」
「まさかヤツに命中したって事なのか!?」
「いや…ヤツの頭部に命中したようには見えなかった」
「だが先祖から伝わる誰も見た事のない回転は…中世の騎士が開発したあぶみを使った回転って事を覚えているか?」
「馬上の騎士は敵も騎士!『甲冑』を身につけている『盾』を腕に持ってもいる」
「現代では必要ないが防御をつき抜けるための『回転』がもしかつてあったとしたなら!?」
盾を…鎧を…肉体をつき抜ける鉄球の『回転』!!!
「『髪』があったからそれがどういう意味なんだ?何が起こったんだッ、ジャイロッ!」
「君は今!どういう『回転』を投げたんだッ?」
「何もわからない…『結果』だけがある」「事実は…スキ間の中のヤツの『髪の毛』を抜いたという『結果』だけだ」
ドドドドドドドドドド
機関車から切り離された客車が停止している。その中には『遺体』となったルーシーとそれを利用する大統領がいる。
馬上の2人が列車と対峙する。
「行くぜジョニィ。あの扉の向こうにルーシーがいる」
「結果は…『ある』…か…」
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