よくパラレル・ワールドは「本」に例えられる。1ページが1つの世界を表し、ページをめくった隣のページが隣の世界である。
このページ/世界はほとんど同じだが少しだけ違う、隣のページ/世界もちょっと違う、その隣のページ/世界も……。
大統領のD4Cはこのページの厚さをものともせず、どのページにも表れることができる。
…………パラパラパラパラパラ…………
Dioに身体中を切り刻まれた大統領が車輪と線路の間から、とある「隣の世界」に表れる。D4Cもボロボロである。
「う……早く…意識が……」
と言って事切れる大統領。
グワシャアアン
列車の窓から「隣の世界の大統領」が飛び出してくる。そして「基本の世界の大統領」を確認する。
するとD4Cがバギョオオンと「隣の世界の大統領」に遷る。
「!!」
するとD4Cがグイッと「隣の世界の大統領」を抱きしめる。
「なるほど……」「理解した……」
「『基本』がこのわたしに…隣の世界の『能力』はこのわたしに移った…」
「今、このわたしが『基本』になったのか……」
「下のわたしがこの世界でノドを切られた事になる」「危なかった…」
「…戻るか…『D4C』!隣の遺体のある『基本の世界』へ…」
「どジャアアあああ〜〜〜ン」
ふざけた掛け声と共にガラスと地面に挟まれて、大統領はこの世界から移って行った。
「ジャイロッ!客車の窓が割れているぞッ!」「先頭車両だッ!!」
「『ルーシー・スティール』は先頭車両にいるッ!つまり『大統領』もだ…」
そこに「NEW JERSEY」の看板が…。
「ここはすでに『ニュー・ジャージー』に入っているようだな」
ジャイロの言葉にジョニィも感に入る。
「もうそんな位置か…」「…『海』だ!」
「あの向こうに見えるのは…」
2人の脳裏にサンディエゴから始まったレースのルートが浮かぶ。
「あれは『大西洋』か……」
「『大西洋』が見えた…ついに」
ここでジョニィが後ろを振り返ると……
「ジャイロッ!!」「!?」
「『熊』に注意の看板の事か?」「この地域…そりゃ、看板は何枚かあるだろう?」
「走る馬の前方に見てないのにか?」「後ろを振り返った時にしか見てないのにか?」
ジャイロが振り返ると…
ドッ ドッ ドッ
またもや後ろに迫っていた「熊の看板」。それをジョニィがタスクで狙撃して3つに割る!
看板は水たまりの中に落ちる。ジャイロとジョニィは辺りを警戒する。
「看板が追い付いて来ていたッ!!」
「ああッ!」
ジャイロが水たまりに落ちた看板に鉄球を投げつける。
「確かに『追い付いて来ていた』……」「だが!それがいったい……」
「それがだから何だっていうんだ?看板が近づいたから何なんだ?」
何か追撃があるわけでもない。
「とはいえだが何か異様なのは確かだ…」
「何かわからないが……さっきから周囲がどこか変なムードだ」
「何かがおかしい。だがいったい何が…?」
ジャイロの言葉にジョニィが応える。
「『遺体』は最後、独り占めのはず。だが大統領の他に新しい敵がいるのか?」「やはりたとえばあの列車の『機関士』!!」
「ああ…そうだな…。そういうふうに想定しといた方がいいだろう…少なくともあの列車には『機関士』がいる」
すると…看板が浮かぶ水たまりの中に奇怪な形の魚が現れる。
「おいッ!水たまりん中に何かいるぞッ!!うようよいるッ!」「下がれッ!下がれッ!」
バシャアァアッ 水たまりの中から奇怪魚が飛び出してくる!!
しかしジョニィが弾爪で、ジャイロが鉄球で迎撃する。しかしその中の1匹がジャイロの左親指に喰いつこうとするが、それも鉄球で叩き落とす。
かすかに噛まれたような跡が見られるが……。
「離れろッ!!下がれッ」「池の水たまりからも離れろッ!」
水たまりに鉄球をもう一擲投げ込む。
「『魚』だ!?クマの看板の下にいたのは川魚だッ!『襲って来た』ッ!」
「もっと下がれッ!行くぞッ!!列車を追うぞッ!!」
「いったいこれは!何なんだ!?何の魚だッ!?」
小さくない混乱が2人を覆う。
「わからないッ!」「だがこの場所に居るのはもっとマズイッ!ここで足止めをくらうのはなッ!!行くぞッ!」
「列車に追いつくんだッ!オレたちのターゲットは『ルーシー救出』だッ!」「大統領を倒すッ!!」
そこでジョニィが尋ねる。
「ジャイロッ!今!今の魚に噛まれなかったか?君を噛もうとしていたッ!!」
しばし自分の右手の親指を見るジャイロ。
「大丈夫だッ!!離れろッ!!」「「追いついてまず列車を止めようッ!!」
「どんなヤツか知らないが最初に『機関士』をたたくッ!!」
ドガラ ドガラ ドガラ… しばらく走らせたJ&Jは後ろを振り返り驚愕する。
あの「看板の熊」と再び目が合ったのだ!!
舞台は列車内部に移る。
ホット・パンツ(以後、H・Pと表記)も驚愕していた。ルーシーの変貌にである。
「何だこれは……」
「『ルーシー・スティール』……彼女自身が完全に『9部位』そろった『遺体』になったのか…呼吸はしている…」
その時、H・Pは周囲の違和感に気づく。
「……?何だ?」「何か…」
「今…何かが動いた…」
「Dioが窓から大統領を追って落下してどうなったんだ!?」
「殺ったのか?それとも負けたのか?でも『何か』がおかしい…」「急に…この列車の中……」
その違和感、不自然がハッキリと認知するH・P。
「か…家具が」「家具が寄って来ているッ!?」
「い…いやッ!違うッ!」
「家具だけじゃあない!!気のせいじゃあないッ!!あの『ドア』もあたしの方に寄って来ているッ」
家具が寄ってきているだけではなく、ワイン瓶とコップ、その周りにいた蜘蛛やら蠅やらが融合している。
するとドアから大統領が顔をのぞかせる・
「ヴァレンタインッ!!」
H・Pの右手が例の瓶にぶつかる。
「初めて出会う『能力』…か…」「この新しい『現象』…」
大統領が室内を見まわす。
「新しい『能力』……たとえば、わたしの新しい『部下』の『スタンド』能力』の現象だと思うか?」
「もしかしたらこの列車の『機関士』とかが本体の…」
H・Pが訝しがる。
「君の右手の『指』の事だ」
H・Pの右手に蜘蛛と蠅が侵入している。それどころか爪がめり込むように右手を移動している。
「何と!…それはわたしも今…初めて体験する『能力』だ…その『現象』は…」
驚く大統領。
「何だと…!!何なんだこれは!!!?」
「手の中に…あたしの…」「い…いつ!?手の中に…ク…クモが…移動していく…」
「いや、ク…クモだけじゃあない!!ハエも…!!あたしの手の爪まで!?」
「ハッ!!」
ガォン グワシャアアアン
D4Cの右パンチの奇襲をジャンプ一番でH・Pがかわす。その際、車窓をブチ破り枠に立つ。
「…今…何かが動き始めている…」
「今、起こり始めた…この現象は…誰の『能力』なのか?」
「前方にいるこの列車の機関士なのか?いや…違う」
「今…ここで何が起りかけているのか…?わたしにはわかりかけてきたぞ」
「まっ…窓ワクがッ!!」
H・Pの身体に木の破片やガラスが融合してくる。
「『土地』だッ!ジャイロッ!」
「追って来るのは熊の看板じゃあないッ!」
「『土地』そのものが追って来ているッ!!木も川も草も地面も!!」
「こっちに近づいて寄って来ているぞッ!!」
追って来る看板のカラクリに気づいたジョニィ。
「何だとォォォ!!か…体の中に『窓ワク』が入ったッ!移動して来るッ!」
「く…クモがッ!」「た…体内をし…心臓に向かっているのか!!」
「『肉スプレー』が効かない!!…はっ…早く外へ取り出さなければッ!!」
体内から聞こえた嫌な音と共に血を吐いて倒れるH・Pッ!!
「そ…そんな」「ガハッ」
「『物』が寄って来ている…」
大統領。
「『ソファ』も、『ドア』も、『外の風景』も」
「この『列車の車体そのもの』も…『窓ワクの大きさ』も……」
「この『ルーシー・スティール』を中心に集まって寄って来ている」
「理解したぞッ!!これは『遺体』が発現している能力だッ!!」
「つまりわたしの『味方』だッ!」
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