‘09 03月号
 #45 大統領が来る!B 


スポンジとスポンジが…重なって…
そのスキ間がそれのスキ間に入り込むように
『2つ』が…ひとつになって

「大統領が」「大統領が…」
「このオレがッ!!Dioがッ!!」
「『2人』!」
 大統領のスタンドに掴まり『隣の世界』に上半身だけ引き込まれたDio。
「『2人』!」「オレの胴体がッ…細切れのスポンジみたいになって崩れて行く」
「あと5〜6個 体にこの穴が開いたら!!」
「このままだとオレは切断されるッ!」
 Dioッ!絶体×絶命!!!
『ヴァレンタインだけが行き来できるんだッ!オレは『違う世界』に引きずり込まれたッ!!』
『そっくりそのままの少しだけ『隣の違う世界』にッ!!』

「Dioッ!」
 しかしウェカピポも大統領のスタンド「D4C」のアッパーにより壁に叩きつけられてしまう!
「Dioォォォオオオオ」
「『同じ世界』に『同じ2人』が存在する事はどんな者だろうと出来ない……このわたしのスタンド能力以外はな…」
 Dioの身体の崩壊がますます進む。
うおおおおおおおおおおお
『ち…ちぎれ飛んでしまうぅぅ……!!』『2人いるヴァレンタインはひとり必ず『帰る』はずだッ!』
『どこから元の世界へ戻れるんだ…!?ヤツはどこからどんな方法で!?』
『は…早く…早く…来てくれ。ここが元とそのまま『そっくりの世界』というのなら』
『すぐ…そこまで…来てるはずなんだ』

 何を?何を待っているというのか?Dioの身体の崩壊はますます進んでいる。
ガラアァッ
 マンホールが横にずれる。するとDioの恐竜が3匹跳び出す。そしてさらに……

ダン

「ジョニィ・ジョースター――――ッ」
 最初の一発が大統領の喉を貫き、さらに次の一発が右手を貫き頭部をかする。
傷が癒えぬ痛々しい姿である。
「や…やったぞ…よく連れて来た…」
「恐竜ども…よく連れて来たぞ…瀕死のジョニィを…下水溝からよくぞ誘導して来たッ!」
 因果応報と言うべきか、先ほど自分が行ったように背後から不意打ちを食らった大統領。
「くっ」「うっ…そうだった……ジョニィは脚が…」
 やや意味不明な言葉を発し、初弾を喰らった時に落とした『遺体の左眼球』(なぜか隣にダイアモンドも落ちている)を拾う。
背中を見せて逃げる大統領にさらにジョニィの追撃弾が襲いかかる。

ボゴ  ボゴ  ボゴォ

 背中や後頭部に命中し民家のドアにしだれかかる。そしてドアに挟まれて再び開いた時…彼の眼からは生気が失われていた。
「倒したぞッ!やったッ!!ヴァレンタインをやったッ!!」
 喜ぶウェカピポ。だが…
「いや…違う」『やつは今『帰った』!落ちた眼球がどこにも無いッ!拾われているッ!』
『つまり撃たれてそこに倒れているのは…残ったこっち側のもうひとりの方だ!』
『ジョニィに撃たれたのはそいつだけで、あいつはひとり捨てたんだ…(『スポンジ』が分かれた)』
『元のヴァレンタインは眼球を持って無傷の世界へ今!帰ったんだ』
『あいつは自分を犠牲に出来る!自分を見捨ててこの『似たような別の世界』を行き来しているんだッ!』
『あいつが帰ったならこのオレも帰るのはきっと今しかないッ!今ッ!どうにかして帰らなくてはッ!』
 そして今までの大統領の動向を振り返るDio。
『『ドア』だッ!あのドアの所でヤツは帰ったッ!今まで全て…ヴァレンタインは何かにはさまっている!物と物の間にはさまって姿が出たり消えたりしているッ!』
「ヴァレンタインの体をオレが押さえこんだ時、オレの背中へつき抜けた。今、ドアにはさまってヤツは『帰った』んだッ!!」
「『何か』にはさまるんだ!!何か物質の間にはさまればきっと帰れるッ!!」
「くそッ!だがどうするッ!帰るのはこの今しかないッ!どうすれば!!」
 と言っている間に、立っていたDioの上半身と下半身が離れてしまう。
「ああっ!!」「うおおお!こっち側の世界のオレが死んだッ!

引っぱれ 両足を ウェカピポ

 下半身の世界のDioが拍車(靴のカカトについている小さな車輪)を使い文字を刻んだ。
「Dio。これは…」「何だ!?これは!?」
『Dioの脚が文字を!?ヤツはどこかで生きているのか!』

 上半身の世界のDioがウェカピポに手を伸ばす。
「頼む!ウェカピポ。こっちへ来てくれッ!!」
「来てくれ!!もう少しだ!近くへ…」
「ヤツの能力の『正体』がわかった!来てくれッ!頼む!」
「『正体』?」正体という言葉に反応するウェカピポ。
「そうだよ…ああ!どうやってここを脱出すればいいかわかった」
「来てくれ…お前に教える」
 その時、上半身だけとなって転がっていたこっちの世界のDioがウェカピポの足を掴む。
バランスを崩したウェカピポのネクタイを掴む違う世界のDio。
「悪いな…ウェカピポ…おまえのおかげだ……」
「これでヴァレンタインのこの能力の正体がおそらくわかる……」
「おまえと組めて良かったよ…おまえのおかげで…」
 力尽きたかのようにこっちの世界のDioの上半身が完全に崩壊する。
「…オレだけが理解する……」

ズン

 頭にかぶるようにウェカピポを担いで、彼ごと元の世界に戻るウェカピポ。
つまり、ウェカピポとウェカピポの間に挟まれたということであろう。
「やはりだぞ…戻れた……元の世界へッ!!」「そしてウェカピポがこっちへ来たッ!!」

ガアアー―ン

 ウェカピポとウェカピポが引き付け合ってぶつかり合う。
スポンジとスポンジが入り込む。しかしそれが許されるのは能力を持つ大統領だけ!!!
2人のウェカピポが崩壊を始める。
「感謝するよ…ウェカピポ、さようなら」
「おまえはこうするためにこの大陸に来たと考えろ」
 妹…ジャイロの父親…マジェント・マジェント…ジャイロ…ルーシー……
記憶と思い出が走馬灯のようにウェカピポの脳を走る。
ウェカピポ消滅…

 崩壊しかけていた身体も元の世界に帰ったせいか何事もなかったかのように無傷のものになっている。
Dioが大統領が帰ったと思われるドアの所に近づく。血の跡が続いている。
「くそ…奪われた……『遺体』は全て…ヴァレンタインのところに…」
「とはいえ『左眼球は』…『隣の世界』でも『一個』しかなかった――ヤツの手の中に『一個』だけ」
「似たような隣の世界なら…隣にもうひとつあるはずなのに…『左眼球』は『一個』だけだった」
「それは間違いない、確かな事」
「つまり…ヤツ――ヴァレンタイン大統領は――オレのいるこの世界と似たような『隣りの世界』を行ったり来たり出来る能力がある」
「しかも…」
「『隣りの世界』はひとつではなく個数はわからないが『いくつ並んで世界』があるんだ」
『だからもし、ヴァレンタインが攻撃などされ体に負傷などした場合…『入れ替わる』』
『『隣りの世界』の無事な自分をこっちへよこし負傷した自分を『隣りへ』捨てて『入れ替わっている』』
『だが――あの『眼球』だけは違った…あの『遺体』はきっと『隣り』の世界には存在しない』

『一個』だけだ

『『隣り』で破壊しながら死んでいったオレの体の中には…『左眼球』はどこにもなかった…』
『『遺体』はオレの今いる『この世界』のものたったひとつだけで替わりは存在しない』
『『隣り』のSBRレースは『遺体』じゃなくおそらくダイヤモンドか『何か』を集めるレース…(隣りのヴァレンタインはダイヤを地面に落としていた)』
『それだけあの『聖なる遺体』は特別で真に重要なもの』
『そしてどこの世にも存在しないたったひとつの奇跡なんだ』

この世界が『全ての基本』だ!!

『…という事は……『逆』に…ヴァレンタインの能力の弱点もきっとそこにある』
『『この世界』が『全ての基本』だという所に……』
『いくつか今の予想した事を試したあとヤツをたたく』『『遺体』(左眼球)は全て奪われたがオレを殺さなかった事はヤツの決断ミスだ!』
『後悔させてやるぞ………!』
『勝利の風はこのDioの背後から追って吹いている…』


 ジョニィが現れて消えたマンホール、血で濡れているそこに屈む男が一人。
「ジョニィだ…」
「オレが今、追うのは大統領やDioじゃねえ」
ジョニィが『何か』を見た
 ジャイロが大統領とDioとの三つ巴を制するためのキーパーソンであるジョニィを追うことを決意!
ジャイロは大統領の謎を解き、Dioにも勝利することができるのか!?刮目せよ!!


今月のめい言

 「ジョニィだ……
 オレが今 追うのは」

○いよいよ全貌が見えてきた大統領のスタンド能力Dirty Deeds Done Dirt Cheap(略してD4C)」

○まず挙げるべきなのは「隣りの世界に行き来できる」ことです。Dioが観察した結果、物質と物質に挟まれると「行き来」できるらしい。読み返すと、そうなのかな?と思ってしまうがまぁ後々に分析していきましょう。自分が「行き来」するついでに他人を引きずりこむこともでき、同一人物どうしが邂合すると両者の身体が崩壊して消滅してしまう現象が起きてしまいます。

○しかし大統領はその現象が起きないどころか、大統領どうしが融合して行動を共にしたり離れて連携をとったりします。しかも、大統領が致命傷を負っても「隣りの世界の大統領と入れ替わって」元の世界の大統領が無傷となって現れます。

○Dioが言うところの「全ての基本の世界(以後、基本世界と表記)」。普通、パラレル・ワールドというのはどの世界であろうと「等価」です。多少の違いがあるだけでその存在は等しいはずです。しかし、大統領(たち)は「隣りの世界」の大統領が死んだことになっても「基本世界」の大統領を生かそうとする。何故か?

○つまり「等価」ではなくなったのです。「基本世界」が「一番に価値のある世界」となったからに他ならない。なぜ価値の差が出来たのか…「隣りの世界」が幾つあるのかは知らないが何億何兆という確率で「等価」を崩す奇跡のアイテムが現れた、それが『遺体』です。おそらく「基本世界」の大統領が『遺体の心臓』を身につけてスタンドを発現したために幾つかの「隣りの世界」の大統領もスタンドを身につけたのでしょう。だから「基本世界」での大統領の存在を「隣りの世界」の大統領たちがバックアップするのでしょう。

○そういえば、「破壊魔定光」という漫画では、主人公である定光が「予知能力」を身に付けたため他の平行世界が崩壊及び消滅の危機に陥ってしまったため、他の平行世界の定光が主人公の定光を殺害しようとする…という物語でした。これも何億何兆の確率で平行世界の等価性が崩れた例です。

酷薄なりッ!Dio!!前号の感想で書いた「生き延びる力」をまさに実行してしまうとは!ついに故郷の土を踏めず組んでいたはずのDioの策謀で消滅してしまったウェカピポには涙を禁じえない!!

○これからの展開を予想すると、ジャイロがジョニィと合流して事の始終を承知したJ&Jは大統領討伐に向かう。そこで渋々というか成り行き上、Dioとの共闘で大統領を倒し、その後J&JとDioが決着をつける…という流れと予想。

○D4C攻略の鍵とは何であろうか?1月号を見る限り融合している大統領は3人、今月号で1人倒されたということは残された猶予は1回。こうなったら、攻めて攻めて攻めるしかないのではないでしょうか。とはいえ、「隣りの世界」に逃げ込まれたらどう対処すべきかは思案のしどころです。

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