‘08 12月号
 #43 大統領が来る! 

 独立宣言庁舎の出入口、警備兵に変装したDioの目の前を大統領が単独で歩いてくる。
敬礼をして帽子を目深に被っているDioに気づいたのか気付いていないのか、一瞥する大統領。
その時、奥の廊下を担架に乗せられたルーシーが運ばれていくのが見える。
『あれはッ!ルーシー・スティールだッ!』
『すでに『正体』がバレているぞッ!!しかも『何があった』ッ!?』
 しばし考え込むDioに他の2人組の警備兵が話しかける。
「おまえッ!!外の持ち場を離れてそこで何をしているッ!!」
 ふと気付くと、大統領の姿はすでになかった。
「良く聞けッ!警備の指示に追加命令がある!!この3人の男が単独もしくは複数で庁舎に近づき大統領暗殺の可能性がある」
射殺許可が出た!写真の顔をしっかり覚えろ!!」
 写真はジャイロジョニィそしてDio。Dioは写真を見るふりをしつつ、嗅覚により大統領の居場所を探る。
『何だと!?……大統領のヤツが警備もつけずひとりで外にでているぞ。林を抜け市街地の方へ行く……!?』
「ムッ!!こいつ知らない顔だぞ!何者だッ!?警備兵じゃあないなッ!」
ドガンッ
「保護色か?ランプは好きか?明かりはつかないという意味だが」
 騒ぎそうになった2人の警備兵を左手の一振りで黙らせ恐竜化させる。しかも保護色どころかランプ・スタンドに擬態させるという新能力である。
「まずいな……ヴァレンタインのヤツ、何をする気だ?何かまずい!」

 独立宣言庁舎の外に出し、刹那の早着替えにより元の服装に戻る。
『正体がバレて『ルーシー・スティール』が気を失っていた、一体『何が』あった!?』
『しかも『『遺体』はここにある。オレの『左眼球』以外すでにそろっていてこの庁舎のどこかにあるようだ…。大統領は何の為に外へ出たのか?』
『『何が』あいつにせまっていてそれに決着をつけようとしている…『何か』あいつに先手を打たれる気がする…』
『すぐにでもあいつを暗殺しないと…何か『重大な』事で先を越されるッ!』
『とはいえ――ヴァレンタインも『スタンド使い』!そして能力は謎――』
 愛馬シルヴァー・バレットの元に戻るDio。
『オレの方からうかつに攻撃を仕掛けるのはリスクが大きすぎる…大統領の能力をまず見てからだ…』
『そうだ、『いい手』があるぞ…』
 頭の上の電球がピカッと閃いた感じのDio。
『ウェカピポのやつがオレを尾行していたな。あいつを利用しよう…』
パカラン パカラン と馬を歩かせるDio。途中でディスコとすれ違う。
『大統領が前方に潜んでいる…。あの国旗の先…建物の角を曲がった陰に…』『後方はウェカピポ』
 そして角を曲がり、ウェカピポの死角に入ったとたんに…
ドドドドドドド
 愛馬もろとも恐竜化したDioが屋根の上に跳び上がる。
『これで大統領とウェカピポがバッタリはち合わせだ。何かが起きる…それを見物させてもらう』
 そして屋根の上から角の先、大統領がいるであろう場所をのぞき込む…が、そこには拳銃を構えたウェカピポが今にも角を曲がろうとしていた。
「!?」「あれ?……ウェカピポ!?」
 するとウェカピポがDioに銃口を向ける。

   ガアアア

 顔面に来た銃弾を恐竜の反射神経で避けるDio。
「何ッ!?な…何だ!?こいつッ!」
 屋根から飛び降り逆さの体勢で背中からウェカピポの首を掴む。
そして噛みつきを慣行しようとするが、『衛星』が飛翔しDioを襲う。
「こ!これはッ!くそっ!!ウェカピポ!!『左半身失調』…まずいッ!」
 同体で倒れこんだウェカピポの手から拳銃をもぎとり、逆に銃撃するDio。4発の弾丸がウェカピポに命中する。
アメリカ国旗がDioの上に落ちてくる。その時、角に何者かが近づいてくる足音に気付くDio。その人物を見たDioは驚愕する。
 ウェカピポ!それでは今、銃撃した者は!?
「き、きさま…。よ…よくも」
 Dioに怒りの目を向ける人物。
「な…何だ!?ジョ、ジョニィ!?……ジョースター。このオレが……!?」
「一体何だッ!?何が起こった!?」
 その時、少年たちに姿を目撃されるDio。
「今のは本物のジョニィか!?あいつ、脚が動くのか…」「オレは夢でも見せられたのか!?」
 カチッ カチッ 拳銃は弾切れとなる。
『いや『臭い』だ』『いるぞ…大統領の『臭い』がするぞ…。あいつが近くにいるッ!『確か』に!』
 拳銃を投げ出し屋根の上に跳び上がるDio。

『くそッ!近くにいるッ!確かに大統領ヴァレンタインの臭いだ』
『さっき庁舎で護衛兵のオレを知っててワザとオレを誘い込んだな』
『………』『ジョニィをオレに殺させるためにオレを誘い込んだというわけか……!!(それだけじゃあないような気がするが)』
『だがほんの少しだが今のでヴァレンタインの『能力の正体』……』
『何かわかりかけて来たぞ…』『おそらくきっとそうだ確実に『正体』をつかんだら仕留めてやる…』
 シュンッ! Dioが愛馬もろとも再び地上に降り立つ。ウェカピポの背後。
「ジョニィ・ジョースターは生きている方がふさわしい」「死なない程度だが…」
「なあ…そうだろウェカピポ」
 再びあの場面が展開された。
「黙っていたなDio。マジェントのヤツがいきていた事を…」
「君とマジェントは仲が良いと思っていた。…なぁウェカピポ、君に言っておきたい事があるからここへ来た」
「で」「オレが今、ジョニィを銃撃した所を君は目撃したか?」
 周囲を警戒するDio。嗅覚でも探査する。
「何…?」
「よく聞け…時間が迫っている。オレははっきりと知っておきたい」
「オレはさっき『確か』にジョニィを銃撃した!そしてジョニィは排水溝へ逃れた!だが『犯人』はオレじゃあない」
「おまえがさっきあの場所で『何を目撃したのか』聞いておきたい!」
 自分の体験を話すDio。
「………」「おまえが今言ってる事が何なのか…?理解できない」
 同じような体験をウェカピポもしている。
「いいか…ウザイ態度はもうやめとけ、ウェカピポ!」
「おまえはもうこの国と中立だとかそんな事言ってられる時じゃあないんだからな…おまえも殺される!」
ジョニィを撃った『犯人』は大統領だ。それはヤツの『臭い』でハッキリとわかる」
「確実に知りたいのはヤツの『能力』の正体だ!!」
「言ってる意味がわかったな!?ウェカピポ」
 そしてDioは小さな恐竜を数匹生み出した。
「いるぞ…。今ヤツがここに近づいて来ている…」
 恐竜を放つDio。
「大統領が……?まさか、どこだ?どこにいる?」
 大統領自ら出張るとは考えていなかったウェカピポが疑問を呈す。
「今、恐竜どもが見つけてやるよ。あいつは『透明人間』なのかもな」
「ヴァレンタインの目的はオレの『左眼球』だ。そして同時に全ての『後始末』」
「ヤツはこのフィラデルフィアで決着をつけるつもりだ…オレたちを皆殺しにしてな」
「まさか!そろったのか?……遺体が…すでに…」「おまえさっきオレを罠にはめようとしたな……!!あの場所でオレを誘い込んだな!!」

「そんな事、今 ウダウダ言ってる時か?」
「大統領はなぜ今、ここへ近づいて来ている?」
「オレたちを相手にしても勝てると『自信』があるからだ!」
「あいつは決断が早い!今すぐ2人で組まなきゃおまえもやられるぞ!」
「必要なのは能力の『正体』だ!!さっき何を見たのか早く言えッ!ウェカピポ」
 その時、Dioの放った恐竜のうちの2匹が八つ裂きにされて表通りに投げ出される。
「何だ!?Dio?今、おまえの『恐竜』に何が起こった?」
「おいッ!Dio!?答えろッ!」
 しばし呆然とするDio。
「見たマンマだ!恐竜が2匹やられた!!」
「恐竜は確実に『臭い』を探知しているッ!あの通行人、変装しているのか!?」
「まさかあれが大統領…!?やつの『正体』は変身能力か?」
 しかしまたも恐竜が斬殺される。
「また一匹やられた!建物のすき間だ……あそこにいる!あの通行人は無関係だ」
「近づいて来てる…」「予想よりヤツはずっと近くにいるぞ」
「恐竜ども!ビルのスキ間だッ!」「ビルのスキ間を攻撃しろッ!!」
 またもや小さな恐竜を3匹創りだし放つDio。今度は有線タイプである。

「Dio」「さっきのおまえは自分がジョニィを銃撃したとそう言うのか!?」
「オレにはそれが何を言っているのかまったく理解できなかった」
「ジョニィを撃ったのはこのオレだッ!」
「それが『目撃』した事ッ!!撃つつもりはなかったのにオレはそうせざるを得なかったッ!オレはおまえにハメられたと思ったッ!」
 食い違う証言。
「犯人は『大統領』だ」「だが」
「ジョニィを撃ったのは『オレ』なのか?それとも『おまえ』なのか?」
「ヤツはオレたちに『何を』した?ヤツの正体がわかるのか?」
 その時  ガシィ ガシィ  恐竜が大統領のスタンドの右手左手に捕まる。
「くそっ!!今度は2匹が捕まったッ!殺されずに引っ張られて行く!!どこだ!?」
「どこへ引っぱられて行く!?」
「『臭い』は確かにヤツのだ」「だが離れる!!距離だけで恐竜の正確な位置がどこか?わからなくなる!!」
 有線は恐竜の位置をしるためだったようであるが、それも通用せず位置を見失いかける。
「ウェカピポ、オレと組むのかッ!!?どうするか早く決めろッ!」
「2人でやらなくてはこのままだと攻撃をくらうぞッ!!」
ドン ズバァ  掴んだ恐竜を再び斬殺する大統領のスタンド。その肉片がDioとウェカピポに降り注ぐ。
『『上』だ!頭上を取られた…この頭上のすぐ上にすでに移動して来てるッ!!』
『く…くそっ!オレの恐竜の防御探知網をコケにしてここまで近づいて来るとは…』
 頭上を仰ぎ見るDio。一息遅れて振り返るウェカピポ。

ドバアアア   グオオオオ
 ついに大統領がその姿を現し、スタンドがその右拳をDioに振り下ろす。

    ドグワシャアッ

 しかし咄嗟に投げたウェカピポの鉄球が本体・大統領の顔面に直撃するッ!!
しかししかし、大統領の顔面に大きな穴があきウェカピポの鉄球をいなしてしまう。
「何ィー―…しかし出たぜ……」
 これはDioの強がりか?それとも何かを見抜いたのか?次号を刮目せよ!!!


今月のめい言

「確実に知りたいのは
 ヤツの『能力』の正体だ」


○不可思議な現象を伴いヴァレンタイン大統領&彼のスタンド「ジェネシス(仮)」がヒタヒタと近寄って来る。Dioが自信を持っていた「恐竜の防御探知網」も易々と突破。探知網の内容としては、スバシッコイ小恐竜が大統領を見かけたらDioの元へ走って知らせるという単純なものであろうが、その恐竜にも気付かれることなく逆に斬殺するという隠密性も高い。しかもただの隠密行動ではなく、より直接的に情報を得るために有線結合している恐竜もアッサリと捕獲され、しかも「距離はわかるが位置がわからない」というチンプンカンな結果となる。

○ウェカピポの投げた鉄球を顔面に穴を空けていなした。その他、今までに出た現象としては地面に潜る、ルーシーから受けた致命傷の傷が治る、所有物に触れると持主の行動が読める…等と多種の能力を持つ節操がないようなスタンドにみえます。これをまとめるキーワード(題目)というものは果たしてあるのでしょうか?

○とりあえず大統領はおいといて、今号でわかったDioとウェカピポの行動をまとめてみます。

ジャイロ&ジョニィ ウェカピポ Dio
15:59 ジャイロ、Dioの愛馬の糞を確認
16:05   J&Jの姿を陰から見つめる 独立宣言庁舎に侵入
大統領と遭遇
ジャイロとジョニィが別れる Dioを尾行開始
ディスコとすれ違う
ディスコとすれ違う
Dioを見失う 屋根の上でウェカピポの銃撃を受ける
ジョニィを撃ったことになる
ディスコと大統領に挟まれる
ディスコを倒す
何者かに襲われる
ジョニィを撃ったことになる
Dioと遭遇 ウェカピポと遭遇
公園にいる人に聞き込み 大統領の襲撃を受ける


○ここで疑問に思うことを挙げる。まず1つは拳銃である。何故に拳銃でジョニィを攻撃したのか?拳銃が何かの「鍵」になっているのだろうか?また、Dioが撃ち尽くしたはずの拳銃をウェカピポが拾った時は弾丸が装填されていた。この齟齬(そご)は何だろう?もう1つは、ジョニィを撃ったのが大統領だとしたらではジョニィが直前に目撃したジャイロに迫る大統領はどういうことなのか?

○再びジェネシス(仮)の能力に挑んでみる。上記の後者の疑問を単純に考えると、ジェネシス(仮)には瞬間移動能力も加わるのでなかろうか?すべての現象を説明するには「大統領は複数人いる」と考えると楽なのですが、やはりそんなワケがない!もはやここまで節操のない能力はこちらもザックリと大胆に予想しなくてはなりません。

○ジャネシス(仮)の能力は「平行世界(パラレル・ワールド)を操る」というもの。現世から平行世界に移ることで隠密的に行動したり、瞬間移動的にふるまう。平行世界の人物を現世の人物と戦わせたり、平行世界のジョニィを銃撃させたり…。

○このエピソードは現象もそうなのですが、地形がわかりにくいかもしれません。先月の追記で「ウェカピポは空間を飛ばされている」という意味なことを書いていましたが、今号も含めて改めて地図を描いてみて「あぁそういうことか」と理解したりしました。来月号かコミックでは地図の挿入があると有難いです。

○穴だらけの予想をしてみましたが、逆に言えばこれからの真相が楽しみということです。ではまた!!

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