「その『瓶の中の』液体……」「マス目で攻撃……そして防御」
「よく考えると……かなり『無敵』な……」
傷つき息を荒げるジャイロ。
「『スタンド能力』なんじゃあ…ねーのか…てめーの!」
「『チョコレイト・ディスコ』」
「オレのこの能力の『スタンド名』だ。『チョコレイト・ディスコ』。ただのそれしか言わない、以上で終わりだ」
おもむろにもう1本の劇薬ビンを取り出す髪留めの男。
「オレのセリフは終わり…君に解説してやる事柄はな……」
パリィー――ンッ 2本のビンをぶつけ合わせて中の液体をぶちまける。
ジャイロが即横っ跳び、そして両手の鉄球を投げつけるッ!!
ピ! ピ!
だが予想通りに指先だけの動作の『チョコレイト・ディスコ』に対抗できるわけもなく、劇薬と鉄球がジャイロの上空から降り注ぎ、彼の身体を削り痛めつけてしまう。
前のめりに倒れるジャイロ。
「ン!!」
しかしよく見るとジャイロには全く当たっていない。
「?」『(あれ)?』
困惑する髪留めの男だが、またもや2本の劇薬ビンを割ってボタンを押すが…やはりジャイロには命中しない。
今度はゆっくりと近づくジャイロ。
困惑に困惑を重ねる髪留めの男。先ほど見せた五寸釘をぶちまけてボタンを押すも三度(みたび)ジャイロの後方に落下する!
「時々つくづく思うんだ。御先祖様ありがとう(グラッチェ)ってね」
「オレの『鉄球』の回転はツェペリ一族が何世代にも渡って研究して来た技術」
「さっき2発同時に投擲した鉄球の回転がまわりの空気を集めてその密度で光線を屈折させている」
何と人為的に蜃気楼をつくりだしていると言うジャイロ。
「ようするにだ、オレとおまえさんの間には空気の固まりで『レンズ』が出来あがっているって事で…実際の位置とおまえさんが目で認識している位置はかなりズレていると考えていいぜ」
「だからおまえさんの能力は今、命中しない」
猛烈に息を乱し始める髪留めの男。懐から拳銃を抜いてジャイロに向ける。
ジャイロも右手の鉄球を前に突き出す。
「追いつめられたら『銃』かよ。そーゆーのは捨てた方がいいな」
「ガールフレンドに言ってやるのが最適な言葉だが…この『レンズ』、自分が思っているよりもお互いの距離は実際はずっと近いみたいだぜ」
確かに先ほどから髪留めの男の攻撃はジャイロの後方に外れている。
もはやジャイロの方が優勢な立場となり、その圧力に押されるように拳銃の引き金を引く髪留めの男。
すると鉄球があらぬ距離感から飛んできて腕の付け根に命中する。クキッ という音がしたから肩が外れたのかもしれない。
右腕がガクンと力無く垂れて自分の右足甲を撃ち抜いてしまう。
「うあああああああああああ」
その隙にジャイロが背後に回って左腕を封じて羽交い締めにとる。
「絶叫すんのは暇な時、病院でゆっくりやれッ!今はしゃべってもらうぜッ!!ジョニィを襲ったのは何者だ!?」
「早く言えッ!そいつの名前を言えッ!!」
再び髪留めの男からマス目が出てくる。
「くそっ!またマス目だ!」「スタンド能力を使えるうちはこいつやっぱりしゃべるつもりなしかよッ!!」
「もしくはこいつ自身何も知らねーかッ!!」
鉄球で後頭部を打ち意識を奪うジャイロ。気を失っている髪留めの男を引きずって物陰に隠すジャイロ。
何か名前が下に出ている。
スタンド名 ― 『チョコレイト・ディスコ』
名前 ― 『ディスコ』 (再起不能) |
「くそっ!血しぶきから見てジョニィへの背後からの銃撃だ。そしてジョニィは排水口から中へ逃れたみたいだ」
「だがこの出血……オレがいるのにどこまで逃げた?手当てが必要だというのに……まさか致命傷なのでは…?」
『それとも…まだ追跡されていてそいつから逃げている?『何者』かがジョニィの背後から…オレらの馬の向こう側から近づいて撃った…。今の敵のように正々堂々とではなく陰からコソコソと…』
チラリと大統領が身を隠した木を一瞥するジャイロ。もう大統領はいないようだ。
「おい待ってくれッ!おまえらオレを怖がるなッ!戻って来てくれ!」
公園内を走り回っていた子どもたちに声を掛けるジャイロ。
「今、友達が死にかけているッ!『犯人』を知りたいだけだッ!あの壁のところで何が起こったのかをッ!」
「この角度からなら目撃したはずだ!!教えてくれッ!!」
「犯人はこいつかァッ!!?」
Dioの写真を見せるジャイロ。
「犯人をつきとめないと危険がおよぶんだ!写真を見てくれ!」
「オレの友達が撃たれたのを見たんだろう!?心当たりがあるッ!やったのはこいつかッ!?」
その写真を手にとって見た3人の少年たちがコクリと頷く。
「……………」
「ありがとう。この写真の男が…銃で背後から馬に乗ってたオレの友人を撃ったんだな…」
怒りを抑えたのか…?それとも沸点を越えると逆に心は止水となるのか…?
礼を言って去るジャイロ……と、その時!
「違うわ!違う」「そうじゃなあい」
「そっちの男よ」「『下』よ!銃で撃ったのはそっち!」
思わず動きを止めるジャイロ。
「そっちの手じゃあない」「そんな男…見もしなかったわ」
「『下』!『右手』の方の写真よッ!今、壁のところで銃で撃って逃げた犯人は下の方の写真の男!!」
双子の少女(&赤ちゃん)。言われるままに下の方を見るとそこにはウェカピポの写真が!?
「おい、おまえら何言ってんだよォ〜〜〜」
「あとから来たヤツは引っ込んでろ!急にしゃべってんじゃあねーよ」
「あそこの角にいたのは馬術用ヘルメットをかぶったこっちの男さ!」
「こいつが撃った!なあっ、みんな間違いねーよな?」
「この女の子、目悪いんだよ」
「何よ!あんたたちこそ頭大丈夫?」
「待て!何だと!何言ってるちょっと待て!」
錯綜する情報にジャイロも混乱気味。
「待て!」「そこの女の子たちとおまえらとはどういう関係だ?友達か?」
「違うわ。知らないわこんな子たち。ねー」「ねー」
「ぼくらは遊んでただけ」
「あたしたちは弟の子守り」「犯人は右の男だってばッ!」
「だから待てって!よ…よしもう一回ちゃんと最初から聞くからな」「わからないなら『わからない』と言ってくれ…ハッキリさせたい」
「いいか『あそこで馬に乗ってたのはオレの友人だ…』それで『友達が背後から何者かに銃で撃たれた』」
「オレは犯人を知りたい。ここまではいいな?」
「犯人は何人いた?ひとりか?それともふたり組か?」
男の子チームは…
「ひとりいた」「ひとりだよ」「ひとり」
女の子チームは…
「あたり前よ。犯人はひとりよ」「単独犯!!他には見なかった!」
そこでジャイロがDioとウェカピポ、2枚の写真をかかげる。
「OK!いいだろう…それで『オレの友達を撃ったのは誰だ?』」
ザン!
女の子チームはウェカピポ、男の子チームはDioを指さす。
「ワー――ッ、何見てたのよッ!あんたたち!そんなヤツ見た事もない!」「似てもいないッ!年齢も違うッ!」
「おまえらこそッ!!ぼくはハッキリ見たッ!こっちだよッ!こいつが犯人だッ!」
「おまえら〜〜〜!!自分が何言ってるかわかっているのか!?」
「この女の子ウソつきだよ!この双子ウソついてらぁ〜〜〜ッ!!」
「フザけるなッ!!その犬おまえらのか?」「黙らせろッ!自分のペットの見分けもつかねーんじゃあねーのか!?」
犬も巻き込んでオオワラワ×オオワラワである。
思わず後ずさりしてしまうジャイロ。
このガキどもは何者だ?何を言っている?オレを惑わそうと仕組んでいるのか?
……いや…まさか……!!だが何のために……?
違う…この子供たちがウソを言っているとは思えない
この公園に後から来たのはオレたちで、子供たちは最初からここで遊んでいた…
『敵』がこの子供たちの中に潜むというのは理にかなっていない
…では『何が』起こっている |
『Dio』か…『ウェカピポ』か……
どちらかがジョニィのところにいたのは『確か』なようだ…
『Dio』が『ウェカピポ』の姿に『変装』した…という可能性は?
それも『違う』
変装したなら目撃証言がふたつに分かれない…どっちかの『姿』だ!
じゃあ幻覚でも見せられたのか
いいや…それもまた『違う』!幻覚でだますならオレに見せるはず…… |
「そこの人…大変な事が起こりましたな…」「だがその子供たちはおそらくハッキリ見ていない。わたしはハッキリ目撃した」
何と老画家が新たに目撃証言を語り出す。
「君の友達を銃撃したのは…こいつですよ」
おもむろにスケッチブックを取り出してジャイロに見せる。
「犯人はこいつだ。似顔絵ですが見たまま描きました」
驚愕するジャイロ。
「!!」「おいおいおいおいおい」
「何だよ…おい!急にまた何なんだ!?」「いつからそこにいる…!?お前は誰だ!?」
「近所に住んでる『絵描き』です。この公園でいつも絵を描いている。だからあそのこの壁のところはハッキリ見ていた」
「わたしのは記憶ではない。警察で証言してもいい。この似顔絵の男があなたの友人を撃ちました」
「何だよ!それヴァレンタイン大統領じゃあないかッ!」「大統領が独りでこんな公園に出てくるワケないだろッ!」
「おかしいだろッ!ぼくらの国の大統領を悪者にする気かッ!?」「何で大統領が外に独りでいて銃を撃つんだよッ!」
「夢でも見てたんじゃあねーのかッ!!」
「わたしは大統領とか特定の誰とか名前を言ってはいない!」「犯人を見たまま描いただけだ」
「これは似顔絵だ」
「じゃあヘタくそだッ!ぜんぜん似てもいないぜ!犯人は馬術用ヘルメットをかぶっていた男だからなッ!」
「わたしの絵は単なる事実だ!」
「いいえ!そいつでもヘルメットも違うわッ!犯人はもう一枚の写真の男よッ!」
何ィ〜〜〜ッ!
くそっ!何なんだ!!
こいつら…何かヤバイ事が起こっている……スタンド攻撃か?
既に理解不可能な『スタンド攻撃』が始まっていて……
『ジョニィ』は未知の『そいつ』に攻撃されたのか!?
もちろん『Dio』の仕業かもしれないし |
オレもさっき目撃したのも…くそッ!
あれは『ウェカピポ』だった……まさかだが
『ウェカピポ』がオレたちの馬のそばに確かにいた…… |
何が何だかさっぱりわからねーが、だが前向きに考えよう…良い面だけを
オレは『敵』スタンド使いをひとり倒した、ひとり減ったんだ…
そしてきっとジョニィはまだ生きている…
それはかなり良い面だ……このままいくぞ!
ジョニィを捜してそして『遺体』だ
何が起ころうと誰が敵だろうと…… |
バックショットの2人がいる。
街角で辺りをうかがうかのように立つ男と、後方で馬上からその男を眺めている男。
馬上の男はDio。街角の男はウェカピポである。
「ジョニィ・ジョースターは生きている方がふさわしい。死なない程度が……なぁ、ウェカピポ」
「黙ってたな……?Dio」「マジェントのヤツが……生きていた事を……」
「ヤツとは仲がいいと思ってた……」「とはいえ……これまでは予想通りじゃあないか?」
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