美しきギャロップ。落ち着いたたたずまいの街を2組の人馬が駆ける。
{トマス・ジェファーソン!ベンジャミン・フランクリンの故郷で合衆国で最も古いかつての首都!}
{そして‘76年には万国博覧会が開かれた最も新しい通り!続いてゆっくりと南の住宅地から入って来たのは…}
{『ジャイロ・ツェペリ』!!6着でのゴール!7着は『ジョニィ・ジョースター』!!}
{しかし2人ともかなり疲労している表情がうかがえます。ジャイロ・ツェペリが深くうなだれている。1着との差はおよそ45分遅れての到着!}
{このステージでは『賭け』の人気がbPだっただけに落胆の色濃いゴールだ!}
ベンジャミン・フランクリン・パークウェイ
フィラデルフィア・ペンシルバニア州
1890年12月28日 15時51分 |
7th.STAGEを完走したにも関わらず暗い雰囲気のJ&J。ジョニィが重い口を開く。
「もうぼくらには『手がかり』は何もない…。遺体は全て取られた…『脊椎の一部』も…『下半身』も全て…」
「この先の土地のどこかにある残りひとつの『頭部』にはぼくらはもうたどりつけない。どうすればいいんだ…ジャイロ…」
「…時間もない、これから先、ぼくはどうすれば…!?」
話し込んでいるJ&Jの背後の観客の中に怪しい3人組が居る。懐から拳銃を取り出しJ&Jに銃口をむけるッ!!
と思う間に、2人の手が撃ち抜かれる。撃ったのは最終型タスク!穴から左腕を出し狙撃したのだ。
残った1人も慌てて撃とうとするが、いつの間にか腰に接触していたジャイロの鉄球の効果により自らの口腔に銃口をつきつけてしまう。
軽く暗殺者をいなした後、再び話を始めるJ&J。
「しかも、ぼくらは今まで『遺体』を集めるためにこの大陸を走らされていたようなものだ。大統領はここからはぼくらを始末するだけのために攻撃して命を狙ってくる…」
「あのな、ジョニィ…」「命があってゴール出来たってだけでそれだけで儲けもんと思うべきだぜ」
「あの時、大統領はオレらにとどめを刺せなかったんだ…ゲティスバーグでおまえにケガさえ負わす事が出来なかった…」
「そういうのをチャンスと呼ぶべきだ。オレらはまだ見捨てられていない」
「見ろよ、幸運が舞い込んでいるぜ…あれを…レースの確定着順表をよォ…」
ジャイロの 視線の先には…
「Dioだ!嬉しいな…あのクソ野郎!!復活して来やがってるッ!!1位でッ!!」
「だとしたらヤツはまだ『左眼球部』を所持してるって事だ」
「だろ?」「どう思う?」
ピンチの後にチャンスあり…ということか!?
「突破口ってやつだろ。サンドマンの時の恨みもあるぜ」
「こっちからヤツをたたいて『左眼球部』を奪い取るッ!…『緑信号(GOシグナル)』はまだ点滅しているぜッ!」
8th.STAGE 『ボース・サイド・ナウ』
フィラデルフィア(ペンシルベニア州) → ニュージャージー(ニュージャージー州) 走行距離 約140q
予定日数 2日(そのまま9th.STAGE ニューヨークシティへ突入)
参加人数 52人 |
歓声より離れた路地で4頭立て場所が止まっている。後に明かされるが、1時間以上さかのぼっている。
「う」「うぅうく…」
「あれは『ルーシーだった』…どこからどうみてもわたしの愛するルーシー……。だがルーシー本人では決してない…」
「わたしにはわかる…何か危機がせまっている…死んだ事にして埋葬はしたが…あれは誰か違う女性」
ルーシーのほぼ全身が写っている写真を掴みながら苦悩するスティールし。
「だとしたら…死んだのは誰で…私のルーシーは今、どこにいる?」
『わたしのせいか?誰にも言えない。このスティール・ボール・ラン・レースはわたしの知らない所で『スタンド使い』という人間たちと大統領が関わっている……』
『その『スタンド』の中に『姿』や『顔』を似せられる『能力』があるとしたなら…』
『だが…なぜ…わたしじゃあなくわたしの『妻』に…!?ルーシーはただの何も知らない政治やレースになんか興味のない家庭の主婦だ。何なんだ?…何に巻き込まれている……?』
『う…どうか…どうか…無事でいてくれ…』
その時、大統領の写真が載っている新聞が目に入る。いや、正確には大統領の背後に写っていた大統領夫人に目が行く。
そしてあることが思い出される。
『シカゴの事実で、ルーシーに最後に会って別れたというのは……たしか『大統領夫人』。その後溺れた』
写真と新聞、2枚を綿密に比較したスティール氏は衝撃を受ける。
「まさかッ!まさかッ!これはッ!?」『何が……!?ルーシーに『何が』起こっているんだ?』
「スミません……ちょっといいスかァ?これ持ってもらっていいスか?」
急に話しかけてきた男。定規をスティール氏に差し出す。
その男、なんとマジェント・マジェントッ!!左顔面に縦に大きい傷跡が走っているのが痛々しい。
「飛行機がありゃあなぁあああ〜〜〜、よかったんだ。もっと傷を早く手当てできたんだ…」
「クソも凍る北国に2週間以上もとり残されずによォォ〜〜―」
「偏頭痛の後遺症が残っちまってるしハナ水もヨダレもダラダラだあぁ」
「あっスンません…定規は横向きで頼ンます…。そう…遠近感がいまいちつかめなくてね」
しかし何のためにマ・マはスティール氏の前に現れたのか?
「………誰だ?わたしに何か用か?」
「用?」「別に用なんか何もないスよぉ…」
「あんたはもう『用済み』だあぁ…2センチ左、この辺かね…」
馬車の扉の死角にあったマ・マの右手には拳銃が握られている。
ドシュッ
消音器(サイレンサー)がついているために銃声は響かないが、衝撃で不自然に馬車が揺れる。
そしてそれを目撃する人物がいた……ウェカピポッ!!
時はさらに遡る。
「ジャイロ…残念な事実だ……。『スティール夫人』はシカゴの河で事故で死んでいたよ。埋葬された死体もこの目で見て来た…彼女の護衛はもう無駄だった」
よくみれば、ウェカピポは鼻の下の口髭を剃っている。
「いや…それはH・P(ホット・パンツ)だ。そういう能力だ…何か裏がある」
「もっとよく調べてくれ。H・Pはルーシーの事は決してしゃべらないだろうが、ルーシーはきっと大統領のそばにいるはずだ」
ジャイロが真実を指し示す。
「わかった…だがオレは大統領は殺さない…スティール夫人は全力で護るが遺体を集めたりこの国とは闘わない」
「一度この国の下僕になった身だからな…それがオレ自身の掟だ」
「複雑な男だなウェカピポ」「だが頼む!」
「ルーシーは別人の顔をしているだろう。夫のスティール氏はもしかして気づくかもしれない。時間がヤバイッ!つきとめて救い出せ!」
再び時間は戻る。スティール氏の乗る馬車に近寄るウェカピポ。
「ミスター・スティール?スティール氏?」
しかし馬車の屋根の上に潜んだマ・マの銃口がウェカピポに向けられる。
「まさか…何だと…?」
撃たれて意識を失っているスティール氏を発見し、動揺するウェカピポ。
しかし馬の通常ではない嘶(いななき)きと、地面に写った影で敵の存在を感知する。
ドバッ ボグオォ
マ・マの銃撃がウェカピポの左肩を傷つけるが、屋根ごとぶち抜いたウェカピポの鉄球もマ・マを襲う。
「何だと…バカな!今のは……!?まさかッ…」
この日2回目の動揺!
『けっ!ウェカピポ!スティールを見張ってりゃあ、あんたに会えると思っていたが、だがわざと少しはずして撃ってやったぜ!!』
『年上だから敬意を表して手足をもぎってからにしてやるッ!あんただけにはこの世の地獄の…』
『もっともうすら寒いその底の底をなめさせてからゆっくりと殺してやるからなぁ〜〜〜先輩ちゃんよォ〜〜〜』
つーか…おまえには無理だろう、マジェント・マジェント…と、多くの人が思ったはず。
しかし防御に関しては専門である、ウェカピポの視線を察して衛星の存在を感知して自らのスタンド「20th.C・ボーイ」を身に纏うッ!
衛星群がマ・マに命中するもその衝撃は足元へと逃げていく。
ウェカピポが屋根に駆け上がり、隠し持ったナイフで攻撃するも通じず。もう1発の鉄球を頭部にぶち込むも通じない。
そしてこの騒動に馬が興奮して、馬車が疾走を始める。
「どういう事だ?『マジェント』だ。あの氷の海峡で生きていたとは…こいつの『スタンド』はこの防御をマジェント自身が解除した瞬間でないと殺せない…」
「だが、こいつここで何をしている?何故、マジェントのような下っ端のクズが単独でスティール氏を襲った?」
「まさかこいつ」「ルーシー・スティールを探しているのか!?あの氷の海峡で…ジャイロとオレの話を聞いていて…『金』と『復讐』のために…」
マ・マの身代を探るウェカピポ。するとポケットから、スティール氏から奪ったルーシーと大統領夫人の写真を見つける。
「スティール氏ッ!ミスター・スティールッ!聞こえるかッ!わたしは敵ではないッ!」
「その傷は急所をはずれているッ!」「あなたを死なせるわけにはいかないッ!気をしっかり持ってもらうぞッ!」
すると4組の騎馬隊が馬車にライフル銃を向けて近づいてくる。
「そこのおまえ!スティール氏の馬車で何しているッ!?直ちに馬車を止めなさいッ!」
「これより先は政府公邸の最優先護衛区域だ。馬車を止めないと我々はおまえを射殺する!」
騎馬警備隊がただならぬ状態で警告を発する。
ウェカピポは考える。
『このまま向かうと『フィラデルフィア独立宣言広場(インデペンデンス・スクウェア)』。あの市庁舎には現在、ヴァレンタイン大統領がいる!』
『このマジェントはこの場で始末しなくてはならない。ルーシー・スティールの正体がこいつにバレている』
2枚の写真をビリビリに破り捨てるウェカピポ。
『『ルーシー』は今『大統領夫人(ファースト・レディー)』だ』
騎馬隊の頭上を衛星が飛ぶ。「護衛官式鉄球術(通称 レッキング・ボール)」の第三撃「左側失調」が発動して騎馬隊は馬車、マジェントとウェカピポを見失ってしまう。
12月28日 14時45分
ジャイロ・ツェペリ、ジョニィ・ジョースターのゴール1時間前 |
場所は変わって大統領公邸。
優雅に…というか、もはや余裕で余技のヴァイオリンを奏でてる。
「久しぶりに会えたね。こうして2人きりでお茶を飲んだり楽器を弾いたりしてくつろげるのも…シカゴ以来なのかな」
「スティール・ボール・ランと共にあった激務もこの地でもう終わりだ」
グイッとスカーレット夫人(実はルーシー)を引き寄せる大統領。
「だが君は…『何か』…今日の君は以前と『どこか』違う」
「譜面のめくり方がスゴくよくなった…前よりも。めくるタイミングがわたしの奏でる呼吸とピッタリだった…何か…スばらしく感覚が絶妙で良かった」
ルーシーを膝の上に載せ、腰に手を触れている大統領。
『これ以上…このあたしの体に触れているこの『手』が…上へ登って来たなら…そしてこの人は大統領…だけどもし…キスをしてきたなら…あたしは舌を噛み切って死ぬわ…。このまま『正体』がバレても噛み切って死ぬ』
「……いつもと同じです。きっと久しぶりだからでしょう。とても楽しい演奏でした、大統領…閣下」
やや訝しげな顔を浮かべる大統領。
「なにかカワイイ。スゴクだ…何か違うな。仕草がすごくいい」
呑気な大統領を尻目にルーシーのポケットから何かが音を立てて落ち、転がっていく。
『遺体の右目』ッ!!
思わず動揺を顔に出してしまうルーシー。それに気づいた大統領がルーシーの視線の先を追おうとした刹那…
ガシィ 大統領の顔を両手で挟んで視線の移動を阻む!
『が…『眼球』…落ちた…ひとりでに…ポケットから…なぜ…』
『このフィラデルフィアでもう終わる?まさか!『遺体』が……!?』
『他の『遺体』がこの部屋の近くにあるのでは!?『眼球』が反応している。大統領は…遺体を全て回収したッ!』
『遺体の右眼球』がたどりついた扉の向こうには『遺体の身体』が横たわっている。レース同様に『遺体』探しも佳境を迎えている。
ジャイロ、ジョニィ、ルーシーに逆転の道は拓かれるのか!?刮目せよッ!!
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