{死因は川に転落した際の衝撃による……}
「落ち着いてくださいッ!スティール様」「どうか!どうか!落ち着いてください」
「うわあああああああああ」
{……頭部への挫傷と思われますッ!}
「うっうわあああああ」
「なぜだッ!!図書館から帰ると言ったのになぜこんな場所に!!」
「ルーシー、うわああああああぁ」
衝撃の展開。ルーシー死亡…だが確かルーシーは……。
「しっかりしてくださいッ!どうかッ!ここへ馬車をッ!早くッ!スティール様をお連れしろー――ッ」
4週間前――
シカゴ郊外南―ミシガン湖畔
フォックス・リバー沿い |
「!」
混乱する中でスティール氏はあることに気付く。
「ルーシー……じゃあ…」『ない』
『あれはルーシーと違う。わたしにはわかる……どういう事だ……?』
『顔はどうみてもルーシー…なのに…『誰だ』?……あれは!?』
一応振り返ってみましょう。大統領から『遺体』を奪うために官邸へ侵入したルーシーは、大統領の『遺体』を奪うことに成功するが脱出不可能になってしまう。ホット・パンツの能力を使い、不可抗力で死亡した大統領夫人になりかわって以後にいたるのである。
――7th.STAGE――
12日目
フィラデルフィアより西へ約145km
ゲティスバーグ |
品物のカタログをめくるジョニィ。欲しい物に丸をつけている。
「ジャイロ…何か欲しいものとかあるかい?」
「カタログで注文しておくと次とか、そのまた次の町で品物受け取れるぞッ!」
「ゴルフセットとか天体望遠鏡もあるしオマルまであるぞ。何でもある」
長い長いレースの1夜。火を焚いて休憩をしている。焼いていた鳥の肉にナイフをつきたてるジョニィ、カタログにもナイフの欄に○をつけている。
「文明だね。カード5枚ちょうだい」
カードゲーム…恐らくポーカーだろう。チップまで使用している。
「人のことさんざ待たしといて決断が5枚かよ!」
「カタログに『車軸油』とかあるか?この間買ったキズ軟膏は『ブタの油(ラード)』が入っていたから虫が寄って来る。あっち塗ったほうがマシだ」
その時、ジャイロの目がクマちゃんのぬいぐるみをとらえる。今まで一緒に旅して来たクマちゃんはもうボロボロ!
ジャイロはクマちゃん(女の子)に○をつける。……またかよッ!?
「ジャイロ見ろッ!!」
草原を疾駆する1組の人馬。
「『ホット・パンツ』だッ!」
ジョニィより双眼鏡を受け取り覗きこむジャイロ。
「あの野郎〜〜、下痢したニワトリみてーに急いでるぞ……。あいつもうレースは関係ねえのに…」
「しかもこのオレらのキャンプにも気付いてねえみてーだ。まるで何かから逃げてるみてーに急いでいるぜ」
「よし!追うぞッ!」ヴァルキリーもスクランブルだ!「火消して荷物をまとめろッ!」
「あのクソ野郎から持ってかれた『遺体』を取り戻すんだッ!!」
尾行をするJ&J。ホット・パンツがとある町に入るのを見る。
「どっち行きやがった!!?あいつッ!あんなに急いでこの町に何の様だ!?どこで何しようとしている!?オレらの追跡に気づきやがったか!?」
「いや…それはまだみたいだ」
とある家の庭に無造作にホット・パンツの愛馬―ゲッツ・アップが繋いである。
「なあジャイロ…」「もし追いつめたら『ホット・パンツ』をどうするつもりだ?」
「ブチのめして……そしてまたブチのめすッ!!」「あいつは誰じゃあないがヤツの真の狙いをしゃべらせる!ハッキリさせるんだ!」
「『遺体』が何者のもので、ヤツがそれらを集めて何がしたいのかをな…」
ハンドサインにより二手に分かれるJ&J。何故か脚の悪いジョニィが高い窓から侵入という役目。
そしてジャイロは正面の扉を蹴破って侵入する。
中は雑多なガラクタが散らかっており、そこには1人の修道女がいる。
「この中に男が入って来たはずだッ!奥はどのくらい広いんだ!?」
その修道女を見たジョニィがあることに気づく!
「いや…失礼シスター」「オレたちの方から面倒を起こすつもりはありません。すみませんがここは教会所有の建物ですか?それにしてもあまり美しいとは思えないもので」
「そしてもうひとつ!!あんたまさか『ホット・パンツ』を知ってるとか?」
核心の質問をするジャイロ。ホット・パンツとの関係を疑うのは当然だろう。
「ここはただの町のゴミ捨て場。わたしも…初めて捨てに来た。ここが広いかどうかも知らない」
答える修道女。
『何か…何かだな。いよいよの気がして来たぜ』
『ホット・パンツが何してるか白ねーがここがヤツの『遺体』の隠し場所かもしれねぇ…』
『そして次の『胴体』部もここのどこかにあるのかもだ』
「ジョニィ、そのシスターを見張ってろ!…奥を調べてくる。合図を待て!!」
修道女をジョニィにまかせ奥へ消えるジャイロ。
そして……。
「ジャイロにはまだ言っていない。言う必要がないと思ったからか、なぜ言わなかったのかはぼく自身にもまったくわからない」
「君が『女性』だという事を…ホット・パンツ!」
「目的を言え!!遺体を集めている君の目的をッ!」「女だからとはいえジャイロが戻って来たら優しくはないぞッ!今まで命を懸けて来たんだからな!」
「氷の海峡で『両脚部』を手に入れたのなら決して離してはならない」「所持しているのは…ジョニィ、あなたの方……?」
「おい!」修道女もといホット・パンツの襟首を掴み、押し倒すジョニィ。「なめるなよ!質問しているのはぼくの方だ。答えろ!!ホット・パンツ」
近づく顔と顔、目と目、唇と唇…。
「君は修道女なのか?故郷では…普通の女性に戻ったりするのか?」「誰かに恋したりとかするのか?」
「ジャイロをここへ呼び戻したら二人とも死ぬ。だから向こうへ行かせた。あたしの『遺体』は全て奪われてしまった」
「決して離してはいけない。どうしようもなかった…あたしは捨ててしまった」
「ああ神様…あたしは全部……差し出してしまったわ……」
「はッ!」ジョニィが身体を離す。ホット・パンツの身体に子どもが纏わりついているのだ!
「ジョニィ」「絶対に捨ててはいけない。あたしの『スプレー』さえ効かない…吹き出す事も出来ない」
「あたしが捨ててしまったから」
「お姉ちゃああー――ん」「お姉ちゃあああー――ん」
子どもが…不気味な子どもが不気味に呟いている…。
「何だ!『ホット・パンツ』何が起こっているぅぅぅー――ッ!?」
いきなりホット・パンツの右の肩口が爆ぜるように割れたかと思ったら薄布のようなもので巻かれていく。
「ジョニィ、あたしはもう耐えられない。教会に仕えても…神様に身を捧げてもダメだった…。あたしが捨ててしまったから…」
「もう心が折れるわ…」
「あたしは『聖なる遺体』を集める事が出来なかった…」
「『敵』かッ!『ホット・パンツ』ッ!すでに何者かに攻撃されていたのかー――ッ」
「『水』で清めて……ジョニィ」「もしあなたが捨てざるを得なくなったなら……それを『清める』しかない」
ホット・パンツの言葉は暗号か…もしくは知らない国の言語か…とにかく意味が解らない。
『ホット・パンツ……いったい何をしゃべっている!?他に!『誰か』?『敵』が!?この近くに誰かいるのか?』
「ジャイロォォオオオー――ッ」叫ぶジョニィ。「戻って来いッ!ジャイロ!ここには『敵』がいるッ!」
一方ジャイロの方は…ガラクタの中に自分のクマちゃんにそっくりなぬいぐるみを見つける。
「…これは……!」
手にとってマジマジと見るジャイロ。
「『人ハ何カヲ捨テテ前ヘ進ム』」「ソレトモ『拾ッテ帰ルカ』?」
異形のスタンド…いやスタンドはどれも異形ではあるが何かが…どこかが違う迫力を感じる。
そして何よりッ!『遺体』がスタンドの前に横たわっている。
『両眼部』以外の全ての『遺体』がそろっている。大統領が持っているはずの『右腕部』、そしてまだ見ぬはずの『胴体部』も…。
『何だ?こいつは!?『敵』!?その地面!!そこにあるのは…』
『『遺体』か!?そろっているッ!!』
ガギョォオン
ぬいぐるみのクマちゃんがジャイロの左腕に結合される。そして同じ現象はジョニィにも起きている。先ほど処分した肉に突き立てたナイフがジョニィの身体に結合していた。
謎が渦巻く不可思議の屋敷ッ!予想も困難を極まりそうな状態ッ!次回を刮目せよッ!!!
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