螺旋が生み出すイメージは、生命の躍動感である。中心から外へ向かって、果てしなく拡大してゆく姿は「発展」や「成長」といった言葉に結びつく。

         桜井進「雪月花の数学」より抜粋



‘06 12月号
 #20 黄金の回転へ! 


「これはッ!」「この回転は………!!」
 爪が今までにない動きをみせているッ!!
「ゆ…指を軸に……ドリルみたいに回っている……」
 ジョニィ驚愕。これが自然界に潜む美の原理―黄金比/黄金長方形/黄金螺旋/黄金の回転から生み出される力なのか?
ところで、後ろにいるクルース(遺体の聖霊)の変わり様も私は驚愕です。タイムボカン・シリーズに出ても違和感なしです。

ゴオォ

 ジョニィが弾爪を発射する。音が違う!弾爪は川面に命中!
「水に穴が開いた…。水に『穴』が開いてあの『音』が吸い込まれているのか!!何が起こっている……!?この『爪』に何が起こっている!?」
 そして…
「何だ…!?『爪』は一発しか撃てなくなっている!!ひとさし指から次のが出ない…!!でもとなりの中指の爪は回り始めた…」

ゴオォ

 第二弾を発射。土手に命中しコーン畑を切り崩してしまう。そして隠れていたサンドマンの姿を晒させる。
『指一本につき発射は一発だけだ…。次の『爪』が出ない。だが回転の『威力』が以前とはぜんぜんまったく違う…!『黄金長方形』以前とは何倍も』
 確実に状況をひっくり返すカードが出現した。2人の間に、目に見えるほどの緊張感が顕れる。
「…………ジョニィ…ジョースター……」
「サンドマン」

ドゴオオー――ン
 轟砲一発ッ!!黄金の回転爪を再び発射するジョニィ。

ヒュン!ヒュン!
 短刀を振り回すサンドマン。何と音が実体化する。
その実体化した文字に弾爪ははじかれ、3つに分かれて1メートル横の木に突き刺さる。

『ううっ、はじかれたッ……!!?『黄金の回転』を』
 ジョニィのネガティヴに呼応したかのように水面にも再び文字が現れる。
『『黄金長方形』の回転は確かにあるかもしれない…。その威力はぼくの『爪弾』でまちがいなく『数倍』にも増してる実感がある…』
『だが『意味』なんて何もないッ!サンドマンとはレベルが違うッ!!ヤツの『スタンド能力』にはぼくの『回転』なんて何の通用もしないッ!!』

少しだけ『希望』で喜ばせておいて、そして最後に
ぼくから全てを奪い去って行く……!

『ついに『宿命』が追いついて来た。兄さんの『借りを返せ』…と。今、追いつかれたんだ…』
「だめだ、すまないジャイロ……。ぼくには何もできなかった…」
 万事窮す……かと思われた時…

ドムッ   「グッ…」    ドッアァ

 ライナーの一匹が破裂する。それにつれてジョニィを包囲していた文字の一部が霧散する。

ズンムッ

 続いてサンドマンにも異変が…。サンドマンの右足の甲を何かが移動している。
それはサンドマンの右大腿部に登りそこで、爆発でもしたかのように、血液を噴出させてダメージを与える。

「こ……これはッ……!!」
 自分の手を…いや爪を見つめるジョニィ。
そして今度は木に開いていた1つの弾爪から発生した3つの穴がサンドマンに襲いかかる。
「これはッ!!いったい!?」
 ジャンプ一番、上方の枝にぶら下がるサンドマン。
「ジョニィ・ジョースターの撃った……弾丸の『穴』が」
 今度は再び木を登り枝を通してサンドマンに迫るッ!が、間一髪で枝から手を放し難を逃れる。
「『何が』起こっているッ!『何が』ッ!命中しなかった『爪弾』の『弾痕穴』が…。う…動いているのかッ!!木や土の表面をッ!」
「『移動』したッ!!サンドマンを追って『穴』が自動的に……」

ドゴオーーン

 ライナーに向けて再び新型・弾爪を発射するジョニィ。
直撃は避けられたが、ジャンプして落ちて来た所を弾痕が追いかけて仕留める!
「『穴』が攻撃をする…自動的に標的の方向へ移動して…。回転は『生きている』んだ。『穴』になっても『穴』の中で生きている…

ドバ ドバ ドバ ドバ ドバ

 続け様に5発発射するジョニィ。縦横無尽の穴がライナーを破壊する。これで文字の危機も去ったはずだ。
ジャイロッ!!回転は『穴』になっても死なないぞッ!!

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 そしてついにその姿を顕わすサンドマンのスタンド……。右手がチラリと見えたのが約3年前。ついにその全貌を顕わしたスタンド。

「『LESSON 4』……敬意を払え」ジョニィが呟く。「サンドマン……」
 40〜50cm程の長さの短刀を抜き、右手に持っているサンドマン。
「『サンドマン』……?それは白人が勝手に聞き間違えて呼んだ名前」
「直訳は『サウンドマン』。我が部族の言葉で『音』をかなでる者と呼ばれている」
 コーン畑の緑が広がり、ミシシッピーの川面は静か。のどかに蝶は舞い、空には雲ひとつ無い。
しかしよく見れば、川は赤く染まり、2人の男の間には触れれば焦げるような烈しい緊張感が満ちている。
「ジョニィ・ジョースター……どうやら、わたしが…その位置まで…行き……」
「直接『短刀』かこの拳で『音』をおまえの体にたたき込むしかなさそうだ」
「スタンド…『イン・ア・サイレント・ウェイ』……!!その『音の固まり』は一撃でおまえの全身を9つの部位に切り裂くだろう…」

「あと『2発』……『爪弾』は他の指にはもうない。あと2発しか出ない……」
「!!」「はッ!!」
 自分の爪を確認してサンドマンから視線をはずした刹那を逃さず、ジャンプ一番で上空からジョニィに迫るッ!!
跳び込んでくるサンドマン…いやサウンドマンに迎撃の一発を放つジョニィ。
それに対して短刀をふりまわしブンブンという文字を実体化させる。
文字に弾かれてまたもや3つに分かれて地面に突き刺さる。そして弾痕となった回転が着地しようとするサウンドマンに襲いかかる。
しかしサウンドマンは盾にしたブンブンにガシガシとよじ登り、地面を走る穴の追跡をかわす。
「はじかれた『穴』の追跡はせいぜい数秒…。長くて7〜8秒程度しか追跡がもたないようだな…」
 すぐにブンブンを構えてタスクの連撃にそなえる。
「穴が小さくなって消えかかって来てるぞ…。しかもその『爪弾』、残りはあと一発しか発射できないようだな…。合計全部で10発」
「もし何発も発射できるならすでに…もっと撃って来てるはずだからな」
 そして…
「『穴』が消えたぞ。そして次が最後の一発……」
 凝視する互いの双眸…。瞳から何かを読み取ろうとするかのように見つめあう。

ドゴォ   ズバァ

 最後の一発をジョニィが撃つやいなや、短刀を振りその切り裂き音を実体化し盾とする。がッ!!
『!?…はずした…?』
『最後の一発をはずして撃った?なぜ?…』
 ジョニィの外した弾爪が蝶の羽根を貫く。羽根に穴が開き…穴?…ヒラヒラとサウンドマンの背中に落ちる。
すると『穴』がサウンドマンの背中に移る!

グオオオオ

 穴が背中から前面に移動してくる。蛇がのたうつように胸に迫る。
『背中から『穴』が向かう…!!心臓へ…な、なんだと…』
 刹那に短刀を放し右手を左胸に当てる。穴を左手から右手に移したのだ。
次の瞬間、サウンドマンの右手が四散し破壊される。
「やはり『数秒』…その『爪弾』の『穴』は数秒だけ自動的に追跡して…そして消える」
「危なかった…危なかったが、今のが最後の一発」「勝った……このオレの…」
 勝利宣言するサウンドマン。最後の一発をしのぎ、そして2〜3メートルの近距離。だがジョニィは言う。
「いいや…サンドマン…。そこでやめろ、その位置からうしろに下がれ。勝ったのは…ぼくたちだ」「君じゃあない…」

シルシルシルシルシルシル…

「ジャイロのベルトの『バックル』だ…さっきすでに、ぼくの指に『爪』のあるうちに…この『バックル』を削って鉄球を作った…おまえのその残った方の手の指を少しでも動かしたら発射する…。この間合いだ。必ず致命傷になる」
「下がるんだ!サンドマン!」
「スタンドをしまって…うしろに下がるんだ…」
 しばしの沈黙の後に…
「『試して』みる価値はある…わたしの『イン・ア・サイレント・ウェイ』より…君の方が素早いと?」

 ………。………。………。
しばし睨み合った後に両者が動くッ!

ドシュアァア   ゴオン

 サイレント・ウェイの左拳がジョニィを砕く前に、ジョニィが放った鉄球がサウンドマンの喉を砕く。
『砂漠の砂粒…ひとつほども後悔はしていない……何ひとつ…』
『ただ…気がかり…なのは…姉をひとり故郷に残して来た事だけだ…。幸せになってほしい…オレの祈りは…』
『……それだけだ』
 ミシシッピーの川面に倒れこむサウンドマン。彼を追うかのように、左手からこぼれた短刀が川底に突き刺さる。

「う…う、ジャイロ…う…ジャイロ……」
 ジャイロのそばを白いネズミがチョロチョロ動く。
「ダニー……」
 しかしそれは小さな石であった。その時、その場に駆けて来る者が…。
「ホ…『ホット・パンツ』!!」
「君らの馬が2頭でミシシッピーの向こう岸にいる。だから来てみた…」
 そして辺りを窺うホット・パンツ。
「奪われてはいないんだな?まだ、あれらを奪い取られたわけでは…」
 あれ…とは何だ?そんな疑問を持つ間に、紋章がついた袋の口を開ける。
「『紋章』…!?なに…!?その『紋章』は…たしか…ジャイロの国の……」
 ホット・パンツがジョニィを押さえ付けると背中から『脊髄』を引きずり出す。
「うおおお」「な…なんだと!!?お…おまえはッ!?」
「暴れるな…その状況で」「無駄な抵抗だ」
 クリーム・スターターのグリップでジョニィのこめかみを痛打ッ!気を失うジョーキッド。
『遺体の脊髄』を例の袋に入れて抱きしめるホット・パンツ…そして一筋の涙を流す。イッタイどんな因縁があるというのか…?

 立ち去ろうとするホット・パンツが、ジョニィの足が微かに動くの目撃する。
「なんだ……動けるんじゃあないか…。それとも…今、初めて…?気付いてもいないのか?」
「ま…『能力』までは奪い取るつもりはない」

「は!」
 は!っと気付くジョニィ。
「ジャイロッ!」
「あいつ……『肉スプレー』…『傷』を治してくれている…馬たちもいる……『何者』だ…」
『脊髄』は奪われたが、ジョニィの傷はもちろん、千切れたはずのジャイロの手足もつないである。

あっ、ノリスケも治っているッ!!!

今月のめい言

「幸せになってほしい…
 オレの祈りは…それだけだ」

○黄金の回転を得てパワーアップしたタスク=弾爪。爪が「指を軸にドリルみたいに回って」おり威力はもちろんアップ。しかもファースト・タスクのように物質を削って加工することも可能。特筆すべきは弾爪が開けた弾痕の『穴』も能力であること。『穴』自体が誘導弾になっており7〜8秒の間は標的を追いかける。そして時間切れになると爆ぜるように辺りを破壊する。弾数が両手の指の数である10発限定となってしまったようであるが、足の爪はどうなるのか気になるところである。またどれ位の時間で爪が復活するのかも今後の戦術に影響するだろう。

○対してサンドマンのスタンド「イン・ア・サイレント・ウェイ」(以後、サイレント・ウェイ)は音を擬音の文字として実体化させることが能力。その文字に触れたものは、擬音文字が表す効果を身に受けることになる。久しぶりに登場した人型のスタンド(オエコモバ以来…このスタンドとて人型のメリットはなかったが)、このヴィジョンはメキシコの骸骨祭りを思い出させる。

○惜しくも今月号でその命を散らしたサンドマン。SBR第一話では主人公級の活躍をし、レースそのものでは各STAGEの上位に食い込み、現在の段階で総合1位でありました。彼が消えることでレースが大荒れになることは間違いないでしょう。「敵を知り己を知れば百戦百勝」の格言のように、部族の奪われた土地を「白人のやり方で白人から取り戻そう」としました。恐るべき知能の高さと精神の柔軟さを我々に見せつけ、カリスマを発揮した彼…。白人のやり方=「金」を得るために大統領側についたとしても―我々は多分なショックを受けたとはいえ―彼をどうして責められるでしょうか。生きるためには苦い豆をかじらなければならない、何とも複雑な感情を持たずにはいられません。

○そして今月のめい言。泣く…私は泣く…。「金、名声…しかし最後に残るのは家族である」とはどこかの国の俳優が言った言葉であったが、自分の目的のために道を歩んだ…いや走ったサンドマン、そのことの是非などは関係なく後悔はしていないが、唯唯、姉が心配であり幸せを祈っているというのは泣かされます。サンドマンに合掌…

○1つ謎が解ければまた顕れる謎。なんとジャイロの故国―ネアポリス王国とつながっていたホット・パンツ。ジョニィから『脊髄』を奪ってしまい『王国の紋章』がついた袋に納めてしまいました。しかしJ&Jと敵対しているというワケでもなく、『左腕』は奪わずJ&Jの傷を治してしまいました。しかも、単なる仕事ということでもなく、何やら複雑な背景がある模様…。

○ここで非常に怪しくなってくるネアポリス王国。ヴァチカン公国(正確には教皇領)の警備を源流とした国である。ということはヴァチカンと深い繋がりがあると思われる。率直に言うと、SBRレースに『聖人の遺体』が絡んできたところから、第三勢力としてヴァチカン…イコールとしてネアポリス王国が陰謀を持って参戦してきたのでは…と邪推してしまうのはどうでしょうか?

○絶対の正義はない!キリスト教(正確にはカトリック)の総本山だからってヴァチカンが清く正しいと思っている人は大間違いです。十字軍の侵攻、ホロコーストの黙認、プロテスタントの圧殺、ムッソリーニとの取引…。そして、この正義のブツカリアイこそが人間の原罪であり、悲しさである。しかし同時に読み物としては大変に面白いものであり、そこに矛盾を感じたりするのですが…。

○何を書いているのか解らなくなってきたので今月はこれまで!ではでは。

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