5th.STAGE
第8日目 カンザス・シティからおよそ400q地点
フォート・マジソン付近 ミシシッピー川まで約3q地点
ゴール・シカゴまで約380q
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舞台は5th.STAGEにうつり、一見のどかなトウモロコシ畑の中にジャイロとジョニィはいる。
ミシシッピー川直前。場所はトウモロコシ畑、今にも「野球場をつくるぞ!」という人が出てきそう。
「ポコロコが来てる…その後方にひとり…」
「あれはホット・パンツ。ドット・ハーンもいる」
「先を行ってるのはサンドマン……現在トップはおそらくサンドマン」
双眼鏡を覗いていたジョニィが現在の状況を把握する。
「誰だ?あれは……。トウモロコシでよく見えない。誰かわからないが畑の中をもうひとり進んで来てる」
道中を駆けるジャイロ&ジョニィ。
「ジャイロ。ここらで少し小休憩を入れよう。トップグループのメンバーは相変わらずスゴイやつらだらけだが逆に言うと…彼らの実力と馬の体力はほぼ予想がつく。今そんなに差が開く事はない」
「これからミシシッピー川を『どう渡るのか』の方が重要だからな」
「なあジョニィ。今…歌思い付いた……考えたのよ。作詞作曲ジャイロ・ツェペリだぜ。聴きたいか?歌ってやってもいいけどよ」
ま、まさか…。
「ずいぶん…君…暇そうじゃあないか…」
「聴きたいのかよ?聴きたくねーのか?どうなんだ?オレは二度と歌わねーからな」
しばし間をあけて…
「じゃあ聴きたい」
「そうかいいだろう。タイトルは『チーズの歌』だ」「オホン」
「ン」「歌うぜ」
「ピザ・モッツァレラ♪ピザ・モッツァレラ♪レラレラレラレラ♪レラレラレラレラ♪ピザ・モッツァレラ♪」
「つぅー――歌よ。どォよ?歌詞の2番は『ゴルゴン・ゾーラ』でくり返しよ。ソラソラソラソラソラソラ…♪」
しばし間をあけて…
「いいよジャイロ!気に入った!」
「マジすかッ!?」
「あっ…ヤバイ!スゴクいいッ!激ヤバかもしれないッ!耳にこびりつくんだよ!レラレラのとこが…傑作っていうのかな。クセになるよ!ヨーロッパなら大ヒット間違いないかも!」
「マジすか!!マジそう思う?実はひそかにオレもそう思うのよ、だろォ〜〜〜!!譜面にできる?」
かなりの上機嫌になったジャイロ。レラレラソラソラ〜♪と鼻歌を歌う。
ちなみに3番は『ボンゴレ・ロッソ』でくり返し。ロソロソロソロソ〜〜♪(嘘)
「バンド組む?」
などと言っているうちに小休憩の場と定めた小屋にたどりつく。小屋の前には火にくべられているポットがある。
「ところでよォ……これよ…これもジョニィどう思う?」
ジャイロが丸められた書簡をジョニィに差し出す。
「カンザスを過ぎた中継地点でこの『書簡』を受け取ったんだ」
「以前(暗号で送っといたんだが)オレが祖国とヴァチカンに対して書いた、謎の『遺体』は誰なのかという質問に対する回答だ」
広げられた書簡には以下のことが書かれていた。
<ジャイロ・ツェペリ殿 該当する『聖人』の記録はなし。以上。>
読み取れないがサインと紋章も付いている。
「おまえの意見を聞きたい。それ、どう思う?」
「……………」
しばし黙考。
「どう思うも何も…ぼくには見当もつかないよ。……遺体が『聖人』だと言っているのは君だけだしな。『遺体』とヴァチカンは関係ないかも」
「おい…だから前にも言ったろ。それは絶対にありえない」
そう絶対ありえない。何故ならあの『遺体』はほぼ間違いなくJ・Cであるはず。
「『真の力(パワー)』の中心には人々からの『尊敬』が不可欠だ」
グツグツという音が聞こえる。火にくべてあるポットの湯が沸騰している。
「だからじきじきにこの国の大統領は探し求めている…『聖人』のはずなんだ!遺体は『聖人』である事が必然なんだ…」
「ただの『才能』とか『能力』とは意味が違う!!」
「だから君が何が言いたいのか…?ぼくにはさっぱりだよ」
「くそッ!そこだぜ!そこがイラつくッ!オレ自身にもオレが何が言いたいのかさっぱりわからねえッ!」
ヴァチカンは信用できる…という思いがジャイロの心にはある。しかし…現実を目の当たりにしているジャイロは素直に承伏することはできない。
「でもおかしくねーか。手紙の文章はたったの『一行』だけだ。それがおかしくねーか?」
「なぜヴァチカンはオレに逆に聞いて来ない?たとえば『ツェペリ、おまえはその謎の遺体を一部本当に持ってるのか?』……とか」「手に入れたんなら『見せてみろ』…とか」
「何ひとつも聞いてこない…そこが変だ…」
ジャイロの質問にしばし黙考するジョニィ。
「ふむ…。そうだな…それは…つまり。本当にヴァチカンは『遺体』にはまるで興味がないのか…もしくは…」
「もしくは…そう…遺体の『正体』をつかんでいるのに逆に軽々しく手紙に書けないほどのものスゴイ」
「何か桁はずれの『人物』……なのか」
「君は予想くらいつかないのか?ジャイロ…君の予想だよ。『聖人』は誰なのか?たとえば憶測くらい…」
気づいた…のか!?様子が変わるジャイロ。
「黙れ…」「うるせえなジョニィ、黙れッ!」
「意見を聞いてるのはオレの方だろ!?話はここで終わりだ」「答えは次のミシガン湖畔でわかるのかも……。そこには『右腕部』がある…そして『両耳』が手に入る!!」
書簡をビリビリに破るジャイロ。
「うおぉッ!熱ッ!!」
ポットを素手で掴んでいたジョニィ。使っていたはずのタオルがボロボロに四散している。
その時…!
バカラッ バカラッ バカラッ
「誰か来る、ジョニィ」「何頭か走ってくるぞ!!」
「畑の中から近づいてこっちへ向かってくる
ザクッ ザクッ ザクッ
「!?」
「ジャイロ…小屋の中から音がする…!?ドアの背後でしている。誰かいるぞ!!」
「中はさっき調べたぜ。絶対、誰もいねぇ」
「いや変だ!ジャイロ!?何かヤバイ雰囲気だ」
薪割台に刺さっていた斧で小屋の扉を破壊するジョニィ。やはり中に人影は見えない。
「たしかに音がした。何の音だったんだ」
「ジョニィ、すぐに馬に乗れ。ズラかろう…しかも近づいてくるのは何物だ…」
「おまえがヤバイ雰囲気に感じるっていうんならきっとそうなんだろう」
「そのハシゴへ登るんじゃあないッ!ジャイロ、触るなッ!」
伸ばしかけた手を引っ込めるジャイロ。
ジョニィの目が驚愕に開かれる。
「斧が…この斧……。そのハシゴに触るんじゃあない」
斧の刃がザグゥと音と共にバラバラに砕ける。残った柄をハシゴにぶつけてみるジョニィ。
ザグッ ザグッ ザグッ
何とバラバラに砕けてしまう。
「こ…この小屋に触れるな…。何にも…今の斧で押してドアを開けたんだ。タオルでポットの取っ手も握った。何かわからないが『敵』だ!どうやら『敵』が来ているッ!触れると破壊される。何にも触れるなジャイロ。何かに触れさせようとしているみたいだッ!」
バカラッ バカラッ バカラッ
「まあ、近々来るとは思っていたがよォォ〜〜〜」
「かなり直線的な攻撃をする『敵』の様だな…。トモモロコシ畑の中にシルエットが見えた……これからこっちへ出てくるみてえだぞ…」
「どれ!『正体』を見てからブッ潰してやるか…ここをズラかるか決めようぜッ!」
しかし…その時、小屋にも起きている脅威に気付く。
「なんだこれは!?消えている!?小屋の向こう側の板が…屋根も…何もなくなっているッ!こっちh崩れて来るぞッ!」
落ちてきた木っ端がジョニィに触れる。途端ッ!
ザクッ スパァアアン
ジョニィの左足の爪先あたりの肉が切り飛ばされる。
「うおおおおぉおおおおっ」
「ジャイロ…これはッ!!この小屋から離れろッ!!この場所はッ……!!」
「この敵はぼくらを罠でとり囲む気だッ!!」
触れると切り裂かれるこの罠は、罠となった物体自体をも切り裂いていく。
ドバッ
そして何者かがコーン畑から飛び出すッ!!
「『ドット・ハーン』ッ!」
「敵は『ドット・ハーン』だッ!」
しかし同時に見たこともない生物も2〜3匹現れた。
「なんだ…!?畑からいっしょに何か出て来た…ありゃなんだ?しかもあれからヒヅメの音がする」
訝しがるジャイロ。
「ジャイロ、馬たちもこの小屋から離さないとマズイ。くそッ!!同時にやる事が多すぎるッ!ぼくが歩けないことを攻撃に利用しやがってるッ!!」
崩れ来る小屋の凶悪な破片。
ジョニィは弾爪を馬に向けて放ち小屋から離す。
「ドット・ハーン!いいか、一度だけだッ!警告は一度しかしねえッ。そこでとっとと止まれェェッ!!」
しかし止まらないドット・ハーン。ジャイロは彼に向けて鉄球を投擲するッ!!
鈍い音と共に、見事にドット・ハーンの喉元に命中する。
がッ!!逆に鉄球が弾け飛ぶッ!!
『何だ?バカな…何が起こった!!』
「助…けて」「くれ…うああ…」
「何がぁぁ〜〜〜?いったいオレは何なんだああああ!?」
なおも接近するドット・ハーンに雨のように弾爪を撃ち込むジョニィ。
ブシュン ブシュン ブシュン…
ドット・ハーンに触れた弾爪が破壊される。だが同時にドット・ハーンの身体も壊れていく。
「『鉄球』が破壊された……!鉄球の『芯』まで!触れたものは全て破壊される!どんなものだろうとか…?」
「しまった……ドット・ハーンは『敵』じゃあない…彼も『道具』にすぎない…すでに『敵』の道具!」
「この小屋と同じ『道具』だッ!近づいて馬と彼に触れたら破壊される!!『敵』はこれからぼくらを追いつめるつもりではなく、すでにぼくらは囲まれてしまっている…!!逃げられないようにッ」
「すでにハメられてしまっているッ!!」
「ジャイロ!突っ込んでくるぞォォー――ッ!!」
これまでにない切迫さのせいか、かなり早口になっているのがわかるジョニィ。
しかし比較的破壊力の大きな攻撃が二重三重に迫り来るのだからしかたない。
ドン ドン ドン ドン ドン ドン
「オラァッ!!」
弾爪/鉄球全てが触れた途端に切り裂かれる。
「だめだッ!!『鉄球』まで2発とも破壊されたッ!!」
凶悪の木片がジョニィの頭上に迫る……その時、ジョニィの目がトウモロコシ畑の奥を捉える。
『あそこに…―――…?誰かいる…』
「ジョニィッ!地面に穴を掘れッ!!『板』に体が触れる前に爪弾で穴を掘って中に逃れるんだッ!」
地面に向かって弾爪を連射するジョニィだが…
『浅い……。ぼくの『爪弾』なんていとも簡単に…消されてしまう。まるで音が飛んで行くように…何なんだ!?この敵は!?』
『あそこに『誰か』いる。あれは…知ってる気がする!……さらに何か来る…『Dio』か?まさかこれはDioの能力か!?』
「浅いよ…ジャイロ。もうだめだ…間に合わないらしい。今、素早く深く掘るだけのパワーはぼくの『爪弾』にはない…」
「逃げろ」
己の無力さに諦感なる悲壮感をかもしだすジョニィ。
「ドット・ハーンのうしろからさらに何か来る。走ってこの場所から離れろ」
「手を伸ばせジョニィッ!オレの手につかまるんだッ!ひっぱってやるッ!!」
しかし二人の手と手を遮るかたちで凶器の板が地面に突き刺さる。
「逃げろジャイロ、もうだめだ…。早くここから離れろ」
ジョニィを押し潰すように小屋だった木片と板が降り注き、重なって積まれる。
そしてその廃材の山にドット・ハーンが突っ込む!
ザグッ ザグッ ザグッ ザグッ ザグッ ザグッ
斬激にさらされて愛馬ごと跡形もなく消滅してしまうドット・ハーン。しかしまだ終わっていない。奇妙な形の生物がさらに迫ってくる。
「ありゃDioの『恐竜』か!!?いや…違う!こんな『能力』はDioにはねえッ!」
「もうひとり『敵』がいるッ!」
「だがDioのにおいもする。こいつはチームだッ!あのDioのヤツがチームを組んでるだと?」
踵を返し、跳び箱を飛ぶかのようにヴァルキリーに飛び乗る。
「ズラかるぜッ!ジョニィッ!とっとと!馬につかまれェー――ッ」
えっ?ジョニィ。なんと!!
破砕された鉄球の欠片がなおも回転しつづけてジョニィが隠れるぐらいの穴を掘り抜いていた。
「おめーらしくねーな、ジョニィ」「いつになくあきらめるなんてよォ」
「バラバラに砕かれようとオレの『鉄球』の回転はその程度じゃあ止まりゃあしねぇ。破片でもひとり分の穴くれぇ掘れるさ。だがもう一発も鉄球はねえ。頼りはオメーだけだ。何とかしてこの野郎の『正体』をつきとめなくては……」
地面から出てくるジョニィ。
『どうしても……どうしても行きたい!』『何とかして……『湖』へ……!!ミシガン湖まで…』
『でもぼくの『爪弾』なんかで……こんなので……行けるのか?』
『…ぼくの『爪弾』ではぜんぜん勝てる気がしない』
苦悩のジョニィ。解答は導けるのだろうか?
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