‘05 6月号
#2 大統領命令
「死体をさがせ」 A


『ぼくも!』『標的になっているッ!』
『敵の目的はジャイロだけじゃあないッ!』
 空から来る謎の攻撃に対して地を走るジョニィ。
『動機は完全に勝ち負けだけじゃあないッ!敵はこのレースでいったい何がしたいんだッ!?』
『気球!?』
 空を見上げるジョニィ。
『今は見えないがこの空のどこかに『気球』がいるのかッ!?『雲の上』!まさかそんな所からここを攻撃して来ているのか――ーーーッ!!』

ガ  ン

 何ッ!!??ジョニィの……
「ぼくの馬も消えたぁあああああああっ!」
 愛馬スローダンサーまでも消失ッ!!

ドッサァアアア

 堪らず、当然のことながら大地に転がり落ちるジョニィ。空を見上げる格好になったジョニィの目に宙を漂う鳥の羽根の姿が入る。

ガッシィイイイ

 いきなりジョニィの頬に鉤がザックリささる!鉤についているワイヤは不自然にも漂っている羽根から伸びている。
しかもキリキリキリ…という無気味な巻上げ音が聞こえる。
「うがあっ!!うおおっ!こ…これはッ!!?」
「は…羽根から!!とんでた鳥のぬけ落ちたヤツか!?な…なんだ!!羽根の中からッ!」
「きっ、切れないッ」「羽根の中から金属のようなワイヤーとカギ針がッ!」
 ズルズルと自分を引きずるワイヤを回転する爪≠ナ攻撃するが断ち切ることができない!
そこで逆に自分の頬を切り裂き鉤針から脱出する。
しかし代わりに荷物を引っ掛けられて奪われる。
『鳥の羽根の中へッ!荷物がッ!スタンド能力ッ!あの羽根がッ!どこかの空間につながっているという事か!?『ジャイロ』も『馬』もあのエンジンみたいな『カギ針』にひっかけられてあの中へ!?』
 エンジン?の意味はよくわからないが、敵の能力の正体が見えてきたか…。

ドシュッ   ドシュッ

 今度は2本のフック付ワイヤが出現ッ!ジョニィに迫る!
「あくまでもぼくだッ!とにかくぼくを狙ってひっかけようとしているッ!」
「い…岩棚だッ!岩の下が空洞になっているッ、あそこまでいかんくては!!」
「とにかく今はあの下へ身を隠さなくてはッ!!」
 迫るフックにジョニィが(偉くカッコイイ演出を伴って)能力を発動ッ!
回転する爪≠ノより地煙をあげて敵の目をくらまして岩棚に転がり込む。
岩棚の外からジョニィをひっかけようとするがうまくいかず、フック付ワイヤは一時撤退する。

『上だ!今この岩の真上にいる!この『敵』はとにかくとことんばおくを殺るつもりらしい…!!』
『で…でも…ぼくを襲ってなんになる!?馬を奪われた!もし馬が死んだらレースはもう不可能だ!荷物も!馬も!』
『…『荷物』も……ジャイロの『荷物』も………『馬』も…まさか……今…この『敵』は……!!』
『なにかを『捜し』ているのか……?『捜す』のが目的…!?』
 左手…!
『…『敵』はあれを捜してこのぼくらを今まで追跡して来ていたのかッ!!』
『あの時一瞬だけ見えたッ!……この『左手』の中に入って行き!『幻覚』かと思っていた…』
 えっ?何だかんだ言って結局はあのミイラの左手を幻覚だと思っていたのか。
『あのミイラ化したような『左手』……!!いつの間にか『拾った』……というか取り憑いたっていうのか(今もこの腕の中にあるんだろうか?)…』
『あれなのか!』
『『敵』の目的がわかりかけて来た…最初『敵』はジャイロが持っているものと勘ちがいして襲って来た…。そして荷物も馬も順番に奪った……!!…で、どこにも見つからないから残ったぼくを今襲って来ている……』
『どこかに隠しているものと思って!』
『あのオエコモバも!シュトロハイムも!ずっとそうだったんだ!』
『このレースを通じてテロリストたちの目的は!…ぼくも知らなかったこの手の中にある、敵は『ミイラ化した腕』を捜しているんだ!!』
『なんなんだ!?あのミイラはッ!?『誰の腕』なんだ!?』

 ワイヤがジョニィのもとから引き上げられる。水の張られた平たい皿からフックが飛び出て、ワイヤがウィンウィンいいながらドラムに巻き取られている。しかしドラムのある場所が奇妙−奇天烈−奇抜!!口の中である!そしてフックの収入場所は舌、舌にフック型のくぼみがありそこに収められている。
ウィーンウィンウィンウィィーンウィンウィン」「カッシャ〜〜〜ン
ギィィーーガシャン!ギィィーーガシャン!
 子ども!!しかも奇行も著しい立派なクソガキである。
万年筆のインクをチューチュー吸っている。
「ンメェ〜〜〜」
 うまいんだ!?
「だけど見あたらねーーーな!この荷物にもねーーじゃあーーん!」
「…とすると、ジョオニィ……えーとなんだっけ、ジオシュタァー」
 違います。
「ジョオニィ・ジオシュタァー……あいつ自身が『持ってる』ってことだ…どこかに持っている」
「あいつが体のどこかに隠し持ってるってことが決まったじゃあ〜ん。
ガシャン
 そしてジャイロ。宙吊りにされている。首に縄(noose)をかけられすでに始末されたのかと思ったが、岩に長髪でぶら下げられていただけである。アゴのフックを引っ掛けられたと思われる穴の傷が痛々しい…。流れた血が足元の鉄球に滴り落ちている。

「ジャイロ…どこにいるんだ?ジャイロ。ここからどこに……」
「敵はどこからかこの位置を見ている……離れているかもしれないがきっとそれほど遠くはない所からここを見ているはずだ」
「そこでジャイロはたぶん生きている……敵の目的があの『ミイラ』を探してどこにあるかまだわからないっていうなら、少なくとも『手』の存在を確実に見るまではジャイロを殺したりはしてないはずだ」
「なんてこった…助けてくれジャイロ……」
「ぼくはレースに勝ちたいと思っただけなのに…ただ君の『鉄球』の秘密が知りたいと思っただけなのに…この岩棚から外に出たら……ぼくは殺される………目的がぼくだったなんて…助けてくれ…どうすれば…ぼくは…どうすればいいんだ?」
 地べたを這いずり追い詰められたジョニィ、心が折れかけている。心が折れたらそれこそ虫以下ダッ!そんなジョニィに本物の昆虫が近づいてくる。
「ここはもういっぱいいっぱいだぜ。予約はずっと先まで……満室だ」
 ピンッと昆虫を指で弾く。心が弱くなるとさらに弱い者に当たってしまう。
「え」
 なんと左手にフックが刺さっている。ワイヤはジョニィが弾いた昆虫から伸びている。
「カ…カギ針は『羽根』だけじゃあない……」
 岩棚の外に引きずられていくジョニィ。
「こ…この能力は……『餌』だッ!!い…生きた昆虫までも…!!」
「これは『疑似餌(ルアー)』だッ!」
 必死にこらえるジョニィにさらなる追撃。またもや昆虫が大勢で行進。
うわあああああああ
 アゴにフックを引っかけれられ、引っ張られるジョニィ。
『もうこられられない!ひきずり出される!この左腕の中にこの『ミイラの手』があると知られた時点できっとその場で殺される!』
『だ…だったら…く…くれてやるよ。ぼくがひきずり出す……そんなに欲しいならこっちから喜んでさし出すよ…!』
「ぼくは欲しくて手にいれたわけじゃないッ!こんなわけのわからない『ミイラの手』!」
「ぼくには必要ない!渡すからさっさと持ってってくれッ!」
 ジョニィの左腕からチラリと見えているミイラ。

バリィィィ

 さらにジョニィの腕を割って……え〜っと…何?これ。クラゲのお化け??スティール氏の幼な妻よりもつぶらな瞳をしている。手に乗るくらいの大きさ、全身に星のマークがあるが額に一際大きな星がありその中央から嘴(くちばし)の先まで糸(のようなもの)が張ってある。
そしてジョニィにヒソヒソと囁く。
「Movere crus」(モヴェーレ・クルース)
「Movere crus」
 次にチュミィィ〜〜〜ンとジョニィの脚の方へ移動し同じように囁く。
「Movere crus」

ドバァッ

 ジョニィの靴のつま先が吹き飛び何かが…爪か?…が天井の岩棚に向かって一直線に閃(はし)る!!
何と岩棚を破壊して空に向かうッ!そして一部はワイヤの少年の元にも向かい、襲い掛かる!

「ツ…爪を…発射した……『この力(パワー)』は……!!動かないぼくの足から!?」
「こいつ…!!こいつの仕業か……!?どういうことだ?こいつがぼくを危機から守ったってことなのか!?……」
「動かないぼくの足から爪が発射されたぁぁぁぁぁーーーーッ!!」
 祝砲のように再び足の爪が発射される。
左腕に乗っているクラゲは再びジョニィの中に隠れるが、帰り際に例の言葉をジョニィの腕に刻む。
「何か書いたッ!!………またぼくの『左手』の中へ入ったぞ!」
「今のヤツは!こいつ意志があるのかッ!この左手のミイラにはキッパリとした自分の意志がッ!」
「今はもう動かないが…『発射』の時だけ足が動く…ぼくの体から『力』が引き出されたってことか?今のヤツの意志によって……」
「そしてなんなんだ?」
「この文字は………?英語じゃあない。謎だらけだ……謎がたくさんある……」
「テロリストの目的も…」「ジャイロの祖国も…」「なんでぼくに取り憑いているんだ?」「スティール・ボール・ラン・レースも…」
「『スティール・ボール・ラン・レース』」
 …………………………。
「もっとあるんだ」
「この『左腕』だけじゃあない……」「他にももっとある」
「ミイラの体の『他の部品』が…」
「きっとそろえると全身あるッ!」
 なんとなんと!自力でSBRレースの裏の真実に勘付いたジョニィ。
『バラバラになってこの大地のどこかに散らばっている『誰か』の遺体!それを探してひとつに集めようとしているんだ!それがテロリストたちの目的だ!』

表向きはスポーツ!だがスティール・ボール・ラン・レースは「死体」を集めるために行なわれている陰謀なんだッ!!

『『力(パワー)』を持つ遺体…これを『全身』そろえたらどうなる?』
『ジャイロは『死体』のことを知っていたのか?知ってこのレースに参加を?』
 その時、ふと気付くジャイロ。
「『鉄球』…あれは!ジャイロのもう一個の『鉄球』…」
 本当だ。回転ほやほやの鉄球が地面にある。

 所かわって…え〜と、あの氏名不詳のクソガキ。
「3本だぁぁあ−ーーー」「オイラの歯が3本折れちまってるよォォォォオーーー」
「歯ってかじったらうめーのかな?たぶん食えねーだろーな」
「くそっ!こんな『力(パワー)』だったとは…あいつ…なんだっけ?ジョオニィ・ジオシュッター〜〜〜〜」
 違います。
「だけど、あれを隠し持ってる場所がわかった……あいつの『左腕』だった!!チラリと上空から見えた!持ってるんじゃあなくて取り憑いているんだ!!『死体』はジョオニィ・ジオシュッターの腕の中にある!!」
 あのガキ、意外と良く見てやがる。歯が3本折れても元気イッパイである。
「つまり!『捜す』ことはもう終わりってことで、奪うのは!ジオシュッターを先に殺してからでいいって事だァァーーーーッ」
 皿に張った水から地上を見るクソガキ。
「!?」「なんだ?あの野郎……どこだ?お…おかしい……岩棚のとこにいねえ!いねえぇぞーー!!」
 フックを下ろして地上を探索するもジョニィは見つけられず、しかしジャイロの鉄球を見つける。
「おじん……てめえ気がついてんのか?」

メシャア

「おじん」という衝撃の言葉とともにフックでジャイロを殴りつけるクソガキ。身体と精神にショックを与える高等技術ダッ!!

「その足使ったか?今のどさくさにまぎれて『鉄球』をおいらの皿からジオシュッターのとこに落としやがるとは…」
 地面に伏せた状態からバッと立ち上がるクソガキ。
「だけどおもしれえああ!!」「おもしれえ2人だッ!!」
「鉄球の回転が…つーことは考え方は2つある……」
「『土につけた溝でジオシュッターに反対方向へ逃げろって教えたってことなのか!?』もうひとつは!」
「この位置へ『向かって来い』って教えたってことなのか!?本当おもしれえ」
「生かしといてやるよジャイロ・ツェペリ……ジョオニィ・ジオシュッターがどこにいるか見つけるまでだがな…」

「ひとつだけ……ひとつだけハッキリした事がある……」
 場所はジャイロの放った鉄球の近く。ジョニィはやはりこの近くに居たのだ。
『ジャイロが何者で祖国からどんな命令を受けていようと……』
『彼はいいヤツだ……』『それだけは決して変らないことがハッキリした』
『ジャイロは鉄球で『敵』のいる方向を教えてくれた。きっとギリギリの状況で教えてくれた。ぼくはそれで逃げることだってできる…ぼくを逃がそうとして』
「だがこの『死体』は絶対に渡さない!」
 ジョニィはどこへ行ったのか?その答えは土の下であった。回転する爪≠ナ地面を削り、浅くだが潜地して敵の追撃をかわしたのだ。
「これはぼくの希望になった!」『そしてジャイロは絶望していたぼくの未来に勇気をくれた』
「君の位置はわかったぞ!ジャイロ!」「これからあの岩山へ向かう!!」
 黄金の精神は逃げることでは顕れない。死中に活を求め、不安に一歩を踏み出し、恐怖に立ち上がった者が手に入れるのだ。
「このレースは君とずっといっしょだッ!他の死体も探してぼくらがそろえるッ!」

今週のめい言

「彼はいいヤツだ」

○心が萎縮していたジョニィをまた黄金の精神に立ち返らせたもの、それはあの不思議な存在により引き出された強い『力(パワー)』により自信を取り戻したこともあるだろうが、拉致されたジャイロがギリギリの状態のはずなのにジョニィに道を示したからであろう。そのことにジョニィは感動したのである。メソメソとしていた徐倫を力強く変えたのは承太郎の心であった。折れかけていたジョニィを立ち上がらせたものは、ジャイロの心であったのだ。そう、ジャイロはいいヤツだ…そんなことは解かっている。でも改めて心は震えてしまう。

○「変な存在」によりパワーアップしたジョニィの能力。分析において「最も地味」と評しましたが、機関銃と大砲を合わせたかのような威力と派手さを発揮したためこの単語を削除せざるをえません(笑)。どうも足の爪は次から次へと再生しているようで、鮫の歯を彷彿させます。岩棚を破壊したことからその威力は近距離パワー型に劣らないと感じます。

○クソガキのスタンド。皿に張った水を通して遠距離の様子を把握することができ(情報収集)、自らは移動させることができないかもしれないが物質を瞬時に離れた場所に移動させる(特殊移動)。モチーフとしてはフィッシング。ヴィジョンが面白く、口の中から2つのフック(釣針というべきか)が出ている。

○さて、前回スティール夫人がクソガキの能力について「このポットいっぱいに入っていた…コーヒーは…」と言っていましたが、正解は「アイツが全部飲んでいた」からでした。能力まったく関係なし(笑)。

○でも、解明しただけましなんですけどね。ボタンが何故に小ビンに入っていたのかはまったく解明され…ゴホッゴホッ

○さて改めて思うのですが…あのミイラとは何なのか?あれはスタンドなのか?スタンドだとしたら何故に死体からでるのか?実は死んでいないのか?またはあれはスタンドではないのか?スタンドでないとしたら『矢』のように能力を引き出す秘物なのであろうか?…謎だらけッ!!

○イメージ映像のようであるがミイラのパーツが判明。ジョニィに取り憑いた「左腕」に加えて、「右腕」「右脚」「左脚」「腹胸部」「背骨」「心臓」「頭部」「右眼球」「左眼球」のようです。地図に9つの印があるからといってパーツは9つとは限らないのかもしれません。その前に1st.STAGEのパーツはどうなったのかという問題にもなりますし…。もし1st.STAGEにもパーツがあったとしたら、それを手に入れたのはポコロコであろう。緊迫するレースとはいえ、生死とは関係ないかなり緩い環境の中で…不自然とも言える顕現の仕方をしたバケットヘッド(ポコロコのスタンド)。あの瞬間に死体のパーツがポコロコに取り憑いた…と推測できないであろうか。

○オアシスよろしく地中を進むジョニィ。恐らくクソガキの所までは近づけるだろうが、近距離での戦闘ではスピード/パワーにおいてクソガキが有利。足爪の大砲≠熾s安定である。皿の瞬間移動を逆用した闘い方になると思うが、ジャイロを助けて2nd.STAGEを制してもらいたいものです。ではでは。

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