‘04 35号  #18 3人の闘い

「あいつすごいスピードで追ってくるぞ!!」
「ブンブーン一家の他の2人は見えるか!?どこにいるッ!?」
「ぜんぜん見えないッ!……暗いし……さっきからあいつひとりだッ!」
 ジャイロ達の後方をザパラザパラと追いかける人馬の影が見える。
「しかもまったくペースが落ちてないんじゃあねーのかッ!」
「さっきからよォォ、3時間もあの調子だ!!」
「もうお互い馬がつぶれかねないっつーのに……」
 3時間以上もハイペースで走りつづけているらしい……この夜が終わっても後日に影響が出るのは明らかである。
「でもなんか妙だな……誰だろうあいつ、本当にブンブーン一家なのかな?」
「ブンブーン一家があれほどの乗馬テクニック持ってたか……?しかもあのヘンテコな帽子の形…どこかでみたことがあるぞ…」

 先週の経緯の通り、ジャイロ達を追うこの影はマウンテン・ティムである。ティムのキャッチフレーズは「変な帽子でおなじみの」で決定です。
「他に誰が追ってくるっていうんだ?こんな夜中によォ〜〜〜ッ!」
「とにかくヤツらをオレに近寄らせたら『鉄の磁石』がまた始まるッ!」
「なんとしてもヤツらより先に『水場』に行かなくてはッ!やっかいな事になるぜ――――ッ」
「あと15kmもある!くそっ!」

ガ ン!!
「あいつもう岩場を登り切っているぞォ―――ッ!!」

 尋常じゃないスピードでジャイロ達を追うティム。
『参加選手3名の殺害犯人は『ジョニィ・ジョースター』』
『足跡を追跡してきたらかなり信じがたい事実にぶちあたったが……』
『とにかくなんらかの『呪われた能力』での殺害である事も確か!必ず!ここは彼を逮捕して終わらせる!生死を問わずッ!

「くそっ。どーゆースピードなんだ!!次の岩場も登りやがった!!登り坂なのにあいつ加速してるぞ……どうかしてるぞッ!」
「違う!ジャイロ…わかりかけて来た……!!」
 顔の右側を押さえたジョニィが話し出す。
「この状況…そういう事じゃあない……!!まさか!!そんな…」
「彼は加速している……!!でも、それだけじゃあない!!」
「走ってるからわからなかった…それだけじゃあないんだッ!!」
「ひっぱられているんだ後方に…!!」
 手綱の金具がジョニィの顔面に食い込んでいる!
「馬具の『鉄』が壊れて飛んで来ている――――ッ!」
 ぶっ飛んだ馬具の金具が突き上げるようにジョニィに食い込みダメージで馬から落ちてしまう。
「ジョニィッ!」
 だがジャイロにも同じ現象がッ!ジャイロも落馬してしまう。

「やったぞッ!落馬したッ!」
「さすがマウンテン・ティムだ!!『磁力の射程』に入ってくれたッ!」
「これで決まりだわい!もうあとは『磁石』になった3人がピッタリとくっつくだけしかない」
 ジャイロ達とティムを双眼鏡で監視していたブンブーン一家。もう余裕、3人が引き寄せ合ってついには内臓をぶちまけるところを見に行くとまで言い出す始末。ところで気になるのはアンドレ、目がかすんで寒いと言っている。ドテッパラにあんなに大きな穴が開けばねぇ…明らかに血液不足の症状のアンドレ。

「マウンテン・ティム……なんでぼくらを追って来てるのか知らないが彼が近づいて来てからこうなった…」
 ズルズルズルズルズズズズズ………。状況を分析していたジョニィが地面をすって引きずられている。ビックリしたジョニィは思わず蛸の口。
「おい!?ジョニィ!?なにやってる!!」
「ひきずられているんだ……さっきからだ…後方に……あんたもだぞジャイロ」
 1メートルほどもある岩にしがみ付いているのにもかかわらず、ジャイロも後方に引きずられ行く。
「マウンテン・ティムだッ!きっとマウンテン・ティムもどこかでヤツらに触られたんだッ!彼自身知らないうちにッ!」
「マウンテン・ティムにひっぱられているッ!ぼくら3人ッ!お互いをひっぱり合っているんだッ!」
「おそらく『2人の時』は弱くて気づかなかった。だが『3人』近寄って集まればお互いがお互いを引っぱり合ってきっとその磁力は相乗して最大級となるんだ……ぼくらは後方に…!彼は加速して」

「なんでヤツは落馬しねえんだ!?」
「まだ気づいてないんだ。前方に向かって走っているから!」
「ヤツがここまで来たらどうなる!?」
 さらに強力に引きずられていく2人。加速度的に磁力は上がっていく。
「腕の皮膚が裂け始めてる…きっと血の中の鉄分が移動して集まって来てるんだ……。彼を近づかせちゃあだめだ!」
「おそらく3人とも最後は体が爆裂するッ!」
 
たとえ爆裂しなくても体内の血液が異常な偏りを行えば大変なことになるだろう。最悪、脳や心臓等等の主要臓器が壊れてしまうかもしれない。

 場面替わってティム。落馬しているジャイロとジョニィを見止める。
「なんだ!?なぜジョニィ・ジョースターが馬を降りてる…!?」
「ジャイロ・ツェペリもいる…しかもなにか叫んでいるぞ…砂けむりでよく見えない……」

「彼に声が聞こえてないぞッ!突っ込んでくるッ!」
「仮に聞こえたところで馬を簡単に降りるとは思えないがな」
「『磁石』になってる事を教えないと彼が気づいた時は3人とも死ぬぞォ――――ッ」
 もはや時間がない。嵐はそこまで迫っている、血の雨を降らし暴虐の風を吹かし断末魔の雷鳴を轟かせる悪魔の磁気嵐がッ!
「わかった、じゃあ彼をひきずり降ろそう!」
 いとも簡単にできるように言うジャイロ。鉄球を投げ放つ!

「だめだッ!ジャイロッ!とどくわけがないッ!『鉄球』は磁石になった君の体の方に戻ってくるんだぞッ!あそこまで飛ばないッ!」
「わかってるジョニィ…『磁力』で戻ってくるんだよな……『鉄』はオレのとこによォ」
「その『戻る』ってところがいいんだよ。ヤツを…馬からひきずり降ろすには十分だ」
 鉄球はティムの所には行かず中間にある岩山に命中。ガリガリと岩を削ってジャイロのところに戻っていく。
「けずり粉を散らばせた。ただしかなり痛いぜ……3人ともだ。3人とも肉体が『磁石』なんだからな」「岩の中には『鉄分』がある」
体をガードしろジョニィ

 そしてジャイロの目論見とおり鉄分を含んだ岩の削り粉が3人を…マシンガンの掃射のように襲う。特に虚をつかれたティムはもろに顔面で受けてしまう。痛そ〜〜〜。そしてこれまたジャイロの目論見どおり落馬するティム!
「な…なんだ!?この『ひっぱり込むようなこの力』は!!」
「おれの腕に……おれの『拳銃』が地面に落ちず吸いついて来ている!!」

 自分が侵されていた異変にやっと気付いたティム…しかしすでに遅かった。
「だ……だめだッ!!ジャイロ…近づきすぎてた!!すでに!!…ぼくらはもう寄りすぎていた…」
「マウンテン・ティムの体が空中を引きずられてくるぞッ!!」「すでに強すぎるッ!『磁石』の力が近づきすぎているッ!」
 ジョニィの絹をさくような絶叫がコダマする。
「飛ばされて突っ込んでくるぞ―――ッ」
 ジャイロとジョニィの皮膚が絹のように裂けていく。
「血管が破裂するウッ!」 

    ア 

 後方の岩山にロープを引っ掛けたところでティムが例の能力を発動ッ!しかも左腕、左足、右足、腰部、頭胸部、右腕とミート君並みにバラバラになってロープを移動!!再び合体。さすがのジャイロも唖然……。
「なんだこりゃあ……」

「ロープを投げた…『ロープの距離だけは肉体をバラバラにして移動できる』」
「この今の状況……3人とも近づくと…ヤバイ事が起こるようだな」
「オレは追跡の相手を誤解していたようだな…ジョニィ・ジョースター」「今オレをひっぱっている『磁力』のような力は誰の能力なんだ?」
「詳しく教えてもらおう……?何が起こってるのかを……!」
 当面の危機を回避し、誤解も解けた。いよいよジャイロ達の反撃が始まるのであろう。
 そして監視していたブンブーン一家もさらに動き出す気配がッ!
「くそ…逃げられちまうじゃあねーか!あのロープを切らねーと!」


今週のめい言

「『肉体をバラバラにして
 移動できる』」

○ティムの能力『肉体をバラバラにする』。ところでスタンド能力でおもしろいのは「時間系」と「復元系」です。

○「時間系」能力は時間を操った際に起きる不可思議な現象が面白いのです。この「面白い」の根底にあるのは、私たちの日常生活では絶対にありえない現象が起きることが面白いのです。

○「復元系」能力は時間系と同様に、私たちの日常生活ではありえない不可逆変化が起こりそれにともなう現象が新鮮であり斬新であるために面白いのです。

○ティムの能力は体をバラバラにして元に戻す「復元系」です。このタイプはスティッキィー・Fストーン・フリー等かなりトリッキーな闘い方をするので、ティムの活躍には期待大です。

○3人が手を組んだことでどうも「L.Aの成長」というシナリオよりも「3人にまとめて叩き潰されるブンブーン一家」というシナリオの方がありそうな気がします。

○予想としては、優位にたったジャイロがブンブーンに削られた鉄球を造らせてそれを使ってボッコンボコンにすると思います。ジョジョシリーズでは戦闘の決着はラッシュ(拳撃の連打)が常套ですがSBRではどうなるのでしょうか?ストーン・フリーが野球のボールでラッシュをしてミラションをグチャグチャにしたという前例がありますが、ジャイロもそのようなフィニッシュを見せてくれるのでしょうか?とても楽しみです、ではまた来週!

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