ポオオオオオ   ガッシュガッシュガッシュガッシュ

 鉄の塊が走っている、機関車という鉄塊が。乗っているのはプロモーター・スティール氏をはじめとするVIP、「スティール・ボール・ラン」レースを観戦している。
 そしてスティール氏の幼な妻(美少女)が驚いている。
「残り2000メートルを越えた…列車で峠をぬけて来て見たらば……」
「どういう展開なの……?」


‘04 16号 #10
15,000メートル 最終直線 午前10時17分

「人間の走りがッ!」「あいつ!どうやってここまで来たんだッ!?」
「人間が馬より速いなんて事がありうるのかッ!!」
 記者激憤ッ!汽車にのってる記者激憤ッ!汽車に乗ってる貴社の記者激憤ッ!(重ねすぎ!)

 下り坂の最後に降立ったトップ3。サンドマン、ポコロコ、ジャイロ。捨てられた牛の死体がチョット哀れ。

{サンドマンが行ったッ!}{サンドマンッ!}
{首位はサンドマンッ!岩山をショートカットだあああ―――ッ}
{まもなく『下り坂』が終わりゴールまでの最終直線が見えてくるぞッ!走行タイムもスタートしてからすでに17分をすぎている―――ッ!!}

「『人間が馬より速く走る』…」
 スティール氏。
「たしかにそんな事はありえない」「平たんな競馬場のトラックの常識ではな…」
「だがあれを見れば納得……時速30キロは出てるぞ」
「いや時には40キロは出ているか……」

「時速40キロってまさか…ちょっと待ってくださスティールさん」
 記者。
「あのサンドマンのスピードのことですか?」
「何いってるんです?100メートルを10秒で走って時速36キロですよ!」
「そんな記録はどこの陸上競技にもない!」
「長距離マラソンを2時間で走ってさえ時速21キロだッ!」

「だが実際あんな風に出てるみたいだからしょうがないだろがッ!」
 どうやらサンドマンの走りは常識を越えているらしい……やはりスタンドを使った走法なのだろうか?
「しかもその秘密は彼の走りのフォームにあるようだ……」
 スティール氏が何かを掴んだ!!
「あのフォームなら納得……!見ろ!彼の崖を降りる時のフォームを!」

 岩の間を飛ぶように駆け、翔けるように跳ぶサンドマンのランニング・フォームをスティール氏が見抜く!
「いいか解説してやるよ。時速40キロを出せる走り方があるという事をな……」
「人間が走る時にはだ……足が地面を蹴る『衝撃』ってのがあるだろ…その『衝撃のエネルギー』がヒザの関節や筋肉に負担となって疲労となる」
「その負担はどんな強じんな脚力ををもってしても逃れる事の出来ない生理機能!」
「だがあの『サンドマン』の場合はこうだ……」
 こうだッ!
「彼は走る時に『かかと』が地面に一瞬しか触れない……そういう走り方なんだ!!『かかと』が触れたとしても決して踏み込んではいない!」
「すぐに『着地の衝撃』はつま先に移動する……」
「そして瞬間!その移動の『衝撃』を利用して地面を蹴って前へ進む!」
「着地の『衝撃のエネルギー』をヒザ方向ではなく前方へ逃しているってことだ!つまり彼の脚にはダメージや疲労はほとんどないって事であり…」
「むしろエネルギーを再利用して加速の時使えるって事だッ!」

「崖を蹴って飛べば飛ぶほどさらに加速がついて速いッ!」
「蹴ったッ!45キロは出ているぞッ!」

「しかも着地時には崖面を何度か蹴って降りるので、重力のブレーキとなってこれまた衝撃ゼロ!」
「滞空すればするほど筋肉は休んでることになる」「おそらく彼の足の『かかと』にはタコやスリヘリはなく少年の足のように柔らかいはずだ」
「おっと……自分もあの走りをマネしようなんて思うなよォ〜〜〜〜」
「体格の割には長い脚と一瞬で体重が移動できるスピードが必要だ」

「今度は岩の登りだ!」
「手を使い脚を使い、全身の筋肉を使ってまるでカモシカか山猫(クーガー)のようだ」
「脚力だけに負担をかけず、岩山ほど彼は速い」
「サンドマンの肉体は『大地』を味方にしている走法だッ!」
「このスティール・ボール・ランが『大陸』を舞台とする限り、馬を敵にしてもその勝敗はわからないといえるだろうッ!」
 4ページに渡りサンドマンの走法を解析し解説するスティール氏。さすがに世界を見聞しただけあって知識は豊富。
 まぁ、詳しく検分すればおかしなところもあるんでしょうけどね……エセ科学万歳!!

 そしてレースは続く…。
{サンドマンの後!現在2位はポコロコッ!続くのはおよそ1馬身差でジャイロ・ツェペリッ!}
{後続も『坂』を下り終えたッ!はるばる走って来たぞ13,000メートルッ!風もメキシコからの向かい風!『サンタアナ』が吹いてるぞッ!}
{どこで誰が仕掛けるんだあぁ―――}

 柱の男・サンタナの語源を再び聞くとは思わなかった。

「………どういう事かわからねえが…くそ……この前を行く野郎に……」
「『下り坂』を休まれちまった、残りは1000と数百…」
 1st・SAGEも残り少なし、ジャイロが思考を回転させる。
「崖の上をショートカットするランニングマンの乱入もあるが、この1st.STAGE最後の『敵』はこのとてつもなくネアカな野郎……ただひとりと見るべきだ…」
『雑木林』『牛の死体』『岩の停止』」「偶然すぎる」
「『何か』がこいつに味方をしている……」
「昔ギャンブル場でルーレットに18回連続『赤』だけに賭けて勝ちまくったヤツを見た事がある」
「イカサマでもなんでもなくバカツキだった」
 さすがにジャイロ、薄々と真実に勘付いている。
「何かの『力』がこの男を『守って』いる!」「ポイントはそこだぜ」
「どこかでこいつの『ツキの流れ』を変えてブチ切れるかどうかだ」

「おいポコロコよォオ〜〜〜〜〜」
 出たーーーッ!
「オレが全てから守ってやるからなあああ〜〜〜」
「行けッ!とにかく何やったっていいッ!」
「突っ走れェ!!おまえさんのゴールには幸運しか待っていねえんだぜ〜〜〜〜」
 ポコロコとスタンド、どっちもマスコットキャラみたいな顔をしている。

 オバQとブリキ頭は兎角として、ジャイロの独白は続く。
「とにかくよォ〜〜〜」
「オレとこのオレの愛馬は生まれついての『逃げ馬』だ」
「こいつに対しなにをするにしても……」
「いつまでもケツ拝んで走ってちゃあ〜〜絶対に勝てねえってこったしなあ」
「逃げっかッ!」

  ガ ン

 ジャイロが再び仕掛けるッ!まだ1500メートル以上の距離が残っている、馬のスタナミは大丈夫なのだろうか?
そしてついに最終直線に入るジャイロとポコロコ……すると、
「直線…こ……これは!?」
 騎手だけではなくスティール氏もビックリしている。いったい何があるというのか、ティガとダイナの巨大像でも立っていたのだろうか。
真実は………、

  ウォォォオオオ  ワー ワーワー  ワーワー ワー   

「な……何事だぁ〜〜〜?この人数…わしは聞いてないぞ……こんなに」
 スティール氏驚愕の大人数。大声は出すわ、旗は振るわ、拳を突き上げるわ…隣に住んでいたら滅多刺しにしているところです。
{すごいッ!直線がみえたらすごい人の数だああ―――ッ!!}
{この西の果ての地にッ!!見捨てられた荒野の終わりの教会にッ!}
{1st.STAGEのゴールを見ようとこんなにも観客が集まっているとはッ!}
{熱狂していますッ!1万人ッ!いや!2万人は確実に越えてるッ!開会式よりも何倍も多いッ!}

「ヒーローになるわ…このレースの勝者は……この世のヒーローになるわッ!」
 幼な妻が、サラリとスゴイことを言う。この世の王を目指したディアボロに聞かせたいものである。


「よくぞ…ここまで走って来た」「初老の馬よ……」
「おまえには今まで生きて来た経験がある」
 今までトップから引いたかたちでジャイロを追っていたジョニーが自分の馬に話し掛ける。
「『荒れた路面』も『雑木林越え』にも…『下り坂』にもミスはなかった…そしてかいてるこの『汗』の感じなら」
「『行ける』ッ!」「しっかりと脚はためられてるぞッ!!」
 2000メートルを切ったら仕掛けると言っていたジョニー…いよいよ行くのか。
「呼吸も闘争心満々!」
「40〜50馬身の差は射程の範囲内だッ!」
「一方『彼』は飛ばしすぎだッ!必ずバテるッ!そろそろたまげさせてやろうぜ……ジャイロ・ツェペリを!」

 グォオオオォン

 ヤツが来た!魔太郎ではない…いや、ある意味では魔太郎ではある(前世が)。
{ちょっと待ってくださいッ!み…みなさんッ!}{今、気づきましたが。お…驚きましたッ!}
{後続先頭集団を良く見ると……あれはッ!あの選手はッ!}
{まさか信じられないッ!!遅れていたはずだッ!!彼はッ!}

{ディオだァアア――ッ}
{ディオがいるッ!あれはディエゴ・ブランドーだあああ―――ッ}
{涸れた川の橋の破壊のせいで先頭集団に大きく遅れをとっていたイギリス競馬界の貴公子が}
{ここでキチッ!と追いついて来ている。どうやってここまで遅れをとり戻したのかッ!いつの間にかしっかりと借金は払い終わっているッ!}

「こいつ…このテクニックは…!?」
「この方法で後方からおいついて来たのか……」
「『風圧シールド走法』だ!」
『前走馬の向い風の死角に尾けて……』
『風圧による疲労をさけ―――自分の脚力は温存し各馬をくり返し抜きながらここまで来ている…!!』
『しかも正確な操馬術なくしては脚同士の接触事故が起こり極めて危険!』
 ついにはジョニーの後ろにディオがつく。
「……オレの馬もシールドに使うつもりか!?」
「だがこっちだって今ジャイロを刺す決心をしたところだぜ……」

  ガ――――ン

 ついにスパートを切るジョニー。それをキッカケに……
{ついに後続の山脈が崩れて動いた!!}
{スゴイッ、行ったぞッ!}{各馬とき放たれたッ!}
{先頭ジャイロに向って土石流となった山が襲いかかるぞォ―――ッ}
{ここでポコロコもジャイロに仕掛けたあ――――ッ!}

 海の大渦が一点に集約されていくかのように、全ての人馬の意思がジャイロに向う!!
「ぜんぜん予定どおりな事には変わりがねえ……最初っからな」
                                              「たぶんだけど…」


今週のめい言

「この世のヒーローになるわッ!」

○役者はそろった!!ヒーローになるのは誰か?少なくてもティム・マウンテンやドッド・ハーンではないだろう。

○それにしても引出しが多いディオ、これからが楽しみな1人。そしてジョジョVS.ディオという時と場と形を変えた対戦が再び勃発、マニア垂涎のカードです。

○それにしてもこのマンガ。馬がダッシュする時の擬音が「ガーン」なんですね(笑)。

○サンドマン、特にスタンドを使っているわけではなくガチンコで走って「馬」に対抗しているんですね。これでスタンドが加わったらどれくらい速くなるんだろう?優勝に一番近いのはやはりサンドマンか。

○そしてポコロコ攻略法。幸運とは「待つ」ものではなく「奪う」ものである!例えば、ポコロコとジャイロに向って岩が転げ落ちてくる。ポコロコは反射的によけてしまうが、ジャイロはそのまま突っ込む。ポコロコはよけなくても「幸運」のため大丈夫な予定であった、そこをジャイロが利用して「己の運」とするのではないだろうか。早い話が、ポコロコのミスをついて「ポコロコの運」をジャイロが喰ってしまうと予想します。

○それで具体的な順位を予想しますと…1位・ジャイロ、2位・ジョニー、3位・ポコロコ&サンドマン同着、5位・ディオと予想。

 ではまた来週、ではでは。

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