‘04 15号 #9
15,000メートル 下り坂 午前10時14分 |
{さあ〜〜〜すでに先頭集団は最終決戦の始まりッ!ゴールまでの残り4000メートルッ!}
{悪魔の『下り坂』を迎えていますッ!}
{主導権は依然ジャイロ・ツェペリッ!}
ジャイロとポコロコのトップ、ジョニーが居る第二集団、そして続々と選手が走る。
{ここから農場跡を通過するまでの2000メートル、高低差約50メートルの長〜〜〜い『下り坂』地形となっており、所によっては30゜の急な勾配部分もありますッ!}
{ここはペースをおさえなくてはなりませんッ!もしこの坂道で馬体重の勢いあまってスピードを出しすぎると最終直線の平地に戻った時にどんな馬だろうと脚がつぶれてしまいますッ!}
{例外はありませんッ!}
下り坂では脚をおさえなくてはならない、そのことを耳にタコができるくらい繰り返す実況。そしてその通りにジョッキーは脚をおさえる。ジョニーも、ジャイロも、ポコロコも。
「あせんなよ!YO−YO−YOHHHー――ッ」
「あの農場を越えたらよォー――なにやったっていいんだぜェーッ」「それまではこらえろよォ、飛ばすな」
「力をためて……充電してからなんでもやってやるぜェー――」
ラスト2qのために脚を温存するポコロコ。
「ポコロコ!!ナニ甘イコト言っテンだッ!?」
「『牛』がいるぜッ!ポコロコ」
「『牛』ダカラナッ!」
何だろう?柵の影から何かがポコロコに話し掛ける。メカ沢?
「ダカラ何やったってイインだろう……!?」
「おいッ!ヨソ見シテンじゃナイゼッ!」
「落馬はヨオオオー……ここでスル事じゃあナイ!」
今度はポコロコの馬の腹の下から話し掛けてくる、バケツに穴二つと大きな裂け目―それが目と口―を入れたような頭…。
次の瞬間には消えている、思わず目をこすり「『幻覚』か?」と呟いてしまう。
「そう…オマエの『幻覚さん』かもなああ〜〜〜っ」
「だがもうソノ気ナンダロ?」
今度はポコロコの後頭部から背中にかけて出現して囁きかける………スタンドッ!?…なのか?チープ・トリックに似ている。いや『運』に関係するのならドラゴンズ・ドリームに似ていると言った方が良いのだろうか。
「自分は50億分の1の男に間違いはネェってな…行ケッテ!」
「下り坂がどーだっていうんだ?行きゃあインだよッ!」
「オマエはラッキーガイだ!馬をおさえててヤツに勝てるのかあ〜〜?」
「今までだってそうだったんだろ?オマエは絶対に勝つッ!」
ポコロコは慌てて背中を見るがすでに居ず、気付くと右手の中にもう1つの右手が沈みこんでいく。
自分が守られている、守ってくれている者がハッキリとわかる。自信を確信とするポコロコ。
「YO!あんたああ〜〜〜〜」「トップのあんたッ!」
「その程度かよッ……!!」「宣言するぜ」
「オレに一度抜かれたら……」
「あんたはもうこのポコロコを抜き返すことは出来ない……」
ビシッと指をさすポコロコ。
「なんか言ったか〜〜〜?」「オレのケツとお話をされてもよォオ〜〜〜〜おケツじゃ聞こえやしねえ〜〜〜」
「どきなっていいてえのよォ〜〜〜」
「オジンは後ろに下がってなッ」
自分も老け顔のくせにジャイロを挑発するポコロコ……そして、
{なんだあああ―――ゼッケン『777』が飛び出したあ――――ッ}
{名前はポコロコ!ジョージア出身の21歳、ポコロコと登録されていますッ!!}
{ジャイロを抜いてトップにおどり出たッ!}
ジャイロ、ジョニーは馬を抑えるが、後続の中にはポコロコに続き馬を加速させる者もいる。
{だがこれは『愚か』だ!『挑戦』というよりあえて『愚か』といいましょうッ!『下り坂』に加速の作戦などありませんッ!}
{あのヒヅメの音は自分への葬送行進曲の作曲だあ―――ッ}
しかし、実況とは異なりジャイロには不安が頭から離れない。
『くそ…もし…』
『あいつが…何かの考えがあって――この『下り坂』をわざとすっ飛ばしてるとしたなら……』
『現に雑木林の中ではあいつ……わざと引きずられて木々の間をくぐり抜けた!』
わざと…かな?
『農場をすぎてもし最終直線になってもあいつが無事のまま走ってるとしたら』
『その時』
『この坂でつけられた『差』!このジャイロの愛馬にゴールまでヤツを追い抜くチャンスが残っているか!?』
ジャイロは不安を追い払う。
『いや!考えられないッ!ヤツはそろそろ足にくるころだッ!』
『あいつの存在は忘れろッ!いないものと考えろッ!おさえろ!この坂はこらえきらなきゃあならねえ』
その時、下り坂を加速しジャイロに迫った後続の内2頭が転倒した。ポンチョにヒゲ面と面白要素満載だったのに残念!
そして、それはポコロコにも訪れる。
{ポコロコつんのめったああ―――ッ}{崩れる!ポコロコ!!}
{ポコロコやはり脚に来てるッ!!}
ドバァアアア
{転倒だッ!転倒だッ!ポコロコ崩れたッ!ポコロコやはり愚かだったあ―――ッ!}
{ジャイロ1位ッ!トップはやはりジャイロッ}
「おつかれさんンン」
してやったりの笑顔を浮かべるジャイロ。語尾に「♪」がつきそうである。
しかし、我々は知っている…これで終るはずがないことを………。
「!?……」
「どういう事だ……あいつッ!」
「動いているぞ…」
{ポ!ポコロコが無事だッ!転倒していないッ!}
{すごいスピードで坂を移動して降りているッ!}
{なにかに乗っているぞッ!降りる!坂を降りてるッ!}
『こっこいつはッ!?』
『このフザけた事態は……なんなんだ!?』
『こいつ『計算』だッ!もう間違いないッ!もうこいつの行動は偶然とかマヌケとかじゃあないッ!』
『あらかじめ『知っていなくちゃあ』こんな事は誰にも出来ないッ!このレースの『敵』はこいつだッ!』
『『おそるべき野郎』だッ!』
徐々にジャイロの顔から余裕を奪うポコロコの強運模様。牛が居た!牛が居たのだッ!!
{『死体だァ―――ッ』!!!}
{ポコロコ死体にのってすべり降りているッ!}
{なぜか『牛の死体』が牧草の中に落ちていたあああ――――ッ}
「驚きだよオオ」「YEEEEHAAHHHッ!」
「草の中に牛の死体があるなんてよオオ―――ッ」
「幻覚じゃあねぇッ!オレの幸運だッ!オッタマげェェだぜェ―――ッ」
「まずいぜッ!!こいつはまずいぜェ〜〜〜〜ッ!!脚を止めているッ!100%馬が休んでいるッ!!」
「このままでは農場を越えた時ッ!ヤツの馬は脚を温存したまま平地の直線に向かうことになるッ!」
目を疑う光景に三者三様ッ。そして主人公とはいえアウト・ロー、強硬手段にでることを決意したのだろう…腰のスフィア・ホルダーの釦(ぼたん)を外す。
「ルールブックはどういうことか知らねえが」
「このレースは馬に乗るレースだッ!」「『牛の死体』に乗り換えちゃあいけねえぜッ!」
狙いは岩山。「球」をぶつけて岩を転がし、ポコロコの滑走を止める策であったが……、
「だ…誰だ!?」「なんで人がいる!?」
「なんてこった!岩の落下が遅れたッ!」
何と、転がる寸前の岩の上にショートカットをしてきたサンドマンが降り立ってしまったのだ。
結果、岩が転がるタイミングが遅れてポコロコを逃してしまう。
{何者でしょうかッ!?あの人物はッ!ランニングだッ!!自らの脚で坂をかけ降りて行きますッ!}
{乱入ですッ!!速いッ!速いぞッ!}{どこのルートを通って来たのでしょうか}
トップ争いに次々と参戦する選手たち。
{超波乱です!予測不能ですッ!1位はサンドマンで最終直線突入だあ――――ッ}
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