各STAGEにおいて1位には賞金1万ドルとタイムボーナス1時間が渡される。
『1st.STAGE 15,000メートル』の内容をのべると
海岸から3000メートルまではなだらかな丘陵地帯!
3q地点の涸れた川を越えると曲がりくねりながらの登り坂
となり高低差はおよそ50メートル。
そして雑木林下り坂。
捨てられた農場を越えると直線で2000メートル!
ゴールのカトリック教会が見えてきますッ! |
‘04 12号 #6
15,000メートル 涸れた川 午前10時5分 |
{そして驚がくの大波乱ッ!}
{優勝候補!砂漠の旅人ウルムド・アブドゥルがスタート1000メートルでいきなりの脱落(リタイヤ)――――ッ}
{先頭はゼッケンB-636『ジャイロ・ツェペリ』は依然スピードをゆるめないッ!}
{突き放すッ!突き放すッ!およそ20馬身はなして、同じく優勝候補で英国競馬界の実力bP貴公子!ディエゴ・ブランドーことディオ!まったく近づけていないッ}
{後続集団との差は50馬身以上に広がったァァ――――ッ}{完全に『ひとり旅』だッ!}
{完全にひとり逃亡劇を演ずるつもりだ――――ッ、ジャイロ・ツェペリッ!}
機関車の中から望遠鏡を使いその様子をみるスティール氏をはじめとするVIP。
{なお謎の選手、ジャイロ・ツェペリの経歴については『明日の朝刊〆切まで調べろ』との大会オーナー『スティール氏』の命令が出ました}
後続集団に混じってジャイロ、その後ろのディオを観察するジョニー。
『いや………あの『ディエゴ・ブランドー』……』
『よく見ると…さっきから妙な動きだ……右後方から追ったり左から寄ったり……』
『そして少しづつジャイロとの差を縮めている』『近づき始めている!!』
D・I・O…のアクセサリーを飾った帽子を被り、鋭い眼光でジャイロを観つづけるディオ。
『彼はたしか王族も参加するイギリス競馬界でここ数年でのし上がって来た俊英騎手(ジョッキー)!』
『……まさか……』
ジャイロもディオの動きを気にしている。
「フン」
鼻で笑うディオ。
「ラクダの攻撃があんな形で終わったのには驚いたが……なんて事はないヤツのようだったな……」
「今」「ただのド素人と認識した………先が読めた」
「またジャイロとの差を縮めたぞ!!まさか!!」
「まさか!あれを見つけたのか!?イギリスの騎手!!」
何かに気付いたジョーキッド…そういえばジョーキッドはアメリカのジョッキーでした。今はあの状態といえ同じ天才ジョッキーとしてディオのしていることが解ったらしい…さすがと言うべきか。
妙な動きのディオを気にして後ろを振り返るジャイロ…。
「?!!?」
『いない』
「いないぞ……」
「!?」
『どこだ!?ディエゴ・ブランドーがいない……』
「おいおいなんだ!?どういう事だ!?ディオが消えた!」
ふと気付くと……。
{並んでるぅ――――ッ、並んでるッ!並んでる!!並んでるぞォォ――――ッ}
{すでに左後方『首ひとつ』の差でジャイロ・ツェペリと並んで走っているぞォ――ッ、ディオオオオオオー――ッ}
{どういう事なのかッ!?}{まるで魔法だッ!}
{いつの間にかツェペリの加速に追いついている!!まったくディオが加速しているようにはここから見えなかったァァァー――ッ!!}
あっという間にジャイロに追いついたディオ。
『やはり!ヤツは見つけているッ!ヤツは読んでいた。だが…こんな短時間でやってのけるとは!』
ジョーキッドさえも驚愕するディオの実力ッ!
「なんであろうと……」「フン」
「必ずクセというものがある」
「それが機械であろうと物であろうと…特に馬は生き物だし人間以上にストレスもあれば個性もある」
「レース中、個々の馬のクセを読みとりそこを攻撃すればどんなスタナミの馬だろうと抜く事は可能!」
癖ッ!上杉鉄兵なみの鋭さで癖を読み取ってしまったディオ!そりゃっ、天才と呼ばれるはずだわ!
「当然この男が乗ってる馬にもクセがあり」
「この馬は8回呼吸するごとに1度、必ずわずかに体を左にぶらしながら走る!」
「そして当然の事としてその時ぶれた分、スピードが落ちるッ!」
ジャイロの馬のクセを見抜いたディオ、巧みに操馬してトップにおどりでる!!
「つまり、馬がぶれた時だけこっちが加速すれば我が愛馬の方は無駄な労力(あし)を使わずに疲れさせずにヤツのスピードに追いついていく事になる」
『馬のクセをつかまれたッ!』
『ジャイロはこのことを知っているのか!?』『………いや!』
『知ったところでクセは直したくとも直そうとすると違う弱点が出てくる!』
『しかも一度追い抜かれたら』
「もう抜き返すことは出来ないッ!」「同じ方法でどんどん差を広げられていくから!」
ジョーキッドの推測どうり、どんどんトップに立ったディオとジャイロの差が徐々に開いていく。
{1馬身 差がついたああああああー――ッ}
{信じられないッ!加速しているように見えるのはジャイロの方なのにッ!なのに自然にディオの方が先頭に立っていくッ!}
{天才だッ、天才です!これは魔法にしか見えないッ!}
「おい、どういう事だい………?これは……」
悔しそうにディオに訊ねるジャイロ。
「フン」
「プロの技術(ワザ)ということさ……そして君は田舎者の走り方だ!」
「そのままうしろに下がっていろ」
「…………………もしかしてクセか?オレの馬に走る時のクセがあるっつーのか?ウソだろ?」
一応、自力で正解に達するジャイロ。
「教えたところでどうなる?クセは直らない……宿命のようにな」
もはや眼中にないという態度がアリアリと見えるディオ。
そして着実に差を広げながら、3q地点の涸れた川に到達。橋を駆けるディオ、遅れてジャイロ!
「クセだとよ、どういうこったい?」「おい」
「おめーさんにクセがあったのかよ……知らなかったぜ」
「……どんなクセなのかよォオ――」
「とんでもねぇ強敵が多いなああー――世界ってのはよォオ」
世界とザ・ワールドをかけている…わけではないッスね。
「だがクセなんて直さなくていい」
謎の言葉を吐き、例の「球」を腰のホルダーから取り出すジャイロ…すでに猛烈な回転が始まっている。
「もっとクセを出して走れ」
両腰の鉄球がジャイロの馬の両後ろ足の付け根にめり込んでいる…途端ッ!
ガォン バギバギバギ……
大地を揺るがす震脚のように、凄まじいステップを発動するジャイロ馬ッ!その反動で橋板が砕けるッ!!
乗っているジャイロをも吹き飛ばすかのように走る、おかげで左によれるというクセも大きくなりジャイロも気付く。
「おいおい、左によろけるのがおまえのクセか?よれてるぞ……」
「だが…いいぞ!もっとやれ…もっとクセを出して走れ……」
走れば走るほど橋板は砕ける。
{どおしたんだあーーーッ!橋板が砕け落ちてるうううー――}
{ジャイロ・ツェペリそこを無理矢理突っ込んでいるウー――}
{ディオ渡れないッ!ディオ躊躇したッ!ディオ橋を渡れませんッ!}
ディオ馬が怯えたのかその歩を止めてしまう。
{後続馬が川についたッ!3600が川を渡るッ!後続馬は涸れた川を渡りますッ!}
{ディオ橋を渡れないッ!ディオ遅れた!大きく遅れましたッ!}
{ディオ一たん橋を降りて川を渡りなおすしかないー――ッ}
「く…あ…あいつ」
侮ったかディオ、屈辱に顔を歪ませる。後々の因縁の種がまかれた感じである…楽しみ楽しみ(笑)。
『ま!……また鉄球だッ!オレの脚の時と同じだ!!』
『謎の鉄球の回転が馬のクセを爆発させるように引き出したッ!』
驚愕、ジョニー。
さて一方その頃、テント群の中の1つから欠伸と共に1人の男が現れる。
「ふあああほああふああ」
「きのうの夜さぁ〜〜〜〜このランプに虫がいっぱいよってたかってくんだよね〜〜〜〜〜」
「何匹たかってんのか数えてたらさぁ〜〜〜」
「すっげェ〜〜〜〜良く眠れたッ!」
全ての選手がスタートしたためガランとしている選手村…そこでマグカップに入った暖かい飲み物を右手にサンドウィッチをほうばっている参加費徴収の受付係の男がいた。誰もいないはずなのにテントから出てきた男に訝しげな視線を送ったが、基本的には無視した。
「これでよオオ――――10時スタートの『スティール・ボール・ラン』レースもッ!」
「ばっちしの絶好調だぜェェーーーーッ」
ポ・コ・ロ・コ……おまえかッ!!しかしそんなポコロコも周りの様子がおかしいことに気付く。汗をタラリと流しゴクリとのどを鳴らす。
「あの、いや、すんません〜〜〜〜今 何時すか?」
10時5分前後です。
『ポコロコよォオオオ〜〜〜〜あんたのこれからの2ヶ月間はあ〜〜〜』
『何をやってもうまくいくと断言するよォ〜〜〜〜』『10億人にひとり!』
『人生最大の絶頂期がやってくるんじゃあ〜〜〜〜』
『なんでも好きな事をやるべきじゃあ〜〜〜〜迷う事は何もない!』
『恐れる敵もどこにもいない〜〜〜〜ッ』
エンヤ婆そっくりのジプシーの占い師(ただし左手はちゃんと左手)の言葉が響く…。
「すげえぞッ!こいつはすげえェ――――ッ」
「みんなの馬にふみしめられて!!」「YO!」「YO!」
「こんな走りやすい地面は出会ったことねえぜェェェェ――――ッ!!」
「ポコロコ絶好調ォォ――――ッ」
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