‘03 19号  Act.158 出会い


 ウェザー・リポート(以後、WR)が左右の拳撃が神父を襲う!しかし……

「神の御命においてしりぞけるッ!」
「おまえの行動はエンポリオ…自分の悲鳴をさらに地獄のラッパにするだけの事だった!!」
 WRの攻撃をかわし後ろに回りこむ神父。ポーズは相変わらず荒木イズム。
「所詮、頭に他人のDISCを入れてもウェザーの能力はウェザー本人の才能ッ!!」
「おまえが楽々と自由自在に操れるものではないッ!!」「そして!!」
 時計の針は猛烈に回転し、花瓶の水は瞬く間に蒸発、切花は萎れ、血は刹那に固まる。
再び『時を加速』させた――――ッ!!」
「我が大いなる目的の前でエンポリオ!!」
崩れ落ちる自分の貧弱さを思い知れェエ――――ッ

 時の加速に乗り、猛烈なスピードでWRに手刀を打ち込もうとする神父!
!!

 その時、神父の手に異常が!網の目のように血管が膨張して浮き出し、出血する。
しかし異常はエンポリオにも。目から血が噴き出ている。

ドグアァア  グワラァア

 ピアノの上に落ち、破壊する神父。同様にエンポリオも血涙を出して膝から崩れ落ちている。
『なんだ…こ……れは!?』
『……立て…ない……なにかまずいぞッ!もっと『加速して』逃れなくては………!!』
「な……なんだこれは」「ウェザー・レポート!!?」

「おまえも知らなかった能力のようだな……」
「潜在の中で眠っていたウェザーの能力」
「本で読んだことがある」
 物知り博士エンポリオ氏発進。
「生物にとって最も身近にある『猛毒』は……」
『空気である!』………と」

「生き物にとって生きるためには『酸素』が必要だ……だがその濃度は空気中では40%以下でなくてはならない…」
「一〇〇%純粋な『酸素』は『猛毒』で生物を死に至らしめる!!」
「高濃度の酸素は、『鉄』ならあっという間にサビで腐食させ、炎なら爆発し、人体の細胞分子なら電子を奪って次々と組織を破壊していく!」
「大量に吸うとまず手足の先から麻痺し、立つことが出来なくなる!」
「眼球の毛細血管が切れ失明する!」

 ピアノの上で伏し、エンポリオの言うとおり目から血を垂れ流す神父。

「いくら『時を加速』しようと関係ない…『ウェザー・リポート』は天候を操る能力!すでにこの部屋に純粋酸素を大量に集めていたんだ」
「そして意識を失っていく……一〇〇%の酸素は……組織の『内部』へ…『内部』へ…」
「ぼくの意志じゃあない。ウェザーの眠っていた能力だ」
「あんたがウェザーの記憶を奪い、そしてカタツムリの能力と共に目醒めさせたのはプッチ神父……」
「あんたなんだ」

 徐々に…徐々に…ユックリと……神父に近づくウェザー・リポート…。

「人の出会いも『重力』!あんたは因縁が切れなかった!」

 そしてユックリとした動作で右拳を神父の側頭部に当て…ユックリと力をかけていく…。メシメシィ…

「うおおおおおおおおお」
「こんな事をさせるなァ―――ッ!!」
「わたしが到達したわたしの『能力』は!!」
「『神』のご意志だッ!『神』が望んだ能力なのだッ!」
 自分の頭骨の軋み音を聞く神父。どんな気持ちなのだろうか。
「新しい人類が始まり人間の未来はこれで救われるのだッ!」
「この時の加速が始まったケープ・カルベラル『以前』で……わたしが死んだら人類の『運命』が変わってしまうぞッ!」

「きっと違う未来になる!ここで死ぬわけにはいかないッ!ケープ・カナベラルの後ならいくらでも命を捧げようッ!!わたしがここまでやって来た事が起こらないという事に変わってしまうんだッ!」
「人々は時の旅で見た運命を見なくなる!覚悟を知る事がなくなるんだッ!『覚悟こそ幸福』という事を思い出してくれッ!」
「ここでわたしは死ぬわけにはいかないのだ――――ッ」

 メキメキメキメキメキ

「わからないのか?」
 ビシッ!と人差し指を立てるエンポリオ。
「おまえは『運命』に負けたんだ!」
「『正義の道』を歩む事こそ『運命』なんだ!!」

 バキバキバキ  ついに頭骨が割れる音がし始める。
やめろ!このちっぽけな小僧がぁああああああああああああああああああああ

ドグジャアアア―――ッ







 風により目に入ったゴミにより、思わず背を向けてしまう。刑務所の外。「GREEN DOLPHIN STREET」バスストップ。
「あ………バス………」
 行ってしまった。目を拭くエンポリオ。しかしどうした事かバスが止まる。

「だからさあ―――50ドル紙幣しか持ってないんだってばぁー――」
「なんで釣り銭ないのよこのバス」「なんだよ客に対してそーゆー事いうのかあ―――っ」
「わかったよ!わかったよ!」
「ちょっと待ってくれ!今、そこのガスステーションでくずして来っから!」
 バスの扉がバシューと開く。渡りに船とばかりバスに駆け寄るエンポリオ。バスから降りた女性がエンポリオに両替を頼むが、何故かエンポリオは固まってしまう。
「あっ」「何!?」「おいッ!待てッ!バカ」
「カバン投げやがった!!なんで走り出すんだこの野郎―――ッ!」

「おい!おまえがもたついてるから行っちまったじゃあねーかよ!」
「次のバスまで2時間だぞッ!どうすんだよッ!おい聞いてんのか!」
 エルメェス!……のソックリさん?『死人』は来れないはず…。

「なぁ!オレの車ガス欠なんだよ」「ガソリン代とメシ代おごってくれるんならば」
「好きなトコまで乗っけてってやってもいいぜ」
 帽子を被った男が話しかけてくる。
「そっちのボーヤもどうだ?」

「そうやって旅費浮かしてんのか?」
「知らない人の車には乗っちゃダメってうちの姉ちゃんがいってた」
 おねえちゃん…生きているのかな?グロリアではないかもしれないけれど。ポツポツと雨が降って来る。

 帽子の男がつばを上げて空を見る。
「嵐がくるな…きっと」
「次のバスが来るまで君らが濡れずにいれるか試してみるのもいいかもな」
 帽子の下のその顔はなんとアナスイにソックリ!

 そしてそして!!さらにエンポリオの目を奪う人物が!!
「乗りなよぼうや。怪しいものじゃあないわ」
「あたしはアイリン、彼の名はアナキスよ」
 徐倫ソックリの女性。後ろ髪を編んでいないでおろしている。
「ママとパパはどうしたの?あたしたちもこれから父さんのところへ会いに行くのよ」
「彼…ボーイフレンド」
「どうなるかわからないけど父さんさえ許してくれれば……結婚するかも…あたしたち」

 反対されるんだろうな(笑)。
 徐……アイリンの手をとり自分の頬にあてるアナキス。好きでたまらないという感じ(そういえばヴァン・ヘイレンに“Can’t Stop Lovin’ You”というスゴク良い曲があったなぁ)。

「くそっ。本当に嵐がくんのか!?でも10ドル以上はぜってーに払わねーっ」
「それからケープ・カナベラルにも寄ってもらうからな!」

「あなた名前は?」
「ほら乗りなさいって!お金なんてとらないんだから」
「ふるえてるわよ、寒いの?」
 ハートの穴が無数に開いた上着を脱ぎ、エンポリオに着せるアイリン。
雨足は強まる。肩をあらわにしたしたアイリンの首筋にはハッキリと星型のアザが……。

「エンポリオです……」
「エンポリオ」「ぼくの名前は……」
ぼくの名前はエンポリオです
 号泣……。

 そしてケープ・カナベラルに集いし運命の仲間たちはまだいた。
走っている車の窓の外を凝視するエンポリオ。

「あ!見て、ヒッチハイカーよ!!」

「もう乗せないからな。十分だよ2人で……」

「嵐が来るっていったのあんたよ!」
「停めなさいよ。カワイソーだって!」

 そして停まった車に駆け寄るヒッチハイカー。
我々は知っている。その珍奇な帽子を被っている男を。よく知っている…。


JOJOの奇妙な冒険Part6
ストーン・オーシャン


今週のめい言

「ぼくの名前はエンポリオです」

○転生した徐倫に自分の名前を告げるエンポリオ。当然ながらアイリンは知らない。いくばくかの寂しさを覚えながらも、奇跡とも言える再会を果たした嬉さ…。この世界に何が起きたか唯一人知るエンポリオ、孤独に生きるはずだった人生。暗闇に閉ざされた部屋に月の光が優しく射し込むように、愛に包まれた未来があるでしょう。良かったねエンポリオ。

○神父は「魂は消滅した」と言っていましたが、実は違ったのではないのでしょうか。確かに「空条徐倫」は消滅しましたが、その魂は存在し、別人として転生したのではないのでしょうか。背中の「星型のアザ」はジョースター家の証。「血統」を重視してきたジョジョですが、康一やブチャラティのように血統外の人物にも(当たり前の話ですが…)「黄金の精神」はあります。ラストで「ジョジョ」ではなくなったアイリンですが、その精神は脈々と受け継がれているでしょう。6部のエンディングは「血統よりも心」をさらに高めた結果かな…。もしかしたら7部ではジョースター家ではない者が主人公かも…と予想。

○結局、「新世界」「未来を見る」「ケープ・カルベナラ以前に死ぬと無効」と何が何やらの『天国への階段』でした。これはいつか千夜一夜で分析と推測をしていこうと思いますが、唯一つ言える事は神父が完全には運命を支配(克服)していなかったと言うことでしょう。

○ところで、勢いとノリが凄くて見逃していたのですがエンポリオの「正義の道を歩む事こそ運命」と言うのもよく解からないのですが(笑)。

○それにしても、頭骨を圧搾されるという全ジョジョキャラの中でトップクラスの残酷な殺され方ですねぇ…プッチ神父。脚から順々に輪切りにされたゾルベには負けますが…。

○それとも普通に死ねた事を祝福すべきでしょうか。デッドマンQに登場したりして(疑問多そうだもんなぁ、神父)。

○それにしてもウェザー・リポート強すぎですね。確かにスピードで遥かに勝る相手にはその軌道を予測して罠(トラップ)をしかけておくぐらいしかないのですが。それを毒ガスでやるとは……猛毒・柳もビックリ。

○普段は空気中に二一%ある酸素ですが、ものの本によると純度を高めるだけではなく低くしていっても人体には危ないそうです。生存できる割合は一六%が限界(ちなみに炎なら一六%で消失)。一〇%以下の空気を吸うと脳細胞が壊れ即死状態だそうです(柳の空道ですな)。高濃度の酸素は「活性酸素」と言うものになり、あらゆる物と反応して破壊するそうです(それこそ鉄でも炎でも細胞でも)。酸素を利用する生物が出現する前の生物は、酸素によりほぼ全滅した位に酸素は猛毒らしいです。しかし一〇〇%の純粋酸素を造らなくても、二五%を過ぎた空気の中ではちょっとの炎で火ダルマになるそうなので…ってエンポリオも死ぬか(ウッカリ!)。

○だいたい高圧放電でオゾンでも造っていればいいのになぜ純粋酸素を集めるんだ!?と思ったのですが、ジャンピン・ジャック・フラッシュ戦で空気を集めるというアクションをしているのでこっちの方が納得できます。

○今週のストーンオーシャンはこれで終わりです。また7部『今週のスティール・ボール・ラン』(断定していいのかなぁ?)をお楽しみに。ではでは…。