すでに不可能な日常の続き。

「あのですねェ〜〜〜この店でTV買ったばっかなんスけどォオ〜〜壊れちゃったみたいでェエ」
 とある電器屋。客が持っているTVは埃が積もっている。
「ぜんぜん映んないんですけどォ〜〜〜ッ!!違うのと取り換えてくれませんかぁ〜〜〜」「おおッ!
「なんなんだよこの店ッ!」「どんどん壊れていくTVばっかじゃあねーかッ!」
 TVが壊れる…と言うよりも朽ちていく感じで崩れていく。
「代金返してよッ!」「金返せよ!コラァッ!」
 とレジに手を突っ込んで無理矢理つかんだ札…。
「か………金までッ!!」
 いやレジ、レジが載っていた机、店員の眼鏡…全てがボロボロになっていく…。

「はっ……歯がッ!!」「直して入れたばかりの『さし歯』がぁぁ―――」
 なるほど、さし歯は生命とみなされない。

「シリコン豊胸したあたしのオッパイがぁあ――――」
 ねぇーさーん!エルメェス姐さんのシリコンは大丈夫ですか(死んでいます)。

「カツラが崩壊していくぅぅぅぅぅー――」
 ノーコメント。

「クークースヤスヤ
 鼻水が固まったお嬢さんですな。何も知らずに幸福そうです。読んでいたジャンプも着ている服もボロボロになっていく。

「修復したばっかのミケランジェロのフレスコ画がぁぁぁ―――」
 どうやらシスティーナ礼拝堂の「アダムの創造」らしい。偉大な芸術も時の流れには押し流される。

 太陽の軌跡がもはや輝く線としか見えず、戸惑う人々。家屋も「時の加速」の果てに崩壊し、気候も変わる。
何百年とかかる波による岩の侵食が数呼吸の間に起き、海は引き、海底は隆起し、島は崩れ、地形が変わる。

 イルカの背にしがみ付き、唯1人海を行くエンポリオ。
「『時の加速』は止まらないのかぁ―――――――ッ」
「どこまでッ!どこまで『加速』するんだァ―――ッ」
 エンポリオの帽子とユニフォームもボロボロになる……って、エンポリオの服ってスタンドの産物ではなかったのね。

 突然…オールヌードで暗闇に放り出されるエンポリオ。しかし放り出されたのはエンポリオだけではなかった。
イルカ、蟹、ミミズ、タニシ、猫、シダ、名前も知らない種々の魚、ワニ、花、ナガスクジラ、亀、etc、etc……。
「なんなんだッ!!?ここはッ!!」「『生き物』だけ………!!?」
「どこなんだ!?ここはぁぁ――――ッ」

 しかし終わりはやってくる。エンポリオの頭上から光がズンズンと近づき、そして呑み込む。
「う」「うわっ」
うわああああああ


   ゴツン


‘03 17号  Act.156 運命の夜明け

「ぐ」「うう」
 頭をゴツンと壁にぶつける…と言うか見覚えのあるここは?
真っ裸のエンポリオだが、元の服がチャンとかたわらにある。

「うおっ」
「おまえらッ!何でこんな所で裸になっているんだぁ――っ!!」「えっ、あれ?オレ?」
「お…おれまで、看守のオレまで何で裸なんだ?えと…なんだっけ?時間が早くなってそして…」
 どうやら全ての人々に同じことが起きているらしい。重要なのは、彼らが『時の加速』の記憶を保持している事。 

「この場所は知っているッ!!」
 エンポリオ驚愕!
「ここは『グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所ッ』
「場所は面会室前の廊下だッ!」

 服を着るエンプー。

 そして面会室からもれる会話。
「なんなんだよ。あいたくなんかねーんだよッ!」「今ごろのこのこ来やがってッ!」
「父親づらしてんじゃあね――――ッ」

「おまえを助けたいんだ」「すぐにここから出してやる」

 あれ、このセリフは!?M・トランスファー戦直前まで時間が遡(さかのぼ)っている。エンポリオもあわてて面会室を除く。
中には徐倫…徐り…ジョ……誰???隣の男は服装は承太郎だが…べ、別人!

「帰れッ!帰れッ!おまえとは気が合わねーんだよッ!」

『なんなんだ!?この2人は!?で…でもすごくッ!』
『すごく!!似てるッ!でも違うッ!』
 
頭の団子は3つ。タトゥーは蜂。胸はスペード…何よりケバイ。

ガラアァァァァァァ

 突如、面会室のドアが開いて何者かが入ってくる。そう神父!
右目から血をしたたらせている…徐倫の反撃の傷だろう。
「『時の加速』により、『加速』のいきつく究極の所!」
「宇宙は一巡したッ!」
「『新しい世界』だッ!人類は一つの終点に到着し『夜明け』を迎えたのだッ!」

「だが、この『運命の夜明け』にわたしの『因縁』だけは持ち込めないッ!」
「空条徐倫はもういないッ!…魂さえも」
「承太郎も消滅したッ!…アナスイもエルメェスも」
「『死人』は来れないのだッ!わたしに相反する因縁は全て『向こう』に置いて来たのだ!!」

「お前以外はだッ!!」「エンポリオッ!」
「おまえはここに来てはならなかったのだッ!」
 ステアウェイ・トゥ・ヘヴンを発現させる神父。
「ここで今ッ!絶対に消えなくてはならないッ!」

うおおおおおおおおおおおお
 ビビるエンポリオで今週は終わり!!


今週のめい言

「宇宙は一巡したッ」

○「何じゃそりゃ?」とか「ワケわかんねェよ!」とか言う意見が多いようですが皆さんはどうでしたか?

○私は真面目な話、ノックダウンされたのですが…「そう来たか!!」と。没にした予想として、結局最後には『時の減速』が起こり、ついには時間が戻り始めるという物があったのですが、一周してまた始まるとは。爽やかな敗北感を覚えました。

○私は違和感なく今週の話を受け入れられたのですが、その理由としては手塚治虫の「火の鳥」を読んでいたからでしょう。「火の鳥(何編かは忘れた)」でも人類が1度滅びた後に再び人類の歴史が始まるという話がありました。もっとも霊長類と霊長類の間にナメクジ人類の繁栄が入っていたりするのですが。

○ところであの承太郎に似ているお父さん…クリント・イーストウッド似で良い男ではありませんか。というか、承太郎が異常に若くてカッコイイのだと思うのですが。あんなカッコイイ父親は逆にキツイような気がしますが。

☆さてSTHが引き起こしたこの現象に付いてまとめてみましょうか。

☆生物を取り残し時間が猛烈に加速した結果、生物は特殊な空間に放り出され(恐らく生物が生存できない環境になった時だろう)、その後にほとんど同じ環境(時間的には遡っているように見受けられる)になる。

☆この環境は神父の言うところ「加速の行きつく究極の所」であり「宇宙が一巡した」結果出現した「新しい世界」らしい。つまり全ての生物は「以前の世界(神父が言うところの「向こう」)」から「新しい世界」に移行した。そしてその新世界には「死人」は来れないらしい。

☆謎&疑問。「新しい世界」とは……(1)遥かなる未来。宇宙が死に再び生まれて地球ができた、そこに着いた。(2)レコードの針が一周すると隣の溝に移動するようにパラレル・ワールドに移行した。

☆う〜〜ん、なんか(2)のような気がしてきたぞ。しかし「死人」は来れないという事は、あの犬の散歩をしていた御婦人や氷漬けとなったロッキー君を始めとし、少なくない人達が「ここ」には来れなかったと言う事ですよね。神父は全人類を救うみたいな事を言っていましたが(禁句?)。もしかしたら神父自身が手に掛けた者だけが来れないかもしれませんが。

☆「ここ」が『天国』なのでしょうか?『天国』だとしたら何が「ここ」を天国たらしめているのか…。疑問は山積ですね。

◎キリスト教の最大のイヴェントの1つとして『復活』というものがあります(ユダヤ教やイスラム教にもあるらしいですが)。つまり「死者の復活」、世界の終末には墓の下から死者が生前の姿で復活して「最後の審判」を受けると言うやつですね。今週の神父のセリフで「『死人』はこれない」というセリフから、神父は宗教から離れたんだなぁと感じました。だいたい、自分のスタンドに「スネイク(蛇はサタンの化身)」という名称をつける時点で宗教家の仮面をつけているんだと思っていましたが、「主よわたしを導いてください」とか「全人類を救う」等と言っているからにはどうやらまだ神父様だったようですが……かと言って「殺人」という罪は平気で犯していますし。分裂症の気があるように思えてなりません。

◎「魂の消滅」と言っていますから、『輪廻転生』を重んじる仏教とも縁を切ったようですね(←もともと関係ない)。

 今日はここまで。ではでは。