グッと老けたような扉のウェザー。何故神父の胸を触っているかは謎。

‘02 37+38号  Act.127 出会い


アメリカ深南部の蒸し暑い夜中―――ある町の産院でひとりの赤ん坊が産声をあげた

だがその男の子は母親の腕の中で朝の光を見る前に息を引きとっていた

今まで何ひとついい事がなかったと思っているそのとても若い母親にとって、その赤ちゃんは自分の幸福と誇りの分身であったしまた輝く未来への期待でもあったため


彼女は我が子の死を受け入れていなかった

医者や看護婦がまだその子の死に気づいてないうちに、母親は自分のベットを幽霊のようにぬけ出すと

 右足が奇形の赤ちゃんともう1人の赤ちゃんが同じベットに寝ている。そこの枕元に幽霊のように立つ若い母親。

その事実は永遠に誰にも調べられなかったし、疑う者さえも誰もいなかった

彼女は同じ日に生まれていた別室の赤ちゃんと……片方の男の子をすり替えて我が子としてしまった

赤ちゃんは二卵性の双児だった………

1972年6月5日のことだった………

 赤んぼうのすり替え。ケルトの神話では、妖精が妖精の赤子と人間の赤子をすり替えるらしい。他の人と何ら変わりが無い…唯自分の産んだ赤子を強く愛していた女性によるほんの小さな出来心。
 プッチ神父の誕生日がハッキリわかりました。ところでプッチ神父の双児の片割れはもちろん…あの男なのでしょうか?


ガッ!

 何かに蹴つまづき聖書やその他の本、懐中電灯を取り落としキリスト像が奉ってある台にぶつかる黒衣の男。倒れそうになったロウソクをあわてて立て直す者はまちがいなく若き日のプッチ神父。彼がつまづいた物は人の足であった。
「君は誰だ?どうやってここに入った?」
「ここの納骨堂は日曜日以外は一般の立ち入りは禁止になっている」

 プッチの落とした本をペラペラめくっていた男―その男DIO(注:1)が答える。
「太陽の光にアレルギーの体質なんだ」
「今日の日没は確か6時19分。それまで家に帰れないのでそこで休んでたんだ」

 DIOの嘘っぽい言い訳をアッサリ信じるプッチ。そのことを気に入るDIO。「例え悪魔だってそんなウソはつかない」…まぁ吸血鬼ですがね。

「ちょっと待てよ。今、足をくじいたのか?」

「いや…違うんだ。気にしないでくれ…これは生まれつきなんだ」
「左足が曲がって生まれて来たんだって………だが歩くのに別に問題はないんだ」

 右足ですよ神父さん。

「君は「引力」を信じるか?」
「わたしに躓(つまず)いて転んだ事に意味がある事を!?」
 なるほど、DIOの言葉をDIOの息子達に返したワケだ。
 プッチの右脚を掴んでいたDIOが今度は自分の左掌に何かを乗せる。グルグルグル…独楽のように回るそれは、ジョジョ界において『石仮面』に並ぶ最重要アイテム『矢』(注:2)である。
「君にこの「石の矢」をプレゼントしたい」
「いつかわたしに会いたいと思ったらこの「矢」に気持ちを念じて呼んでみてくれ…何年先だろうと構わない。いいね…心に留めておいてくれるだけでいい」
「日没になったらここを出ていくよ」
 土は土に、闇は闇に。納骨堂の影に溶け込むDIO。

 呆気にとられるプッチ。フとあることに気付く。
「こ…これは、足がぼくの足の指がッ!」「……ま……真っ直ぐに!?………!!!!」
『何なんだ?あいつは!?』

1987年 プッチ神父この時15歳

父方の曾祖母がイタリア系の移民で…また18世紀にはローマ法王を出したこともあるほどのヴェネツィアの名門の家系につながっているために、ロベルト・プッチが15歳の時、神学校へ行くと言い出した時も反対するものは誰もいなかった

ロベルト・プッチは家庭が裕福でまだ両親と2つ年下の妹からの愛をたっぷりと受けそして与え…そして何ひとつ不自由のない誰からも好かれる少年時代を送っていた

神学校へ行くと決心した理由は、もしかすると両親が語って聞かせてくれた自分の生まれた時にあるのかもしれない

同じ日に生まれた自分と死んだ弟…運命はなぜ自分ではなく弟を選んだのか?

なぜ人に幸福と不幸があるのか?

真の幸福とは何なのか?

きっとロベルト・プッチはその真実がどこにあるのか知りたかったのだ



1988年になりプッチがいつものように教会の掃除の手伝いをしている時だった

「神父様聞いてください」
「お願いです…私の告白を」
「わたしの体は病に冒されています」「怖いんです…たぶんもう助かりません」
 告白を始めた者にプッチは神父を呼びに行く事を諦め、自分が聞くことにする。
「でも告白したいのはわたしの病の事ではありません。わたしの家族の事です」
「わたしは16年前の6月5日、死んだばかりのわたしの子供と……他人様の生まれたばかりの赤ちゃんを……」
「双児の赤ちゃんでした」「病院で誰もみていない間に交換しました」
 6月5日…双児…死んだ……次々と出てくるキーワードにプッチの心理はいかに?告白は続く。
「兄弟がいるという事を教えなくていいのか?かといって打ち明けたら死ぬ前に息子を失う事になります」
「とても出来ません……だから苦しいのです」

「…えと」「あなたは相手の方をぞ存知なのですか?」
 たまらず質問をするプッチ。

「プッチさんという夫婦です」「となりの町の大きな屋敷に住んでいる方です」



今週のめい言

「誕生日がぼくといっしょだ」

○ウェザーがつけられるはずだった名前はドメニコ。神父はロベルト………エンリコじゃなかったっけ?

○家族の中で神父だけ肌が褐色なのは、神父も実はすり替えられッ児だったりして。

○実の兄弟とは言っていたが双子だったとは。と言う事はウェザーも39歳!?記憶が戻ったら少し老けたような気がしていたけど…。「ガハハ」なんて、ある意味おやじネタですし。

○神父とDIOのファースト・コンタクトが描かれていますが、どうやら神父は先天性スタンド使いではなかったようですね。「矢」による発現。ということはウェザーも生まれつきというワケではなく、神父のスタンド発現に影響される形でウェザーにもスタンドが発現したのでは!?

○しかしDIOは6部の準レギュラーですか?まさかここまで佳境になってまた出るとは思いませんでした。つま先が丸まっている悪魔みたいな靴が相変わらず素敵です(恋)


注:1 DIO
誕生日不明 1968年生まれのジョナサンとほぼ同じ年齢
1888年 石仮面を被り吸血鬼となる
1889年 2月7日、ジョナサンと最後の対決。海底に沈む
1983年 海底より引き上げられる
1987年 アメリカ南部を旅している途中、プッチと出会う
1988年 1月16日、承太郎と対決…完全敗北、死亡

☆今週の時点で神父はホワイトスネイクを身に付けていないようです。つまり「神父がホワイトスネイクを獲得〜サヴァイヴァーのDISCを得る〜DIOから骨をもらう」の出来事がわずか16日間で行われたということになります。無理があるような(汗)。

注:2 矢の行方
☆エジプトの砂の下に眠っていた「矢」は1986年に当時19歳のディアヴォロによって発掘されました。本数は6本。内2本は矢尻に虫のような装飾が施されています。この装飾されている矢と装飾されていない矢の差は不明です。5本はディアヴォロからエンヤ婆に売り渡されました。

1.ディアヴォロ→ポルポ。ボスから幹部に。ブラック・サバスに収納されていたが、ポルポの死亡時に破壊される。欠片の行方は不明。
2・ディアヴォロ→エンヤ婆→(不明)→虹村形兆→音石明→SPW財団。杜王町で暗躍した矢。最終的にはSPW財団の監視下に置かれる。
3.ディアヴォロ→エンヤ婆→(不明)→吉良吉廣。推測となるが、アトム・ハート・ファーザーに収納されていたが親父爆死の爆発に巻き込まれて消滅したと思われる。
4.ディアヴォロ→エンヤ婆→(不明)→ポルナレフ→ジョルノ。第5部における最重要アイテム。虫状の装飾が施されている。2001年イタリアでの戦闘が終わった後は、Mr.プレジデント(亀のスタンド)に収納されている。
5.ディアヴォロ→エンヤ婆→DIO→プッチ。今週のエピソード参照。虫状の装飾が施されている。
6.ディアヴォロ→エンヤ婆→(不明)。行方不明の最後の1本。

承太郎→徐倫→エルメェス→グェス→徐倫→承太郎→SPW財団。ストーン・フリー、キッスそしてグーグー・ドールズを引き出した欠片。どの矢の破片かは不明。しかし欠片とはいえ、このような最重要アイテムを承太郎個人が扱っているのはどうなんでしょうか?SPW財団における承太郎の立場の特別さの一端を見たような気がします。

 今日はここまで!ではでは。