‘02 29号  Act.120 記憶するのは


「ロープを切られる!!エルメェス!」
「ヤバイんだッ!引っぱり上げてくれッ!」
 周りの乗客が徐倫を見上げているのが恐ろしい。周りの乗客が徐倫を認知しているのが恐ろしい。

バンッ    コンコン  ガリガリ  ゴン

 何者かが飛行機の天井へ登っていく。近づいていく先は確実に徐倫のロープである。

「エルメェスッ!何してるんだ――――ッ」
「は…早くッ!」
「聞こえてるはずだぞ、エルメェスッ!」
 隔絶された空間!しかし徐倫の声がロープを伝う。糸電話!
徐倫の声を察知したエルメェスが「マグロがかかったぁーー」位の勢いでロープを引っ張り上げる!!

ギャオオ

 クロスワードパズルをする乗客を尻目に天井を抜ける徐倫!天井を抜けた徐倫が見た者は……
ヴェルサスのスタンド!!
 張られた命綱に近づいている。

「エルメェスッ!もっとだッ!もっと引っぱり上げるんだぁぁぁぁあああ」
 
機内から全身が抜けた徐倫。今まさにロープに触れようとするスタンドにラッシュを仕掛ける。
「オラオラオラオラオラオラオラ」

 しかし拳は空を切り、姿を消すスタンド。どこだ?上空に開く穴。
そして背後の地面から上体を出すスタンド。ついにロープを掴む。
「大歓迎だ……」
「土足で入ろうがあいさつなしで入って来ようがな………」
「わたしの「穴」に入ってくるのは「自由」だ」「だが」

 再び下半身を機内に潜り込ませている徐倫。

「このピンと引っぱられているロープも中へ入れるようにな!」
「ウリャアアアアア!!」

「ストーン・フリィィーー!!」

 自らのロープを右手で切るストーン・フリー。ただし切られたロープは1/3程。同時にロープを掴んでいた左手にはペンが握られている。このペンは…もしかしてロッコバロッコ所長から盗んだペンか?
 張力から解き放たれたロープの先にはペンが結び付けられている。そのままペンはカッ飛びヴェルサスのスタンドの首筋に命中!!

「ギャアアアアアアアアア」
 たまらず吹っ飛ぶスタンド、そしてダメージを受けるヴェルサス。

「おい……ヴェルサス、大丈夫か?」
 なんとはなしに、のん気な感じな神父。それは神父が無表情であるから。もしかして神父の感情は失われつつあるのでは?
「スタンド能力に目醒めたばかりの君と違って、空条徐倫は刑務所での経験で鍛え上げられている……」「ちょっとした百戦錬磨ってやつだ」
「とっさに飛行機の乗客からペンくらい盗んだりするだろう……」
「徐倫がこの「穴」から逃げたいなら逃がしておけ……」
「もう2度とここに入って来ようなどとは、しばらくは思わないはずだからな」
 えっ?何だって。「もう2度と入ってこようとは思わない」状態がしばらくは無いということ。じゃぁ、入って来るんじゃん(笑)。文庫本では直されるたぐいのセリフですね。
「わたしたちはこのままあと3日ここで待てばそれで良いのだ」

 というか、ケープ・カナベラルに行けよ(笑)。穴を掘って。3日間ヴェルサスと何をするつもりだ(クスッ)。

「聞こえるかエルメェスッ!」「光が見えて来た」
「きっとすぐそこなんだ!!もっとひっぱり上げてくれッ!」

「おおッ!徐倫ッ!」
 
穴の闇から登り来る者の両腕が見える。
「聞こえるぞッ!今おまえの姿が見えたッ!!」
「大丈夫か!?いったい下に何があるっていうんだ!!」

「でも神父もこの中に…いるのを見たッ!」
「改めてこの中に入る方法を考えなくてはッ!このロープを切られたらおしまいだった!」

 そして謎の穴から全身を現す徐倫。その右手には……?…髑髏の指輪が…徐倫はそんな物をしてなかった!姿を現したのは男!おたまじゃくし柄のスーツ!こいつは!?

「聞かせてくれよォオオオオ」
エルメェース…
「今のご気分をよォオオオ」
「このオレを刑務所の下水管の中へ生き埋めにしてくれた…」
「おめーの姉貴殺しのこのオレに復讐できた時の感想をよォオオオ」

 四白眼!ベロリといやらしく舌をだす。
『スポーツマックス』!
 思わずロープを掴む手を緩めてしまい、あわてて掴み直すエルメェス。

ガシィッ

 その隙をつき、エルメェスの奥襟をとるスポーツマックス……よく考えるとつくづく死人のスポマである。
「『地面』は過去の出来事を記憶している」
「磁気テープのように…あるいはデジタル・カメラのように……『父親に銃で撃たれた少年が地面に倒れたことを憶えている』」
「あるいは下水管に生き埋めにされたヤクザのことを……」
「あるいは……今から6年前2005年7月に地面に激突して墜落した旅客機のことを完璧に記憶している」
 エルメェスを引きずり落とそうとするスポーツマックス。
「これがヴェルサスのスタンドだ……」
「『アンダー・ワールド』は地面からそれらを掘りおこす」

「野郎――ッ」
 キッスでスポマを砕くエルメェス。しかし体勢を崩してしまう。

うおおああああ


「お客様」
「当機はまもなく―――現地時間2005年7月21日21時33分に地面に墜落いたします
「全ての電子機器の電源をOFFにしシートベルトを腰の低い位置でお締めになってください」
「ちなみにわたしのお腹にはうしろの座席のお客様のお顔が……」
「衝撃とともに突っ込んで来ました」

 ただいまの現地時間………、

21:29



今週のめい言

「地面に墜落いたします」


○自分が死んだ時間を淡々と語るスチュワーデス(今って別の呼び方するんでしたっけ?)が恐ろしい。「お母さんが死んだ」と泣き叫ぶ人に対してはこちらも相対的に冷静さを保てるが、「今日、ママンが死んだ」と無表情に言われると逆にこっちが不安にかられる。しかし、この機内の人たちは全員死人なのですよね。あまりにも普通、あまりにアッサリ。生きている徐倫とエルメェスの方が不自然な感じまでしてきます。しかし後3分弱で仲間入り?

○スポーツ・マックス。まさかの再登場…。姉を殺し、自分が殺した忘れられない男。エルメェスがここまで徐倫に協力するのも1つは姉の仇とはいえ、人を殺したことへの贖罪(しょくざい)の感情があるのでは。
 しかし品の無いチンピラヤクザですねぇ、スポーツ・マックス。荒木キャラの特徴の1つで「ダークサイドの人間でも1本芯の通ったヤツはかっこいい」というモノがあります。スポマの場合は自分の欲望のみで動きかつ品が無いという…本当に小悪党なのですが、逆にジョジョの世界では滅多にいないキャラとなっているため味のある存在になっていました。小悪党という役柄からでは長生きできるワケがないのですが、もうちょっと見ていたいキャラだったりします。

○各PAGEでツッコマれている神父の「もう2度とここに入って来ようなどとは、しばらくは思わないはずだからな」。「もう2度と」が無ければまともなセリフなんですがね。天国に近づくと不法電波が増えるのかもしれませんね、脳にダイレクトに作用するタイプの電波。

アンダー・ワールドの元ネタ全くワカリマセン!知っている方MAILを下さい。

☆ロッコバロッコから盗んだペンかと思いきや、どうやらアンダー・ワールドが創った機内の物のようです。つまりあのペンはスタンド生成物となり、スタンドにダメージを与えることができる。ムム…、もしかして伏線!?今週の場合で言えば、旅客機の墜落にアンダー・ワールドが巻き込まれればヴェルサスも吹っ飛ぶという論理になります。アンダー・ワールド攻略の鍵かも。

☆さて来週の予想として(1)ウェザー&アナスイの助けが入る(2)旅客機に落ち込む前に何かを仕込んでいる、の2つが考えられます。ただ私の予想としては2つともNOなのではと。冒頭に徐倫たちを追って、ヴェルサスの病室まで来ているW&Aが描かれる程度だと思います。

☆まだ落ちていない機内で墜落後の状態が再現されている(スチュワーデスの腹に顔)のも、破綻しているというかキテイルというか。それなら別に33分という時間に墜落を再現しなくても良いような気もしますが、そこはルールなのでしょうか。とりあえず「旅客機は33分に墜落」すると考えます。

☆アンダー・ワールドがロープを切断しようしていたことから、外界とつながれていない徐倫とエルメェスは機内に閉じ込められたと言えるでしょう。ではここからの脱出方法は?第5部のノトーリアス戦を読むと飛行機とはいえ近距離パワー型なら窓ガラスを破ることは可能である。ただ、窓から脱出できるかというと大きさが足りないような気もします。そこで身体が通るほどの窓といえば…そうコクピット!徐倫とエルメェスはコクピットに向かうと予想。

 とりあえず、今周はここまで!ではでは…。