‘02 27号  Act.118 おもしろい

 

空条徐倫 グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所脱獄3日目

 

ケープ・カナベラルまで車で10時間 オーランド市内

 

新月まで あと3日

 

 オーランド…高層ビルが臨める郊外に徐倫の声が響く。
「近いわ」「すごく近くまで来ている!」
「用心して」「間違いない」
「……神父はこのあたりのどこかにいる」

 徐倫が向かう建物には救急車が入っていく。
 リキエルのバイクに跨っているエルメェスとエルメェスの背中にしがみついているエンポリオ。よく見るとエルメェスの腐り落ちたはずの指はどうやら、ストーン・フリーの糸でつないであるらしい。動くのか?

「急いでッ!第3手術室の用意をッ!」
「患者は8歳の少年です。重傷です」

 病院特有の喧騒を右手にエルメェスが語りかける。

「この建物は救急病院だぞ……神父が病院内にッ!?」

「いるわ」
「理由はわからないが」「ここで決着をつけるッ!」

 早期決着の決意も新たな徐倫。
「エンポリオ……お願いがあるの」
「あんたの持ってるあたしの父さんの「DISC」を渡して来てもらいたいの」
「ここに電話すればSDW財団がこの近くに来てくれる」
 エンポリオにメモを渡す徐倫。 

「ぼくも中へ行く…………」

「ええ…でもまずDISCを渡してもらいたいの…神父の方も「逆」にあたしの接近を感じているはず」
「SDW財団にあたしが会うわけにはいかない…重要なことよ」
「あんたとは離ればなれになりたくない」
 母親が子どもに言い聞かせるように話す徐倫。エンポリオの頬にキスをする。
「リキエルから盗った携帯があるから持ってて」

{バックシマス!}{バックシマス!}
 患者を降ろして空になった救急車が後退してくる。救急車の左に回るかたちで避ける徐倫たち。

{バックシマス!}{バックシマス!}
 そして…なんとその救急車の右にいるかたちでウェザーとアナスイがたたずむ。

「どっちのことを言ってるんだウェザー…」
「すでに近くまで来てるってのは徐倫のことか?それとも神父のヤツがそばにいるってことか?」

「違う。3人のことだアナスイ
「徐倫と神父ともうひとり」「敵が!3人がちかくにいる」
「だがまだ神父と出会ってるわけではない、先に見つけたい」
「探すのだ!」「どこだ!?」「どこか建物に入ってるのか?」


「すまないがヴェルサス」
「君に感想を聞かせてもらいたいんだが……この料理のことだ」「一口でいい」
「君に食べてもらいたいんだ」
 緊迫した空気を無視するかのように…料理を前に不気味な余裕を感じさせる神父。
ヴェルサス登場…。もみあげのせいかロシア人のような風貌である。首に渦巻きのような奇妙な模様のタトゥーを持つ。車椅子に乗っているが、すでに歩けるまで回復しているらしい。そんなヴェルサスに味見(というか毒見)をさせる神父。貝アレルギーらしい。残念ながら、神父の注文した「ヒラメのプティング」にはソースにホタテが入っていた。

「君の靴のサイズは27センチか?」
「身長は181センチ?」「体重は72sちょうど?」
「服のサイズは52号?」「腕時計のベルトは穴2つめ?」
 そして自分の血圧を測る神父。血圧を含めヴェルサスと神父のそれは全てが一致している。
「おもしろい……」

「いったい…プッチ神父…なにが言いたいのです」
 何か遠回りに「おまえはオレの身代わり」と言っているような……。
「それよりもわたしはまだ自分の「能力」をみていません」
「さっきからここへどんどん近づく者がいるというのに…」

 なんとここまで緊迫した状態でまだ自分の能力を知らないどころか発現していないというヴェルサス。

「うむ………………」
「仕方がない。それはそれで構わないかもしれないな…」
 そうなの?ちょっと頭のネジがゆるんでいるような感じの神父。思わずヴェルサスも横目でジロリ。

ド ドドドドドドドドド ドドド

 病院内を神父を探し歩く徐倫とエルメェス。
「ものすごく近い…」「この辺だわ」
 まさしく「この辺」!徐倫の右後方の扉の向こうに神父とヴェルサスがいる!

「能力が見えないのならそれはそれで仕方ない」
「『なるようにしかならない』という力には無理に逆らったりするな……」
「『天国へ行く』という事はそれさえも味方にすると言う事だからだ」

「もしかしたら徐倫はここを見逃すかもしれないしな…」
「それにしてもこの料理、貝類が入ってないというから注文したのに…よかったら君が食べないか?」

「………………

 料理から……指…。最近、おにぎりの中に指が入っているというニュースを聞いたが…。

「……プッチ神父」
 神父を呼ぶヴェルサス。

 さらに終わらない。指が生きているように蠢(うごめ)く。
「ぼ…ぼく……は」 
 いや生きている!

ガボッ ガボッ   グボオーーッ        べチャリ

 火山から溶岩がふき出すように、料理の皿から何者かの手と顔が覗く。
「ぼくは…撃たれ」「……たんだ!!」

 子ども!!まさかエンポリオ!?

「救急車に乗れたのは楽しかった」
「でもぼくのパパはぼくのことが嫌いなんだ……」

 どうやらエンポリオではないらしいので一安心。死人のような子ども(楳田かずおの絵みたいだ)。涙を流している瞳孔は散逸し、亡霊のようだ。首には銃痕とおぼしきものがあり、そこから血を流している。
「ぼくを撃ったのは……」

「ぼくのパパだ」

アアーーー

 首の銃痕から飛び出した弾丸がドアを突き通り…そして冒頭に救急車で運ばれてきたマイクの父親を貫いた!もちろん、接近していた徐倫とエルメェスもそのことに気が付く。

「あ……あなた」
「な…なにが!?」




今週のめい言

「それはそれでかまわない」


○煽り文の「胸騒ぎのホスピタル」も素敵ですけどね。昔の少女漫画のタイトルみたい。あまり触れてなかったですけど、煽り文は微妙に編集者のセンスが迷走してて、密かに楽しみだったり。

「それはそれで構わない」「仕方がない」「なるようにしかならない」……客観的には諦めるているような態度であるが、『天国へ行く』ヒントであるのかもしれない。敵であるはずの徐倫やウェザーの存在も含めて、全てが神父のためとなる…。『天国』とは「敵がいない世界」の具現化ではないでしょうか。こちらが何をしなくても、敵の方から消え去っていく。闘わずに…闘うまでもなく勝利する事。イメージとしては、「バキ」で言うところの『護身完成』ってやつですかね。

○今度の戦場は「病院」。そこで問題になるのがヴェルサスの能力。いったい何でしょうか?ストレートに考えれば、「ケガをさせた者に同じケガをさせる能力」といったところでしょうか。そこに恨みとかが雑ざってくるのかも。自分を撃った父親を撃ち返したとも…恨みを反射?

SDW…SPWの誤植でしたね。気付きませんでした(恥)。

○SPW財団も思い出せば第2部(Part2と言うべきか)より登場です。スタンドという能力…「個性」と言い換えてもいい設定のため組織対組織というシチュエーションはほとんどないです(第2部で吸血鬼VS.SPW財団特別科学戦闘隊というのがありましたが)。
 思いつきですが、第7部はSPW財団が敵に回るというのはおもしろいのでは。SPW財団を承太郎たちにも気付かれずに乗っ取った男が真の敵。SPW財団が今まで接触してスカウトしていたスタンド使いが主人公を襲う(主人公の設定は全く考えてないです)。何かオモシロそうなのでもうちょっと煮詰めてみようかな。
 そういえば荒木先生は団体戦が嫌いだそうです。自分の責任が他人にも及ぶところとか。そういう団体嫌いが個性の固まりを表現しているのでしょうか…もろに作品に反映されていますね。

○B・ラプソディーが無関係の人を巻き込むタイプ(パニック系)。スカイ・ハイがピン・ポイント型。さてヴェルサスのスタンドは?ズバリ中間のタイプ!(中途半端な答えですナ)。ヴェルサスの能力をガチンコで予想すると「ケガの原因を再現する能力」なのでは。特に「恨み」とか「ケガをさせた者に返す」とかは関係なく(父親に銃弾が返ったのはミス・ディレクション)、好きな場所に自由にケガの原因を再現させる。ただしケガの原因を再現された者はケガが治ってしまう。よって再現したケガでダメージを与えられないと、完治した患者が残るだけなので攻撃の手段が減っていく。

○来週あたり早々と明かされそうなのでスタンド名を予想。“ボヘミアン・ラプソディー” “スカイ・ハイ”と懐古な元ネタが続いたので今度は新しいのが来そうですが。やはり最近、一番目立っているのはスリップノットでしょう。意味もなく長い名前ということでレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか。宗教関係で考えてみるとコーリング(「神の啓示」という意味がある)とか、古い方で考えてみるとジューダス・プリーストとか。数をそろえても全然自信なし!

 ではでは。