‘02 17号  Act.110 バンザーイ

……なに?この題。

{専門家によるとこのファンタジー・ヒーロー事件で最も打撃のあるのはアメリカ・伊(イタリア)・仏(フランス)・日本で、特に日本は年間3兆円以上の利益をコンピュータゲームアニメーションから生んでいるため、これを失う日本経済は壊滅的な…………}

『充実感』……」
「これがオレの『燃える』目的だ!」

 飛行機の外を飛ぶピーターパンを見つめながらラジオを聞くウンガロ。

「オレは今まで転がり落ちていくだけの人生をただ理由もわからず生きて来た……」
「オレはこの『能力』のために存在していたんだ…」
「このオレを今までコケにしてくれた社会が「希望」のない暗黒に落ちて行くのを見るのはよォオオオオ」

 邪悪の能力。スーパーヒーローをリアライズさせ夢を実現させるための能力ではなく、「心の宝」を失わせる能力。しかも絵画や壁画限定ではあるが、芸術という「人類の遺産」を亡くしてしまう。ある意味、マックイイーンと似ているタイプ。タガの外れた破壊衝動を自分に向けたのがマックイイーン、社会全体に向けたのがウンガロ。

「だ…だめだ!追いつけないッ!」
「飛行機を追跡できる気象現象はないッ!」
「逃げ切られたッ!」
 もはや能力の解除は不可能!ウェザー・リポートを待つのは…。
慌ててゴッホ(の自画像)に向き合うウェザー。
「きさま!その銃に近づいてみろッ!触れたらきさまを殺すッ!」

 もちろん蹴りで殺すのでしょうね。

「わたしが…?」  「まさかだろ」
  「間違って自分を撃っちまったらヤバイ……」 「わたしも『ゴッホの肖像画』」
「ゴッホはすぐには死ねなかったんだ」
        「あと一発…」
「ゴッホの人生は完結する」 「わたしじゃあない……」
  「結末はあんただ…………」

 鈍く光る銃口。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ダットのごとく駆け出すウェザー。ゴッホの…ウェザーの人生にカタをつけてしまう拳銃から逃げ出す。
その目の前をパトカーが、後部のドアが本のようにめくれているあのパトカー…。

ガァアアァ
 パトカーから山羊に襲われて落ちたアナスイがウェザーのもとに雪崩れこむ。腹に石を詰め込まれ、母ヤギに縫われたアナスイ。もはや風前の灯火。アナスイにぶつかられたためにウェザーも後方に倒れこんでしまう。その先には拳銃が!


 最期の弾丸がアナスイの頭を貫く!ウェザーがドロドロの溶け始める。魂が崩壊を始めてしまった。魂の無い肉体も生きることはできない。まさしくウェザーに最期が訪れてしまったのだ。そして、それはアナスイにも同じ事であり魂が崩れる。

「やったーっ」「やったーっ」
「ストーリーどおりだァア!!」
「バンザーイ!バンザーイ!」
「ハッピーエンドだぁあ」

「終わった」
「結末どおりだ。わたしはあんたのかわりに幸せに生きるよ」

 勝ち誇るゴッホのムナグラを掴む腕。


「『いっしょに空を飛んで遊ぼうよウェンディ』」
「『パッとピーターパンがあらわれました』」
「『だめよ!もう帰らなくっちゃ…だってあたしたちは大人になるんですもの』」

「うるせーぞ!ブツブツなにひとり言いってんだこのガキ!」

 ラジオをヘッドホンで聞いているんだから聞こえないだろ、普通は。よっぽど耳が良いか…単なる子ども嫌いか。

「なんだ!?この本は!?」
 ピーターパンの本を見つめてかなりのショックを受けたような雰囲気のウンガロ。

「よくやってくれた」
 ゴッホの自画像に地面イッパイ変なキャラを描かせたアナスイ。……なんでカイゼルひげ?「PUT BACK」と描かれたこのキャラもボヘミアン・ラプソディーの能力効果によりリアライズ(実体化)する。
「このゴッホに」「ヒーローを創って描いてもらった…」
「『ストーリー』も作った!」「この『ヒーロー』には『能力』がある!!」
「全ての『ファンタジー・ヒーロー』を元に戻す能力………!!」 

 ゴッホが四散し始める!

「そしてこのヒーローの能力も現実のものとなって完結するッ!!」

 つまりやることをやったら自分も消えていくということでしょうか。何とも矛盾をはらんだ存在ですね。もっとも珍しいことではないです。自身を溶かす胃袋みたいなのもの。

 母ヤギも子ヤギもゴッホも、そしてミッキ-も小人も姫もケンシロウもラオウもスパイダーマンもヴィーナスも全てが元に戻る。至福の魂が甦る。
「戻るぞ…『ストーリーどおりだ』……アナスイ…」
「おまえも…オレも無傷の『肉体』のところへ……」


「ねえ…」「ねぇってば」
「もうすぐキーウェストに着陸なんだけど…ご本返してほしいの……」
 ピーターパンの本を掴む指にシワが刻まれている。

{世界中をパニックに陥れている『ファンタジー・ヒーロー事件』の続報です}
{今入った報告ですが……}
{突然全ては元に戻りました}
{事件はあっけなさ過ぎる結末を迎えました}{全ての絵本も絵画もマンガもテーマ・パークもキャラクターグッズも…ビデオテープも元に戻りました!}{ボッテチェルリのビーナスも白雪姫も帰って来ました}{スパイダーマンもスヌーピーも帰って来ました………}

 ボヘミアン・ラプソディーの敗北を悟り、心が折れてしまったウンガロ。ガックリと首を傾げ、急激に老けこんでしまった。

「寝ちゃってんの?」「この本たいくつ?」
「希望がいっぱいつまってるお話なのに」

『ボヘミアン・ラプソディー』
本体名 ―― ウンガロ

希望のない人生に戻ったことを
悟り再起不能――。
全世界の死者被害者数不明。

{なお、なぜか「ピノキオ」だけが復活して来ないとの情報が……}

→To Be ConTINUED




 今週の決着のつけ方はどうでしたか、皆さん。う〜ん、ちょっと強引でしたね。むりやり描かされたものに創作のエネルギーが宿るのかって感じもしたし。「ストーリーも創った」っていうけど、描いたのはゴッホだし。ウェザーが自分で描いて「ストーリーがある」と言うならまだ分かるのだけれど…。どうやら落書き程度でもリアライズするらしいですね。それなら私が面白半分にかいた「寒梅スマッシュ」という、酒瓶から両手が生えているキャラで武器に二本の酒瓶を持つという…私が16歳の時の作品もリアライズして欲しかったですね(絶対イヤだ)

 ところでウンガロがピーターパンの本を見て何故あんなに驚いたか最初は解からなかったです。ウンガロが実はピーターパン症候群にかかっているから、ついうろたえてしまったのかと思いました。あれは最初のページで飛んでいたピーターパンが元の絵本に戻っていたのを見て驚いたのですね。

 ピノキオはジョジョの世界から完全消滅してしまいましたか……。

 とりあえず、三巨頭のうちの1人を倒しました。結構長かったような気がしますが何週間やっていたのでしょうか。調べてみると12号からですから7週間でしたか…。長いような短いような。普通ですかね(意味の無い思考ですナ)。

 そういえばまだ「ウェザーは何者?」という謎は残っていますね。

 来週は徐倫が何者かに落とし前をつけるらしいですが、ロメオですかね。でも、現在の徐倫にとってロメオって、もう関心の無い存在なんでしょうか。父親という精神的支柱を取り戻した徐倫にとって、ロメオのような薄っぺらな男なんてもはや怒りとかを超えて無関心な存在でしょう。でもぶん殴るのでしょうね(笑)

 ではでは、また今度!