‘02 9号  Act.102 誰を?

 スーパーマーケット。赤ん坊をベルトで前抱きにした母親が、フランスパンなど幾つかの品物をいれたカートを押している。下着売り場の前に来ると、母親は辺りをうかがう。誰も自分に注目していないことを確認すると…

バッ  ババッ

幾つもの下着を赤ん坊と自分の間に押し込む。

「ありがとうございます。大変ですね赤ちゃん。お荷物…わたしどもでお車までお運びいたしましょう…」
「いえ〜〜〜。必要ありません。ありがとう」
 万引きをする母親。それとて、GDSt刑務所の中で起きた出来事に比べれば小川のせせらぎのように緩やかな時間の流れの日常にすぎない。しかし、日常と紙一重で存在する災厄のように黒衣の人物(Man In The Black)が母子の側に座っている。その人物が目深に被っている帽子には宝石をあしらっている十字架が輝いている。それに興味を持った赤ん坊が触ろうと手を伸ばす、その拍子にバランスをくずし荷物(当然のことながら万引きした物も)が崩れ落ちる。

ガシィ  ガシィ    グイ

 しかし黒衣の人物が荷物の落下を防ぎ、赤ん坊の体勢を直す。同時に帽子が脱げる。言うまでもないだろう…黒衣の人物はプッチ神父である。しかし体調が悪いようである。

「少し疲れたようなので休んでいただけなのです。お子さんこそ大丈夫でしたか?」

 その時、母親の腕に触れていた神父の右手からホワイトスネイクの指がわずかにのぞく。
すると腕時計の針が猛烈なスピードで回りだす。あわてて手を離す神父。

「大丈夫ですか?神父様」
 母親がズーッと店員の様子をうかがっているのが楽しい。
しかし、時計の針の猛回転に続き、小指と薬指の爪がグギギと伸び出す

「し…失礼する」
『スタンド……もう『ホワイトスネイク』がわたしのスタンド能力ではなくなっている………』
『なにか、いったい何なのだ?』
『なにかが暴走している』『コントロールできない……』『わたしの意思を無視している……』
『何かの「力(パワー)」』

 神父の中で融合した赤子が暴れているらしい。何とホワイトスネイクが封印状態にある。

『……この「力」の中に希望だけは感じる……』
『承太郎の記憶していた『DIOのメモ』…この「力」に必要なのはやはりそれか?』
『「時」と「場所」!』
『北緯28度24分、西経80度36分』『その場所は『ケーブカナベラル・ケネディ・宇宙センター』
『時は『新月』!あと『6日』後ッ!

「ひっ…な…なによこれ!?」「なによこの「卵」ッ!!」
 神父の触った卵の黄身がヒナへと変化しかかっている!さらに!!
「きゃああああああああああ」
 赤ん坊の、神父のふれた左半身が……オッサンと化している!!!キモッ

 さて、特筆すべきは神父のニュー能力。単純に考えれば「時間を進める」能力といえる。時計と卵に作用した事から生物、物体を問わずに効果を発揮するらしい。しかも、これはプッチ神父の意思とは関係なく発動する。それどころかホワイトスネイクがスタンドとして機能していないという…。ザ・ワールドの化身である緑の赤子と融合したホワイトスネイクがどのようなヴィジョン、能力を持つのか?新たなる巨大な能力を得るための前段階であることは容易に予想できるが…。以後を刮目してみよ!

 さて、所替わってGDSt刑務所、十数人の警備員に銃口を向けられている徐倫。

「み…見ろッ!」「子どもだ!」
「ケガをしてる「子供」がいるぞッ!一体どういう事だ!?」「なんで刑務所に「子供」がいるんだ!?」
「しかもあの女は!!」「懲罰房棟で唯一生き残った女だッ!」
「『ミューミュー主任』が暴行を受け捕まっているぞッ!!」
 ここで人質であるはずのミューミューを遠ざける徐倫。
「離れたぞッ!」「射殺しろォオオーーーッ!!」

「ちょっとごめんなさい」
「すみません通させて……」「おいでエンポリオ」
 何事もなく警備員の間を通り抜ける徐倫。

「『誰を』だっけ……?」「誰を射殺するんだ…オレたち?」
 呆けた表情を浮かべる警備員の1人。そう…この状態は。

「よくやったぞミューミュー」
「この先も頼むぞ!『ジェイル・ハウス・ロック』!「3つ」しか覚えられない無敵の能力で!」
 ミューミューのスタンド能力を逆用する徐倫。

 ところでJH・ロックが壁を潜行しているのは、表面積を大きくすることでより多くの人間と接触し能力下に入れるためなのでしょうね。しかし本当に面白いシェイプ(姿)のスタンドだなぁ。グレイトフル・デッドに匹敵する個性的な造形美を感じます。

「「子供がいるぞッ!(記憶@)」
「懲罰房で生き残った女だ!(記憶A)」
「ミューミュー主任が暴行を受けて捕まっているぞッ!(記憶B)」
「離れた!(記憶C)」
「撃てェエエエエ――――ッ!!(記憶D)」
 これでめでたく記憶Aの徐倫が消え失せ、後はこれのくり返し。あれっ、でも記憶Aと記憶Bが入れ替わったら徐倫は撃ち殺されるのでは…。と言うのは杞憂でしょう。この場合、警備員の数の多さが逆に徐倫を助けているのです。彼らは恐らく兵士としての訓練も積んであるはずです、そして報告の癖があるためついつい状況を口に出して言ってしまう。その結果、自分以外の言葉も記憶となってしまい記憶@〜Cがかなり重複してしまいます。覚えては消えていく、覚えては消えていくのくり返し。

 エンポリオの治療のために医療房棟を通る徐倫、そこで1年ぶりのあの人が。
「ヘイッ、徐倫!」「エンポリオ何やってんの?おまえらか?この騒ぎは?」
「どこへ行く気だ?」

脱獄です、これからここを出るんです」
 決然と答えるエンポリオ。

 唖然とするエルメェス。
「どこだって?」

「覚悟はできている…」
 窓の外を見つめる徐倫。
「『刑務所(ここ)』の中以上の……」

スタンド名「ジェイル・ハウス・ロック」
本名(←間違っていると思われる。本体名が正しい)
 ミューミュー:本体の情報をストーン・フリーに記憶され反撃不可能

『空条承太郎の記憶DISC』
エンポリオ少年のポケット内に所持。


目的地 − ケーブカナベラルケネディ宇宙基地(センター)
時間 − 新月まであと6日。

            ←TO BE COUNTINUED




○「TO BE COUNTENUED…」が出たという事は来週は場面が展開するということはほぼ間違いないでしょうね。アレッ!「地獄の門」はほったらかし?いやいや、そんなわけはないでしょう。予想としてはもう1つの脱獄ストーリーが展開されるのでは。つまりアナスイ&ウェザーがタッグを組み、脱獄を試みる。う〜む、この予想が当たったら一部の人たちは大熱狂しそうですね。

○予想。実は「地獄の門」じたいがスタンドで、脱獄の意思を持つ者が門をくぐると特殊な空間に跳ばされてしまう。

○それにしても哀れなミューミュー。脱獄を防ぐ能力を、脱獄するのに使わされるとは……。恐らく、この後、ミューミューは辞職するでしょうね。少なくてもホワイトスネイクの命令ではなく、職業意識で行動していたミューミューにとってはこれほどの屈辱はないでしょう

○さて、気になる神父でありますが…ジョジョ・ラスボススタンド恒例の時間系能力なのでしょうか?どっちかというと、今回は時間系能力よりもレクイエムのように「精神を支配する能力」の方が6部にはあっているような気がします。

○来週は取材のためジョジョはオヤスミです。「次の舞台となる場所への取材」!?ということはヤッパリ宇宙センター。荒木先生、半人半豚に会ったりしなければいいですけど……そんな妄想から出る心配は余計なお世話ですね。

ではまた来々週!!