『承太郎のDISCを捨て去るにはリスクがあるが』
『承太郎が封印した「天国へ行く方法」そのものはもう既に読んで覚えているッ!』
『DISCはもういらないッ!』『あとは「実行」するだけなのだ!』
『あの「生まれたもの」に近づいてッ!』

 企てる神父。眠る赤子。冷えるアナスイの身体。崩れるDISC。そして…迷い苦しむ徐倫。

「どうする気だ?空条徐倫ッ!」
「もはや究極の選択ではないだろう」
「死に行くアナスイにひきずられておまえの父親が朽ちて行ってるんだぞッ!」


‘01 52号  Act.95 最後の最後


「うおああああああああああああああああああああ」

「オラオラオラオラオラオラ」
 1度止まったストーン・フリーだがホワイトスネイクへのラッシュを再開する徐倫。

『わたしは生まれたものさえ……手に入ればそれで良いのだ!!』
 ガードに徹するホワイトスネイク/神父。時間稼ぎである。先週も書いたが徐倫は承太郎のDISCを取りに行くに決まっているのである。「父親の記憶を必ず取り戻す」、徐倫の驚異の精神力…それを逆に利用されるのである。はたして…。

バッ…   神父の手錠を外しアナスイに駆け寄る徐倫!

「勝ったッ!」「やはり父親を選んだ」
 緑の赤子の方を振り向く神父。
「『らせん階段』…!」  「『カブト虫』!」  「『廃墟の街』!  『イチジクのタルト』!」

「『カブト虫』!…『ドロローサへの道』!『カブト虫』!」
「『特異点』!『ジョット』!『天使(エンジェル)』!」
「『紫陽花』!『カブト虫』!『特異点』!」

「『秘密の皇帝』!!」

 秘密の言葉、暗号、鍵!天国へ行く言霊!!そして目覚める赤子!
それを見た神父はホワイトスネイクで自らの右手を傷つけ…骨をズルリと引き出す。
あれ、これって先週明かされたDIOからのプレゼントの骨?違うかな。赤子の興味を惹くために自分の骨を引きずり出したのか。

「興味を示してくれたか?」
「君の方からわたしの方へ来てくれるのか?」
「これで全ては幕を開けるのか!?」
 赤子の触れた神父の左腕が崩れる。だが神父の顔には確信の笑みが!
「これで君の世界へ共に旅立てるぞッ!DIOッ!」

ガオォン  草叢(くさむら)に飛び込む(引きずり込まれた?)神父。




 徐倫。駆け寄るが一瞬遅くDISCはアナスイの身体に取り込まれてしまう。ストーン・フリーにより貫かれた背中と胸を糸で縫合する。だがピクリともしないアナスイ。

「そ…そんな……こんなことが…」
「バカな…そんな……こんなことが…」
 全ては遅いのか?ダメだったのか?失ってしまうのか?
「近くに誰かいないのッ!」「だ…誰かッ!」
「看守ッ!ここにいるわッ!」「誰かッ!」
「医者が必要よッ!」

『ダ……』
『ダイバー……』
『ダウ……ン』
 だがダイヴァー・ダウンは指先がかすかに発現するだけである。
『聞こえ…るか?……おい…聞こえるか?……F…F……』

 隣には消滅しまくってついに顔面のみになっているF・Fがいる。応答はない…。

『徐倫が悲しんでるぞ……ええ?……やってくれたよな…おい…おまえがよォ……』
『F・F……おまえのせいで…こうなっちまったんだ…』
『くそ……さっきから寒いんだ……スゲー寒い……』
『既に……心臓も止まっちまってるみたいだ……』

 相変わらずF・Fの応答はない。そして自分は肉体的には死亡していると言うアナスイ。

『聞いてんのか?F・F……どうやらオレの体の中に彼女の父親のDISCが入っておれの生命と一緒に消えちまうらしい…。出そうと努力したんだが意識ももう消えそうだ』
『いいか……良く聞け……おまえもグズグズに崩れていってるようだがオレのを全部をやる……』
『おまえがやるんだ…オレの知性をおまえが使え!残っているオレの「生命」も全部使い切ってもいい……』
『くれてやるよ!おまえがオレの体の中に入って徐倫のためにDISCを取り出すんだよ!』
『プランクトンのおまえにしかできないッ!』

 F・Fの応答はない。自分にはもう何もできないと言うアナスイ。

『答えろッ!F・Fッ!』
『おまえはオレと取引したんだぜ!オレの命令は何でも聞くとなッ!』『!!約束は守ってもらうぞッ!』
『おまえが生きろッ!』
『おれの体を何してもかまわないッ!』
『もたもたするなッ!オレの意識が
消えていく……』

ブワアアァア ついにアナスイの身体から魂が抜ける。

「!!」それに気付く徐倫。
「こ……これは!!」「バ…バカな……」「そんなバカなッ!」
「アナスイッ!」

「違う…よ」「徐倫……」
「安心して…違うんだ……」
「やったな……」
「アナスイがDISCを取り戻したんだ……」

 傍らに横たわるアナスイの胸には傷口をふさいでいるプランクトン、そして承太郎の記憶DISCがある。

「アナスイじゃあない!」「F・F、あんたなの?」
「しゃべってるのはあんたなの?」

「あたしの一番怖い事は…………」
「友達に「さよなら」を言う事すら考えられなくなる事だった」
「でも…最後の最後に……それを考える事ができた」

えっ!!…

「徐倫……アナスイが目を醒ましたら伝えといて……」
「体はあんたのもの…あんたの「知性」と「生命」を使って傷をうめといたって……」

「ちょっと待ってッ!」「な…なに言い出すのよ エ…F・F!!」

「さよなら……徐倫」
「もうここにはいられない……フー・ファイターズは消える」

「なに言っているのよッ!」「バ…バカな事を!!」

「あたしを見て徐倫」
「これがあたしの「魂」…これがあたしの「知性」……」
「あたしは生きていた」

「あの神父からあんたのDISCを必ず取り戻すッ!「フー・ファイターズ」のDISCをよッ!」
「そうすれば甦れるッ!!」

「それはきっと別のフー・ファイターズ」
「あたしじゃないと思う」
「これがあたしなの」
「さよならを言うあたしなのよ」
「最期にさよならが言えて良かった…徐倫」
「これでいい徐倫…これで…いいのよ」
「DISCを取り戻せてよかった…」

ビュウウウウウウゥゥゥゥゥゥ  一陣の風。

「F・F?」

 姿を消すF・F。

「F・F…」

 もう逝ってしまったのだろう。

「F・F…」

 生きていた確信を胸に魂は風と共に去る。



{ガ  ガガ}
          {応答しろF・F。君を見失っている}
{F・F}        {今どこにいる応答しろ!!F・F}

………To Be Continued




 風に還る戦士・ワムゥ。ワムウの人生の目的は戦うこと。そして自分より高みにいる戦士に出会ったとき、彼は消え去る瞬間にも憂いや怖れを持たず誇りと笑みで旅立った。
 F・Fの人生の目的は「自分は何者なのか?」ということを知ることであった。自然に生まれた動物や人間とは違い、F・Fはホワイトスネイクにより知性を与えられた。この場合、知性は生命と同義である。知性がなければF・Fは自分が生まれてきたことも考えさえしなかった。F・Fは自分の知性が偽りのものであり、本当は誰からも必要とされていないのでは…と思っていた。故に最初はホワイトスネイクの命令を聞いていた。次に自分を理解し、力を貸してくれと言った徐倫についていくことにした。F・Fが最も恐れることは知性の消滅。自分が何者かもわからないまま消えていくのは怖い。F・Fは徐倫について行ったことで数々の思い出を手に入れた。F・Fが最も恐れることは思い出の消滅。自分が生きた証を失うことは怖い。だがF・Fは答えを見つけた、「自分は徐倫のために生まれたのだ」…そして魂を持っていた自分を見て言う「あたしは生きていた」。仮でも偽りでもない生命。もう怖くない。知性は消えない、思い出は去らない。「自分は何者なのか?」「徐倫にさよならといえる存在」。悔いのない笑み。笑みで旅立つF・F。さよなら…F・F…。魂は風と共に……。



○さて何やら呪文を唱えて赤子の気をひいた神父。こういう単語の羅列はシンプルであるがゆえにセンスが問われます。私もやってみましょうか。「さくら」「甲冑」「ドリームタイド」「畑仕事」「ハンバーグ」「むちうち」「ダムでデート」「きんぴらごぼう」「キュピズム」「砂漠」「高速スライダー」「モンマルトルの丘」「蟹座」……なんか心理テスト受けているみたいだな。

○ちなみに「ドロローサ」とは恐らく「ヴィア・ドロローサ(悲しみの道)」。かつてイエス・キリストが十字架を背負いゴルゴダの丘へと歩いた時に通った道。「ジョット」とは恐らく「ジョット・ディ・ボンディーネ」。13世紀の画家であり西洋絵画の父と言われるほどの偉大な画家。代表作として「キリスト哀悼」があり、磔刑となり死したキリストの遺骸を下ろす場面が描かれている。その絵にはキリストのために涙を流す天使達の姿もある。

○もしかしたらカブト虫というのはスカラベ(別名、神聖カブトムシ)を表すのかも。スカラベは不滅と再生の象徴。イチジクはエジプトでは生命の木であり、エデンの東にあるとされ再生を表す。紫陽花は思い出。らせんは生と死、進化と退化の神秘を表し階段は上昇や超越、転じて天国へ行く動作をあらわす。あの呪文にはこのように深い意味があります!……な〜んてね。決めつけるのは良い事ではないけれど、こうやってこじつけるのも楽しいものです。

○さて…徐倫が承太郎の記憶DISCを、神父が緑の赤子を手に入れてそれぞれが望むものを得た状態。仕切りなおしと考えていいでしょうか。来週の場面は(1)GDSt刑務所に帰還。もちろん脱走扱いなのでエンポリオの屋敷幽霊に居候。アナスイ入院で徐倫、ウェザー・リポート、エンポリオ、エルメェスで作戦会議。(2)F・F消滅で呆然とする徐倫の元にウェザー到着。「父親のDISCを取り戻したのか、全て終わったな」というウェザーに対して「始まったばかり、あいつを許す事はできない」と神父を追う決心をする。どっちかというと来週もまだ湿地帯にいるような気がするけれど。

○神父はどうなるのか?(1)神父は刑務所に戻るのか?見かけ上は変わらずまた刑務所に勤務する。(2)それとも絶対的に刑務所を支配してしまう。う〜ん、自分の中では五分五分という感じだなァ…。どっちも有りそうだ。このまま徐倫たちが刑務所から脱走してなんてこともあったりして…(まさかね)

○今週号で今年分の号は終わりですね。早いものです。去年、ジャンプフェスタに荒木先生を見に行った事が先月の事のように思い出されます。一応、誰に見せる気もなく書いたレポートがあるのですが、最初の方のやる気満々で書いている文章と最後のしりきれトンボで終わっているギャップが読み返すたびに自分の事ながらおもしろいです。

ではまた来週!