‘01 51号  Act.94 謝罪の印

「なぁ…知ってたか?プッチ」
 大きなベッドの上に寝転がり、それぞれ本を読んでいた生前のDIOと若き日のプッチ神学生。
「パリのルーブル美術館の平均入場者数は一日で4万人だそうだ」
 DIOが手にしていた本にはモナ・リザの絵(の写真)が載っている。

「この間マイケル・ジャクソンのライブをTVで観たがあれは毎日じゃあない」「ルーブルは何十年にもわたって毎日だ……」
「開館は1793年」「毎日4万もの人間がモナリザとミロのビーナスに引きつけられこの2つは必ず観て帰っていくというわけだ。スゴイと思わないか?」

「スゴイというのは数字の話か?」
 訊ねるプッチ。

「そうではない……」今度はミロのヴィーナスの写真のページをめくるDIO。「すぐれた画家や彫刻家は自分の『魂』を目に見える形にできるという所だな」
「まるで時空を越えた『スタンド』だ…」
「そう思わないか?特にモナリザとミロのビーナスは…」

「興味深い話だな…」「レオナルド・ダ・ヴィンチがスタンド使いかい?」

「なぁ………わたしは君のことを言ってるんでもあるんだ」
「君のホワイトスネイクは『魂』を形にして保存できる」

 DIOの持っている本のタイトルが読める。『ルーブル美術館』と書いてある(と思う)。そしてプッチの右手首を掴むDIO。
「君はわたしをいつか裏切るのか?なぜわたしを襲わない?」
「君はわたしの弱点が太陽の光で昼…暗闇で眠るのを知っている」
「わたしの寝首をとればいいだろう……」
「わたしの『ザ・ワールド』をDISCにして奪えば君は王になれる」
「やれよ………」

 絡まる視線。意思。思惑。

「そんな事は考えた事もない…ぼくは自分を成長させてくれる人間が好きだ」
「君は王の中の王だ」
「君はどこへ行きつくのか?ぼくはそれについて行きたい」
「神を愛するように君のことを愛している」

 プッチの手をとり自らの額にめりこませるDIO。ザ・ワールドがDISC化する。しかしプッチはDISCを抜くことはしない。そして身体をプッチから離すDIO。

「君を侮辱してしまったか…すまない……」
「思ってもみなかったのだ…話をしていると心が落ちつく人間がいるなんて……」
「君がいなくなるのが恐かったのだ…」
「君は気高い聖職者になれるだろう」

「それを受けとってくれ…謝罪の印だ」
「今わたしの体から抜き取った」
「君がどこにいても……わたしは君にパワーを与えるだろう…」

「……………」
 はたしてプッチの手に握られていたのは……「DIOの骨」であった。

 時空は替わり…現在。

「どっちみち数ミリだ。数ミリメートルで決着がつく」
「おまえの射程制空圏に正確に数ミリ入ることができれば拳をたたき込める」

 さて解かりにくい表現である。恐らく腕のリーチはホワイトスネイクの方が長いのであろう。つまりホワイトスネイクの持つ射程にあえて自ら入り拳をいれると言っているのだ。ただし相討ちになる気はないのでホワイトスネイクの拳をギリギリかわせる間合いをとる。それがホワイトスネイクの射程制空圏に数ミリ侵入するという意味であろう。
 それに対してさらに解かりにくい話をはじめるプッチ神父。

「崖に激突して死ぬツバメがいるそうだ…」
「そのツバメは得てして他のツバメよりもとても上手にエサを捕獲したりするのだが…」
「宙返りの角度の危険の限界を親ツバメから教わっていないためつい無謀な角度で飛行してしまう」
「だがその親は教えないのではなくそのまた親から教わっていないので教えられないのだ
「彼ら一族は短命な者が多く、なぜ事故にあいやすいのか気づいてさえもいない」

「承太郎は短命だったな」

 訳してみると……、短命のツバメ一族は空条親娘の例えだろう。おまえらは(エサを上手にとれるがごとき)少しばかり優秀かもしれないが、それゆえに(崖に激突するように)危険に首をツッコミ命を落とす。だが親がそうであったのに娘のオマエも危険に首をツッコム。おまえらも短命な一族であり(ツバメと同じく)その理由を気づこうとしない。
 ただ単に「承太郎は短命だったな」を言いたくて短命がからむ話をしただけという可能性もあるが…。

「ウリャァ!!」

 怒声一閃!徐倫は左ストレート。神父は左貫手を放つ!!
なんと神父の中指には小さな十字架が刺さっている。お互い最小の動きで攻撃をかわす…はずだったが神父の指先に刺さった十字架が徐倫の額のDISCにあたり眼を隠してしまう。徐倫の言う通りミリの闘い、そしてミリの狂いを作った神父!!

「もらったッ!そのストーン・フリーを!」

だが「オラアァ」ストーン・フリーの拳が神父の右手と右胸にヒットする!

『目隠ししたのに……なぜわかった?』
『つないだこの手錠の振動の感触か?』

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

「うおおおおおおおお」
 ガード一辺倒になってしまうホワイトスネイク。

『ち…違う……凄みだ……』
『こ…こいつ凄みで!』『わたしの攻撃を探知したんだ…』
『刑務所に来た時はスタンド能力さえないと思っていたのに…』
『男にだまされてメソメソしていたただの小娘だと思っていたのに……』

 凄みって(笑)。窮地に落ちてかなりホワイトスネイクも錯乱していますね。もともと徐倫の糸は探知能力が高いのです。ハイエロファント・グリーンの触手触脚に匹敵するでしょう。そして神父の手に掛けられている手錠は糸の塊。恐らく徐倫は神父の動作はもちろん脈拍、発汗、呼吸も探知している可能性は高いと思います。もしかしたら神父が中指に十字架を仕込んだことも知っていたかもしれません。

『まずいッ!』
『ホワイトスネイクはこいつとの戦いに向いていない……!!』
『このままだと…わたしが!』『なによりもあの『生まれたもの』が!』

バシュ―――――

 承太郎の顔が映りこんだDISCを投げ捨てる神父。

「…………………」
「今 何を投げた?」
「何をした?」

 血を吐く神父。

「今投げたものは何だと聞いているんだッ!」

「DISCは魂を形にしたものだ」「永久に保存できる」
「肉体の外に取り出している限りはな」
「だが……」
「死に行く者の体内に…」「DISCが入ったのなら…」
「そいつの生命とともに………」「DISCもそいつの死にひっぱられる………」
 死に行く者…ホワイトスネイクの不意打ちにより致命傷を負ったアナスイ…彼のノドにDISCが!
「おまえが命をかけて欲しがっていた『承太郎の記憶のDISC』だ!!」
「返してやるよッ!」
「死にゆくアナスイの体にッ!!つき刺したッ…」
「どうするね?」
「DISCを取りに行くか?この手錠デスマッチをまだ続けるか?」

 神父の言う通りDISCが崩壊を始める。選択……。いやもはや選択ではない。なぜなら徐倫は承太郎の記憶をとりもどすために闘っているのだ。ホワイトスネイクを倒すために闘っているのではない…。このことがどんなに自分に不利をもたらすことになろうとも!徐倫は手錠を外しDISCを取りに行くしかないのだ。

 さて話は変わりまして再出演のDIO。いやはや何かドキドキしながら見ちゃいました。私は友達のベッドに平気で寝れるタイプの人間ですが、さすがにイッショのベッドで同性どうしで寝転んだことはないですね。「天国へ行く方法」「サヴァイヴァー」に続いて3回目の御出演…個人的には少々出過ぎのような感じもするけど。4部や5部のように謎の黒幕(フィクサー)的な立場が一番カッコイイような気がしています。
 ところで神父はDIOをどれくらいの重要度としているのでしょうか?昔の神父はかなり本気でDIOのことを尊敬し、親友だと思っているという印象を受けますが、現在の神父は何か……DIOの存在と「天国へ行く方法」の重さが逆転しているような気がします。DIOの(ある意味)生まれ変わりである緑の赤子を「利用し支配」しようと画策していることからもそう感じます。まぁ、永遠に同じものなんてないですからね。同様に気高き聖職者になるだろうと言われていたのに、現在の神父ったら……人生のどこから堕落したんだろう。「神を愛するように君を愛する」、逆に「君(DIO)が死んだために神も死んだ」のだろうでしょう。えっ、それは詭弁だろうって?いやいや逆も真なりってね。クスッ

 ところでツバメの話。これの別ヴァージョンで「宙返りするハト」というのをどこかで聞いたことあったなぁ…と思っていたらJJNのリアタイに映画「ハンニバル」だと書いてありました。スッキリ!

 ではまた来週!!