‘01 50号  Act.93 手錠

「素数は誰にも砕けない…」
「長かったな………22年間」
「人間の頂点がさらに登りつめて行きつくところ……」
 ホワイトスネイクが蹴った小石が緑の赤子の転がる。さらに小さくなる小石。眠っているのにも関わらず赤子の能力は発動されている。というより、四六時中発動していると考える方が自然かな。赤子が徐倫たちに興味を持ったため能力が解除されているように見えていただけか。

「これだ!間違いないッ!」「ついに出会えたなッ!」
「『天国へ行く方法!』」
 湿地帯の密集した、背の高い草の陰から神父が現れる。
「まだ不完全で未熟だがあとは空条承太郎が封印した記憶に従って……」
 ホワイトスネイクが後を続ける。
「DIO!君を目覚めさせわたしが使いこなすだけだ」

 ホワイトスネイクはDIOと言っているが、この赤子がDIOと同一であるかどうかはまだ不明。

「そうだ。ところでその前に………」
 切断した徐倫の腕を踏みつけるホワイトスネイク。
「完全なる死の忘却へ……おまえを送り込んでおかなくては……」
 やはりトドメを先に刺すのか…。誰でもそうする、私もそうする。
「立て!承太郎の娘!………君だけは一瞬早く急所へのダメージを防御していたな」

 何!?ということは……。さっきまで白目を剥いていた徐倫が…不敵な眼差しでゆっくり立ち上がる。ジョースター家秘伝・「逃げる!」の応用「死んだふり!」である。ジョジョ・ア・ゴーゴーにも書いてある…ようなないような(注:書いてませんよ)。

「来ないのなら……」
「こちらから向かわせてもらうッ!」

ゴアアアアァ

 右ストレートを繰り出すホワイトスネイク!
すると切断された徐倫の右腕が糸と化し、ホワイトスネイクの右腕にからみつく!同時に徐倫の腕の切断面も糸となり切り落とされた腕を回収する。そして神父の右手首にからみついた糸が手錠へと変形する、その先は徐倫の右腕に掛かっている。

「こんなかたちで……」「ホワイトスネイク!!」
「おまえの正体に到達できるなんて」「おまえに再会できるなんて」
「おまえから奪うべきものは3つ!」

『父の記憶』
「今F・Fから盗った『DISC』
「おまえの『生命』

 まず徐倫がしかける。手錠を引っ張り神父の体勢をを崩す。体勢を崩した神父の頭部にカカトをぶち込むべき左脚を美しく上げ…そして落とす!だが崩れるバランスに逆らわず逆に伏し、徐倫の右脚を払うホワイトスネイク。

「ウオシャアアア!」
 転んだ徐倫にラッシュを掛けるホワイトスネイク!
「オラオラオラオラオラ!」
 だが負けじとラッシュを仕掛け返すストーン・フリー!

 しかし鎖(糸?)をうまく利用しホワイトスネイクがストーン・フリーの左手を封じる。そして鎖を手刀で叩き切る。だが鎖を完全に切断することはできず、逆に鎖を作っている糸が左手に喰い込みダメージを与える。

『糸のスタンド』。この「糸の集まり」は……「剛」「柔」のしなやかな強さがある』


「こんなのでこのわたしを捕まえたつもりか?」

「手錠は何のためにある?」「逃がさないためにあるんじゃあない!」
「屈服させるためにあるッ!」

 いうねッ!徐倫。凄まじく男前だ!!ムッとした感じで話を続ける神父。

「おまえはわかっていないようだ……自分が何をやっているのか?」
「この「糸」を変形させた手錠で…おまえは私に触れている」
「このことが何を意味するのか?はたして」「捕まっているのはどっちなのか?」

「DISCになっているぞッ!おまえの「ストーン・フリー」は………」

「ほんのちょっとだ……わたしは指でつまむだけでいい…」
「腕をのばし…おまえの額からかるく抜き取るだけで完了だ…」
「だが空条徐倫……おまえの方はどうなのだ?」
「少なくともおまえはわたしを倒すのに…決定的な致命傷をわたしの体にたたき込まなくてはならない……」
「その額のDISCをかばいながらな……」
「理解したかね?圧倒的にまずい状況に陥っているのは君か?わたしか?」
「しかもおまえのは刑務所に来てから身につけたばかりの能力!動きがまだまだ未熟だったぞ!」

 圧倒的有利な自分の立場をトクトクと語る神父。だがそれをひっくり返す光景、言葉。ストーン・フリーの拳圧により神父の背後の草がミステリーサークルのように刈られている!神父の…いや我々の予想を越えるパワー。

「ああ…ぜんぜん理解しない…という事を……」
「理解したよ……」




 さて、私は「スタンドロジー博士補佐代理見習(未認可)」なのですが、今週はスタンド研究としても面白かったです。
 まずストーン・フリーの深化。(1)元々傷口を縫合するくらいなら出来ていたのだが、今週は切断された腕を一旦糸化して回収する事で接合をした。(2)楔程度の変形までは可能だったが、今週は完全な手錠および鎖の形状を成していた。(3)剛柔一体を体現した糸はもはや切断されることはないだろう。(4)そしてストーン・フリー自体のパワーアップ!追いつめられたと同時に実は追いつめた…そのことによる精神の昂揚によりストーン・フリーの成長。こういう格闘力の成長はマイナーで解かりにくいのだが、スタンドの強さの重要な要素である。
 そして神父の言葉。「我がホワイトスネイクは遠隔操作のスタンド…。ここでは射程が数メートル、100%のパワーとスピードが使える」。私は今までこの概念について保留にしていたのですが、やはり遠隔操作のスタンドは本体と距離をとるほどスタンド自体のパワーとスピードが減少するらしいですね。だから音石明が正体をさらして戦闘の場に現れたのはRHCPの格闘力をさらに引き出すためという思惑もあったのかもしれない。
 そして本体とスタンドの一体化。本体とスタンドの動きがシンクロしているのだ。ストーン・フリーが蹴りを出すのに徐倫も脚をあげるのだ。これはスポーツ・マックス戦あたりから顕著になってきているのだが、肉体復古なのかもしれない。いや、逆に革新なのかも。つまり肉体を主とした1部2部。精神の力の3〜5部。そして6部は肉体と精神の力の融合。そういえばストーン・フリーと徐倫の糸の同時行動が何回か有ったが、この事も心身融合の一端かもしれない。


 ギリシャでは「鎖」は天国へ行くための道具である。「天国へ行く方法」をめぐる闘いがチェーン・デスマッチで行われるのは個人的にスゴク面白いです。ちなみに同じくギリシャでは「糸」は暗黒の迷宮に差し込む光を顕し、脱出を象徴する

 リアタイなどで「徐倫は腕を切断されたのではなく自ら切り離した」という意見がありました。なるほど確かにその通りかもしれません。でもそのために腹を攻撃させるのは危険すぎるのではないだろうか?それにホワイトスネイクの攻撃は完全に虚をついていたのだから一瞬でそこまで作戦を立てるのは無理がある。逆にいえば、そのような作戦を立てていたということはウェザー・リポートが幻覚だということを知っていた事になる。それは無い。恐らく徐倫の腕はまさしく切断されたのだ。だが、皮一枚で腕は繋がっていた。それを徐倫は利用したのだろう。繋がっていた皮を糸化して逆転のチャンスを狙っていたのだろう。

 ではまた来週!