‘01 36+37合併号  Act.81 ヒューヒュー


 なんか…この題名、腰が砕けそうだな……。
                

双し目カ科昆虫の総称――体・はね・脚共に細くてか弱い
飛行のさい 微小な羽音を発しその口吻は吸収に適している
人や動物を口吻で刺し 血液を吸うのは雌だけであるが
そのさい 局部麻痺のための『唾液』がかゆみを伴う炎症をおこす――

 徐倫の頬に針を刺し立てる「蚊」。そしてもう1つの危機。
『重機関銃……隠れたりせず……エンジンをかけて……すでに発進していれば………』

      スッ…
      「………」
 目の前の警備員を意に介さず止まっていたエンジンをかけるアナスイ。

「動いてんじゃねェ―――――きさまああああああ―――――」
「ヒザをつけェェ―――ッ」「ヒザをつくんだぁあああ――――ッ」

「アナスイなにしてる――ッ!?」
「ボートごとブチ抜かれると言ったのはあんただぞ―――ッ」
 叫ぶ徐倫!

 命令を無視するアナスイに警備員はトリガーに指をかける。そして重機関銃が火を噴く!!

ガガガガガドガガガガガガ……

 機関銃の弾丸がボートを舐めるように破壊していく。

「確かに……だが艇(ボート)なら…奪い取ればいい」
「おまえがな…」「行け」

 ブキミちゃん(今週のDアンGのスタンド名)を殴りつけ風圧推進器のプロペラに叩き込むアナスイ!

「ぎゃああああああ――――」「ぐわ!」
 プロペラで顔を真っ二つにされて警備員のボートに突っ込むブキミちゃん。残酷すぎますわ…アナスイ。
「ひ…ひでえ」「ものみてー……に」
「いいけど」

「このボートをもらう」
「いいよな?」「ワニに食われねーように帰ってくれ」
「『ダイバーダウン』」
でまとめてポコン!アッサリと銃機関銃を持つ警備員達を退けたアナスイ。

「徐倫…さっさと東へ進もう……陽が更に傾いて来ている……」
「植物の方は平気か?」
 優しく訊ねるアナスイ。

「……」
 徐倫は答えず、ブキミちゃんを見る。蚊が刺した頬には痕は残っていない。

ドパアァァァ――――

 湿地帯をボートで駆ける3人。涼しそうでいいなぁ。口笛を吹くブキミちゃん。

「ヒュ―――――♪」
ヒュヒュヒュヒュ〜〜〜♪」
「ヒュ―」「ヒュ〜ヒュ〜ヒュ〜♪」
「ヒュヒュヒュ―ヒュ〜〜♪」

 うっとしそうに見つめる徐倫。
「おい…何うかれてんのよ!口笛ふくのやめな」

「なあ徐倫…悪いんだがその口笛やめてくれないか」
 不思議な事をいうアナスイ。そして相変わらず口笛は聞こえ続ける。ヒュー…ヒュー……。
「またどこからか他のエンジン音が聞こえてくるかもしれないからな」

「何言ってんのアナスイ。口笛吹いてんのは…あたしじゃ…ヒュ――…ヒュ…ヒュ―」
 これは…?そしてブキミちゃん…口をしっかり閉じている。口笛を吹いているのはブキミちゃんではないのか?
何かがオカシイ?

 徐倫の綺麗な眼に緊張の色が走る。
「ア…アナスイ!?」

 しかし気付かないアナスイ。
「おい、東だからな」「方向は太陽と逆に進むんだ」

「はーい だんな様」
 右手を挙げて答えるブキミちゃん。そしてまた無言。

「アナスイッ!」
「ね…ちょ…ちょっと!アナスイッたらッ!」

 しかし気付かないアナスイ。ハッキリ言うと私は、ここまで徐倫が能力をはめられているのかアナスイがおかしくなっているのか考えあぐねていました。しかし…次のページを開けてみると!!

「ま……」
 徐倫の舌に無数の穴。そこに息が通り笛のような音を出しているのだ!(ヒュ―)
『まさかッ!こ…声が出ていない!!』
「ア…アナスイ!ま…まさか!」「すでにあたしの声がッ!!」
 アナスイにすがりつく徐倫…。すでにコミカルさは遠のき、開いている方の目でジッと観察するブキミちゃん…。

「こ…こいつの攻撃だッ!」「く…口の中!」
「い…いつ攻撃されたのだ!?」「痛みもない!」
「み…見ていなかった……いつの間にか…」
「こ、こいつは………『緑の色の子供』を奪って逃げるのだけが目的ではなかった」
「ゆっくりと攻撃してやがったッ!」
「少しずつ、たぶん口の中から溶かされていたッ!」
 ついにブキミちゃんの行動に気付く徐倫!

「どうかしたのか?」「ずいぶん呼吸が乱れてるな」
 うんッ?アナスイも気付くのか?

 徐倫の手を自分の胸に当てるアナスイ…。
             ?
「オレもだ…徐倫」
「ドキドキしてるだろ?」
「急に寄り添って来て…君へのこの気持ち通じてくれたのか?」

 手を振り解き自分の舌を見せる徐倫。「あー」程度しか言葉を発する事が出来ない。

「舌か?」
「舌がどうかしたのか!」
「もしかしてしゃべれないのか」
 うんッ?アナスイも気付くのか?

「わかるぜ…その気持ち……だが言葉なんか必要ない」
「考えていることは……言わなくてもな…」
「おれも同じ気持ちだ」
「オレにキスしたいんだろ?」

「でも いきなり舌からませるヤツ〜〜?」

     ガン

 徐倫のショート・アッパーが炸裂!「アッパーは突き上げるものではない、当たった瞬間に止めるものだ!(民明書房館『あなたもなれる!米軍司令官』より抜粋)の言葉通り見事なパンチがアナスイのアゴをとらえる。ついでに舌をかんでアナスイ悶絶!!

 徐倫は考える…。
『だ…だめだ!あいつには攻撃方法があるッ!』
『たぶん看守たちに囲まれた時に攻撃されたんだ…それが何か!?あいつから顔をそれしてはいけない!!』

 アナスイの顔を両手で抱える徐倫。眼はブキミちゃんをとらえている。

「徐倫…」
 キスをしようと徐倫を引き寄せるナルシソ―色ボケ―アナスイ。

 それに対して顔をブキミちゃんに無理矢理むける徐倫。(なぜか)グキグキと顔を揺さぶる徐倫。

「どっちなんだよ?したいの?したくないのか?」
「それともなんか…君独特の趣味とかあるわけ?」
「キスする顔の角度とかに好みとか」「き…気持ちは通じたと思うが」
 こと、恋愛事に関してはピエロになってしまうアナスイ。「めぞん一刻」にこんなキャラが居たような気がしたなぁ(…三鷹さんだっけ?)。暗殺風水を見破ったときの君はどこへ。
 そして換わりに徐倫の勘が冴える!痛みがないなら自分の口の中が溶かされていることには気付かないと思うのだが、「笛のような音が自分の口の中から聞こえる」ことと「しゃべれない」ことから能力を推測、そして正解。

『自動追跡型のスタンド』!』
『なんでも奴隷のように言う事を聞き……』
『召し使いのように振舞い…まるで無害だが それが『こいつの手』だ!』
『…なにかの方法で油断のスキ間を狙って自動的に攻撃してくるスタンド』
『このままではすぐに2人ともやられるッ!』
『アナスイが気づいたときはもうすでに遅いのだ!』
 睨みつける徐倫。

『やってみろッ!攻撃してみろッ!』
『どんな方法なんだ!?』
『アナスイに気づかせなくては!』

 強く…強く睨みつける。徐倫は危機を脱せるのか、その方法、手段は!?


 ついにブキミちゃんの能力に気付いた徐倫。私の予想では徐倫とアナスイはブキミちゃんの行動に気付かず、ブキミちゃんの方が自滅していく(もしくはDアンGの暗殺が成立してスタンドが消滅する)のではないのかと思っていたのですが。う〜む、予想が難しいなぁ。予想のポイントとしては『ブキミちゃんの倒し方』に尽きるんですがね。ストーン・フリー、ダイヴァー・ダウン共に決定的なダメージを与えられそうにない。やはり、DアンGの暗殺なのだろうか。


 「蚊」は手段?
 ブキミちゃんのヨダレ(体液)が肉体を溶かす。単純に考えればヨダレを鉄砲魚のようにピューッと飛ばして標的に当てる方が確実だろう。標的の肉体に送り込む方法が「蚊を媒介する」しかないのではないだろうか。つまり「蚊」は能力なのでは。そうなると蚊のいない地方では唯の召し使いになっちゃうのか。 



 荒木先生とゲーム『真女神転生』のアートディレクター・金子一馬氏の対談が載っている『Thrill』誌を読みました。一番おもしろいなと思ったのは荒木先生の言葉「神様は信じていないがいると感じている」である。私は荒木先生がキリスト教の学校へ行っていたのは知っていましたが、影響を受けたのは絵の表現の一部分(魂が雲になるところとか)しかないと何となく思っていました。「神様は信じていない」は言葉とおり、荒木先生は信じている宗教は無いんでしょう。「神様をいると感じている」。ここでの「神様」とはもちろん言葉とおり「主たる神」でも「神の子・イエス」のことでもない。精神的なもの…対談中の言葉を借りるなら「人間愛」「正義」。自分に当てはめて心を探ると「自分が誇れるもの」。この精神的な何かがジョジョという作品の中に空気のように…だがハッキリと漂っているのはもはや言うまでもないと思いますが、その精神はジョジョを描く荒木先生自身にも脈々と流れていることを改めて知りました。「そういうのがないと、怖いことになるんですよ。「自分は何で漫画を描いているんだろう?」ってね」
 私は今年から社会人になって、朝起きて会社に行っています。ハッキリ言うと「自分が誇れるもの」というものを探っている、いや手に入れようと四つん這いで歩いている状態です。よくヘコミます。この仕事は自分に向いていないのではないと考えます、まだ半年も経っていないくせに…。いや解かっているんです、向く向かないという事を言う資格が有るほど働いていないだろうということは。でもヘコムんですよ。そんな時に私に明日をくれるのが友達と音楽と……そしてジョジョなんです。
 ヨハネ伝に曰く「言葉は神とともにありき」。私の神はマンガと共にあるようです。

 ではまた!