クイーン / メイド・イン・ヘヴン
 消える寸前のろうそくの美しさ。最初にこのアルバムを聴いたとき、私はこういうイメージを持った憶えがある。当時、クイーンのヴォーカルのフレディ・マーキュリーがすでに他界していることを知っていたから、それゆえに過度に評価していたかもしれない。そんな考えを頭のスミに置きながらこのアルバムを再聴してみた。素晴らしい。素晴らしい。素晴らしい。何回でもいえる、素晴らしいと。圧倒的なフレディの歌声には唯々呆然とするのみである。解説にも書いてあるのだが、前作イニュエンドウに漂っていた悲壮感がこの『メイド・イン・ヘヴン』にはなく、爽やかな暖かさがあふれている。
 ジャケットのフレディ・マーキュリーは右拳を何かを掴むように高く上げている。彼は目の前にせまる死に対して何を掴んだのだろうか。そして残されたブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンに癒しは訪れるのか…。
 聴くたびに感銘を受ける『メイド・イン・ヘヴン』は、私にとっては間違いなく人生の一枚である。(イシュマール)


ハロウィン / マスター・オブ・ザ・リングス
 マイケル・ヴァイカート<G>、ローランド・グラポウ<G>、マーカス・グロスコフ<B>にアンディ・デニス<Vo>、ウリ・カッシュ<Dr>を迎えて出された新生ハロウィンの第一弾アルバム。ハロウィンには良いアルバムが多いだけに選ぶのは心苦しい。
 このアルバムはヴァラエティが広くて聴いてて実に楽しい。疾走感あふれるジャーマン・メタル“ソール・ザヴァイヴァー”、“ホウェア・ザ・レイン・グロウズ”という名曲から始まり、こてこてのバラード“イン・ザ・ミドル・オブ・ハートビート”、ロックンロール調“テイク・ミー・ホーム”、イングヴェイ風のインストゥルメンタル“グラポスキーズ・マルムスウィート”とそろっている。
 へヴィ・メタル初心者にも楽しめると思うのでかなりお勧めの一枚である。(イシュマール)


アングラ / エンジェルス・クライ
 ハード・ロック/ヘヴィ・メタルとクラシックは決して無縁ではない。1970年代半ばには「クラシカル四天王」と称されるギタリスト達がいたし、‘80年代には「ネオ・クラシカル」と呼ばれるクラシカル・フレーズが大流行していた。
 今回紹介するアルバム『エンジェルス・クライ』のシンフォニック(交響楽的)なサウンドは高次元でメタルとクラシックを融合させたものであり、疾走感と壮大さをあわせ持つ傑作である。また、ケイト・ブッシュの“ワザリング・ハイツ(嵐が丘)”(TV番組「恋の空騒ぎ」のオープニング・テーマ)をカヴァーしており、それを堂々と歌い上げている。本家のケイトと聞き比べてみるのも楽しい。
 余談だが、次作『ホーリィ・ランド』ではアングラの祖国ブラジルの音楽を大胆に導入しすぎたためヘヴィ・メタルから逸脱してしまい、その結果、失敗作の烙印を押された。彼等自身もそれを認めている。だがハッキリいうとヘヴィ・メタルではないだけで、素晴らしいアルバムである。私は好きである。(イシュマール)


フェア・ウォーニング / ゴー!
 メロディアス・ハード・ロックの最高峰、フェア・ウォーニングの3rdアルバム。1曲目に収録されている“エンジェルス・オブ・ヘヴン”は何回聴いてもゾクッとさせられる稀代の名曲。再度聴きなおしたが良いアルバムである。これでもかと積み重ねられる哀愁を含んだフレーズは、心を天空に走らせてくれる。
 ちなみに4thアルバム『4』はメロディアスに疾走感も加わったこれまた名盤となっているが、初めて“エンジェルス・オブ・ヘヴン”を聴いた時のインパクトを考慮して今回は『ゴー!』を推すことにした。
 彼らの本国ドイツでは彼らの評価は低いらしい。その国ごとの事情や環境があるとはいえ、何ともモッタイナイ話である。よくあることなのだろうが……。(イシュマール)


ミスター・ビッグ / リーン・イントゥ・イット
 8月15日の日記にも書きましたがMr.BIGからビリー・シーン<B>が脱退(正確には解雇だが……)しました。そもそもビリー・シーンがMr.BIGを立ち上げたのに、最新アルバム『アクチュアル・サイズ』においては全くと言っていいほど仕事をさせてもらえなかったそうです。そして、その『アクチュアル・サイズ』の出来はどうかと言えば…、私は2曲聞いただけでガッカリしました。生粋のMr.BIGファンであるフューチャー・ワールズのMさんもこの『アクチュアル・サイズ』を聴いて次のアルバムはもう買わないかもしれないという内容のMAILをくれました。 兎にも角にも「ポップ過ぎる!」「こんなのMr.BIGじゃない!」というのが私の周りの意見です。
 さて、ネガティヴなことを書きましたが、Mr.BIGの名盤『リーン・イントゥ・イット』を紹介します。紹介すると言っても、もはや黙って聴け!レヴェルの作品。ポール・ギルバートのポップ・センスとビリー・シーンのハード・ロック、エリック・マーティンのソウルフル・ヴォイスが見事に混じりあい…いや舞い上がり天空を駆ける稲妻のごとく数々の名曲を生み出しています。これを書いている今、『リーン・イントゥ・イット』を再聴していますが、“グリーンティッドゥ・60’S・マインド”のイントロで鳥肌が立ってしまいました。他にも全米ビルボードで1位となった名バラード“トゥ・ビィ・ウィズ・ユー”、ドリルにピックを付けて速弾きを行うソロ(ただしこの行為じたいは速弾きへのアンチテーゼらしい)が有名な“ダディ、ブラザー、ラヴァー、リトル・ボーイ”……。
 改めて思う…凄いゾこのアルバムは!(イシュマール)


スキッド・ロウ / スキッド・ロウ
 ある日フューチャー・ワールズのBさんが1本のヴィデオを持ってきました。それはスキッド・ロウのライヴヴィデオで、1stアルバム『スキッド・ロウ』を引っさげたスキッド・ロウのライヴ・ツアーを収めたものでした。いやぁ〜、笑った笑った。バカだわ、こいつら…特にヴォーカルのセバスチャン・バック!ライヴでピザを頼んで、ピザ屋が届けたピザをその場で床に叩きつけたり、窓ガラスに押し付けて作ったオモシロイ顔を延々と映させたり、デイヴ“ザ・スネイク”セイボ<G>に似せた人形を作りバカ話を一石堂ばりにしていたり……。いやぁ、また見たいなぁ…ダビングしておけばヨカッタなぁ。また今度かしてね、Bさん。
 そんなプラス(?)要素を別にしてもこのアルバムは買いです。スキッド・ロウの2nd以降はへヴィになり少し聴く人を選ぶと個人的には感じていますが、この『スキッド・ロウ』は実にオススメ!キャッチーで実にノリの良いハード・ロックです。パワー・バラード“18&ライフ”、思わず口ずさんでしまう“ユース・ゴーン・ワイルド”、名バラード“アイ・リメンバー・ユー”は必聴!!腕を振り上げろ!(イシュマール)


インペリテリ / アイ・オヴ・ザ・ハリケーン
 世界最速の異名を持つギタリスト、クリス・インペリテリが率いるバンドがインペリテリ。クラシカルなフレーズを超速弾きで奏でる曲は、聴く者を圧倒するパワーに満ちている。単調と紙一重のこのジャンルでこれだけ聞かせるのは、インペリテリのセンスの良さであろう。『アイ・オヴ・ザ・ハリケーン』は一言で言うとバランスの良いアルバムである。タイトル・トラック“アイ・オヴ・ザ・ハリケーン”、“シェッド・ユア・ブラッド”のようなスピーディーな曲。“オン・アンド・オン”、“パラダイス”という素晴らしいバラード。そして2曲の疾走するインストゥル・ナンバー“レース・イントゥ・ザ・ライト”、“ハロウィーン”。インペリテリが自らの幅を広げ、成長したアルバムである。
 この他のアルバムも、インペリテリ・スタイルのネオ・クラシカルが最初から最後まで炸裂する『スクリーミング・シンフォニィー』や、モダン・へヴィネスの要素を取り入れ破壊力抜群の『クランチ』もかなりオススメ。(イシュマール)


アリス・クーパー / トラッシュ
 80年代のアメリカン・ロック。メロディがしっかりしていて聴き易いです。ボン・ジョヴィを手掛けるデスモンド・チャイルドが関わっているので、曲によってはボン・ジョヴィっぽさがあるが、ギターサウンドが全体的にボン・ジョヴィよりも目立っています。お勧めは1曲目“ポイズン”と6曲目“ベッド・オヴ・ネイルズ”です。(BARG)
<補足>
 恐らくこのPAGEに来てくれる100人中3人くらいしか知らないと思いますのでチョット説明(このPAGEに100人も来てはいないが)。1958年生まれ、夢の中で17世紀の魔女アリス・クーパーに「おまえは私の生まれ変わりだ」と言われたので芸名をアリス・クーパーにする。
 禍々しいメイクにSM風のショー・パフォーマンス等マリリン・マンソンに先駆ける事20年!全米1位アルバムを送り込んだ時もあり一時は天下を取ったが、アルコール中毒になったりテクノにカブレたりとどうしようもなく見放された時もあり。HR/HMヴームに乗って送り出したアルバム『トラッシュ』が大ヒットする。そんなこんなで今でも活動している大べテランです。(イシュマール)


シカゴ / シカゴ 18
 80年代のAOR(※1)です。過去の作品と比べる(※2)と、明らかにギタープレイやギターサウンドはおとなしくなりましたが、シカゴ16から参加しているエアプレイ(※3)のデビッド・ファスターの色が過去の2作以上に出ていて聴き易い作品だと思います。『シカゴ16』の名曲“Hard To Say I’m Sorry(素直になれなくて※4)”に匹敵するであろう3曲目“Faithful”がお勧めです。(BARG)


※1 アダルト・オリエンティッド・ロックの略。キッズ向けのイケイケ・ロックではなく大人の雰囲気を持つロック。
※2 初期は激しいジャズ。中期はハード・ロック…という感じかな。
※3 ジェイ・グレッドと組んだユニット。
※4 日本でも数々のシンガーがカヴァーしている超有名&超名曲。
(注記はイシュマール)


シンフォニー・X /
ザ・ディヴァイン・ウィングス・オヴ・トレイジディ
 ネオクラシカル(※1)に少しプログレ(※2)が入っている感じ。へヴィで少し思いギターサウンドにヴォーカルがうまい具合に入っていて良い感じです。1曲20分以上の大作も有り。マイケル・ロメオのクラシカルかつテクニカルなギターソロがオススメです。(BARG)


※1 HR/HM界に与えた衝撃度はエドワード・ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法に匹敵するイングヴェイ・J・マルムスティーンが生み出した奏法。クラシックのフレーズやアレンジをHR/HMのスタイルに取り入れている。80年代後半に大ブームを生み出したが、速弾き至上主義という弊害も引き起こした。代表バンドとして、ライジング・フォース、レーサー・X、ストラドヴァリウス等。
※2 プログレッシヴ・ロックの略。コンセプト色の強い革新的なロックであり、ジャズを取り入れたり変拍子を多用したりと個人的には「一筋縄では行かない」ロックと認識している。代表バンドとして、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、ドリーム・シアター等。

戻る