ジャック・フットレル著『思考機械』。最近読んでいる本です。SFっぽいタイトルですが探偵小説。主人公はオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授。ドゥーゼン教授は哲学博士(PH.D.)であり法学博士(LL.D.)であり王立学会員(F.R.S.)であり医学博士(M.D.)であり歯学博士(M.S.D.)である。名前と肩書きでアルファベットを使い潰すという男だがついたあだ名も凄まじく<思考機械―Thinking Machine>である。論理を極めれば「不可能」なことなどなく、「ニプラスニはほとんどではなくいつでも四となる」という決め台詞を持つ。それを証明するかのようにチェスのルールを初めて覚えた直後にチェスの世界チャンピオンと対戦し十五手で詰んでしまうという逸話の持ち主である。
 さてこの小説は短編集でありキビキビとした文章はテンポ良く読める。代表作の「十三号独房の問題」は仕事を早退して読みたかったくらい面白かったです。
 「この世に不可能はない」と言い切る<思考機械>に対して友人のランサム博士は堅固な刑務所の独房から脱走できるかどうかの賭けを持ちかける。ドゥーゼン教授が携帯できるものは靴、靴下、ズボン、シャツと歯磨き粉、5ドル紙幣一枚、10ドル紙幣二枚。ただし教授のリクエストにより靴は毎日磨かれている。たったこれだけの条件で十三号独房の扉、さらに二箇所の鉄扉、その扉に通じる廊下のドア、建物の鉄の玄関、二重になっている門の7つの関門を突破しなければならない。
 教授は靴の金具でつくった貧弱なヤスリで鉄格子を切ろうとしたり、看守を買収しよと試みるがことごとく失敗する。その一方で筆記用具を持っていないはずなのに外に手紙を書いたり、10ドル紙幣をいつまにか5ドル紙幣と1ドル紙幣に両替していたりする。ついには十三号独房の真上の囚人が真夜中に自分が殺した恋人の幽霊が出ると半狂乱になる騒ぎが起きる。
 最終的には教授は脱走する…。どうやって?そして数々の謎と事件との関係は…?

 著者のフットレルはかのタイタニック号に乗っており、<思考機械>の短編数作と共に氷の海に命を落とした。もったいないことである……。

 メンフィスさんのご意見です。ありがとうございます。
 『ホワイトスネイク』のDISCにザ・ハンドのような空間を削る能力を使った場合について。
 普通に考えれば削られて終わりです。これはラング・ラングラーがDISCを破壊できなかった時に考えたのですが、DISCが破壊できないというのは「絶対に取り返す事ができる」という制約があるということ。つまりホワイトスネイクの反則とも取れる能力はこの制約があって初めて成り立つ能力ではないか、と思うのです。そしてホワイトスネイクが空間を削る能力を手に入れた場合DISCを奪って削ってしまえば相手は完全に再起不能。まずあんな幻覚見破れるワケ無いし(笑)後から気付いて取り返しにいったらDISCはこの世に無い…これは反則だと思うのです。どうでしょう?
 そう…DISCが壊れないのはメリットだけでは無いのです。「壊れない」ということは「取り返すこと」が出来るということ。ホワイトスネイクにとってこれは確かにデメリットです。ただ「取り返すことが出来る」という制約は「壊れない」ということだけに対応していると考えるのが妥当で、ホワイトスネイクの反則ともとれる能力(恐らく遠隔操作なのにパワーがある、「DISC」というキーワードで統合されているとはいえ多能力を持つことだと思われます)については説明していないと思っています。
 「壊れない」ということ自体は確定しているわけではありませんし、また破壊できないだけでDISCの中身を消去できることも考えられます。ただ、能力を「奪う」ホワイトスネイクが逆に「奪われる」「取り返される」という危険を同時に持つことになるという概念はスゴク面白いです。

 ご意見ありがとうございました。