九栄神 解説
 1.オシリス神 一般にはオシリスはミイラの姿をしている。弟のセトにより非業の死を迎えるがそれを乗り越える。冥界の君臨者であり死者の王そして再生を司る。同時に農業と関わりの深い豊饒(ほうじょう)神であり、エジプト民衆から絶大な支持を得ている神である。
 2.ホルス神 その名に「上にいるもの」「高いところにいるもの」の意を持つ天空の主人公である。。外観は何よりもまず隼の形をとる。時代が下がると隼頭の人間の形をとるようになる。神聖動物は当然『隼』。エジプト神話の中で最も多様化しており、20以上の形を持つ。
 3.ゲブ神 ゲブは人間の姿の外観を持つ大地の神であり大地の恵みの贈与者。神聖動物はいない。空気の神シュウとテフヌト女神の子どもであり、兄妹であり妻であるヌトは天空の女神である。
 4.バステト女神 雌猫または雌ライオンの頭を持つ女性の外観を持つ。手に持った小物はシストルムという楽器である。神聖動物は『雌猫』。家庭を見守る者、多くの子猫に囲まれている事から多産のシンボルにも。テフヌト女神とよく混同される。
 5.セト神 特定不能な動物またはその頭を持つ男性の姿で表される。恩恵と保護の面も持つが、一般的には破壊と災害の方が優勢である。嵐と暴風の領主。オシリスを殺害したがホルスによって倒される。しかしセトは不死であるため、依然として善なる力への試練として存在する。
 6.クヌム神 雄羊または雄羊の頭を持つ人間の外観を持つ。神聖動物はもちろん『雄羊』。轆轤(ろくろ)を使い、ナイルの泥土から様々な存在を創った創造神である。洪水を起こす暴君の顔も持つ瀑流の陶工師である。
 7.トト神 言葉の発明者であり、道徳、数学、天文学、医学等の知識を司る全知の伝達者。その姿は朱鷺または朱鷺の頭を持つ人間として表される。神聖動物は『朱鷺』と『狒狒(ヒヒ)』。エジプト全土においてトトが信仰されない神殿はないほどのメジャーな神。
 8.アヌビス神 墓所の守護者であり、死者の魂の重さを量り罪を裁くことからトトと共に『心臓を数えるもの』の異名も持つ。神聖動物は『黒犬』。箱の上に寝そべる黒犬、または犬の頭を持つ人間の外観を持つ。
 9.アトゥム神 その名に「万物の創造者」「それ自身で完成するもの」の意を持つ。人身の外観を持つが時には雄羊の頭となる。神聖動物は『雄牛』と『猫』と『マングース』。アトゥムは無秩序の原初の水から生まれ、空気の神シュウとテフヌト女神を始めとしてあらゆる神を創造したことにより『神々の父』と言われている。


参考文献: 図説・エジプトの神々(河出書房新書) 世界の神々辞典(学研)