Panorama



  3年前、Vientianeで会った若い日本人旅行者。
彼が言った。
「中国国境からLuangPrabangまでの道は、本当に美しかった」
と。
 
  僕は、今回初めてラオス北部の街を旅した。
そして、揺れるトラックの上で彼の言葉を思い出していた。

  LuangNamThaからMuangXaiに続く国道1号線。
道路の舗装状態はお世辞にもいいとは言えず、トラックは激しく揺られ、時には大きくバウンドしながらゆっくりゆっくり進んでいく。

  車内では容赦ない砂挨が乗客を襲う。
髪の毛は既に細かい砂で固まり、ごわごわになっている。

しかし、僕はちっとも辛くはなかった。

  ラオスでは、これから正月(ピーマイ・ラオ)を迎える。
乗り合わせた乗客の多くも、少数民族と言われるモン族の人達で、それぞれが正月の休みでこれから村へと帰るのだろう。
トラックが小さな村を通りすぎる度、一人、また一人、大きな荷物を抱えて降りていく。
おじいちゃんが孫達にせがまれ、街で買ってきたおもちゃを手渡している。

  パノラマ。山の稜線を遥かになだらかに道はのび、日は今、まさに暮れようとしている。
薄暗い中、ランプの灯りが照らし出す名前も知らないモンの村々。
帰って来た人を出迎える人々。

  これを一枚の写真でどう表現したらいいのだろう。
トラックの中で、モン族の若者が大事に抱えるラジカセから流れる、語りに近いモンの歌。

僕は、写真も撮らず、ただひたすらにこの時を楽しんだ。