驚愕! 亜細亜虫
〜助けてくれー〜
アジアには、訳わかんない虫もいっぱいいる。
昆虫好きの人にとっては、天国かもしれないが、はっきり言って僕は苦手です。彼等と対面する度に
「ひぇ〜」
と言って、闇雲にダッシュすることもしばしば。
冷静に考えてみると、彼等は僕をビビらすのに十分な要素をいくつか持っていて、何が恐いのかと言うと、
「得体が知れない」
これが一番です。
なんてったって、ファーストコンタクト、未知との遭遇、今まで見たことないんだから…。
ガサガサッと音がして、振り向くと、そこにいるものが一体何なのか、まったく認識できない…うぅ、こわっ!
まだ
「振り向くと、そこにはラージノーズグレイが立っていた…。」
というほうが、形と名前がわかっているだけに安心できる。
もう一つ重要なのが、日本ではまったく考えられない彼等の、もしくは彼等に対する人間の行動というのがある。
その一つ、最も恐ろしいのが「喰う」。
ミチノ、セイブツヲ、クウ…エ? ムシ? クウ…?
頭の中にインプットされた、虫の情報をいくら探ってみても、そこに「食す」という情報は存在しない。
タイの市場に行くと、必ず売っている(しかも山積み)メンダー。日本語に直すと、「タガメ」。
日本でも池とかに住んでいて、カマキリのように伸びた前足で獲物を捕まえ、その体液を吸うという池の吸血鬼。
これを食べちゃうんだな、タイの人は。主に調味料として使用するらしいんだけど、
形が…その…ゴキブリにそっくりなのである。
「ノォー! メンダー! ノォー!」
タイの人に勧められると、突然怒り出す欧米人になってしまう。
もう一つ、メンダーで思い出した。
これは虫ではないが、タイの人が好んで食べるものに「カブトガニ」がある。
タイでの名前は「メンダー・タレー」(海のタガメ)。食うなよ、んなもん!
見たことある? あれ。保護している人には申し訳ないが、いりまっせん。お願いっですからっ、いなくなってくださいっっ!
カニ? カニじゃないだろ、お前はっ! どう見たってエイリアン。地球外生命体。
どういう進化の過程があったのかは知らんが、いらんだろ? 足、そんなに。
カニはね、茹でるとね、赤くなるの。そういう決まりなの。それなのに、なんで緑色なのっ、君はっ!
くっさぁ! いやいや、いいですよ。納豆、クサヤ、臭くても美味しい物はいっぱいありますから…
でも、まっずーっ! 匂いそのまんまの味。最後まで期待を裏切らないって訳ね、君は。
頭ん中に卵持つなよ、頼むから…。勇気のある人は、挑戦してみてください。僕のいないところで。
蚕、日本でも食べたんだって? いやあ、いいっす。僕は。
よ〜く考えてごらん、芋虫なんだよ。栄養があるって? あ、僕、栄養興味ないんで…。
僕が体験した「虫に関する事件」。ある時、サンダルがあんまり汚くなったので、外にタライを出して、
タワシでごしごし洗っていたら、突然、左腕の肘の辺が猛烈に痛くなった。
「ん? なんだろう?」
と、その刺すような痛みに驚いて見てみると、そこには一匹の「アブ」らしき虫がとまっていて、
なんと、僕の腕の皮膚を噛み切り、滴り落ちる血液をなめていたのだ。
僕は慌てて振り払ったのだが、小さな虫がやったとは思えないほど、血がダラダラ出ていて驚かされた。
狂暴だぞ、アジアの虫は。
また、ある時は、次の日移動する予定だったので、整理しようと思って鞄を開けたら、中から蟻がワサワサ出てきた。
「あれ、砂糖かな?」
僕はコーヒーを飲むために砂糖を持ち歩いているので、真っ先に砂糖のケースを見たのだが、そこにはいない。
「じゃ、なんだ?」
よく見てみると、彼等は僕がバンコクで買った電卓の中に巣を作っていたのだ。
液晶とガラスの間を忙しそうに歩きまわっている。
卵とか蛹をくわえてる奴もいて、どうやら本格的な巣作りのようだ。
なんで彼等が電卓の中に巣を作ろうなどと思ったのかわからないが、昨日の夕方見た時にはいなかったので、
彼等は昨日の晩、一夜にして引っ越ししてきたということになる。
この群れの中に
「女王様、いい所があります」
と提案した奴がいるに違いないのだが、それで
「そこにしましょう」
と言う女王も女王だ。
ってそんなことを言ってる場合じゃない。どうしよう?
殺虫剤なんかかけたら、蟻も死ぬかもしれないが、電卓も死んでしまう。
仮に、運良く電卓は壊れなかったにしても、蟻の死体は出て来ないので、
計算する度に蟻やら卵やら蛹やらが、液晶の前を行ったり来たり…うわ〜、それだけは勘弁してくれぃ!
考えた末、僕はその電卓をビニール袋に入れ、輪ゴムで口を結んで鞄の中に入れ、次の街に移動した。
宿に着いて開けてみると、彼等は異変に気が付いたのだろう、みんな電卓から出てきて、ビニール袋の端の方に固まっていた。
やれやれである。
蟻っていうのは、けっこう攻撃的な生き物で、知らないで巣の近くを歩いたりすると、大勢で攻撃してくる。
ラオスなんかで突然、足が痛いもんだから、見ると、何十匹という蟻が
「これでもか!」
と、僕の足を攻撃している。知らなかったで済めば、警察いらない攻撃。絶対に許してくれない。
そう、この蟻のように、小さい虫は大軍で来るというところが、彼等のいやらしいところ。
一匹で十分 恐ろしい奴も嫌だが、大軍もなかなか始末に負えない。
蜂もそうだし、東南アジアで一番苦しめられるのが、蚊。もう、うじゃうじゃいます。
中にはマラリアなどの病原菌を媒介する、一粒で二度美味しいタイプのものもいて、虫除けスプレーがいくつあっても足りません。
不思議なことに、現地の人より、外国人のほうが好みらしく、夕方ともなれば集団で宣戦布告を告げてきます。
僕もアジアを旅する時、虫除けスプレーや蚊取り線香を持って行きますが、なんてったって日本製が一番効く。
一度、タイの地方都市にある安宿にチェックインしたら、水浴び用の水槽の中から蚊が大量発生していて、
トイレのドアを開けた瞬間、ブワ〜ンと何十匹の蚊が襲いかかって来た。
「ひえ〜」
慌ててドアを閉め、近くのコンビニに蚊取り線香を買いに行ったのだが、運悪く日本製のものがなかったので、
仕方なくメイド・イン・タイランドの物を購入した。
しかし、これがまったく効かない。ちゃんと煙は出るのだが、どうもこの煙に殺傷能力はないらしく、
蚊はどっかへ逃げ出すだけで、一匹も死ななかった。
おそるべしっ! 仏教の国の蚊取り線香。
蚊と並んで悩まされるのが、ハエ。一番腹が立つのが、食事時にやってくる奴等だが、
気の利いたレストランになると、テーブルの上のコップに、線香のような棒状のものを何本か入れて、置いてある。
触ってはいけません。これには、かなり強力な接着剤がついていて、まあ、日本で言うところの「ハエ取り紙」の役目を担っています。
それでも、奴等はやってくる〜。なんてったって、多勢に無勢。数匹の犠牲を出した所で、彼等にひるむ様子はない。
最初の内こそ、必死に手で払ったりして抵抗するが、その内、そんなに気にならなくなります。
って、ウソ、ウソ。いいことを教えましょう。
奴等は、風と雨に弱い。(大リーグボール二号か!)
その証拠に、雨が降る前、風が吹き出すと、不思議なことに一匹もいなくなってしまう。
おっきなハエとは別に、食事時以外でも水分を求めて、人の目や口のまわりにたかってくる、小さなハエがいる。
人の顔のまわりをブンブン飛び回り、うっとうしいったら、ありゃしない。こいつらに効果的なのは、タバコを吸うこと。
とは言っても、吸い続けるわけにもいかないので、完璧な防御策にはなりませんが…。
あんまりやっていると、ハエは来なくなるが、頭がクラクラして、そのあと大変です。
昨年はラオスのムアンシンという所のゲストハウスで、夕方、「風の谷のナウシカ」に出てきたクワガタムシそっくりの昆虫を見た。
「虫笛、虫笛…」
そんなものないって!