年金という名のあぶく銭

年金とは一体なんなのだろうか。政府がようやく重い腰を上げたせいだろうが、我々が支払っている厚生年金等の無駄遣いが次々と明らかになっている。社会保険庁における職員健康診断費や保険料までが公的年金保険料等で支払われていたという話など、極めつけと言えるだろう。これが民間の場合、大企業であればそれなりの費用を捻出して医療機関に依頼をして最低減の検査を行うわけであるし、中小企業ともなれば各人が自分の負担で人間ドック等の診療を受ける。この場合の支払はもちろん自費であるし、大企業の人間であっても人間ドック分までは会社でカバーしないからもちろん持ち出しとなる。また個人が加入する保険は、公的なもの民間のものを問わず給料から天引きされるものだ。官僚といえども自分の給料からそれらを負担するのが筋であるのに、診断費や保険料を国民から徴収した保険料で支払う?冗談ではない。どこの世界に私的な費用まで年金保険料でまかなう必要があるのか。立派な横領というべきものではないか。

その事例に限らず、厚生年金を原資として各地に建設されそして滅茶苦茶な安価で売り捌かれた施設などもひどい事例である。厚生労働省によれば、これまでに徴収された厚生年金と国民年金の保険料総額は約370兆円で、このうち約5兆6,000億円が年金の給付以外に使われたという。ちなみに年金資金運用基金の累積損失は2003年9月時点で約3兆6,000億円であるから、損失が全て給付以外のものに起因するわけではないにしても、給付以外使用という無駄遣いがなければまだ黒字であったということになる。もっとも、厚生年金を原資として建設された年金福祉施設の全てが役に立たないものであるというわけではなく、中には老人ホームや病院も含まれるわけだが、それにしてもひどい状態である。その良い例が大規模年金保養基地(グリーンピア)である。全国13ヶ所に作られた「年金保険料を納めている人向けの保養施設」であり、その設備はなかなか立派である。私自身も何箇所かの施設を利用したことがあるが、非常に設備は素晴らしかった。会社の研修で行った熊本のグリーンピアも、きれいな宿泊施設に多機能の体育館、屋外にはオリエンテーリングを行うに十分な広さのある林や小山があり、カート場もあったように記憶する。なるほど「保養施設」らしい造りではあったが、そのときうちの会社以外の客はいなかった。あれだけ大きな施設に自分達だけだと、却って寂しいものがある。

何故それだけの施設が利用されないのか。答えは至ってシンプルだ。「保養施設」が国民の求めるレジャー需要を満たしていないからである。戦後60年を迎えようという今、個人のレジャーは多様化しており、旅行会社のツアーパックを見ても非常に多種多様、多世代がそれぞれ楽しめるような商品が販売されている。これが一昔前であれば「旗振り旅行」と呼ばれる、団体旅行がメインだった(それはほんの20年前の話だ)。現在では団体旅行の効果も一応はあるものの、個人或いは家族単位での「個人向けパック」商品がメインとなり旅行行程の組まれ方も個々人の希望によって変更できるものが圧倒的多数になっているのである。そういう時代にあって、グリーンピアは時代遅れなのだ。同じ金を払うなら、温泉がついたり食堂の割引券が付く、そういうメリットがない限り消費者は利用も考えない。せいぜい体育館等をスポーツの練習場として借りるくらいだ。民間にあってはその程度のことは常識となっていると言えよう。厚労相も「いかに年金の保険料を払っている方に(利益を)還元させるかが課題だった。年金を取り巻く環境は変わり、現状に合わなくなっている」と答弁しているが、そんな発言を今更している時点ではない。個人レジャーの多様化は既に1980年代に始まっていたのだ。どんどん変わりゆく現状に対応せず放置していたツケが回りました、というのが実態ではないか。

そんな状況下、我々の年金保険料等は引き上げられる。「勤続40年、妻は専業主婦で〜」云々というモデルによって試算された試案によれば、現在30代の人間の将来受け取る年金は支払った額の1.2倍程度に過ぎず、現在の世代との格差はあまりに大きい。現在の年金世代においても「我々は戦後の混乱期で散々苦労してきたんじゃ」という言い分があるわけだが、現役世代は現役世代で「リストラやら減給、不況の厳しい環境下で何で将来受け取れるかわからない金を支払う必要があるのか」という言い分がある。まして給料なんてものはこのご時世下がることはあってもあがることはまずないのだから、その中での負担増がどういうものであるか自明である。給料から自動的に天引きされるサラリーマンにしてみれば、未払いを決め込む人間の存在も腹ただしい。そんな不公正を正すべく資産の強制徴収も視野に入れた取立てが行われるそうであるが、実際の現場の人数が足りないだけでなく、資産価値の算出に時間がかかるので実際に行われた事例はわずかであるとか。ならばと取りやすいところから取ろうとする姿勢にはもううんざりである。共働きでダブルインカムとなっている夫婦の場合はまだましであるが、これが夫や妻の収入だけの世帯の場合はより深刻な問題となる。専門家や企業界が反発しているように、消費者心理がさらに冷え込む可能性もある。そこまでして奪われる金が、官僚たちに無駄遣いされる。これほどの屈辱はない。まして公務員の年金は民間よりも優遇された制度が多いのだ。そんな連中を肥えさせる金を何で支払わなければならないのか。

税金もそうであるが、今の役人に足らないのはコスト感覚と現実を見る眼だ。現実とは自分達が作るものだと勘違いしている輩の何と多いことか。立派な施設はそれだけ維持費も設備投資も金がかかるという程度の感覚を持たなくてどうするのか。年金はあぶく銭ではない。支払った人間の老後に支払われるべき貴重な生活資金の一部である。年金の用途外使用の禁止も検討され始めたというが、それが本筋であろう。年金の運用は必要であるが、無駄な物を作るために使っていいという論理にはならない。調べれば当時の責任者は分かるのだから、遡及して彼らの資産を没収するのも良かろう。他人の金で無駄遣いした人間をのうのうと養っておく道理は無いし、それではヨーロッパで滅びた貴族の再来ではないか。当然、前述の社会保険庁にしても流用の廃止ではなく、これまで流用された経費については職員から全額返還させるべきである。

年金はあぶく銭……官僚たちのその認識を根本から叩きなおしてやらない限り、改善の見込みはなかろう。この際、アルカイダに頼んで全国の官僚の施設を片っ端から破壊してもらうのも良いかも(笑)。あくまで官僚の施設だけ、ね。

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