癖


誰もいない廊下を一人歩いていると上の方からけたたましい足音が聞こえてくる。
なんとなく、その足音の持ち主がわかるような気がしてふと顔を上げてみると、
そこにはやっぱり思った通りの人物の顔があった。

「フッチ!!」
手すりから身を乗り出して叫ぶ姿に、危ないなぁ・・・なんて思っていたら、
大きな風をきる音とともにその持ち主が僕の前に跳び降りてきた。

「危ないよ?サスケ。」
「いいもんやるよ!」
僕の忠告なんてまったく聞きもしないでにこにことサスケが笑うのをみて、
軽くため息をつく。
その時ほんのり甘い香りが鼻をくすぐった気がして、首を傾げてみると
サスケが嬉しそうに笑っていた。

「目とじて!手出して!」
言われたように目を瞑ると、自分の手にサスケの手が重なって・・・。
かさり、という音を聞いた気がした。そして次の瞬間、
甘い香りとともに唇に柔らかい感触がする。
口内に入ってきた硬いものにビックリして目を開けると、
サスケが手を振って走り去っているのが見えた。

「いくらおれでも、そこまで甘いとちょっとカンベンって感じでさ!
やるよ!あ、あとでお前の部屋行くから!」

言うだけ言って去っていく背中を軽く睨み付けた後、口の中に広がる
かき氷のシロップみたいに甘い味に顔をしかめた。口移しで渡されたそれは、
口の中が真っ赤になるんじゃないかってくらいに甘いイチゴ味の飴で・・・。
軽く歯で噛んでもてあそんでみたあと、ふと、さっき手渡された何かを見てみた。
掌の中を見ると飴を包んでいた紙らしきものがあって、それをくしゃりと握り潰し、
僕はべとつく唇をひとなめして、またため息をついた。

僕とサスケは恋人同士・・・。恋人同士になってから・・・
ちょっと、困ったことが・・・あるんだよね・・・。



「フッチ何おこってんの?」
「おこってないよ。」

約束通りに部屋にやってきたサスケが不思議そうに首を傾げた。
「ふ〜ん・・・・・・・・。」

顔を覗きこんできたサスケから、目をそらすように首を横に向けた瞬間、
頬を掴まれてそのままキスされた。離れ際に、名残惜しそうに唇がなめられる。
「機嫌直った?」
「あのねぇ〜!?」
顔が赤いのが自分でもわかってしまって、思わず怒ろうかと思ったら
サスケの指が僕の唇に触れてきたから、身体がピクリと小さく反応してしまった。
無意識に眼を瞑る。

「フッチ。お前、唇荒れてんぞ?」
「・・・・・・・・。君のせいでしょ。」

ふてくされてぶっきらぼうに言ってみたつもりだけど、
全然サスケには気付いてもらえないみたい・・・。
「なんで?」
わからなそうに首を傾げているサスケに、ポケットの中のものを出して見せる。
「さっきみたいなこととか・・・サスケがいつも、な、な、なめっ・・・るから!
唇が荒れちゃうんじゃんか!」
「あ〜・・・・・・・。」
僕の掌の上にある飴の包み紙を見て目をそらし、後退しはじめた
サスケを逃がさないようにと部屋の隅まで追い詰めた。

「いつもルックに言われるんだよ!!
『フッチは唇荒れやすいから、キスした後はわかる。』って!」

そんなこと言ったって…なんだよ。お前キス好きじゃないのかよ。」

 突然言われた言葉に顔が熱くなったのを感じる。
多分今、僕の顔はきっと真っ赤になっていて・・・。
サスケの目が輝いたのがわかった。
このまま負けてたまるかと、一生懸命言葉を探す。

「す・・・・・・、好きじゃないよ!」
僕の口から出た精一杯の反撃に、サスケは待ってましたとばかりの笑顔になって、
僕はしまった!と思ったけれど・・・遅かったんだ・・・。

「うそつき〜。だって、お前、キスしたい時まわりに
人いないかきょろきょろすんじゃん。」
「えっ・・・・!?」
「でその後、唇にちょっと力はいんだろ?」
「うそっ!?」
「うそじゃねぇよ!だって、お前ちょこっと唇尖らせて俺のこと見てくるもん。」

 頭の中が真っ白になって、もう何も考えられないというより、何を
言っていいのか、どうすればいいのか判らずに、慌てて部屋から逃げようと
したけれど、サスケに腕を掴まれ、腰に腕を回されそのまま引き寄せられた。

「まじでやめて!恥ずかしくって死にそう!」
「なんでだよ。いいじゃん。かわいくて。」
「いやだぁ〜!」

 暴れようとしたらそのまま唇をふさがれてしまっていて・・・。
そのまま足が宙に浮いた感覚がして、気がついたときには
ベッドの上に落とされていた。

「サスケ・・・。今、僕のこと…持ち上げた?」
ビックリして顔を上げると嬉しそうに笑うサスケの顔があった。
ほんの数ヶ月前、ハンフリーが僕を持ち上げているのを見て悔しかったと…
言っていたのに。

「ちょっとだけな?これも日ごろの訓練の賜物だな。」
その笑顔にどきりとして体中が熱くなった。
上着を脱ぎ始めたサスケの両腕を見ると、出会った頃より確かに筋肉が
ついた気がする。まぁ…。自分だってこの頃引き締まってきた気がするから、
一緒に稽古しているサスケが逞しくなるのも当たり前なのかもしれない…。

「あっ。」
ふと、思い当たって笑いそうになるのをこらえる。
ここんところ、サスケには負けてばかりで悔しかったけれど、
これは…さっきの反撃が出来るかもしれない。

「サスケ〜?」
「な、なんだよ?」
笑いをこらえている僕の顔が少し怖かったのか、サスケが唇の端をヒクつかせた。
「サスケってさ、エッチするときさ、ぼくの足とか、胸元とか見てから、
唾飲みこむよね。でもってその後押し倒してくるよね〜?」

真っ赤になれ〜〜〜!!
と、心の中で叫んで、俯いているサスケの顔を覗きこもうとしたら……。

こくり・・・とサスケの喉が動いたのが目に入った。
「こんなふうに?」
なに〜〜〜〜〜〜っ!?
急に抱きしめられて、ベッドに押し倒される。
「えっちの時の癖ねぇ〜?フッチも以外と…。」
「わーーーーーーー!!」

 失敗した〜!!
昔はキス一つで真っ赤になってたくせに、最近のサスケは侮れない。
最近じゃあ、どっちが年上なんだか・・・・・・・。
負かしてやろうと切り出した僕のセリフは、更に自分を追い詰めるものだったらしい。

「フッチが忘れられないようなこと、しよっか?」
「ど、ど、ど、どんなことっ?」

 思わず涙目になってしまった僕を、サスケは意地悪そうな顔で覗きこんでくる。
心配になって抱きしめられた腕から逃れようと暴れてみるけれど、
その束縛から逃れられるはずはなく・・・・・・・・。

「あ、おれ、フッチのエッチの時の癖、思い出した。知りたい?」
すでに熱い顔が、更に熱くなったのを感じて、もう何も考えられなくなる。
本当に恥ずかしくて、この状況に耐えきれなくって、
サスケの腕の中から逃げようと更に暴れたけれど、乗っかってきている
サスケが重くてやっぱりそれも叶わなくて。

「やめて!ほんとに!!」
「じゃ、自分で気付きな。って、無理だろうけど。」
うわ〜〜〜!どんな癖なんだ!?自分!?
そのまま唇をふさがれて、口内に入ってきたサスケの舌の動きに体が震えた。

サスケの指の動きに見を任せた後、やっぱり僕は途中から
何も考えられなくなってしまって・・・・・・・・自分の癖は・・・わからないままで・・・・・・・。

知りたいような・・・知りたくないような・・・。
なんとも言い難い・・・不思議な気分のまま僕は眠りについたんだ・・・・・・・・。







く・・・癖!!?唇があ・・あれる!?リアリティー溢れる
その表現がかなりときめきます!

フッチの逢瀬の時(つまりエッチ時)の癖とは一体・・!!?
気になって夜も眠れません!!

サスケののどを鳴らす(生唾飲む)癖もやらしくてとても
フッチへの愛を感じますな・・・。
(ヒロセさんのコメントもどうも生々しいな・・。)

ちょっと裏行きにまわそうと思っていた小説ですが
せっかくまこりん部屋を開設した事ですし、ぎりぎり範囲で
表に載せました。行為にうつるまでの恋人同士の会話ってのも
妙にそそるものですよね。

ありがとう!まこりん〜!