きっかけ 4


「えっ!?何、フッチ、今日誕生日なの!?」
「そうだよ。」

いつもの様にベッドの中で、なんとなく交わした会話に、サスケの顔が瞬時にして真っ青になった。
それに不思議そうにフッチが首を傾ける。

「何?どうしたの??」
真っ青になって枕に突っ伏したサスケの耳を引っ張ると、フッチもその隣にストンと頭を落とす。
すると、今にも泣き出しそうな顔をしたサスケが顔をあげた。

「まじかよ〜。ぜってぇ〜オレの方が先だと思ってた・・・・・・・。」
「・・・・・・なんで?別にどっちだっていいじゃん。」

大きく溜息をついたサスケの顔を、不思議そうにフッチが覗きこむと、それにサスケがもひとつ
溜息をついて、再び枕に顔を埋める。そしてぎゅっとシーツに皺が寄るくらいに手を握り締めると、
ぱたぱたと足をばたつかせた。

「う〜〜〜〜。だって、お前の方が先ってコトはさ〜・・・・・・。」
「先ってコトは?」
「・・・・・だから〜。・・・・・つまり、ただでさえお前の方が年上なのに、更にもう1歳離れるってコト
だろ〜?逆だと思ってたのにな〜・・・・・・。」
「・・・・・・・。」

枕に顔を埋めて、くぐもった声でそう言った後、そのまま一向に動かないサスケをフッチは見詰めた。
耳が赤く染まっているのがわかった。そのサスケがかわいくて、かわいくて、
フッチは笑いそうになるのを堪えようとしたけれど・・・・・・・。

「・・・・・・ぷっ。」
「フッチ?」
「ご、ごめっ、あっ、あはははは!!」
堪えきれるわけがなかった。
お腹を抱えて笑い始めたフッチに、サスケが真っ赤になって顔をあげる。

「わっ、笑うなよ!」
「だ、だって、サスケ、かわい〜〜〜〜。あははははっ!」
笑い続けながらそう言うフッチに、更に顔を真っ赤に染めると、
サスケはボスっとフッチの顔に枕を当てた。

「いったぁ〜い!」
「何がいいんだよっ?」
文句を言いながらフッチが返してきた枕をそのまま受け止めて、サスケがぶっきらぼうに言う。
その言葉にフッチが再び首を傾げた。

「何が??」
「誕生日のプレゼント!」
真っ赤になったまま、フッチから顔を反らしているサスケの後ろ頭を見ながら、
フッチはにんまりと笑った。そしてそのままサスケの背中に抱きつく。
「あのさ〜。別になんにもいらないから、ひとつだけ、教えてよ?」
「・・・・・・。」

嫌な予感がした。
楽しそうに微笑むフッチに、とてつもなく嫌な予感がした。
それでも仕方無く頷いた。

「僕のコト、好きになった『きっかけ』とかって何?どこが気にいっ・・・・。」
「忘れた。」
フッチの言葉を最後まで聞かずに、サスケが即答する。
顔を覗き込んでくるフッチから目線を反らそうとそっぽを向いたのを、
フッチは追いかけるように更に覗き込もうとした。しかしサスケは更に顔を背ける。
そのサスケに不機嫌そうにフッチが口を尖らせた。

「・・・・・・絶対にウソだね。」
はっきりときっぱりと言い放つフッチに、サスケが本当に困ったように溜息をついた。
自分の肩から前に垂れてきているフッチの腕を掴むと、サスケは項垂れる。

「・・・・・勘弁してくれよ・・・・マジで。なんでお前はそう恥ずかしいコト、聞けるのかな〜。」
「教えてよ!」
「覚えてないって!」
「ウソだ〜!」
「ちっ・・・・!」
いつまでたっても引こうとしないフッチにイラだって、サスケはフッチの腕を引っ張った。

「ひゃっ!!」
突然引き寄せられてフッチがバランスを崩す。その隙にサスケはフッチの身体を引き寄せると、
自分の下に組み敷いた。文句を言おうとしたフッチの唇を自分のそれで塞ぐと、
白い首筋にそのまま唇を寄せる。

「サ・・・・・!」
何かを言いかけたフッチの口に再び吸い付くと、ふっと・・・・・・考え込んだ。
(きっかけ・・・・ねぇ・・・・?)
思い当たるきっかけは・・・・・・・1つ。










あれはまだ、サスケが同盟軍に参加したばかりの頃。
痛む背中に眉を寄せながら、二人本拠地の廊下を並んで歩いていた。

「ったくさ〜。あのルックって奴、容赦ないよな〜。」
「僕は知ってたよ・・・・・。だからルックに『協力攻撃』は無理だって言ったのにさ。
サスケ君が勝手にリーダーに申請するから・・・・・・。」
「だってあの、赤いのと青いのと、バンダナ?がやってたやつ、カッコよかったからさ〜。
同世代って、オレとフッチとルックしか思いつかなかったんだよ。」
「・・・・・・・名前覚えたら?」
(・・・・・・・ルックはたぶん違うと思う。)
とは口にはださずに。
フッチは軽く口を尖らせた。
はっきり言って、フッチとしては巻き込まれたとしか思えなかった。

数日前の戦闘でフリックとカミュー、マイクロトフの行なった『協力攻撃』が気にいったサスケは、
フッチとルックを誘って勝手に自分達の『協力攻撃』をつくってリーダーに伝えたのだ。
そのことをルックに伝えようとサスケはフッチを連れてルックのもとへといった。
3年前の知り合いらしいフッチがいれば、ルックに話かけやすいと思ったのだろう。
確かにルックは話を聞いてくれた。いや、聞いてくれたと言うよりも聞き流されたんだと、
フッチにはわかっていた。あまりにもばかばかしくて何も言わなかったんだと思う。
なのに、ルックが黙っているのは肯定の意味だとサスケが捉えたから・・・・・・・。
こうなるコトは簡単に予想出来ていた。

フッチはかるく溜息を付くと痛む背中に眉を寄せた。
「怪我の手当てしないと・・・・。」
ちらりとサスケの背中を見て、破れた服から覗くどす黒い血に痛そうに顔をしかめた。
「こんなの舐めときゃ治るって。」
「・・・・・・とどかないよ。」
「今後の対策練ろうぜ。」
「対策〜?ルックが入っているだけで無理だって〜・・・・・・。」
呆れた様に溜息をついたフッチの腕を掴むと、サスケは自分の部屋へと引っ張っていった。




血が乾いて服が傷口にくっついていて、ぺりぺりと剥がすと痛みが走る。
「いてっ・・・・・。」
「ごめん、大丈夫??でも、あと、ちょ・・・・・っと・・・・・。」
現れた傷口に、フッチは眉を寄せた。
風の魔法によるものなので、そんなに見た目には酷くないが、鋭利な分だけ傷は深そうだ。
自分の背中もそうなのかと思うと、泣きたくなってくる。

「どうする?おくすり、一応持ってきたけれど・・・・・。」
「ちょっと洗って、舐めときゃ治るって。」
「だ〜か〜らとどかないじゃん!」
いつまでも無理なことを言い続けているサスケに少しムッとして、フッチもムキになって声を荒げた。

そのフッチの背中に回りこむと、サスケがフッチの背中に指を当てた。
そしてそのまま傷口に貼りついた服を剥がし取る。
「痛いっ!触らないでよ。」
「オレが舐めてやるよ。」
「えっ!?」

サスケのセリフにフッチの顔が赤く染まる。
驚いた様に瞳を見開くと、フッチは慌てて振り返ろうとした・・・・・が。間に合わなかった。
がしりと肩を掴まれて、背中に熱い吐息がかかった。
柔らかくて、暖かく、ねっとりとしたものが、自分の背中を舐める。
その感触に、フッチの背中が粟立った。

「ひゃっ・・・・・!」
身体がピクリと反応してしまい、思わず口から出てしまった声に、
フッチが慌てて口を両手で塞いだ。
どきどきと騒ぐ胸に、静まり返った辺り。
なんとなく気まずい気がして振り返ると、驚いたようなサスケと目があった。

「・・・・・・・ごめん。」
「う、うん・・・・・。」
謝ってみたものの、サスケもなんとなくフッチの顔が直視出来なかった。
振り返ったフッチの恥ずかしそうな顔に、真っ赤に染まった頬。
今にも泣き出しそうな瞳に、左胸の奥が疼く。
『ひゃっ・・・・・・!』
耳に残るフッチの声。
わけがわからないけれど騒ぎ、きゅっと締めつけられる左胸の奥。

あれから、なんだか・・・・・・・。
フッチが気になって、あの声が忘れられなくて。
芽生え始めた胸の疼きに、サスケはその正体が何か、暫く考え込む日々が続いたのだった。










(なんっつ〜か・・・・・・・オレって・・・・・・。)
なんとなく情けないような、恥ずかしいような、どう表現して良いのかわからない不思議な
気分のまま、サスケはフッチの首筋に歯を当てた。
「んっ・・・・。」
頬を桜色に染めて首を竦めたフッチに、愛しさを感じてそのまま唇を奪うと、そのまま深く口付ける。
僅かに開いた唇に舌を滑り込ませると、フッチがそれに僅かながら応えてくれた。

「ぅんっ・・・・。ふっ・・・・・。」
濡れた瞳と目が合って、サスケの中でふっと、疑問が涌き出てくる。
自分がフッチを意識し始めたきっかけは、たぶんあの出来事。なら、フッチは?
自分が告白した時はまだ、サスケのコトを好きって感じではなかったのに。
何時の間にかだけど、なんとなくだけど、フッチもたぶんサスケのコトを好きになってくれて
いるってのは、サスケにもわかっていた。

「なぁ・・・・・?フッチ。」
「んっ・・・・・?」
甘い吐息を吐きながら、フッチが聞き返してくる。
それにサスケは悪戯っ子の様に微笑むと、フッチの胸に唇を滑らせた。
「お前は、オレの、どこに惚れてんの?」
「うわっ、自惚れ〜。」
楽しそうに、可笑しそうに笑うフッチに、少し拗ねた様にサスケが口を尖らすと、
フッチはそれにまた可笑しそうに微笑む。
自分の胸の飾りを愛撫するサスケの舌に、擽ったそうに笑いながらフッチは首を傾げた。

「どこかな?どこだろ。わかんないや。」
「なんだよ、ソレ〜??」
「サスケはどこなの?」
「・・・・・・。ま、いっか。」

サスケがそう言って微笑むと、フッチも微笑む。
もう一度唇を重ねて、二人布団にもぐり込んだ。

大切な人が生まれた、今日この日を。
自分が生まれた、特別な日を。
大切な誰かと一緒に過ごせる幸せで、胸がいっぱいになる。

サスケがもう一度フッチの唇に唇を重ねると、フッチはそっと、サスケの背中に腕を回した。
そして指先に当たった切り傷の感触に口元を緩めると、愛しそうに、ゆっくりと・・・・・・・・
指で痕をなぞる。

唇が離れて熱い瞳と目が合うと、サスケが思い出したように呟いた。

「あ、誕生日、おめでとう。」
「ありがと。サスケの誕生日も、一緒に過ごせるといいね。」
「・・・・・・リーダーに言っとくか。」
「・・・・・いいのかな。」
「いいんだよ。・・・・つーか、こっちに集中しろって。」
「ん・・・・・・・。」

ここから先、聞こえてくるのは・・・・・・・・甘い吐息だけ。






きゃーーーーーー!!タイトル通りの内容のすばらしい小説を
どうもありがとう!11月1日になった瞬間に送られてきた
この最高な誕生日プレゼント、しかと受け取りましたぜ!
ホント嬉しいです!!

フッチと一時でも同い年でいたいというサスケの気持ちがとても
健気でかわいいです!年上のコイビトを持つと大変だね!サスケ!

サスケがフッチを意識し始めたそのきっかけがたまらなく萌えです。

フッチの「ひゃっ」という艶声を聞いて少年心に戸惑うサスケが更に
萌えです。そして悶々とした気持ちを溜めつづけ、しかし彼自身その
気持ちがよくわからず悩み続ける少年心を思うと私の心は爆走します。
そしてサスケは夜、○○な夢をみてしまい・・以下略。(裏行き)

も・・・・萌えすぎるぜ・・!まこりん!!!!

本当にどうもありがとうございました(^ー^)ノ!!