星のカケラ


森を抜けて今日も君に会いに行く。
言えるハズのない未来と、決して言ってはいけない愛の言葉を胸に。




「じゃ〜ん!!見ろよ!コレ!」

得意そうな満面の笑顔で差し出したテッドの掌の中を、この部屋の持ち主であり、
親友であるりゅうりゅうが覗きこんだ。掌の中にあるのは透明な石のカケラ。
その小さなカケラは部屋のランプの明りで、きらきらと輝いている。

「な?な?な?羨ましいだろ〜?」

得意げに小躍りしているテッドの顔に、ちょっと苦笑しながらりゅうりゅうは
読みかけの本を机の上に置いた。

「なにそれ?」

そしてそのまま思ったことを口にする。たしかに綺麗だし、見たこと無いもののような
気がするけれど・・・・別に羨ましいかどうかは・・・・・・。

「うわっ!何?お前、知んないの?星のカケラ?」
「星のカケラ〜?またお前、僕が何も知らないと思って騙そうとしてんだろ?」

胡散臭そうに文句を言ったりゅうりゅうに、テッドはわざと大げさに悲しそうな
顔をして見せる。

「この前七夕だったろ?天の川の星が綺麗な池に落ちてくるって御伽噺、
聞いたこと無い?まぁ、本当に落ちてくるわけは無いと思ってたんだけどよ。
これ見つけちゃったら信じるしかないじゃん?」

りゅうりゅうは差し出されたカケラを指でつまんでランプの明りに掲げてみた。
水晶にも似た透明な石の中心が、七色に光っている。確かに普通の石とは違うようだった。

「で、これどこで拾ったのさ?」
「おれんちの近くの泉。」

テッドの家の近く・・・・。と、数日前遊んだ泉を思い出し、たしかに澄んだ綺麗な
泉だったことを思い出す。

「コレ持ってると、自分の一番大切な人が幸せになれるって言われてるんだぜ?」
「へぇ〜。こういうのって、普通自分が幸せになれるんじゃないの?」

『星のカケラ』をテッドの掌に返すと、りゅうりゅうはそのまま読みかけの本に再び目をやった。

「なんだよ。りう〜?俺の『一番大切な人』気になんないの?」

ふてくされたようにそう言って、りゅうりゅうのベッドに座り込んだテッドを横目で
チラリと見る。りゅうりゅうは軽く息を吸い込むと、ゆっくりと口を開いた。

「だって、テッドの『一番大切な人』って僕でしょ?」

「は?」

はっきりと、きっぱりといわれた言葉にテッドは目を丸くした。
今まで、ばれてはいけないと、気付かれてはいけないと、必死で隠してきたじぶんの思い。
そして・・・・気付かないフリをしてきたりゅうりゅうの、自分への思い。
ここからはりゅうりゅうの背中しか見えないから、本気で言ってきているのか、
冗談で言ってきているのか、まったくわからなかった。
とにかく動揺を隠すように、一呼吸おいてゆっくりと唾を飲みこむ。

「そりゃあ〜。お前のことは大好きだけど。」
「かくしたって無駄だよ。」

いつものようにおふざけっぽく言ってみた言葉は、りゅうりゅうの本気らしい
声のトーンで返ってきた言葉に意味を失う。
背中しか見えないりゅうりゅうがもどかしい。どうやってこの場を切り抜けるか、
言葉を必死で探そうとした、その時。くるりと振りかえったりゅうりゅうと目があった。

「僕がテッドを好きなのと同じくらい、テッドが僕を好きって知ってるんだからな。」

そして気付く。
りゅうりゅうの泣き出しそうな瞳の色に。

これは駆け引きだ。りゅうりゅうは俺の気持ちに確信を得ているわけではないのだ。
だから、動いた。
自分の中の抑え切れなくなった想いを明かすことで、俺にも自分の想いを
明かせようという・・・・・これは、告白。

なにが、『同じくらい』だ!
どう考えたって、俺の方がお前のこと好きなんだぞ!?
悔しく思いながら、テッドは右手の甲を皮手袋の上から左手できつく握り締めた。

ソウルイーターがなければ、この想いを口に出来たのでしょうか?
ソウルイーターがなければ、こいつに会うことも出来なかったのに?

「りう・・・・・・・。」

喉まででかかった言葉がでない。好きなんて言葉じゃ足りないくらい、
りゅうりゅうが大事で、大切だから。だって、こいつは・・・・・。

いつのまにか・・・・・・モノクロ写真のようにしか世界が映らなくなっていた俺の瞳に、
初めて鮮やかな色を映し出したヒトなのだ。いつかくる別れに、寂しいと思うことも、
悲しむことも出来なくなっていた俺に、初めてその感情を思い出させたヒトなのだ。
そして、会えないということに耐えきれなくて、初めて町を出ることを
出来なくさせたヒトなのだ。

「テッド・・・・・・?なんでそんな、世界の終わりみたいな顔をするの?」

何時の間にか目の前にある、りゅうりゅうの顔に驚いて息を飲む。
じぶんの心の奥底まで、見透かしたような瞳に吸い込まれそうになった。
悲しそうなりゅうりゅうの瞳に、胸が切なくなる。
瞳を合わせることが出来なくて、ぎゅっと目を閉じた。

「あぁっ!もうっ!ほんと、素直じゃないんだから!」

耳元でりゅうりゅうの声が聞こえたと思った瞬間、唇に柔らかいものが当たった気がして、
驚いて目を開けた。少し怯えたように、不安そうに微笑む親友の・・・いや、愛しい人の笑顔。

「素直になった?」
「あ〜〜〜〜〜〜〜もうっ、お前ってホントばか。俺が何のためにこんなに
我慢してたと思ってんだよ。」

その笑顔に胸がしめつけられる。切なくて、苦しい。
(コレが惚れた弱みってやつなのか?)
震える手をぎゅっと握り締めて、思いっきり息を吐く。
お腹の底から出した声が微かに震えていた。

「後悔したって知らないからな。」

震える手でりゅうりゅうの肩を掴むと、その肩も小さく震えているのが伝わった。
お互いの瞳の中にお互いの姿が映っている。

「言わない方が、後悔すると思ったんだ。」

真剣な瞳に吸い込まれるように、テッドはゆっくりとりゅうりゅうの唇に
じぶんのそれを近づける。
その時、テッドの膝の上に乗っかっていた小さなカケラが、ぽとりと布団の上に落ちた。

「好きだぜ?りう・・・・・・。」

テッドは掴んだ肩を引き寄せると、りゅうりゅうの唇に深く口付けた。




・・・・・・・星のカケラ。
幸せにしたのは・・・・その持ち主の『一番大切な人』?
それとも・・・・・・・。







せ・・せつなげテッド坊小説です!!おお、テッド坊・・!!(興奮気味)
これは「星の○のシルエット」ですか?ゲフンっ
私はススキ野原の男の子になった気分です。(何言ってるのか)

坊がとてもかわいいのですが!!テッド相手だとここまでもかわいらしく
なれる坊に胸きゅんです!(っていうか名前もかわいいよ・・)

ステキ小説をどうもありがとう〜(^ー^)