生ひ立ちの歌






幼年時
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました


初めてルゥに会った時は
弟の影に隠れて縮こまってる
弱っちいヤツだと思ったものだ
















少年時
私の上に降る雪は
霙のやうでありました


弟が出来たような気がして
とても嬉しくて、
いつもルゥのか細い腕を
引っ張って
駆けずり回っていた。


















十三 ー 十四
私の上に降る雪は
霰のやうに散りました



育ての親である院長先生のカタキを
とる為に、戦場に飛び出したオレ達。

いつもケガして帰ってくるオレを
悲しそうに見つめるルゥがいた。


















十五 − 十六
私の上に降る雪は
雹であるかと思われた



どんなツライことだって乗り越えられたのも、
ルゥが側にいたからだ。


いつもオレを支えてくれる、
か細いのに包容力のある手があったから。















やがて戦いは終わって、
安住の地を取り戻して

















十七 − 十八
私の上に降る雪は
ひどい吹雪と見えました



新しく孤児院を建て直し(後に魔法学校に)
生活が落ち着いた頃



・・・・・・・・・・・オレは旅に出る決心をした。






十九 − 二十
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……





ルゥは昔から変わらない
オレを安心させる笑顔で、一言。


「ここはチャドの家なんだから。
絶対帰ってきてね。」



ああ、わかってる。




オレのいる場所は
いつもオマエの隣だった。


孤児院でも
戦場でも

どこでだって




オマエがいれば
そこがオレの帰る場所
だったんだよ












私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪の燃える音もして
凍るみ空の黝む頃

私の上に降る雪は
いとなびよかになつかしく
手を差し伸べて降りました

私の上に降る雪は
暑い額に落ちくもる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して 神様に
長生きしたいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞節でありました