僕のものになればいいのに。【改訂版】



「ハンフリーさん。僕、ブライトが竜だってわかったら、一度竜洞に戻ろうと思います。」

部屋に戻ってきて顔を合わせるなり言われた言葉に、ハンフリーは動けなくなるほどの
ショックをうけて部屋に入ることができなかった。
一番聞きたくなかったせりふ。
それもかなりの笑顔で。
そう…『竜洞にもどる。』……と。
いつまでたっても扉のところに立ったまま、一向に入ってこないハンフリーの手を取ると
フッチは引っ張って部屋の中へと導く。
ドアをパタンと閉めてハンフリーに後ろから抱きついた。
「だって、ヨシュア様やミリアが僕のこと気にかけてくれているかもしれないでしょう…?」
「・…あぁ。」
無邪気に話す嬉しそうな声が遠くに聞こえる。
自分で自分がおかしくなった。
たかが一人の少年のセリフにここまで動揺しているなんて。
そう、たかが・・・『竜洞に一度戻る…』という…。
「……一度?」
おもむろにつぶやく。
そのセリフにフッチの体がぴくりと反応したのが背中ごしに伝わった。
「…僕。…ずっとハンフリーさんと、いたいよ…?…一緒に、いたい、から…。」
かすかにフッチが震えているのが伝わる。
言葉も後半の方は小さくて聞き取りにくかった。
「僕、いつもハンフリーさんに迷惑かけているし、足手まといだからハンフリーさんは
嫌かもしれないけど…。僕、もう大切な人と離れないって、決めたんだ……だからっ!!」
「フッチっ。」
突然のハンフリーの抱擁と、聞きなれない声のトーンにビックリしてフッチは息を呑んだ。
その時自分の腕の中にいるフッチが愛しくて。
本当に愛しくって。
ハンフリーはきつくフッチを抱きしめた。
フッチの首筋に軽く口付けて、今度はそのかわいらしい唇に口付けようとして
……その動きを止めた。
「フッチ…。」
フッチの頬に、目の回りに、涙の跡があった。

震えながら言っていた言葉は、泣き出しそうなのをこらえていたかららしい。

後ろから抱き付いて顔をハンフリーの背中に押し当てていたのも、
今にも泣き出しそうなのをこらえていたかららしい。

小さな肩を再びきつく抱きしめると、その肩に顔をうずめた。
いままでこんなに愛しいと感じた人がいただろうか・・・?
「ハンフリーさん…?」
その小さな肩も、声も、潤んだ瞳も、すべてが愛しくて、そしてすべてが大切で…。
ハンフリーは高ぶる感情を殺すかのようにゆっくりと息を吐いた。
「そうだな…。フッチ…。」
やさしく、つつみこむように頭をなでる。
フッチはそのハンフリーの手が好きだった。
あたたかくて、大きくて、そしてやさしい手のひら。
「一度、ヨシュアに会いに行こう。そうして、世界を回るのもいいかもしれない…。
そうだな…。お前の竜に乗って…。」
フッチの顔がぱあっと明るくなる。
「うん。乗せてあげる。初乗りには、大好きな人とって決めていたの。」
「そうか…。」

 自分のセリフに恥ずかしくなったのか、赤く染めたフッチの頬に唇を押し当てた。
フッチをじぶんのものにしたいと思った。
フッチがほしいと思った。同時にフッチをとても大切にしたいと思った。
額に、鼻に、瞼に、やさしくキスをする。それは神聖な誓いにも見えて。
恥ずかしそうにうつむいたフッチの顎を持ち上げて、今度は唇に深く口付ける。
「ん・・・。」
重なる唇の端からフッチの甘い吐息が漏れる。
「ハンフリー…さん……?」
戸惑いがちに、逃げるように離す唇を追いかけて、ハンフリーはフッチをゆっくりと
その場に押し倒した。

「あのね、僕ね、ハンフ…リーさん、のこと、好きなの。」
胸元をまさぐっていた手を止めて、ハンフリーはフッチの瞳をのぞきこんだ。
「だからね、一緒に、いたいの。これからも。」
上気した頬と、濡れる瞳で自分を見つめるフッチを再びきつく抱きしめる。
愛しくて、切なくて、苦しくて。
自分の胸元に感じるフッチの吐息に体が熱くなる。
今まで、こんな感情を抱いたことがあっただろうか。
自分はこんな感情とは無縁な男だと思っていた。
そういえばビクトールが言っていた。
『好きな人といるときの感情は、なんて言っていいかわからない』と。
思わず口元を緩める。
「あ、ハンフリーさん。笑ったでしょ?」
顔を上げて覗き込んでくるフッチがかわいかった。
「…そうか?」
「ほら、また!」
嬉しそうに笑うフッチに心が落ちついていく。
「僕ね〜ハンフリーさんの心臓の音好きだよ。あたたかくて、やさしい音。」
ハンフリーの胸に耳を押し当てているフッチがしゃべるたびに、くすぐったいような気がして
ハンフリーは再び口元を緩めた。
「あ、少し速くなった。ハンフリーさんでもドキドキすることあるの?」
覗き込んでくるフッチの頭をやさしく撫でて額にキスをする。
「フッチといるときはな。」
滅多に言ってくれないようなハンフリーの言葉に、恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、
フッチは満面の笑みを浮かべた。
「ぼ、僕も!!僕もハンフリーさんといるといつもどきどきするよ!!」
ハンフリーの腕の中からするりと抜け出すと、フッチはハンフリーのお腹にまたがった。
首に腕を絡めて乗っかるように抱きつく。
「ずっと一緒にいようね!」
その時ハンフリーのやさしい瞳と、恥ずかしそうなフッチの瞳が交わり、
フッチはそっとハンフリーの唇にじぶんのそれを軽く触れ合わせて、
そのままハンフリーの首元に顔をうずめた。
「……あぁ。そうだな。」
やさしく背中をさするハンフリーの手が、あたたくて、そしてやさしかった。








うっとり・・・。ステキハンフチ小説です・・。改訂版ばんざい!
せつなげながらラブラブなお二人ですな・・。ここまでくると
もうフッチにお子さんを生んでほしいと思う所存であります。
(ヒロセ退場)

二人の間に新たな世界発生の為、もう誰も近寄れません。
まこりんよ、またハンフチ本だしてくれ〜!!そしてありがとう!