さて、
ハードボイルドと言えばまず欠かせないのが減らず口(ワイズクラック)であろう。
これは危機におけるユーモアの他にも、ウィットに富んだ受け答えの一つとしてもはや紳士の嗜みとも言えるものである。
かといって、誰もが簡単に使えるものかと言えばそうではない。
むやみやたらに使えば格を下げるのは言うまでもない。

さて、減らず口を叩くにあたっては、基本的に三つの技法がある。

置き換える。
評価を変える。
茶化す。

である。

置き換えの例としては「頭痛」→「頭がガンガンする」の「ガンガン」を置き換えて

「寝てる間に新しい鉄工所が建ったらしい」

などと表現することである。
  品のない使い方としてはビールを小便などと言ってみたりすることだが、あまり公には使うべきではないだろう。

評価を変える例としては、これはもう昔から使い古されてきた例ではあるが
攻撃を受けた際に「蚊に刺された程度だな」の他

「ノックの音が冴えないな」

なとと言うのも良い。

茶化すのは王道中の王道だが、日常会話では無闇に敵を作りかねないので気を付けたい。

むしろ使うときは相手を怒らせたときなどだ。

すごんできた相手に対して

「怒るとどうなるんだ?

 ウサギとワルツでも踊るのか?」

 などと切り返したりするときに使う。

 これらの用法をふまえた上で、自分なりの粋な言葉遣いが出来るようになれば立派な紳士といえるだろう。
  しかし、あくまでも減らず口はウィットに富んだ切り返しに使うものである以上
  ユーモアのわからない相手や場違いな相手に使うと、効果半減どころかいらぬ火種を生みかねない。

減らず口の行き過ぎには気を付けたいものである。


戻る。