戦いに於いて最も重要なのは

冷静さを失わないことである。

逆に言えば、相手から冷静さを奪うことによって機を先んじることも、判断力を奪うことも出来る。

これは伝統的な戦術であり、そのために相手を挑発するのは戦いの初歩である。

以下に具体例を挙げよう。

 

1 相手が剣を帯びているとき

 剣は侮りがたい武器である。
 だがしかし、抜かねば使うことは出来ない。

 では抜かせないようにすべきか。
 それは否、抜かせるべきである。  

「どうした?その腰に下げているのは果物ナイフか?」

 逆上した相手が剣を手にすれば
 剣を掴む、剣を抜く
 という二つの動作を余分にすることになる。
 それは初手に於いて大きな隙を産むだろう。

2 相手が既にナイフ等を抜いているとき

 ナイフは恐ろしい武器である。
 手慣れた相手が持つとき、
 突き、斬る以外にも衣類に引っかけて組み技に派生するという
 恐るべき性能を発揮する。

 だが、ここでも挑発によって相手の攻撃を制限することが出来る。

「立派なナイフだな。リンゴでも剥いてくれ」

 逆上した相手の攻撃はほとんどが「突き」である。
 長い刃物の場合は、振り上げてからの切り下ろしである場合が多い。
 言葉によって相手を制する。
 これもまた立派な戦術である。

3 相手が銃器を所持しているとき

 これは既に武器の段階から相手に大きなアドバンテージを取られている状況である。
 扱いやすく、威力も大きい銃は驚異だ。
 利き手の方向へ逃げて銃口が上がるのを期待する
 被弾面積が少なくなるよう半身になって避ける
 そう言う方法もあるが、ここは一つ、古典的手段を試してみるのも悪くはない。

「安全装置がかかったままだぜ」

 一瞬でも相手の注意を逸らすことが出来れば、攻めるも守るにも十分な時間を稼ぐことが出来る。

 

 戦いを避けるのが本当の強者であるが
 巧みなウィットとユーモアでもって危機を脱する、これもまた一つの流儀である。
 苦しいときにニヤリと笑い
 厳しい状況でもユーモアを忘れない
 それが真のダンディズムである。  
 男は常に冷静であれ。


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