[小学校の春]
 小学校の低学年の時だった。
 春の始めの晴れた日に、学校の中庭に出てレンズの実験をした。
 実験といっても他愛無いもので、レンズを使って紙を焼いてみるというものだった。
 金沢の冬は暗く、なかなか日が差さない。その分だけ春の日光にはわくわくするようなうれしさがある。その光をレンズで集め、ワラ半紙に鉛筆で書いた黒丸に当てる。
 紙に映ったレンズの影は薄暗いが、焦点は白く眩しい。距離を調節してその小さな焦点を黒丸に当て続けていると、やがてそこが茶色く変色し、青い煙が立ち始め、焦げ臭い匂いが拡がり、ついに紙に穴があく。
 時間をかければ白紙の部分でも焼けるし、大きいレンズを使うと短い時間でできる。
 あの、白く光った焦点からふっと立ち上がる煙の匂いは春の匂いだった。



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