[小学校の冬]
 私の小学校時代、教室の暖房は石炭ストーブだった。
 金網で囲った鋳物の丸いストーブが教壇の横にあって、煙突が窓の外に延びていた。
 ストーブの管理はストーブ当番の役目だった。火力が弱くなると、当番は大きな火掻き棒で蓋を開け、楕円形をした石炭バケツからシャベルで適当な量をすくって中に入れ、蓋をして空気の取り入れ口の開き加減を調節した。石炭をくべ過ぎると、ストーブが赤くなってきて、今に溶け出すのではないかと心配になった。
 バケツの石炭の量が少なくなると、バケツを提げて外の石炭置き場に行き、積もった雪を掻き分けて石炭を入れ、重くなったバケツを提げて戻ってきた。
 この石炭当番は、言ってみれば公認の遊びなので楽しかった。
 風の強い日は、煙突の煙が逆流してストーブから吹き出すことがあって、教室中が煙臭くなった。
 ストーブの前の子はいつも赤くのぼせていた。木製の机のニスも溶けそうだった。
 後ろの方の席の子はそれでも寒かった。だから、冬の席決めは結構もめた。
 休み時間には大勢の生徒がストーブの周りに集まった。雪合戦で湿った手袋を金網に乗せて乾かしたり、外から持ってきた雪の塊や氷を煙突に当てて、ジュージュー溶けるのを喜んだりした。ストーブは冬の教室の主役だった。

 放課後には、よく雪合戦をした。体育の時間にしたこともある。
 校庭に出来た雪の中の通り道を塹壕にして投げ合った。
 素手で握って投げる方が硬くしまるし、コントロールも効くのだが、冷たいので始めは手袋をはめたままで投げた。投げ合って体が熱くなると手袋を取って素手で投げた。汗をかいた手には手袋の毛糸が付いていた。
 私の投げた球をよけようとして身を屈めた友達の額に見事に命中したことがある。
 友達は「せっかくよけたのに。」といって笑い、私もあまりうまくいったので笑った。

 教室の窓から、よく雪の降るのを見ていた。特に牡丹雪は美しかった。
 降ってくる雪片を見上げると、空にあるときは灰色で、空の色の方が明るかった。
 建物の影に入ると、一斉に真っ白になった。切れ目なく上から降ってくる雪を見つめていると、自分のいる教室がふっと浮き上がっていくように感じることがあった。
 この一瞬の錯覚が面白く、私は授業も上の空で、飽きずに眺めていた。

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