[炭切り]
 家で炭を使っていた頃は、冬が近くなると炭切りをした。
 先ず、買っておいた炭俵を家の横の物置から運び出す。俵は藁の匂いがした。
 結び縄を切って俵を開け、中から長さ三十センチほどの炭を取り出す。
 口をタオルで覆い、長い炭を細い鋸で丁度良い大きさに次々と切っていく。
 炭は柔らかく、数回刃を当てるだけで、黒い切り屑を吐き出しながらすぐ切り落とせる。
 切り口は黒く、つやつやと光っていた。切った炭は大きな袋にしまっていく。
 どんどん切れてはかどるので、この仕事は面白かった。
 季節はもう寒く、しんと冷えた空気の中で作業していても、あまり汗は出なかった。
 何俵もの炭を切り終わると、いかにも仕事をしたような気になった。
 風に乗って、桐の枯れ葉がかさかさと落ちてきた。炭の粉で黒くなったタオルを取って見上げると、桐の木には僅かに葉が残って揺れていた。
 炭切りが終わって何日かすると、暗い空から雨に替わって、白い霰がさらさらと降ってきた。霰は庭に散った柿の葉に当たって跳ね、やがて辺りはうっすらと白くなった。






晩秋の兼六園

雪吊りに日が当たり、卯辰山が
向こうに見えます。

写真は「ウォーキングで金沢めぐり」のHPの中の「兼六園歳時記−晩秋編」よりお借りしました。
http://www.cute.to/~tokusabu/index.html


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