愛知県豊川市牛久保八幡社

 お祭り弓とは、神社を中心とするその村落共同体の五穀豊穣、村中安全、無病息災を願う祭礼に際し、
金的を射止めることにより、その厄難を取り除くことにあります。
 この地域の多くの神社境内には、弓の稽古に欠かせない矢場があり、
日置流雪荷派、日置流印西派、大和流など、其々の矢場の師匠が代々継承し、
その流儀にそって弟子を育ててきました。

 祭礼の朝「お祭り弓」が行われることになります。
         (矢代振り)
 矢代振りとは、参加する弓士全員の矢代矢を背中に背負い、一本ずつ矢代枕の上に順番に並べ、
弓を引く順番(矢順)を決める儀式です。

 矢代矢とは各流派の門人が一人前の弓士であると認められた際に、
師匠から授かる飾り羽根の付いた矢尻のない矢で、

 その流派、師匠の名前、弟子本人の名前が書かれた紙が矢の先に小さく巻かれ、
これが身分証明になり、どこのお祭り弓に参加することも可能となる。

 いわば通行手形兼身分証明書の替わりです。
 直径一寸八分の金的の裏には「鬼」という文字が刻まれ、悪霊とか災いを象徴的にあらわしています。金色をしているために的が立派と思われがちだが実際には鬼の化身です。 
 金的を射止めなければ厄払いが済まないという理由から山車や行列が、神社の境内から出られず、祭礼が始まらないといった事態も、昔は起こったそうです。

 金的はあくまで鬼の化身であるため、一度かけた的には決して手を触れてはならないと言い伝えられています。

 普通の的の場合、的を射抜いてはじめて的中だが、金的は射抜かなくても、かすって傷が付いたり、的が動いて落ちたりした場合でも的中とみなされます。 
又、塵払(じんぱ)と呼ばれる一度地上に落ちた矢でも構わないとされます。 
 そのため、串を使わずお奥行きの深い的をしっかり埋め込むようにかけることが必要とされ、金的の上には眉毛を模した杉などの小枝が掛けられ、御弊で囲われます。

 古老たちは今でも、的の上をトサカ、的の下を喉という言い方をすることがあります。
 金的はあくまで神事であり、競技のための的ではないと考えられています。
 金的が落ちた後には3番的(5寸8分)がかけられます。
甲矢、乙矢、一手引くことができ, 的中者には公文と呼ばれる主催者から褒美が出ます。

 「矢代打ち」という伝統的な作法に従い行われます。
 射止められた矢の刺さったままの的は神社の本殿で、神官によるお祓いの後、祝的(しゅうてき)といわれる矢を抜く儀式が行なわれ、金的を射止めた者には主催者である神社から、額代と呼ばれる報奨金と褒美が出ます。

 この額代で翌年の祭礼に、何流の、誰の門人であるのか書かれた本人の名前の入った的中額を奉納し、神社の境内に長く掛けられることになります。

 これは弓引きにとって大変名誉なことです。
通常、的中額を奉納し神社にかける事のできるのは、正規に伝わる師匠と、その門人に限られます。

 又、競技会や観光協会などが主催する射会などの金的は、余興的といわれ、神事的とは区別されています。



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