K'様作
はじめに
なのは:このお話は、わたしとくーちゃんがあの草原でクロノ君とリンディさんの二人と、また会う為のお別れをしてから、すこしたった頃のお話…。
久 遠:おはなし…です
なのは:くーちゃんが住んでるさざなみ寮の管理人さんの耕介さんと
久 遠:こうすけ…
なのは:那美さんのおねーさんの薫さんが
久 遠:こうすけとかおる…らぶらぶ…
なのは:そんなお話です。
久 遠:なのは…。きょうやとなみは…?
なのは:えーっと。おにーちゃんと那美さんは……
久 遠:わからない…の?
なのは:と、とりあえずそんなお話です。
久 遠:……です。
耕介‘s EYE
〜四十六時間前〜
―――そう、真雪さんの笑顔を見たときから答えは決まっている!―――
俺は、耳を引っ張られながら考える
―――俺はさざなみ寮の管理人を始めて一体何年になる、槙原耕介!―――
考えながらも頭の中で自分を叱咤する
―――今度こそ、今度こそは、俺は真雪さんの悪事を止めて…寮の…さざなみ寮の平和を守ってみせる!―――
そう、心に決めて俺は真雪さんを見やる、
「さっきも言ったけど、とても重大な話がある…」
そう言って、真雪さんは周囲を見渡した後に
「おい、御架月はどうした?十六夜さんと一緒に居るんじゃないのか?」
「ああ、御架月ならいまは井関さんのところに刀身を研ぎに出してますよ」
俺は真雪さんの問いに正直に答えると真雪さんは、
「そっか…そうなると御架月は居ないのか…まいったな…」
何かを考える様に目を閉じる、
「御架月になにか用があったんですか?」
俺の問いかけに真雪さんはゆっくりと頷くと、
「ああ、御架月には十六夜さんを連れ出しておいて欲しかったんだが…」
「姉さまを僕がどこかに連れていけばいいのですか?真雪様」
「ん?ああ…そうし…って、うわぁぁぁ!」
いきなりの御架月の問いかけに真雪さんは驚いて声を上げる、
「み、御架月?いるのか?」
真雪さんは周りを見渡しながら御架月を探す…が御架月の姿は何処にもない
―――やれやれ、ネタをばらすか…―――
そう考えて俺は御架月に声を掛ける、
「御架月…真雪さんが驚いてるから出ておいで」
「はい、耕介様」
そう言いながら、御架月は姿を現す…そう俺の背中から上半身だけを出して
「……………………………………………………………」
真雪さんは俺を指差しながら口をパクパクさせる。どうやら上手く言葉が出てこないらしい、
―――当たり前か…俺自身いまだ信じられないんだから―――
そう頭の中で考えながらも、真雪さんをこのままにしておく訳にはいかないので御架月に離れるように伝えてから俺は声を掛ける、
「真雪さんしっかりして下さい、御架月は刀身を研ぎに出してる間、俺に憑いてるだけですって」
俺は真雪さんの肩を掴んで軽くゆすると、ようやく目の焦点が合ってくる
「憑いてるだけって…お前なぁ…」
と軽くずり下がった眼鏡を直しながら俺を睨む、そんな真雪さんを見ながら、俺と御架月はアイコンタクトを交わす。
しかし、その時俺は忘れていた、驚かせた相手が真雪さんだったという事を…そして、その相手から目を離すという行為の危険さを…完全に失念していた。
ガスゥゥッ!!
顎に衝撃を受けたと脳が認知をした時には俺の体は宙を舞っていた、そしてそのまま受身を取る事すら適わずに頭からリビングの床に落下する。
「…………………取合えず…殴っとく」
左の拳を宙に突き上げたままの格好で真雪さんはつぶやく
「さて、次は…御架月。オメーだ…」
そう言いながら、真雪さんは指を鳴らしながらゆっくりと円を描くように歩き、御架月をリビングの隅へと追いこむ、俺からは真雪さんの背中しか見ることができないが、周囲の空気がまるで陽炎のように揺らめいていた、
―――こ、これは殺気?いや…そんな生温い物じゃない…鬼気か?―――
「死刑と処刑…好きなほうを選んでいいぞ。ちなみに壁抜けして逃げたりなんかしたら…」
「し、したら…?」
半分以上泣き顔になりながら、御架月は問いかける。
「十六夜さんに叱ってもらって、その後にアタシの報復を受けてもらう…」
「ご、ごめんなさいごめんなさい。なんでも言うことを聞きますから、それだけは許して下さい!」
そういって、御架月は床に頭を擦り付けるかのように頭を下げて許しを請う、そして黙ってそれを見やる真雪さん、
「ん〜、そうかぁアタシの言う事はなんでも聞くか…。」
そう言った真雪さんの声はいかにも悪役…いや悪そのものだった。
「じゃあ、さっきも言ったように十六夜さんを連れてしばらく散歩にでも行って来い」
「え、姉様を連れて散歩にですか?」
御架月は聞き返す、
「そうだ、今すぐに十六夜さんを連れてだ…決してアタシに頼まれたからなんて言うな。それとしばらく…一時間以上は帰って来るんじゃねぇぞ」
「わ、わかりました!い、行ってきます!!」
そう言って御架月は逃げるようにリビングから出ていく、
―――く、御架月はあっさりと陥落か…やはりこの寮の平和を守るのはこの俺か…例え、この身が砕けようとも真雪さんは止めてみせる!―――
「で…耕介、おまえに…」
「駄目です、俺は協力しませんよ」
真雪さんの先手を討って、俺は口を開く、
「だから…」
「駄目です!」
「耕介には…」
「嫌です!」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
しばし、俺と真雪さんは無言のままに睨み合う、
「やるな…耕介」
「やりますよ…真雪さん」
俺と真雪さんは不適に笑い合う。そのままリビングには再度沈黙が下りる、
「そうか…出来ればこの手を使うのは避けたかったんだが…」
そう言って、真雪さんは胸のポケットから携帯を取り出すと、ボタンを押す。
しばしの沈黙の後、真雪さんは電話に話し始める
「おう、坊主、アタシだ今何処だ?」
「そうか!アレが出来たか、月村のお嬢も仕事速いねぇ」
「ああ、実はちょっと耕介に例の件を協力を要請したんだが…断られてな」
「ん…わかった、じゃあ坊主も早く帰って来い、いま面白いことになってるから」
そう言って、真雪さんは電話を切ると俺を見る、その目は優越感に浸った勝利者の目だった、
「耕介…もう一回聞くぞ…」
「だから、何回聞かれても俺の答えは変わりませんよ」
そう答えると真雪さんは俺に背中を向けて、
「ベッドの下のコレクション…」
そう、ぼそりと呟く、
「…………!!!」
俺は、努めて冷静を装いながらも、
「ま、まぁ俺も男ですから…そういった類の物くらい持ってますよ」
そう答えるが、
「昔、アタシがやったロリコン物のAVを後生大事に持ってるのはどういうことなんだろう…」
「!!………………………………」
「あんな物持ってるって、寮の奴らや、神咲姉が知ったらどうなるかなぁ…」
―――耕介さん…ああいったのが好みなんですか?―――
俺の脳裏に薫の顔が浮かぶ、
―――ああ、薫…そんな目で俺を見ないでくれ。そんな目で見られたら俺は―――
そういった自問自答の末に俺は、
「御…協……力………さ…せて…頂き…ま…す…」
血を吐くように言葉を絞り出した、
―――すまない薫…俺は…俺は…真雪さんを止めることができなかった、こんな弱い俺を笑ってくれ―――
心の中で目巾の涙を流して薫に謝罪をしながら。
『ただいま〜』
玄関から声が聞こえてきたかと思うと、すぐにリビングの扉が開いた。
入ってきたのは、シルバーブロンドの女性…リスティだった。
「おかえりリスティ」
「おう、帰ったか坊主」
俺と真雪さんはリスティを出迎える。
「ただいま耕介、真雪」
リスティは手に持った荷物をテーブルの上に置くとこちらを向いて、
「さっき真雪からの電話でも聞いたけど、大変なことってなに?」
「ああ、それは…」
真雪さんがことの顛末をリスティに聞かせる
「あはは…じゃあ那美と薫の意識が神社の石段から落ちた時に入れ替わった訳か…」
話を聞いたリスティは煙草に火をつけながら笑う、
「まったく…ここはいつも不思議なことばかり起きるね、ボクは驚きだよ…」
やれやれと言った具合にリスティは肩をすくめて欧米人の様なジェスチャーを取る。
「オマエが言うな…不思議少女の代表のくせに」
真雪さんは苦笑してリスティにツッコミを入れる、
「で、どうするんだい真雪…一応ボクも忍のところから新型を受け取ってきたけど…あの二人があんな状態だと…」
そう言って、テーブルの上に置かれた荷物を指差す
「当然、決行に決まってる。その為にそれを作ってもらったんだからな」
真雪さんはテーブルの上に置かれた荷物を開封すると中を覗き込んで、
「うん…いい出来だ。ちゃんと注文通りに出来てる…で坊主はコイツのテストをやってきたのか?」
その問いかけにリスティはゆっくり頷く。
「で、一体なにを忍ちゃんに作ってもらったんですか?」
先ほどから話が見えない俺は真雪さんに問いかける、
「まぁ、百聞は一見にしかず…坊主、悪いが一回動かしてみてくれ」
「OK!じゃあ起動させてみるよ」
そう言ってリスティは耳のピアスに触れて背中からフィンを出して、ゆっくりと目を閉じる
「…………………………モスキート起動…」
そう呟くと、袋の中から10cm四方の機械が出てくる、
「……なんですか?これは?」
俺は、真雪さんに問いかける、
「ああ、これは精神感応式に作った小型のCCDカメラだ、ちゃんと音声も拾えるように集音マイクも付けてある優れものだ」
「いや、性能のことじゃなくて…こんな物を一体なんに使うんですか?」
「当然、覗き盗撮用に使う」
真雪さんは俺の問いかけにシンプルな回答を返すと、
「今までは、アタシがカメラを持って直接現場に出向かなきゃならなかったが、コイツのおかげで随分やりやすくなりそうだ」
真雪さんは宙に浮かぶカメラを見上げながら、嬉しそうに呟く、
「特に神咲姉は人の気配を読むのが得意だから、マトモに撮影したことが無いんだ。
これなら気配を悟られずに撮影することが出来る」
「いや、気配云々よりも、こんな物が浴室に浮いていたら誰だって気付きますよ」
俺のツッコミに真雪さんは首を横に振り、リスティに目配せをする
「OK…光学迷彩装置作動………」
リスティが再び目を閉じると、カメラが急に自分の目の前から消える、
「あれ?カメラが消えた?」
俺はカメラが前に在ったところに手をやると、硬い金属に触れる感触があった、
「耕介、コイツは姿を消すことが出来るんだ、だから誰にも気付かれずに潜入しての撮影が可能なんだ」
俺の様子を面白そうに眺めていた真雪さんは簡単な説明をしてくれる、
「しかも、その機能と精神感応システムを使えば360度全方位…オールレンジ盗撮が可能だ」
「科学とHGSの勝利だね」
嬉しそうに語る真雪さんの台詞をリスティがその後を続ける、
「しかし…これだけの性能のカメラ、結構掛かったんじゃないんですか?」
俺は思ったことを口にすると、
「いや、月村のお嬢には前にゆうひがここに住んでた頃の写真やらなんやらを報酬代わりにやったら喜んで作ってくれたから、考えてみれば元手はかかってないな」
顎に手をやりながら、真雪さんはしばし考え込む、
「大丈夫だよ真雪。忍はコイツで恭也の入浴シーンも撮ってきて欲しいって言ってたから、その映像を報酬代わりに渡そう。どうせボクにしか使えないからね…」
―――恭也君…すまない、俺にはこの二人を止めることが出来ない。情けない奴だと笑ってくれても構わない…弱い大人を許してくれ―――
そう二人の会話を聞きながら俺は恭也君の無事を祈るしかなかった。
「さて、それじゃあ耕介、坊主…これから神咲姉妹入浴艶姿盗撮作戦を発動する、諸君らの健闘を期待する!」
そう宣言した真雪さんの目は嬉しそうに…危険な光をたたえていた。
続く
あとがきのようなもの
こんにちはK’ です
すいません、前回あれだけ頑張るとか早めにあげるとか言っておきながら、またもや完成が遅れてしまいました。
相変わらずの遅筆ぶりに思わず「父ちゃん、情けなくて涙でてくらぁ!!」と往年のドラマを彷彿させる気合を入れてしまいました。(笑)
「暴れはっちゃく」は好きだったなぁと感傷に浸りながら、続きを書きたいと思っています、よろしければまたお付き合いください。
では、今回も作者の駄目SSにここまでお付き合い頂きまして本当にありがとうございました。
それでは、また。