K'様作


 

 

 

 はじめに

 

 なのは:このお話は、わたしとくーちゃんがあの草原でクロノ君とリンディさんの二人と、また会う為のお別れをしてから、すこしたった頃のお話…。

 久 遠:おはなし…です

 なのは:くーちゃんが住んでるさざなみ寮の管理人さんの耕介さんと

 久 遠:こうすけ…

 なのは:那美さんのおねーさんの薫さんが

 久 遠:こうすけとかおる…らぶらぶ…

 なのは:そんなお話です。

 久 遠:なのは…。きょうやとなみは…?

 なのは:えーっと。おにーちゃんと那美さんは……

 久 遠:わからない…の?

 なのは:と、とりあえずそんなお話です。

 久 遠:……です。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 耕介‘s EYE

                 〜四十八時間前〜

 

 

 「よしっと。後はコイツを一時間ほど寝かして、その間にっと」

 そう呟きながら、俺は冷蔵庫から鴨肉を取り出す。

 ―――せっかく、薫が帰ってきてるんだ、どうせなら好きな料理を作ってあげないとな。いい鴨肉も手に入ったことだし―――

 そう考えながら、俺は鼻歌を歌いながらまな板の上に肉を置く。

 「んだ〜。さっきからバンバン、バンバンうるせぇなぁ。こっちは仕事明けで疲れてって…耕介?」

 起きぬけの気だるそうな声を上げながら真雪さんがリビングに入ってきた。

 「ああ、すいません真雪さん。起こしちゃいましたか」

 俺は軽く頭を下げて謝ると、真雪さんは笑いながら手を振ってカウンター越しに立って、

 「んで?耕介、今日は何を作ってるんだ」

 俺の手元を見ながら質問をしてくる。

 「ああ、蕎麦ですよ。真雪さん」

 「蕎麦?何でまた急に、しかもそれは手打ちじゃねーか」

 俺の後ろにある打ちたての蕎麦を指差して真雪さんは声をあげる。

 「いえ、薫がこっちに来る前に仕事でよった福島で天然のそば粉を土産に持ってきてくれたんですよ。それでまぁ、打ってみようかなと思いまして」

 と、答えながら俺は下ごしらえを終えた鴨肉を切り始める。

 「なるほどね、でもあんたは確か洋食が専門だろ、蕎麦なんて打てるのか?」

 「俺の場合、たまたま洋食の中で得意料理が多いだけで、一応、和・洋・中全般は作れますよ」

 俺は、鴨肉を一口サイズにカットしながら答える。

 「ほー、たいしたもんだ。でも、蕎麦ってのは打ちたてが一番上手いんじゃないのか?いいのか、こんなに早く打っちまって?」

 「ああ、コイツは繋ぎに何も使ってないんです。そば粉100%の場合は打ってから30分〜60分ぐらい寝かさないと歯応えが悪くなっちゃうんですよ」

 俺は、蕎麦にかけてある布巾をめくって真雪さんに見せる

 「さっき、薫から連絡があって、あと一時間程度でこっちに戻るって電話がありましたから、二人が帰ってくるくらいには茹で始めますよ」

 「ははん?さては耕介、お前…神咲姉に一番上手い蕎麦を食わせてやろうと考えてるだろ。え、どうなんだ?」

 俺が薫の名前を口にして途端に真雪さんは口の端を持ち上げてニヤリと笑みを浮かべる。

 ―――しまった、真雪さんの前で薫の名前を出したのは迂闊だったか―――

 俺が、鴨肉に集中しているフリをしながら、軽い後悔をしていると、

 「で、耕介。ちなみにあんたは鴨肉で何を作ってるんだ?まさか、こんな上手い蕎麦があるのに、鴨南蛮なんかにするつもりじゃないだろうな?」

 と、眼鏡の奥の瞳が剣呑な光を宿していた。

 ―――鴨南蛮になにか恨みでもあるんですか?真雪さん―――

 俺は、質問したい衝動に駆られながらも、ぐっと喉まで出掛かった言葉を飲み込んで、

 「とりあえず、基本は盛りにして、それ以外のつけだれに鴨せいろを用意しました」

 そう、返答をすると真雪さんの目は喜びと期待に満ち溢れて、

 「エライッ!耕介、あんた蕎麦の食べ方がよく判ってるじゃないか、姉ちゃんは感心したよ。じゃあ、ひょっとして蕎麦掻も…」

 「ええ、当然用意をしてありますから。安心してください真雪さん」

 真雪さんの言葉尻をとって俺は返事をすると、真雪さんは急にキッチンに入ってきたと思うと、俺の背中を思い切り叩いた。

 「よくやった耕介!これでこそさざなみ寮の管理人だ。私はあんたのことを見直したよ、かー、姉ちゃん嬉しくて涙がでらぁ」

 と、わざとらしく自分の服の袖で目じりをぬぐう。

 「なんか、毎日のように見直されてるような気がするんですけど」

 「あたしの中ではあんたの評価はリアルタイムで更新されてるんだ。知らなかったのか?」

 「知りませんでしたよ、リアルタイム制だなんて」

 俺は苦笑して、真雪さんに答えた。

 

 

 『ただいま戻りました』

 ふと、玄関から二人の声が聞こえる。どうやら二人が帰ってきたようだ、俺は真雪さんに頭を下げてからエプロンで手をふきつつ玄関に向かう。

 「おかえりって、ふ、二人ともどうしたのそんなにボロボロになって?」

 驚いて二人に声をかけると、那美ちゃんが口を開いて答える、

 「す、すいません耕介さん。じ、実はウチと那美が神社の石段で転びまして…」

 ―――???、何で那美ちゃんが薫みたいな話し方をしてるんだ?―――

 そう、頭の中で疑問を感じながらも、俺は二人の怪我の様子を確認する。

 「と、とにかく、こんな所にずっと立ってるわけにはいかないから…とりあえず早く中に入って」

 とりあえず、二人を中に入るように勧める、

 「わ、わかりました。では失礼します…」

 そう言って、那美ちゃんは普段よりも若干機敏な動きでリビングに向かう、しかし一方の薫は先程から一言も喋らず、玄関でずっと立ち尽くしている。

 「薫もいつまでもそんなとこに立ってないで。ほら」

 そう言いながら、俺は薫の手を取る。

その瞬間に薫の顔が一瞬にして真っ赤に染まる。

 「あ、あのこ、耕介さん…私は一人で大丈夫ですから…」

 そう言いながら、薫は玄関から出ようとするが…

 バタンッ!!

 盛大な音を上げて薫は廊下の上に顔面から倒れこむ。どうやら、玄関框につまずいて転んだようだ、

 「あああ、痛ったぁ〜」

 そう声を上げながら、薫は鼻を押さえて立ち上がる。若干涙目になっている薫を見ながら、

―――???どこか変だ、まるで那美ちゃんみたいじゃないか?―――

そう、頭の中で疑問に感じながらも、俺は薫を助けあげるとそのままリビングへ連れて行った。

 

 リビングでは那美ちゃんと真雪さんが居た。那美ちゃんはてきぱきと救急箱を持ち出して、消毒液や絆創膏を取り出し、真雪さんは煙草を咥えたまま訝しげにその行動をじっと見詰めていた。

 「ああ、那美ちゃん薬の準備はいいから十六夜さんを呼ばないと…」

 そう言うと、俺は薫に十六夜さんを呼んでもらおうと目を向けるが薫はきょとんとした顔をして、俺を見上げる。

―――う、なんだ?この隙だらけの薫の表情は、よく判らんが何か新鮮だ―――

 「だから薫、十六夜さんを呼んで怪我を治してもらわないと…」

 頭の中の考えを振り払うように、若干大きな声をだすと、何故か弾かれた様に那美ちゃんが立ち上がり、

 「十六夜、十六夜―。どこにおんね?」

 十六夜さんを呼び出す。

 ぽろっと、真雪さんの口から煙草が落ちてリビングの上に転がる、

 「お、おい神咲妹…なんでお前が鹿児島弁丸出しで十六夜さんを呼ぶんだ?しかも呼び捨てで…」

 落ちた煙草を気にも留めず真雪さんは那美ちゃんに声を掛ける、しかし、那美ちゃんはその質問に答えずに、

 「ま、真雪さん煙草!煙草が床に落ちとります、それと寮内での咥え煙草は禁止だとウチが昔からあれほど…」

 そう言いながら、那美ちゃんは床に落ちた煙草を拾う。その仕種がますます薫っぽい。

 「薫〜。よびましたか?」

 そう言いながら、十六夜さんは庭先からやってくる、

 「ああ、十六夜さんお帰りなさい」

 俺は十六夜さんを出迎え、薫と那美ちゃんの怪我を治して欲しいことを伝える。

 「わかりました耕介様、では二人に癒しを行いましょう。では薫から」

 そう言いながら、十六夜さんは那美ちゃんの前に立つ。

 「あ、あの十六夜さん…薫はこっちなんですけど…」

 俺はやんわりと十六夜さんに声を掛けるが、十六夜さんはゆっくりと首を振って答える、

 「いいえ…耕介様、私は目は見えませんが薫の霊力を感じることが出来ます。薫は此方に居ますよ」

 そう言って十六夜さんは那美ちゃんの顔に触れる…

 「あらあら、まあまあ…薫、一体どうしたのですか?どうして那美の体の中に薫がいるんです?」

 その、十六夜さんの何気ない一言に俺と真雪さんの時が止まった…様な気がした。

 「お、おい耕介…いま十六夜さんはなんて言ったんだ?」

 ギギギと音を立てそうな動きで真雪さんは俺に話しかける、

 「え、ええと。俺の耳が確かなら那美の体の中に薫が居るって聞こえましたが…」

 真雪さんと同じような擬音を立てそうな動きで俺は首だけを向ける。

 ―――薫が那美ちゃんの中に居ることは分かったけど、じゃあ那美ちゃんは何処にいるんだ?―――

 俺が、隣に立つ薫に目を向けようとすると…

 「かおる…おかえり…」

 久遠が薫に抱きついていた…がすぐに顔をあげると、

 「ちがう…かおる…じゃない。…………那美?」

 その一言に薫はこくんと頷いた。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 俺と真雪さんはたっぷりの沈黙の後に、

 『えぇーーーーーーーーーーーー!?』

 と、さざなみ寮の屋根が突き抜けんばかりの絶叫を上げた。

 

 

 

 

 「つまり、石段から落ちそうになった姉を妹が助けようとしたが、失敗して二人もろともまッさかさまになったという訳か」

 真雪さんと俺は二人の手当てを終えた後に事情を聞いていた、

 「落ちた後に気が付いたら、薫は那美ちゃんに那美ちゃんは薫の体の中に…まぁ入れ替わっちゃったんだね」

 俺が、真雪さんの台詞を続けると、二人は疲れきった表情でゆっくりと頷く。

 「まぁ、今後の対策はその手の専門家が三人も揃ってるんだから心配は要らないだろう、とりあえず風呂にでも入って今日のところはゆっくり休みな」

 真雪さんは煙草を灰皿でもみ消すと、立ち上がってリビングから出て行った。

 「とりあえず、二人はお風呂に入っておいで。その間にご飯を用意しておくから」

 俺の提案に二人は頷いて自分の部屋に戻っていった。

 ―――さて、食事が終わったら葉弓さんにでも相談しよう―――

 などと、考えながらキッチンに向かうと、

 「耕介…少し話があるんだが…」

 妙に真剣な顔をした真雪さんが戻ってきた。

 「はい、なんでしょうか?真雪さん」

 「おまえ、神咲の話をどう考えてる?正直言ってあたしの理解の範疇を超えてるよ、全く昔の映画ではないだろうに…」

 そう言って、再度煙草を口に咥える、

 「昔の映画って…あの神社の階段から落ちて、女の子と男の子の意識が入れ替わっちゃう奴ですか」

 俺の返答に真雪さんはゆっくりと頷く、

 「で、あの二人を元に戻す算段はついてるのかい?」

 ―――結局のところ真雪さんも二人のことが心配なんだな―――

 「とりあえず、青森の葉弓さんに相談しようと思っています」

 俺は考えていることを顔に出さないようにしながら返答する。すると真雪さんは何かを考え込むそぶりを見せてから、俺の耳を引っ張る。

 「い、痛いですよ真雪さん!」

 俺の抗議には全く耳を貸さずに真雪さんは、

 「いいから、実は耕介とても大事な話がある。黙って耳をかせ」

 そう言って真雪さんはにっこりと笑う。

 そう、必ず誰かが非常に災難に遭う(主に俺)前触れの笑みだった。

 

 

 

                                 続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがきのようなもの

 

 どうもこんにちはK‘です。

 

 第一話のUPよりだいぶ期間が開いてしまったこと、大変申し訳ありませんでした。

 今回ようやくの第二話の完成です。ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

 相変わらず、細かい設定を考えずに書いてるために話の方向性がイマイチ定まらずに非常に難儀していますが、第3話は早いうちに必ずあげますので、よろしければまたお付き合い下さい。

 

 では、今回も作者の駄目SSにここまでお付き合い頂きまして本当にありがとうございました。

 

 それでは、また。

 


 

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