K'様作
はじめに
このSSは基本的にはDVD版のおまけシナリオを基盤としています。
ですから、本編ルートではありえない設定がありますが、あまり気にしないで下さい。
筆者の中でこうあって欲しいという設定になってます。
耳をつき刺す爆音と目を眩ませる光。この二つの刺激がおれの五感をうちのめす。
ふとすると、ちぎれとびそうな意識のなか、左肩に走る衝撃の強さだけがやけに現実的に感じた。
―――この光と衝撃は…。そうか、また爆発か―――
完全に爆発時の記憶が残っているわけではないが、深層心理にこびりついた記憶の断片がわずかながらも爆発時の情景を再現する。
―――くっ、身体が動かない。これは…。今度こそ爆死か―――
おれは、ゆっくりと自分の死を自覚して
―――月村。絶対に枕元に立って、夜な夜な本気でシメてやる―――
などと、考えながら、
―――最後に考えるのは、結局、月村のことか…―――
などと、苦笑する。
「……くん!、…かまちくん!」
遠くで、誰かの声が聞こえる。周りが明るくなってきた。どうやら本当にお迎えが来たようだ。
―――月村、ノエル。これでお別れだ。すまない約束守れそうになさそうだ―――
―――美由希、かーさんとなのはのことはまかせた。お前に皆伝の儀式を受けさせてやれなかったのが心残りだ。―――
―――かーさん、なのは。勝手に死ぬおれを許して欲しい。あっちでとーさんに叱られてくるから。本当にすまない。
―――美沙斗さん、美由希の剣士としての成長と皆伝の儀式をお願いします―――
―――フィアッセ、おれ、もう一度、フィアッセの歌が聞きたかった―――
―――レン、晶、あまり喧嘩をするなよ―――
―――神咲さん、剣の修行まだ途中でしたね―――
―――とーさん、おれ、とーさんの背中に追いつけたかな―――
おれは、眩しい光に包まれた。
人造人間 恭也 完
「た…ま…くん!ねぇ起きてよ。高町君!」
おれを呼ぶ声は、まだ続いている。
―――妙だな。おれはまた爆発して死んだはずだが?―――
しかし、体を動かそうにも体の自由は利かない。おまけに口の中には鉄の味が広がる。頬を何度も衝撃が襲う。それはいつまでたっても止む気配はなくしかも段々と強くなってくる。たまらずおれは目を開けた。
目の前にはノエルが、拳を振り上げた状態で止まっている。その後ろには月村の顔が見える。
「あぁ、高町君、やっと目が覚めたんだ、急に固まっちゃうんだもん、びっくりしたよ」
「恭也さま、どこかお体でおかしい所はございませんか」
二人が次々に声をかける。その声に反応しておれは体の調子を確かめる。
―――足…動かない!腕…こっちも動かない!おかしい!体がまったく動かない。
まるで、誰かに押さえつけられているようだ―――
そのとき、おれは気付いた。
「ノエル…。おれに馬乗りになって質問はやめてくれ。それと月村…。足を押さえてる手をのけてくれ」
「あー、ごめん、高町君」
「申し訳ありません。恭也さま」
二人は、謝りながらおれから離れる。
「体の方は異常がないようだ、頬が少しひりひりするが…」
「だって、高町君、なかなか返事してくれないんだもん、またどっか調子が悪くなっちゃったと思ってノエルに介抱してもらってたの」
「そ、そうか、すまないなノエル。面倒をかけたようだ」
気恥ずかしくなって、頬が赤くなる。
「いえ、気になさらないで下さい。恭也さま」
「すごかったんだよー。ノエルったら、見事な蟹挟みで高町君を倒したと思ったら、流れるようにマウントを取ってすかさず馬乗りパンチなんだもん。しびれたよー」
うっとりとした表情で語り始める月村と、少しはにかんだ表情のノエル。
―――それって、介抱か?―――
と、頭の中でつっこむが敢えて口には出さなかった。
いつまでも芝生の上に寝ているわけにもいかないので、おれは起き上がろうと、右手をついた。
「あ、手伝うよ、高町君」
と、手を差し出す月村。差し出された手を取ろうとおれは左手を出した……が、そこにあるべき物がない。慌てて、右腕でそこを触ろうとするが空しく宙をさまようだけ。
おれは、気持ちを静めてからもう一度そこに目をやる。しかし、そこには何もなかった。綺麗、さっぱり。左腕がなかった。
「な、な、な、何だこれはぁぁぁぁぁぁ!」
おれの絶叫が轟く。
「あー。やっぱ驚く。驚くよねぇ、そりゃ」
「月村!そんなに悠長に言う事か?おれの、おれの左腕は?」
なかば、半狂乱になって月村に詰め寄る。月村はなにも答えずただ目線だけを屋敷の方へ向けた。おれもつられてそっちをみる。そこには…。
……はたして、そこに左腕はあった。元は自転車であったであろうと推測できる残骸の上で、それはまるで、自分の勝利を誇るように、雄々しく己の拳を蒼穹の空に掲げていた。
「なんで、腕だけ。ま、まさか、おれの左腕もロケットパンチになってるのか」
「そういう事。本当はこの前の海鳴横断ハイパークイズで優勝できなかった那美の腕につける予定だったんだけど…」
「これで、おそろいですね、恭也さま」
―――ロケットパンチの神咲さん―――
一瞬、巫女服姿で右手に箒を持って、左手を飛ばす神咲さんが頭に浮かぶ。なんとなく凄くシュールだ。
―――む、いかんいかん―――
おれは頭を振ってその考えを打ち消し。再び左手に目をやる。
「しかし、えらく大きいな。確かノエルのは手首から先を飛ばすタイプじゃなかったか」
「その通りです。恭也さま、私の場合、速度、精密性、連射重視ですが恭也さまのそれは、私の物より大型なものを使用することにより破壊力に重点を置いています。単純に重量が私の物の3倍になっています。同量の炸薬使用でなら攻撃時の衝撃は私の9倍になります。また、内部骨格にチタン合金を採用しておりますので、衝撃でこちらの骨格に損傷が出ることもありません」
「なるほど、よくわかった。それで、あれはどうやって元に戻せばいい、見た感じではワイヤーなどがないようだが…。月村?」
月村は一瞬表情を曇らせ、目を逸らしたが、何事もなかったように歩いておれの腕を拾い上げるとそのままこっちへ歩いてくる。
「はい、高町君」
「いや、『はい』、ではなくてだな。自動的に戻ってくるとかそういうものはないのか?」
「うーん、そういうのも考えてたんだけど…」
「だけど…?」
「着けるの忘れちゃった」
と、目の前で手をあわせる。
―――そういえば、月村の叔母さんのさくらさんが
『忍は肝心なところでいつも単純な失敗をするのよね』
とか言っていたなぁ。―――
「わかった、つまりこのパンチは一発限りって事なんだな」
「パンチを飛ばす炸薬は、ノエルのと一緒のカートリッジ式にしてあるから実際5回までの発射は出来るんだけど、撃ったらそのたんびに拾いにいかなくちゃね」
「要するに、実質的には一発撃ったら左腕がなくなると考えておけばいいわけだな」
―――つまり、実戦で使用する場合はよく言えば最終手段。悪く言えばやけっぱちということか、つまりは全然使えないということか―――
「まさに、最終兵器だな」
「ロケットパンチは最期の武器ってわけね」
―――最後の字が違うところが気になるんだが―――
「ああ、ところで高町君、まだイレインと実際に戦ってないけど。どうする、まだ続ける?実戦でーたの取得をしたいんだけど」
「ああ。できることなら、お願いする」
おれは、左腕を装着しカートリッジ式の炸薬を装填しながら答えた。
「ノエル。イレイン用の装備一揃えを用意して」
「かしこまりました。忍お嬢様」
待つこと数分、ノエルがイレインに御神の装備と同じ小太刀と鋼糸を取り付け、飛針をホルスターにセットする。小太刀の構えはおれと同じ二刀差し。とーさんと同じ構えだ。
「準備完了致しました」
ノエルはイレインから離れ、そう告げた。よく見ると、先刻まであったイレインの電気鞭は外されている。
「ノエル、イレインの電気鞭は外したのか?」
「はい、今回は純粋に恭也さまの実力を測るものですので、極力、装備条件はあわせてあります」
「ありがと、ノエル。じゃあ、高町君。準備はいい」
「いつでも結構だ」
「じゃあ、イレイン。戦闘シュミレーション。データロード」
イレインがゆっくりと目を開く。しかし、その眼はなにも写していない、まるで操り人形のようにその眼の中には自我が存在していない。
ゆっくりと彼女は構える。いつものおれの構え。自分の中でイメージした自分の姿とまったく同じ構えをとった他人がいた。
「戦闘開始」
ノエルはゆっくりと宣言した。先に動いたのはイレインだった。おれの体を軸にして右方向に半円を描くように動く。
おれは、一旦後方に跳び、牽制代わりに飛針を投げる。が、おれが投げたと同時にイレインは横方向の動きから不意に体勢を低くし、間合いを詰め、抜刀し切りかかる。
―――く、避けられん―――
そう判断したおれは腰から右の一刀を抜き、斬撃を受ける。刹那、自分の予想以上の衝撃が腕に走る。
―――『徹』?いや違う。これは純粋なイレインの膂力―――
―――技はおれのコピーでも。力は自前ってことか―――
―――ならば、正面からは危険。からめ手でいかせてもらう―――
おれは、鋼糸を解き、彼女の首に巻きつける。一瞬、動きが止まるが、即座に左を抜き、鋼糸を切りにかかる。
―――かかった―――
おれは、その躊躇を機に右の刀で上段から切りかかる。注意が首に向いた瞬間。頭上は、彼女の完全な死角だった。その…はずだった。
ドムッ。
勝利を確信したおれの腹部に、鈍い衝撃が走る。視線を降ろすと、カウンターで彼女の膝がおれの腹に突き刺さっていた。
―――し、しまった―――
たまらず、おれは地面に膝を付く。その機を逃さず、彼女は右を横薙ぎに刀を振るう。跳躍をして後方に避けようとするが、先程のカウンターが効いているのか足に力が入らない。
たまらず、おれは地面に転がりそれをかろうじて避ける。しかし、彼女の攻撃は止まらない、左を上段から叩き付ける様に振り下ろす。
―――はやいっ!刀で受けるには間に合わん!―――
そう判断した、おれは右足を蹴り上げた。狙いは彼女の左腕。インパクトの瞬間。
『徹』
カウンター以上の衝撃にイレインが体勢を崩す。
おれは、ヘッドスプリングの要領で起き上がると、一旦後方に退いた。
彼女の手首は蹴りの衝撃で折れていたが、無造作に手首を掴むと何事もなかったようにはめ直した。
その光景を眺めながら正直、おれは焦っていた。
―――パワー、スピード、正確さ、全てにおいてがおれより上か。しかも、機械なだけに、スタミナも無尽蔵、加えて痛みによる障害もない。左が使えないのがやはりネックだな。一刀だけでは裁ききれない。長期戦にもちこまれると絶対に負ける。ならば、短期決戦で仕掛ける―――
覚悟を決めたおれは、刀を納刀し、腰溜めに抜刀の構えをとり、意識を集中する。
『小太刀二刀 御神流 奥技 虎切』
一足刀の踏み込みからの抜刀を仕掛ける。『薙旋』が使えない今のおれにとってはこの技がたよりだった。
しかし、おれが踏み込んで抜刀した瞬間、彼女が動いた。
まず、右の一刀でおれの刀を弾きながら、おれの背後に回ったのが気配で分かる。
―――まずい。この技は!―――
危険を察知したおれは急遽防御に移るが…。
『小太刀二刀 御神流 奥技 薙旋』
容赦なく二撃目が背中に切りつけられる。続いて3撃目、4撃目が連続で左右から襲い掛かる。
もともと、『虎切』に全てをかけていたおれに防御が間に合う筈もなく、直撃による致命傷を避けるのが精一杯だった。
屋敷のブロックに叩きつけられたのと同時に、ノエルの
「勝負あり、そこまで」
という、戦闘中止の声を聞いた。
どうやら、おれは負けたらしい。
つづく
あとがきのようなもの
どうも、こんにちは。K‘です。
勢いだけで始めたこのSSもようやく次回で最終回です(多分)
しかし、今回初めてまともな戦闘シーンを書いてみましたがやっぱり難しいですね。
やっぱり、筆者自身が闘う人ではないので上手く表現できないです。できない、できないと諦めてしまうと、この話はここで終わってしまうんでもっと勉強しながら書きます。
感想、ご意見等頂けましたら幸いです。
それでは、ここまで筆者の駄文に付き合って頂きましてどうもありがとうございます。