K'様作


 

 はじめに

 

 なのは:このお話は、わたしとくーちゃんがあの草原でクロノ君とリンディさんの二人と、また会う為のお別れをしてから、すこしたった頃のお話…。

 久 遠:くぅん…

 なのは:暑い夏が終わりを告げて爽やかな秋の風が吹き始めた頃のお話。

 久 遠:久遠…あき…すき♪

 なのは:くーちゃんも秋が好きなの、なのはも秋は大好きだよ

 久 遠:あき…おいしいもの…いっぱい♪

 なのは:お料理で晶ちゃんやレンちゃんが張り切ってたよ

 久 遠:耕介も…はりきる…

 なのは:うん、みんなが張り切ってるってのは良いことだね。

 久 遠:♪♪♪

 なのは:でも…料理の話でみんなが盛り上がってる中に…我が高町家ではたった一人その話題に参加できずにいる人がいました…

 久 遠:美…由希のこ…と?

 なのは:えっと…残念ながらこの場で名前を明かす事がわたしには出来ませんが。今回は…その人のお話です…

 久 遠:……です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  美由希‘sEYE

                  〜〜1時間前〜〜

 

 

「恭ちゃんのバカーッ!!」

 私は恭ちゃんのあまりの態度にに思わず叫んでいた、

 「恭ちゃんなんて…恭ちゃんなんて…もう知らないから!」

 それだけ言い捨てると私は固まったままの恭ちゃんに背中を向けてさっさとリビングを出て行き自分の部屋に戻る、

 ―――まったく…どうして恭ちゃんっていつもこんなにもデリカシーがないのかしら…だから朴念仁って言われるのよ…―――

 心の中で悪態をつきながら私は外出用の服に着替えて部屋を出る

 「「み、美由希ちゃん…」」

 階段を下りてくると晶とレンの二人が私を追いかけてきたのかリビングの前の扉で待っていた、

 「晶…レン…ちょっと出かけてくるから…」

 「「い…いってらっしゃいませ…」」

 二人の見送りの言葉を背中に受けながら私は家をでる、しばらく歩いてから後ろを振り返るが恭ちゃんが追いかけてくる気配はなかった。

 ―――恭ちゃん…バカ…―――

 ふと私は空を見上げる、秋晴れの空は抜けるように青く私の心中などどうでも良いように思えてきた。私は軽く息を吸い込むと

「恭ちゃんのバカーッ!!」

 と恭ちゃんに聞こえる様に再び叫ぶのでした。

 

 

 

 

 

 

 

                美緒‘sEYE

                〜〜1時間前〜〜

 

 

「くぉらー!!うるせぇんだこのくそ猫&馬鹿狐ぇ!!」

 さざなみ寮の静かで平穏な午後はまゆの怒声でかき消された、

 「こんな昼間っから大声を上げて…本当にうるさいのはまゆのほうなのだ…」

 あたしは呟きながらまゆの部屋をノックする

 「まゆー…こんな昼間っから一体どうしたのだ?」

 ガラッ!!

 突然目の前の扉が開いたかと思うと、まゆは無言のままあたしに腕に持っていた久遠と雪虎とぎんがをつきつけた、

 「良いところに来たな猫大将…」

 「…………………………………い、一体何があったのだ…ま…」

 あたしはまゆの眼鏡の奥で危険な光を放つ瞳を見て思わず口をつぐむ

 ―――ま、まずいのだ…この雰囲気のまゆはとても危険なのだ…―――

 「あー…聞きたいのか猫…」

 「いや…あ、あたしは何も聞きたくないのだ…

 そ、そうなのだ、あたしは用事を思い出したのだ…というわけでサラバなのだ!」

 まゆの両手から猫たちを奪い取るとそのままダッシュで階段を駆け下りた。

 ―――うう…激しく理不尽な何かを感じるけど、あの場に留まることは死に等しいのだ…戦略的撤退なのだぁ!―――

 「こーすけ、愛っ!あたしはちょっとお出かけしてくるのだ、探さないで欲しいのだ」

 玄関先で靴を履きながらあたしは二人に声をかけてそのまま振りかえらずにさざなみ寮から脱出する。

 国守山ダウンヒルレコードを更新する勢いで駆け下りてから、ふとあたしは空を見上げる、秋晴れの空は抜けるように青くあたしの心中などどうでも良いように思えてきた。あたしは軽く息を吸い込むと、

「まゆの理不尽にはもういい加減うんざりなのだー!!」

 さざなみ寮から充分に距離をとったことを確認してからあたしは叫んだ。

 

 

 

 

 

                 美由希‘sEYE

                  〜〜10分前〜〜

 

 

 

 ―――はぁ…公園に来ちゃったけど何をしようかな…―――

 私はあてもないままに歩き続けて気が付くと臨海公園に来ていた、

 ―――折角の休みなのに、恭ちゃんたら全然乙女心がわかってないんだから―――

 家を出たときよりは幾分か冷静にはなりつつある気持ちを抱えたまま私は公園内を歩き、とある一角で足を止める。

 ―――まぁ…傷ついた乙女のハートを癒すためには…これしかないよねぇ…―――

 心の中で自己弁護しながら私は屋台の前に立つ、

 「おじさーん、小倉とカスタードの鯛焼き5個づつ下さい。あ、あとちゃんと尻尾まで詰まってるヤツにしてね」

 「お嬢ちゃん、ウチのは全部尻尾までしっかり詰まってるから安心しな」

 一人で食べるには若干多い気がしないでもないが、その場の勢いも手伝って私は計10個の鯛焼きを受け取る、

 ―――さて…どこで食べようかな…―――

 くるりと周囲を見渡しながら私は空いているスペースを探す……が、運の悪い事に目に付く全てのベンチは若い男女連れ、すなわち恋人同士の愛の語らいの場になっていた、

 ―――ううっ…ひょっとして今の私って凄く浮いてる?―――

 周囲の空気を察してから改めて私は自分の姿を見直す。

 赤と黒をを基調にしたこの間買ったばかりのシックな秋物のワンピース――間違いなく対恭也戦を意識した勝負服である――に身を包んだ眼鏡の美少女(作者的には撃沈必至)が袋一杯の鯛焼きを抱えたその姿はやはりその場にはそぐわないのは誰の目から見ても明かだった。

 ―――はぁ…もう帰ろうかな…―――

 周囲の桃色な空気に圧倒されて私は公園の出口を目指して歩き始めた。

 チリン…チリン……チリン…チリン……

 ふと鈴の音が聞こえた、見ると入口の方から久遠がこっちに向かって走ってくるのが見える。

 ―――あれ…久遠だ…どうしてこんなところに…―――

 頭の中で軽い疑問を感じながらも私は久遠を呼ぶ、

 「久遠〜、おいでおいで♪」

 久遠は私に向かって一直線に駆けてくるので、私は久遠を抱き入れる為に膝を付く、

 「久遠〜♪」

 私は右手で紙袋を抱えなおすと、空いてる左手を差し出した――その瞬間、久遠の背後から別の影が飛び出し私に飛びかかる、

 ―――え?え?えぇぇ!?―――

 頭では驚きながらも日頃の鍛錬の賜物のおかげか無意識に右手は紙袋を離し、飛びかかってくる影に対して突き出す、しかし…久遠の後ろからもう一つ新しい影が飛び出して来るのが見えた

 ―――ま、まだ来るの!?―――

 突然の奇襲に面食らいながらも私は後方に跳躍し間合いを取る。しかし、久遠を含む二つの影は私に向かって来る事は無く、脇に置いた紙袋に突撃をする

 ―――あ、あれ、ね…猫?――― 

 私が無手で構えを取っているのを尻目に久遠と2匹の猫は紙袋を咥えると一目散に来た方向へと走り去っていく、

 「あ、あれぇ…今のはなに?」

 一陣の秋風が私の廻りを吹きぬける…

 「わ、私の鯛焼き…って追いかけなきゃ!!」

 我に返った私は久遠達が去っていく姿を追って走り出した。

 

 

 

 

 

                美緒‘sEYE

                 〜〜20分前〜〜

 

 

 「うー…お腹が空いたのだ…」

 あたしは先ほどから空腹の自己主張を続けるお腹に手を当てて溜息をつく、

 「慌てて家を出てきたおかげで財布を持ってくるのを忘れてきたのは致命的なのだ…」

 あたしは呟きながらスカートのポケットに手を突っ込むと硬貨らしき物に手が触れる、

 ―――おお、何か入ってるのだ!―――

 期待に胸を躍らせながらポケットから出した手をゆっくりと開き中を見る、

 「10円位じゃ何も出来ないのだ…焼け石に水なのだ…」

 軽い失望感に苛まれながらあたしは街に出ていた、

 ♪〜〜♪♪〜〜〜〜♪〜〜

 ふと携帯が鳴る、

 「誰なのだ〜?こんな昼間っから…」

 文句を言いながらもあたしは通話ボタンを押す

 『ハイ美緒…ボクだよボク…』

 「なんだ…リスティか…で、何?」

 『なんだとは随分失礼な言い方だなぁ…まぁいいや、実はちょっとボクのしご――』

 「却下なのだ!大却下なのだ!!」

 あたしはリスティの話を最後まで聞くことなく拒否の意思を告げる

 『いきなり却下は酷いなぁ、ボクと美緒の仲じゃないか…』

 「労働にはそれに見合った報酬という鋼の方程式があるのだ、それの前にはそんな甘っちょろい単語が入り込む余地などまったくないのだ!!」

 『OK…わかったよ美緒…。じゃあこの仕事を手伝ってくれたら、この間美緒に借りた2000円をほう――』

 「それは報酬じゃなくて、返して当然のお金なのだ!!

 というか、今貸したお金の事思い出したから、今夜にでも返してもらうのだ!!」

 『シット…薮蛇だったか…』

 プツッ…ツーツーツー……

 電話はリスティの呟きを残して切れる、こちらから掛けなおすが電源を切っているらしく繋がらなかった。

 ―――リスティ…都合が悪くなって逃げたのだ…

 はぁ…とりあえずは先に入るお金よりも目先のお金が重要なのだ…―――

 再び歩き始めながらあたしは考える、

 ―――もう1回寮に帰る…駄目なのだ、今のまゆにもう1回寮に帰ったところをみつかったらそれこそ血をみるのだ…―――

 頭の中でいやに鮮明に浮かぶイメージ。気が付くとスカートの中のあたしの尻尾は恐怖の余りに足の間に隠れこんでいた。

 ぐぅ〜〜

 「うう…おなか減ったのだ…」

 情けなくも自己主張を続けるお腹を抱えながら歩いていると、気が付いたらあたしは臨海公園の前に立っていた。

 公園の入口に立つあたしの鼻腔に香ばしい匂いが入ってくる

 ―――おっ…これは…鯛焼きの匂いなのだ!―――

 匂いに釣られて目をやると鯛焼き屋の紙袋を抱えた女性――高町美由希――が歩いている、

 「チャーーーーンス」

 即座に頭の中で計画案が練られる…

 「久遠、雪虎、ぎんが!!」

 「にゃ!」

 「なぁ!」

 「くぅん…」

 振り返って3匹の正面に立つ、

 「諸君…我々は現在、類稀なる危機に陥っている、わかるな。今のままでは飢え死にもやむ無しの状況だという事も理解してもらいたい。そしてその状況を打破し我々が生き残る術はたった一つしかないのだ。

 それが例え罪深い行いだとしても…我々は今こそ立たねばならん!!」

 あたしはターゲットにビシッと指差す、

 「みゆきちにジェット・ストリーム・アタックをしかけて鯛焼きを奪うのだ!!」

 「にゃ!」

 「なぁ!」

 「くぅん!」

 あたしの号令に3匹はみゆきちに一直線に向かって行く、

 「おし、GOなのだ!!」

 久遠が充分にみゆきちに接近したのを確認してあたしは雪虎とぎんがに指示を送る。それに応えてまずは雪虎がみゆきちに飛びかかり、ひるんだところにぎんがが紙袋を奪って逃げ、2匹もそれに倣い、共にこっちに向かって走ってくる。

 作戦は成功に終わった…。

 

 

 

 

                 美緒‘sEYE

               〜〜そして二人は出会った〜〜

 

 

 

 「おし、作戦成功なのだ、大漁なのだ♪」

 あたしは久遠達が持ち帰った戦果に満足しながら袋を開けると、中には10ケの鯛焼きが入っていた。

 「おお!これは予想以上♪」

 喜びながらあたしは鯛焼きを一つ袋から取り出す、

 「みゆきちに感謝なのだ、いただきますなのだ」

 ひとしきりの感謝の言葉を述べながらあたしは鯛焼きを口に運ぶ……

 ヒュンッ…

 ガブッ!

 耳慣れない風切音が聞こえたのとあたしが自分自身の手に思いっきり噛みついたのはほぼ同時だった。

 「ぎにゃ〜〜!!い、痛いのだ」

 あたしは手を押えて悶え廻る、

 「美緒ちゃん、私に一体何を感謝するつもりだったの?」

 不意に後ろから声を掛けられて、慌てて振りかえる。そこには眼鏡を外してにっこりと笑ったみゆきちが二本の木刀を握って立っていた。

 「あ、あわわわ…み、みゆきち。こ、こんな所であ、会うなんて偶然なのだ…」

 あたしは鯛焼きの袋を後ろに隠す為に手を動かそうと――

 ヒュンッ…

 再び先程と同じ風切音が聞こえた、

 「へぇ…美緒ちゃんも鯛焼き買ったんだ…。

 ふーん…偶然だね私が買った数と一緒だし…

 でも…私のはついさっき猫さん達に盗られちゃったの…」

 みゆきちは先程から笑顔を崩さないまま淡々と言葉を続ける、

 ―――ま、前に那美に聞いたことがあるのだ。み、みゆきちが眼鏡を外したって事は…つまり。や、やるつもりなのだ…―――

 ゆっくりとみゆきちは近づいてくる。表情は笑顔のままだが、先ほどからその背後にゴゴゴゴゴゴ………と言った書き文字が浮かんでいる様に見える。

 「み、みゆきち…。ひょっとして…怒ってる?」

 「まさか、全然怒ってないよ」

 ―――あうう…全然目が笑ってないのだ、怒ってる…絶対に怒ってるのだ。

 こ、こうなったら残された手段は一つ…戦略的撤退なのだ!―――

 「あ、美緒ちゃん。さっきこの子達に鯛焼きを取られたんだけど…知らないかな?」

 まるであたしの考えを読んでるかのように、みゆきちはあたしにしっかりと抱きかかえた久遠達3匹を見せる。

 ―――久遠や雪虎ならまだしも、野良猫のぎんがまで捕まえるなんて…みゆきち恐るべしなのだ…―――

 「とりあえず…この子たちから黒幕を聞こうかな…」

 「ゆ、雪虎やぎんがは…猫だから喋れないのだ…」

 「じゃあ…久遠に対して重点的に尋問を…」

 「ジュネーブ条約に基づいて、捕虜に対する基本的人権の保障を要求するのだ…」

 「早く、黒幕の正体を吐いてくれると良いんだけどなぁ」

 目の笑ってないにっこり笑顔でみゆきちは楽しそうに言う、

 ―――うう…八方塞がり、打つ手無し…チェックメイトなのだ…―――

 あたしは決心すると、軽く息を吸いこんでから、

 「ゴメンなのだ。つい出来心だったのだ。悪気は…ちょっとは有ったけど100%じゃないのだ。本当なのだ、信じて欲しいのだ。…後生だから許してほしいのだ。」

 あたしは思いつく限りの謝罪の言葉を並べてみゆきちに頭を下げる。

 「………………………………………………」

 みゆきちは俯いて押し黙ったまま一言も喋らない、

 「………………………………………………」

 「……みゆきち?」

 あたしが訝しげに声を掛ける

 「ぷっ…くっ…くくくっ…あはははは」

 「み、みゆきち?」

 「あっはははははははははは…」

 「み、みゆきちどうしたのだ?」

 突然の変わり様にあたしが声を掛けると、みゆきちは目尻を指で拭いながら、

 「いいよ、美緒ちゃん。鯛焼きを一緒に食べようよ」

 「みゆきち…許してくれるのか?」

 あたしの問いかけにゆっくりと頷いて、

 「今日は朝から色々あったけど…美緒ちゃんのおかげでどうでも良くなっちゃった、まぁこんなに鯛焼き買ってきても食べきれないから。一緒に食べようよ」

 「おお…みゆきち、恩に着るのだ!

 お礼にあたしのとっときの場所にいくのだ」

 あたしはみゆきちの手をとって歩き始める。

 

 

 「ここなのだ」

 「うわぁ…こんな所があったんだ…」

 みゆきちはあたしが連れてきた場所に驚きの声をあげる、

 「ここは昔からここに通ってる人じゃないと知らない穴場中の穴場なのだ」

 あたしは芝生の上に座ると、猫達もそれに倣って一緒に上がる、

 「え…えっと、それじゃあ失礼して…お邪魔します」

 みゆきちも芝生に上がってあたしの隣に座る

 「えへへ…なんかピクニックみたいだね」

 「今日みたいな天気の日は、外で食べるのが一番なのだ」

 あたしたちはひとしきり笑いあってから、

 「「いただきます(のだ)」」

 と手をあわせて、鯛焼きに被りついた。

 

 

 「でね…恭ちゃんったら、私との約束をすっかり忘れててね…」

 「それは、みゆきち兄が悪いのだ」

 あたしはみゆきちの話に同意する、

 「あたしはまゆに仕事の邪魔だからって、無理矢理寮から追い出されたのだ、はっきりいって無茶苦茶なのだ」

 「それは真雪さんが酷いと思うなぁ」

 あたしの話にみゆきちは同意の声を上げる、

 「でも…私と美緒ちゃんが二人で話すのって随分久しぶりだよね」

 「実際に話すのは久しぶりだけど、みゆきちの事は那美から良く聞いてるし寮の方にもよく来るからあんまし実感がないのだ」

 「だよねぇ…私もなのはや那美さんからよく聞くからあんまり実感がないかなぁ」

 「同じなのだ」

 「同じだね」

 「「あはははははははは…」」

 あたし達は顔を合わせて笑いあった。

 

 「ふぁ…ちょっと眠くなってきたのだ…」

 「……………………………………………」

 みゆきちからの返事が無い事に不審に思い、顔を覗きこむと、

 「みゆきち…寝てるのだ…雪虎?」

 先程から大人しい猫達を見ると、雪虎やぎんが達も丸くなって芝生の上で眠っている。

 「まぁ…こんだけ気持ちいいと仕方ないのだ…」

 あたしは軽く溜息をつくとゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

                  恭也‘sEYE

                   〜〜1時間後〜〜

 

 

 

 美由希に怒鳴られてから我に帰ったおれを待っていたのは、なのは・レン・晶・かーさん。そして何故かイギリスでは深夜の筈のフィアッセから連続で二時間怒られ続けた。

 ―――まさか、海を越えた所からも説教されるとは思わなかった―――

 何か理不尽な物を感じながらもおれはリビングのソファに座り込む。

 「美由希…携帯電話という物は携帯してからこそ役に立つと思うのだが…」

 リビングのテーブルに置かれたままの美由希の携帯電話を発見しておれは一人呟く、

 「それは…あれですね師匠。美由希ちゃんは師匠に探してもらいたかったんですよ」

 「ああ…それはかーさんも1回士郎さんに使った手だわ。やっぱり血は争えないものねぇ。

 恭也、頑張って探してあげなさいよ、美由希が大事なんでしょ」

 「む…わかった。では、行ってくる…」

 晶の言葉にかっての新婚時代を思い出したかーさんの提案を受け入れて、おれは家を後にした。

 ―――とりあえず…美由希が行きそうな所に行ってみるか…―――

 適当にヤマを張っておれは歩き始めた、

 

 ―――で…美由希は一体何処にいったんだ?―――

 心当たりを幾つか廻ってはみたが美由希の姿を発見することは出来なかった。那美さんが居るからという理由で神社にも来てはみたが生憎と神社の境内には誰も居なかった。

 石段に腰掛けながらおれは国守山に目を向ける

 ―――あそこに行く事は多分無いと思うのだが…一応行ってみるか…―――

 おれは立ち上がるとゆっくりとさざなみ寮に向けて再び歩き始めた。

 

 

 「青年…こんな所で会うとは奇遇だな」

 「あ、こんにちは仁村さん」

 寮に続く山道でおれは仁村さんに声を掛けられた。

 「「青年(仁村さん)、陣内(美由希)を見てないか?(見てませんか?)」」

 「なんだ…嬢ちゃんを探してたのか、何かあったのか?」

 「ええ、まぁ。

 仁村さんは陣内さんを探してるんですか…」

 「まぁ…こっちも色々あってな…。どうだ青年、一緒に探すか?」

 「ですね…二人で探した方が良いでしょうから…」

 おれは仁村さんと二人で山を降りて行った。

 「やっぱり居ねぇなぁ…」

 山道を出たところで仁村さんは呟く、

 「駅か臨海公園の方にでも行ったんでしょうか…」

 「んー…行くとしたら公園かな…念の為に行ってみるか」

 

 「仁村さん、あれ…」

 臨海公園近くの通りでおれは仁村さんに声を掛ける

 「ん、どした?」

 おれは無言で公園入口を指差す、その先にはなのはと同じ年齢位で巫女服姿の少女――久遠(小)――が立っていた。

 「久遠か…」

 おれは真雪さんに無言で頷き、久遠に近づく、

 「恭也♪……真雪…」

 おれ達に気付いた久遠が駆け寄ってきて、おれの足に抱きつく、

 「おい、狐…陣内を見てないか?」

 「……………………………………」

 しかし真雪さんの問いに久遠は答えずにおれの後ろに隠れる。

 「久遠…どうした?」

 その態度を不審に思い尋ねると、久遠は半分涙目になって、おれを見上げる

 「真雪…まだ…おこってるの?」

 「仁村さん…なにがあったんですか?」

 おれは久遠の様子からある程度の想像はできたがあえて質問をしてみた。

 「い、いや…入稿前で気が立ってたんでな、まぁなんつーか…ちょっとキレた」

 ばつが悪そうに仁村さんは目線を逸らしながら答える

 「仁村さん…まだ怒ってますか?」

 「バカ言うな、怒ってたらこんな所までこねぇよ」

 仁村さんは優しい笑顔でおれに答える、

 「だそうだ…久遠。仁村さんはもう怒ってはいないそうだ」

 「真雪♪♪♪」

 久遠は嬉しそうに真雪に抱きつく。

 「コ、コラ…抱きつくな久遠、恥ずかしいだろうが!」

 「真雪〜♪」

 いきなり抱きつかれて慌てる仁村さんと喜んで益々抱きつく久遠の姿に思わず可笑しくなる。

 「あ!コラ青年!!そんな微笑ましい表情で見てないで助けろ!!」

 「さて…じゃあ行きましょうか」

 おれはそんな仁村さんの声を聞こえないフリをしてさっさと公園の中に入っていった。

 「青年〜〜!!」

 後ろから声が聞こえるがおれは気にせず歩き続けた。

 

 

 久遠に案内されておれ達は公園の一角にやってきていた。そこには芝生の上で美由希と陣内さんが仲良く眠り込んでいた。 

 ―――まさか…美由希が一緒に居るとはな…―――

 「青年…嬢ちゃんも見つかったようで良かったじゃないか…」

 考えこんでいるおれの後ろから仁村さんが声を掛ける、

 「ええ…まさかこの公園にこんな場所があるなんて知りませんでしたよ」

 「ここを知ってる人間ってのはあまり居ないからな。知らないほうが普通だろう。

 人が来ないからと言ってこんなところで昼寝してるのもなんだからとりあえず起こしてやるか…」

 仁村さんが芝生に上がったのでおれも続いて上がる、

 「オラ、起きろ…こ――」

 「恭ちゃんの…バカ…

 「……………………………………」

 「……………………………………」

 ニタァっと怪しげな笑みを浮かべて仁村さんは振りかえる。

 「……………………………………」

 「……………………………………」

 仁村さんは無言のままだったが、その目は『何があった?』と問いかけてきてる様だった。

 「実は…今日は美由希とそ、その出掛ける約束をしてたんですが…忘れてしまっていまして…その怒らせてしまったんです…」

 「まぁ、後でちゃんと謝ってやるんだね、青年」

 ワハハと笑いながら肩を叩き仁村さんは芝生を降りる

 「陣内さんを起こさないんですか?」

 「ああ、やめだやめ。そんなことより飲みに行くぞ青年」

 「飲みにですか…おれは酒なんて飲めませんよ…」

 「こんな美人が誘ってるんだ、いい男なら黙ってついて来るもんさ」

 おれは頷いて芝生から降りようとすると仁村さんが振りかえる、

 「ああ、そうだ。まぁこんなところで寝てて、こいつ等が風邪を引くと流石に寝覚めが悪いからな。青年、お前の上着でも掛けておいてやってくんねぇか?」

 「わかりました…」

 仁村さんの心遣いに感謝をしつつ、おれは美由希と陣内さんに上着を掛ける、

 ―――美由希めこんなに接近してるのに、起きる気配がないな―――

 「修行が足りんな、美由希

 おれは笑いながらそう静かに告げると、仁村さんの後を追って芝生から降りた。

 

 あとがき

 

 こんにちはSSまがい物書きのK´です

 いやぁ…長いですねぇ。このSSは本来短編用として書いていたものなんですが、あれよこれよと書いている内に気が付いたらこんなにも長くなってしまいました(爆

 相変わらず構成力が皆無に等しい作者が書いた内容だけに色々と目に付く所が多々あったかと思いますが、この文章を読んで頂けているという事は最後まで読んで頂けたようですね。ここまでのお付き合い本当にありがとうございます。

 えっと…今回はザッピングSSという形で進めさせて頂きましたが如何でしたでしょうか、書き手が未熟な為に多少読みづらい点やわかりにくい点など色々と多数あったかと思います。次回はもう少し精進して、読みやすい物を書きたいと思います。

 今回も自分の駄目SSにここまで付き合って頂きまして本当にありがとうございました。

 それでは失礼します。

 では…。

 


 

☆戻る☆