K'様作


 

 

 

 はじめに

 

 はじめに

 なのは:このお話は、わたしとくーちゃんがあの草原でクロノ君とリンディさんの二人と、また会う為のお別れをしてから、すこしたった頃のお話…。

 久 遠:くうん。

 なのは:おにーちゃんが病院のフィリス先生とお付き合いを始める前のお話…。

 久 遠:きょーや、ふぃりす。らぶらぶ…まえ。

 なのは:そんなころの、お話です。

 久 遠:……です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしにはずっと探し続けている物があります・・・

 

でも、その探し物についてわたしは何も知りません・・・

 

わたしの名前はフィリス・矢沢。それが今のわたし・・・

 

わたしの名前はLC―23。それは決して忘れてはいけない昔のわたし・・・

 

この名前を忘れないことがわたしの贖罪なのだから・・・

 

わたしがこの手で殺してしまった姉妹達への贖罪・・・

 

わたしにはずっと探し続けているものがあります・・・

 

わたし自身が知らない何かを探し続けています・・・

 

 

 

 

 

 

               フィリス‘s EYE

 

 抜けるような初夏の青空の下の海鳴駅の入り口に立ちながら、わたしは再度自分の腕時計に目をやる。時刻は午前9時40分、待ち合わせの時刻まであと20分といったところだ。

 ―――でも、恭也君のことだからきっと待ち合わせ時間の10分前には…―――

 「お待たせしましたフィリス先生。遅れてしまいましてすいません」

 わたしの考えを打ち消すように背後から声を掛けられる。慌てて振り返るとそこには全身を黒一色で包んだ青年。高町恭也君が立っていた。

 「あ、恭也君こんにちは、いいのよまだ待ち合わせ時刻前だし。勝手にわたしが早く来てただけだから」

 わたしは笑顔で応えると。

 「そうですか、そう言って頂けると助かります」

 恭也君は幾分ほっとしたような笑顔を浮かべる。

 病院に診察でやってくる美由希ちゃんやレンちゃんの話を聞く限りでは、恭也君はあまり笑わないと聞いているけどわたしは彼の笑顔を見る機会が多い。

 ―――恭也君って、普段は笑わない分、たまの笑顔って魅力的なのよね―――

 「フィリス先生?どうかされましたか?」

 わたしがずっと考え事をして黙っていたのが気になったのか、彼はわたしに声を掛けてくる。

 「あ、いいえ。別になにも…。ところで恭也君そろそろ行きましょう、今日は一日わたしに付き合ってくれる約束でしたよね」

 わたしは念を押すように問いかけると。

 「はい、今日は一日お付き合いいたしますよ」

 にっこりと笑って恭也君は答えた。

 「じゃ、早速行きましょうか。恭也君」

 わたしは恭也君と並んで街の中へと歩き始めました。

 

 

 

 「ああ、楽しかった。やっぱり久しぶりのお休みだと気分が安らぎます」

 わたしと恭也君は夕方になってから喫茶店でゆっくりとお茶を飲みながら今日一日の思い出を振り返っていました。

 「そうですね、おれも休日は鍛錬か翠屋の手伝いをしていますから、久方ぶりに街にでましたよ」

 「駄目ですよ恭也君。まだ若いんですからもっと外に出て遊ばないと」

 「ええ、そうですね。では、また今度一緒に行きましょうか」

 「え、ええ!?そ、そうね。ま、またい、一緒に…」

 わたしは衝撃的な恭也君の言葉を聞いてなんとか返答をしようとすると。

 「ええ、今度はなのは達を誘ってみんなで行きましょう」

 あっさりと淡い希望を砕かれたわたしは心の中で目幅の涙を流しながら

 「そ、そうね。み、みんなで行きましょうか」

 と返すので精一杯でした。

 「ところで、恭也君。出来ればあと一つ付き合って欲しいところがあるんだけどいいかしら?」

 「はい、別段構いませんが」

 「ありがとう、じゃあ、早速行きましょうか」

 そう言いながらわたしは伝票を持って立ち上がろうとすると、同じく伝票を取ろうとした恭也君の手が触れる。

 驚いて、顔を上げるとそこには若干赤く染まった恭也君の顔が…

 「し、失礼しました。」

 そう言って、さっと手を引き謝罪する。

 「…………………………………………………………」

 わたしが驚きのあまりに黙っていると、

 「と、とにかく出ましょう。ここでは他の方の迷惑になってしまいます」

 そう言って、左手で伝票を持ち、右手でわたしの手を握ったままレジを済ませて逃げるように恭也君は店を出て行きました。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…ここまで来れば…」

 恭也君はわたしの手を握ったまま、喫茶店から一区画ほど離れた路地まで逃げるようにやってきました。

 「………………………………………」

 わたしは自分の右手から伝わってくる恭也君の体温を感じたまま何も言えないでいると、

 「どうされましたか?フィリス先生?」

 と、恭也君はわたしの顔を覗き込むように尋ねる。

 「本当に大丈夫ですか…なんだか顔も赤いようですし、どこか具合が悪いんですか?」

 「あ…あの…て、手を…」

 なんとかそれだけ伝えると、恭也君は自分の左手を見た後に目線を右手に移すと、普段はあまり表情を変えない顔に一杯の驚きを浮かべると。一瞬にしてわたしの前から姿を消しました。

 「す、すいません。本当にすいません」

 と、自分の後ろの壁から声が聞こえる。慌てて振り返るとそこには顔を真っ赤にして必死になって謝る恭也君の姿がありました。

 ―――どうやって、あんなところまで移動したのかしら?―――

 恭也君の謝罪を聞きながらわたしは全然関係の無いことを考えていると、恭也君は更に謝罪を続ける。

 「ああ、そんなに謝らないで下さい。わたしは迷惑だなんて全然思っていませんし」

 「わたしも…嬉しかったですから…

 わたしが最後の言葉を聞き取られないように小さな声で呟くと、

 「はい、すいませんでした…あ!すいません」

 と、また謝罪をしてくることに対して再度謝罪をする。

 「あはは。もういいですよ恭也君。それよりも早く行かないと日が暮れてしまいます」

 「え、ええそうですね。暗くなる前に行きましょう。で、一体どこへ?」

 「それは着いてからのお楽しみです」

 とそれだけ答えて、わたしは恭也君の返事を待たずに歩き始めました。

 

 

 「ここは…?フィリス先生どうしてこんなところに」

 わたしが恭也君を連れて来た場所。高台にある墓地やってきていた。

 「…………………………………………」

 わたしは恭也君の問いかけには答えずに一つの墓石の前で立ち止まる。

 【高町家代々之墓】

 その墓石にはそう刻まれている。そう、恭也君のお父さんの高町士郎さんが眠る場所。その墓石の前にわたしはしゃがみ込んでから、

 「恭也君…今日は一日付き合ってくれてどうもありがとう」

 わたしは振り返ることなく、お礼を言う。

 「今日はわたしにとってのとても大事な日だったんです」

 「大事な日…ですか」

 「はい…わたしにとっては、恐らく絶対に忘れられない日の一つです…」

 「…………そうですか」

 「少し長くなりますが、昔話を聞いてもらえないでしょうか」

 「わかりました…」

 恭也君の返事を聞いてわたしはゆっくりと話始めました。

 自分にとっての大事な昔話を。

 

 

 

 

 

 

 

 「はい、ティオレさん。健康診断の結果が出ましたよ…」

 わたしは、つい先ほど医局から上がってきた診断結果に目を通しながら目の前の女性。「世紀の歌姫」の二つ名を持つ女性、ティオレ・クリステラさんに話しかける。

 「あまり芳しい結果ではありませんね。医者の立場からの意見を言わせてもらうとすれば―――」

 「コンサートは即刻中止にして、大人しくイギリスの片田舎に引っ込んでいろと仰りたいのでしょう。しかし、何度も言いましたように私はこのコンサートを中止は致しません。」

 わたしの話をさえぎってティオレさんは続ける。

 「このコンサートは何度も言いましたように私の夢ですし、私の娘たちの大事な卒業式なんです。

私は自分の夢に、あの子たちはこれからの未来に全力を掛けています。

ですが、自分の想いと、あの子たちの未来への想いに応えるためには残念ですが私に残された時間はあまりに少ないんです。

ですから、まだ全身全霊で歌うことが出来る間は…薬に支えられている間はコンサートは中止をすることはしません

 ティオレさんはゆっくりと、しかし一言一言をまるで自分に言い聞かせるようにわたしに聞かせる。

 「わかりました。ティオレさん…コンサートを続けてください。きっとわたしが病院のベッドに縛り付けても無駄でしょうから」

 「あら、先生も分かっていらっしゃるようね」

 ティオレさんは口元に手をあてて、ゆっくりと笑う。

 「ですが。この町に滞在をしている間は、わたしの指示通りに毎日通院して、苦いお薬を飲んで頂きますから」

 わたしがそう宣言すると今まで笑っていたティオレさんは動きを止めてわたしの方へ顔をよせ、

 「私、苦いお薬って苦手なんですの」

 と、わたしの耳元でささやき、ついでに耳に息を吹きかける。

 「!!!と、とにかく!今日から出発までの間、わたしがずっと一緒にいますから!いいですね!」

 わたしが耳を押さえながらそう宣言すると、

 「ええ〜」

 と、なんとも情けない悲鳴を上げたのでした。

 

 コンコン……コンコン……

 ふと、扉をノックする音が聞こえる

 「はぁーい。どなたでしょうか?」

 わたしは扉に向かって声を掛けると、

 「高町ですが…フィリス先生はいらっしゃいますか?」

 声の主は先月ほどからわたしの担当患者になった高町恭也君だった。どうやらティオレさんを迎えに来たみたいです。

 「どうぞ、恭也君。入ってもいいですよ」

 わたしが声をかけると、失礼しますという挨拶と同時に扉が開く。

 「こんにちは、フィリス先生。高町です」

 恭也君はわたしに向かって再度挨拶をする。

 「こんにちは、恭也君。ティオレさんのお迎えですか?」

 「はい、そろそろ診察も終わる頃だと思いまして…」

 「いいタイミングですね。ティオレさんの診察はちょうど今終わりましたよ。ついでに恭也君も診察を受けていきますか?そろそろ整体を受けないといけない筈ですから」

 わたしが笑顔で恭也君に問いかけると、彼は普段はあまり変えない表情を若干歪ませると、

 「い、いえ。それは次の機会にということで…」

 「ああ、恭也。迎えに来てくれてありがとう」

 今まで、黙っていたティオレさんが恭也君に声を掛ける

 「それで、少し悪いんだけど、私はフィリス先生と少しお話があるから外で待っていてくれないかしら」

 「はい、わかりました。ではロビーで待ってます」

  そう答えて、恭也君は出ていきました。

 「さて、恭也が待ってるので、手短に話すわ」

 ティオレさんはそう言うと、椅子に座り直してからわたしをじっと見つめる。

 「な、なんでしょうか?ティオレさん」

 わたしも居住まいを正してティオレさんに向き直る。

 「フィアッセのことなんだけど…あの子はこの街に来て随分と変わったわ、7年前に士郎が…あ、士郎というのは恭也のお父さんのことなんだけどね。その士郎が死んだときにあの子は随分とふさぎ込んじゃってね。まぁ、この街から来た私の生徒が励ましてくれたおかげで元気にはなったんだけど…」

 「ゆうひさんのことですね、フィアッセに元気をわけたのは…」

 ティオレさんはゆっくりと頷くと言葉を続ける。

 「確かに、その事については元気になったんだけど、自分の病気…あなたと同じHGSの事なんだけどね。結局その病気については…自分の翼のことは好きにはなれなかったの…」

 そこで、ティオレさんは一度言葉を切ると、立ち上がって窓側に歩いて外を眺める。

 「あの子が、自分の力を使って喉を痛めて声を出せなくなってその療養にこの海鳴を選んだときも私は何も反対はしなかったわ、自分の翼が原因で喉を痛めたことと。そのせいで私と同じステージに立つことが出来ない事を嘆いて。泣きながら自分の翼を呪うあの子が見ていられなかったから…。」

 そう言って、ティオレさんはわたしの方を振り返る。

 「でも、この間のコンサートが終わってから、あの子が私の所に来て、白く輝く翼を見せて『私はこの翼のことはもう嫌いじゃないよ』って言ったのよ。あれだけ嫌いだった黒い翼を白い翼に変えて…」

 「それは、フィアッセが自分自身が変えたいと望んだからですよ。ティオレさん」

 わたしは自分のピアスを操作してフィン展開させる。

 「わたし達のHGS患者の翼は自分自身の心のイメージを反映して発生させます。フィアッセの場合は自分の翼に対して持っていたコンプレックスを克服したからこそ、黒い翼から白い翼に変えることが出来たんです」

 わたしはピアスを再度操作してフィンを消す。

 「もう、フィアッセは大丈夫ですよ。自分の翼のことで落ち込むことはないと思います。ですから安心してコンサートに…」

 ティオレさんはゆっくりとかぶりをふると、

 「ごめんなさい、私の言い方が悪かったみたいね、確かにフィアッセのことはとても嬉しいわ、でも、どうしてフィアッセが自分の翼と向き合えたか知ってる?」

 わたしの言葉を遮ってティオレさんは続ける。

 「あの子が日本に渡ってからの電話の中で必ずと言っていいほどにあなたの名前が出てきたわ。どうしてか分かる?」

 「それは…わかりません…」

 「自分と違って、病気のことを受け入れて前を向いて生きているから尊敬しているそうよ」

 予想すらしてなかったティオレさんの言葉にわたしは正直驚いていた、

 「…わたしは、フィアッセにそこまで尊敬される人間ではありません、本当のわたしは、もっと弱くて自分の気持ち…にすら正直になれない弱い人間ですから…」

 ―――自分の気持ちってなんなんだろう?―――

 自分の言葉の意味をかみ締めながら考え込んでると、ティオレさんは少し微笑んで、

 「この続きは明日話しましょうか。私は明日少し出かけたいんですが付き合っていただけないでしょうか?フィリス先生」

 「わかりました、で、どこへ行けばいいのですか」

 そんなわたしの質問にティオレさんはにっこり笑って。

 「それは、明日のお楽しみですよ」

 とだけ答えて、ゆっくりと部屋から出て行きました。 

 

 

 「ここは?ティオレさん、ここには一体どなたが眠ってらっしゃるんですか?」

 翌日、わたしはティオレさんに連れられて海鳴市全体を一望できる高台の一角にある墓地へと来ていた。

 「ここは、わたしやフィアッセの命の恩人の士郎、高町士郎がここにいるの」

 と、ティオレさんはよく手入れされた一つの墓石を指差す。そこには

 【高町家先祖代々之墓】

 と刻み込まれていた。

 「士郎は私の主人のボディーガードだったの。

 でも、昔イギリスで起きた爆弾テロからフィアッセを守ってそして逝ったの。

 彼は自分の命よりも大事な守りたいものを守り抜いたの。

ふふふ、周りの人の気持ちも知らずに満足そうな顔をしてたわね。」

 淡々と語るティオレさんの話を聞きながらわたしはじっと今は亡き恭也君のお父さんの眠る墓石を見つめる。

 「フィリス先生…もう一度あなたの翼。トライウィングスを見せていただけないかしら」

 わたしは無言でピアスを操作してフィンを展開させる

 「トライウィングス。LCシリーズの能力者が持つ翼…現在確認されている持ち主は、リスティ・槇原、フィリス・矢沢、セルフィ・アルバレッドの3名。

確かあなたのはトライウィングス・rだったかしら」

 ティオレさんはわたしをじっと見つめながら、その翼についての説明をする。

 「知ってらしたんですね。わたしの翼や能力について」

 「ごめんなさい。あなた達のことは香港警防隊の知り合いから聞いているわ」

 本当に申し訳なさそうに、ティオレさんはわたしに頭を下げる。

 「でしたら、もう御存知でしょう。わたしがセンターと呼ばれたあの場所で生き残る為に何をしてきたか。その為に自分の姉妹たちをこの手で死なせてしまったことも」

 わたしは、自分の体を隠すようにきつく抱きしめ、その場にしゃがみ込む。

 「わたしのこの翼は、わたしの姉妹達を殺し、わたしのこの両手は姉妹たちの手で真っ赤に汚れています。わたしには…」

 黙って聞いていたティオレさんがそっとわたしに近づいて、わたしと目を見るようにしゃがみ込み、そっとわたしの手を自分の手で包み込み、

 「でも、あなたの翼はとても綺麗よ、この日の光を浴びてキラキラ輝いてまるで、御伽噺に出てくる妖精みたい」

 「そ、そんなことはありません、わたしの…」

 「それにね、もしあなたの手が血で赤く汚れているのなら、洗えばいいじゃない。洗っても汚れが落ちないなら何度でも洗えばいいじゃない」

 そう言いながら、ティオレさんはわたしの手の精神遮断用のグローブを外すとそっと頬擦りをする。

 その瞬間にわたしの頭の中にティオレさんの心のイメージが流れ込んでくる。優しくて暖かい春の日差しのような思考がわたしの心を満たしていくのがわかる。

 「もし、一人で洗っても落ちないのなら、誰かに手伝ってもらえばいいじゃない。きっと一緒に洗ってくれる人があなたにも現れるわ」

 一言一言がわたしの心に響く。気が付いたらわたしは大粒の涙を流してティオレさんをじっと見つめていました。

 「で、でも、わたしにはそんな資格なんて…」

 「資格なんて必要ないのよ、ただ、自分の気持ちに正直になることが大事なの、自分の過去に囚われて、気持ちを殺してしまうことはとても悲しいことだから」

 わたしの台詞が終わるよりも早くティオレさんはわたしの体をギュッと抱きしめて続ける。

 「私があなたをここに連れてきたのは士郎に合わせたかったの。自分の気持ちに正直に生きて、これから先の未来の為に胸を張って逝った士郎に」

 わたしは涙に濡れる瞳でもう一度墓石を見つめた。

 「あなたは、この瞬間を生きてそしてこれからもずっと生きていくのその長い人生を全て過去に囚われたままにしないで欲しいの。

 だから、自分の気持ちを大切にして生きて頂戴。これは、人生の先輩からの御願い」

 「で、でも…それではわたしが死なせてしまった姉妹…」

 「だったら、なおのことあなたは幸せになりなさい、生きられなかった姉妹の分まで幸せになりなさい。それがあなたの贖罪と思って」

 そう言って、ティオレさんは涙を流し続けるわたしをそっと優しく抱きしめて、泣き止むまでの間ずっと背中をなで続けてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

        

 

恭也‘s EYE

 

 

 長い昔話が終わった。フィリス先生はしばらく沈黙を保ったあとに立ち上がり俺をじっと見つめる。

 「だから、わたしは自分の気持ちに正直になりたいと思います。恭也君…わたしの気持ちを聞いてもらえますか?」

 じっと、フィリス先生は俺をまっすぐに見つめる。

 俺はその視線に応えるかのようにゆっくりと頷く。

 「わたしは、あなた…高町恭也君のことを心から愛しています。これからもずっと一緒にわたしはあなたと供にありたいと思います」

 あまりにストレートな告白に俺はどう応えようかと考え、そっとフィリス先生を見る。

 そこには、自分の気持ちを正直に打ち明け、その審判を仰ぐかのようにまるで何かを耐えるように俺を見つめるフィリス先生が居た。

 ―――先生は自分の気持ちの全てを俺に話したんだ、ならば俺も―――

 そう決心した俺は自分の右手を見つめながら答えた。

 「フィリス先生…先生は剣士の利き腕の意味をご存知ですか?」

 先生はゆっくりと首を横に振る。

 「剣士は自分の利き腕は決して他人に預けるようなことはしません。利き腕を取られるということは、自分の命を言い換えれば自分の全てをその相手に預けるということです。

 俺はこの自分の右腕を預ける相手を。自分の全てを預けられる人にフィリス先生を選びたいです。

 フィリス先生…いや、フィリス。俺もあなたと一緒に生きてゆきたい」

 そういって、俺はフィリスをギュッと抱きしめ、耳元でゆっくりと

 「フィリス…愛している…君を…絶対に一人にしない」

 囁いた。

 フィリスは俺の背中にゆっくりとしかし力強く腕を回して抱きつくと

 「はい…恭也…わたしも愛しています」

 と小さく、だけどしっかりと答えた。

 初夏の夕陽が照らす墓地の真ん中で俺たちはずっと抱き合っていた。お互いの存在を確かめ合うように。

 

 

 

 

 

 

わたしにはずっと探し続けている物があります・・・

 

でも、その探し物についてわたしは何も知りません・・・

 

わたしの名前はフィリス・矢沢。それが今のわたし・・・

 

わたしの名前はLC―23。それは決して忘れてはいけない昔のわたし・・・

 

この名前を忘れないことがわたしの贖罪なのだから・・・

 

わたしがこの手で殺してしまった姉妹達への贖罪・・・

 

だけどわたしは一つだけ見つけたものがあります・・・

 

過去に囚われて生き続けることよりも・・・

 

自分の気持ちを大切にし、死なせてしまった姉妹達の分まで・・・

 

わたしの隣に並んでくれた大切なあの人と・・・

 

供に生き、幸せになることが贖罪だということを・・・

 

わたしにはずっと探しているものがあります・・・

 

これからもずっとあの人とともに探していきます・・・

 

幸せとよべる大切な宝物を・・・

 

ずっとふたりで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 どうもこんにちはK’です

 今回はフィリスのお話です。とらハ3では攻略不可だったフィリス先生がリリちゃでは攻略可能になった理由を自分なりに考えてみました。

 なにぶん、駄目なSSを書かせると右に並ぶ人が居ない筆者が書いた物ですので上手く表現できたかどうか甚だ疑問です。これを読まれて、「こんなのフィリス先生じゃないやい」と思われた方には本当にすいません。

 では、今回も筆者の駄目SSに付き合って頂きまして本当にありがとうございました。


 

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