痛み





「痛っ!」



洗車をしてる最中、
突起物に指を引っかけた。
人差し指から血が滲んでいる。
拭っても拭っても、赤い血は皮膚の割れ目から滲んでくる。



ジーッとしばらくの間、少しだけ痛む、その人差し指を見ていた。







昔、かみさんが誰かと電話で話しながら、
電話口で泣いていた。
相手はどーやらかみさんの実母らしい。
ナニゴトかと思いつつ、しばらく話し掛けないで黙って見ていた。



落ち着いたのを見計らって話し掛ける。
しばらく黙り込むかみさん。
で、またしても泣き始める。



「・・・・・。無くなっちゃったんだって・・・。」



かみさんの実兄が、職場で事故に遭い、
指を切り落としてしまったというコトバを聞くのは、
もうしばらく時間が経過してからだった。





今でも時々会うこともあるが、
会ってもなんとなく見ることが出来ない義兄の手。
既に切断口は皮膚化してるが、
もはやそこには当たり前にあるはずの指はない。





ジーッと滲む血を見ながら、
ふとそんなコトを思い出す。



今にも地面に落ちそうな血をペロッと舐めてみる。
ちょっとだけしょっぱかった。



ふと、その痛みに安心感を覚えたよーな気がした。




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