Dear Friend




Dear Friend.


やすひろ君、お元気ですか?
「お元気ですか」と言うのも変な話ですが、ふと、君の事を思い出しました。
もう10年も会ってないんですね。
月日の流れるのは、本当に早いものです。
高校時代、同じバスケ部で異レギュラーの座を争ってたのが、ついこの間のような気がします。
結局ボクは引退まで所属しましたが、君は途中で退部しちゃったんですよね。
でも、君の事を悪く言うメンバーはひとりもいませんでした。
君の愛すべきキャラクターが、きっとそうさせたのでしょう。


バスケ部を辞めた君が愛したのは、音楽でした。
ボクと会うと、いつも君は自分のベースギターの自慢ばかりをしていたのを覚えています。
ボクがギターを担いで、君の部屋まで訪ねると、近所の人から苦情がくるまで、
大きなヴォリュームで、一緒に好きなバンドのコピーをしてましたよね。
あの頃は、音楽で世界を変えられるような気がしました。
でも、今のボクの腕はすっかり錆付いて、メジャーコードすら忘れてしまってます。
君は今でも弾いているのでしょうか?
やけに姿勢がいい、君のスタイルが瞼を閉じると思い出されます。


そういえば一緒にバイクでツーリングにも行きましたよね。
君と走ると、どんなに天気が良くてもいつも雨になったのが逆に楽しかった。
そして君はいつも先頭を走りたがっていましたよね。
なんだか、ボクは君の背中ばかりを見て走っていたような気がします。


そうそう。好きになった女性も同じだったんですよね。
同じクラスの新体操部のSさん。
結局、君が彼女を射止めたのは、修学旅行の自由行動の時間でした。
その後、なんだかお互いギクシャクしてたのは、今となってはいい思い出です。
先日、彼女が結婚するという風の便りが届きました。
時間はやはり、みんなに平等に過ぎ去っていくんですね。










やすひろ君。
元気ですか?
ボクはもう2児の父親です。










やすひろ君。
君がこの世から旅立っていって、もう10年が経ってしまいました。
君の安らかな顔は、ボクの顔を無表情にしてしまいました。










やすひろ君。
そちらで今もベースを弾いていますか?
君の愛したあのフェルナンデスのベースギターを。










やすひろ君。
普段は全く飲まないボクだけど、
今日はなんだか無性にお酒を飲みたい気分です。




     かわったね いつの間にか まるで人が違うみたいだね
     かわり過ぎて 見過ごす所だった
     見慣れた街の交差点で かわりはてた君がつぶやいた
     まだそんな事続けているのか?     〜『Dear Friend』〜 ECHOES




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